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2024.02.09

ダイレクトマーケティング実践講座〈第8回〉戦略のベースとなる5つの「顧客ステージ」とその特徴

COCAMPコラムの中でも特に人気のテーマである「ダイレクトマーケティング」。この連載コラム「ダイレクトマーケティング実践講座」では、大広と協働し、様々なクライアントのダイレクトマーケティングやCRMを実行する株式会社クロスエムの中村光輝氏とともに、ダイレクトマーケティングで重要な「事業戦略」「顧客戦略・顧客獲得」「顧客育成」「フルフィル・顧客管理」の4つの領域について、現場の実践に基づき解説していきます。

第9回は、ダイレクトマーケティングにおける「顧客戦略・顧客獲得」の「顧客戦略」から、「顧客ステージ」の続きから解説します。

前回の記事はこちら
ダイレクトマーケティング実践講座〈第7回〉「顧客戦略」は顧客ステージで変える

ダイレクトマーケティング実践講座概要の図解

<ダイレクトマーケティング実践講座 講師>

中村 光輝さんのプロフィール写真中村 光輝 
(株)クロスエム 代表取締役
通販会社にて18年間、CRMを中心にマーケティング業務に従事。その後、2014年に独立。主に化粧品や健康食品などのダイレク ト事業を対象に、CRMのプランニングやマーケティング戦略の立案、顧客分析などをサポート。特に、ロイヤル顧客を軸とした戦略・施策のコンサルティングを多数手掛ける。

 

折橋 雄一さんのプロフィール写真折橋 雄一 
(株)大広 顧客価値開発本部 顧客育成局 マネジメントリーダー
メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」を開発。

 

まだまだ不安定な段階:初回顧客~リピーター

折橋
前回は、ダイレクトビジネスをうまく運用するには、顧客ステージごとの特性や課題を理解することが重要という話をしました。
そして、「5つの顧客ステージ」がある中で、顧客育成の「3つの壁」があり、それを乗り越える必要があるということでした。

今回は、顧客ステージごとの特徴について、深堀りしていきましょう。

中村
まず、「初回顧客」です。
商品を一度だけ購入したが、まだ二度目の購入をしていない顧客です。
購入はしたけれど、まだまだロイヤルティは形成されていない状態です。

たいていは、広告を見て興味を持ち、とりあえずお試し感覚で、継続するかどうかはわからないけど買ってみたという顧客が少なくないステージです。

また、初回購入の段階では、多くの顧客が競合他社の商品を使用している可能性があります。たまたま広告を見て商品に興味を持ち、ちょっと気になったので注文してみたという顧客も結構多いというのが、この段階の特徴です。

初回購入の顧客は、商品を継続して購入するかどうかまだ決まっていない、検討している顧客も多い。そのため、継続購入率は低いです。

折橋
「F2の壁」ですね。
実際、約7割程度の顧客は二度目の購入をせずに終わっていますよね。また、お試し商品から本商品購入でも、たいていの場合、30%程度の引き上げ率だったりします。

 中村
初回購入顧客はまだブランドに対するロイヤルティが育っていないため、企業から送られる情報に対する反応は低いですね。情報が顧客に到達する確率も低くなります。例えば、ダイレクトメールやEメールの内容全てを確認するわけではなく、Eメールを開いたとしても隅々まで読み込むことは少ないでしょう。

 ただし、顧客の中には、商品に強く共感し、「これこそが自分が探していたものだ」と感じる顧客もいます。このような顧客は、初期段階で商品の利点を強く実感し、ロイヤル顧客になる可能性もあります。

 折橋
初回購入者の特徴をまとめました。
「継続率」「クロスセル」「年間購入金額」「顧客期間」「情報到達率」「NPS」は、いずれも低いレベルということになりますね。

 初回顧客の特徴02

 

中村
次に、「リピーター」です。リピーターは、初回購入から、再購入はしていただいているので、「F2の壁」は乗り越えたということになります。
ただし、まだ安定したリピート購入には至っておらず、不安定なリピート状態と言えます。この顧客は数回購入を繰り返し、初回購入から数ヶ月程度が経過した状態です。もちろん、商品の使用サイクルにもよります。

 リピートはしているけど、なんとなく継続している状態、例えば健康食品や化粧品で「まだ効果を明確に感じられないけれど、悪くはないからしばらく続けてみようかな」という状態の顧客も多いというのがリピーターの段階です。

折橋
リピーターの段階では、顧客が商品を本格的に、継続使用するかどうかを見定めている時期と言えますね。企業のアフターケアや、競合他社と比べて差別優位性があるのかを顧客が評価している状態にあります。

この段階の継続率は、初回から二回目よりは高くなっていますが、まだ安定した高い数値には至っていません。顧客のロイヤルティはまだ高くなく、安定していない状態といえます。
結果として、企業からのダイレクトメールやEメールなどの情報をちゃんと読み込んでいただけてはいない、という段階ですね。

 中村
はい。ただ一方で、この段階で、多くの企業が継続率を高め、他の商品への購入を促すクロスセルを図るために、値引きや割引のオファーを多用することも多いです。
この段階で値引きや割引のオファーを頻繁に行うと、顧客の反応は一時的に上がるかもしれませんが、ブランドや企業へのロイヤルティの観点から見ると、ギャップが生まれてしまう可能性があります。なぜなら、値引きや割引に惹かれて商品を購入する顧客は、優良なリピーターになりにくい傾向があるからです。

そのため、短期的に継続率を高める施策をするのか、長期的に顧客を育てていくのか、ということも考慮に入れて、リピーターの継続化を促進する戦略を立てることが重要となります。これが、「リピーター」の段階での主な課題となります。

折橋
まとめますと、リピーターは、F2の壁は乗り越えたものの、安定顧客にはまだ至っていないということになります。
「クロスセル」「顧客期間」「情報到達率」は相変わらず「低」レベルですが、
「年間購入金額」「NPS」のレベルは、「低~中」レベルで少し上がりますし、「継続率」は「中」レベルいうことになります。

 リピーターの特徴

 

安定リピーターとクロスセル顧客を分ける「クロスセルの壁」

中村
リピーターの段階を乗り越えて「安定リピーター」になると、主に初回購入した商品を継続的にリピート購入する、いわゆる「単品リピーター」が多くなります。

この状態だと「クロスセルの壁」がなかなか越えられないので、結果として、顧客の購入は単一商品に限定され、購入金額も一定に留まるため、顧客一人当たりのLTVが高まらない状況になります。
ここからは、顧客とのコミュニケーション戦略を変えていく必要があると言えます。

 この段階は、単一の商品に対するロイヤルティは形成され始めており、顧客はその商品を継続して使用する意志が確立された状態ということです。

また、クロスセルの観点から見ると、既に使用している商品と関連性の高い商品を試す可能性が高まります。
ただし、この段階では企業に対するロイヤルティはまだ形成されてはいないため、クロスセルした商品のリピート率は必ずしも高くはありません。つまり、お試し感覚でクロセルをしてみた段階ということになります。

 企業へのロイヤルティはまだ形成されていないものの、企業とのコミュニケーションに徐々に慣れてくると、現在使用している単品商品に関する情報の到達率(閲読率)は高くなります。自分が気になる情報に関しては見るようになる、という状態になります。

 折橋
これも、「クロスセルカスタマジャーニーマップ」でも示していますが、ある商品を気に入って継続購入した顧客は、 CRMの「商品(成分)啓発」コミュニケーションにより、「納得」が生まれ、満足感がアップし、商品のファンになります。そうして、関連商品に目を向けていただけるようになるので、関連商品の購入に至りますね。
でもまだ、企業ロイヤルティはないので、そこどまりですが。

中村
顧客が単品商品のリピーターにとどまるのか、それともクロスセルが効果的に働き、顧客単価を上げて優良顧客化するのか、というターニングポイントになるため、ここでのコミュニケーションの取り方が非常に重要です。

折橋
まとめますと、安定リピーターは、放っておくと、「クロスセルの壁」は乗り越えられない状態。
「継続率」は「高」レベルです。
「クロスセル」「年間購入金額」「顧客期間」「情報到達率」「NPS」のレベルは、「中」レベルになります。

安定リピーターの特徴

 

 

中村
次に、「クロスセル顧客」について説明します。
この顧客は、基本的に売上の大部分を占める優良顧客であり、パレートの法則に基づくと上位20%から30%に相当する顧客と考えてください。
当然、そこで終わりというわけではなく、最後に「ファン化の壁」が待ち構えており、これを乗り越えることではじめてロイヤル顧客となります。

この段階の顧客は、その企業のさまざまな商品の情報に詳しく、加えてサービスも上手に利用する状態になります。継続率、クロスセル、年間購入金額などの行動指標は既に高くなっています。非常に良い顧客ですね。

クロスセルが機能し、併買数が多くなっていく状態にありますが、基本的には最初に購入した商品を中心に、その関連商品が増えていく傾向です。なので、異なる事業カテゴリーの商品のクロスセルまでは、あと一歩といった顧客が多いです。
そういう意味で、年間の購入金額が最大値に達しているわけではない状況の顧客です。

折橋
この段階の顧客は、企業やブランドへのロイヤルティが形成され始めているため、企業から届く情報が非常に重要となりますね。企業への関心を高め、企業との距離を縮めるコミュニケーションを取る必要があります。商品や成分中心の情報から、社長や社員など企業の「顔」が見え、企業の想い(体温)が伝わる情報にしていかないと、好きになってもらえませんよね。知れば知るほど好きになる状態に持っていきたいところです。

中村
この段階の顧客は、情報を得る主要な経路がその企業になる、つまりその企業が一番信頼できる情報源となっています。

またクロスセル顧客になると、企業やブランドからの情報を楽しみにするような状態になります。例えば、通販の場合、会報誌やメールマガジンなどがありますが、これらの企業から届く情報を楽しみに待っていただけるようになる。そのため、閲読率は当然高いですし、しっかりと訴求情報を理解する能力も高くなっているので、情報到達率が高くなります。
その結果、クロスセルも機能し、好循環になるわけです。

一方、NPSも高いスコアにはなりますが、ロイヤル顧客に比べると、まだロイヤルティの安定感は少し劣るかもしれません。

 折橋
まとめますと、クロスセル顧客は、売り上げの多くを構成する優良顧客ですが、最後に「ファン化の壁」が待っている状態です。
「継続率」は「高」レベルです。
「クロスセル」「年間購入金額」「顧客期間」「情報到達率」「NPS」のレベルも、「高」レベルになります。

クロスセル顧客の特徴

 

ブランドが獲得すべき理想の顧客「ロイヤル顧客」

中村
最後に、「ロイヤル顧客」のステージになります。

これはブランドが目指す理想の顧客像、または、ある種の社員とも言える存在です。この顧客は最近入社した社員よりも企業のことに詳しい。アンバサダーとも言えるでしょう。
企業との関係が非常に長く、企業の商品やサービスについても非常に詳しい顧客ということになります。

ロイヤル顧客とは、自然離脱をしない限り辞めないような、継続率は99%以上といった驚くべき数字になることも珍しくありません。年間購入金額も、最大値に達します。

別の言い方をすれば、カスタマーシェア( ある顧客があるカテゴリーの商品のうち、どの企業からどれだけ購入しているかを示す指標 )はほぼ100%を占めていると言えます。その企業やブランドの商品だったら何でも購入したいと思ってくださるお客様です。

折橋
顧客ステージの最初のほうからすると、とんでもないほどの企業ロイヤルティを持つに至った顧客ということになりますね。とにかく企業のことを愛してくれて、ファンになっている。アンバサダーは、自分が大好きな企業を応援したいと思うし、その良さを人にも知って欲しいと思い、口コミや紹介などの推奨行動をしてくれる、最高の存在です。
アンバサダーはロイヤル顧客の上位に位置しますね。

中村
ロイヤル顧客は、クロスセルにおいては関連商品だけでなく、異なる事業カテゴリーの商品にも興味を持ってくれます。
さらに、ロイヤル顧客のNPSは非常に高く、継続意向も高いです。しかも、安定的に高く、ブレないです。

また、口コミの影響力も高まります。ロイヤル顧客の口コミは説得力があり、魅力的な内容が多いため、新規顧客を惹きつける効果があります。お友達紹介の数も多く、口コミ効果が高くなるステージでもあります。

ロイヤル顧客は、企業を応援し、協力したいという強い意志を持っていて、これが特徴と言えます。

しかし残念ながら、全体の顧客数に占める割合は少ないです。アクティブユーザーの中で言えば、おそらく3%から5%、多くても10%に満たない割合です。

だからこそ、ロイヤルティの高い顧客をセグメント化し、しっかりと把握することが重要です。少数ではあってもロイヤル顧客を増やすことには価値があります。これらの視点を持つことが、ダイレクトビジネスにおける顧客戦略において非常に重要です。

折橋
まとめますと、ロイヤル顧客は、企業・ブランドが目指す理想のペルソナ像で、もはや社員ともいえる存在です。
「継続率」はMAXです。「年間購入金額」「NPS」もMAXです。
「クロスセル」は多く他事業にまで及び、「顧客期間」はかなり長く、「情報到達率」のレベルも「高」で、閲読率や理解度もかなり高いといえます。

 ロイヤル顧客の特徴

 

次回は、ダイレクトマーケティングにおける「顧客戦略・顧客獲得」の「顧客戦略」の中の「カスタマーシェア」と 「収益化」についてお話していきます。

ダイレクトマーケティング実践講座〈第9回〉収益化はロイヤル顧客がカギを握る

 

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。