一緒につくろう、顧客価値のビジネス。

お役立ち資料 相談する
お役立ち資料 相談する

2024.04.12

ダイレクトマーケティング実践講座〈第20回〉商品配送における顧客価値を見極める

COCAMPコラムの中でも特に人気のテーマである「ダイレクトマーケティング」。この連載コラム「ダイレクトマーケティング実践講座」では、大広と協働し、様々なクライアントのダイレクトマーケティングやCRMを実行する株式会社クロスエムの中村光輝氏とともに、ダイレクトマーケティングで重要な「事業戦略」「顧客戦略・顧客獲得」「顧客育成」「フルフィル・顧客管理」の4つの領域について、現場の実践に基づき解説していきます。

第20回は、ダイレクトマーケティングにおける④「フルフィル・顧客管理」の「フルフィルメント」について解説します。

シリーズ一覧は、記事下部をご覧ください

ダイレクトマーケティング実践講座概要の図解

<ダイレクトマーケティング実践講座 講師>

中村 光輝さんのプロフィール写真中村 光輝 
(株)クロスエム 代表取締役
通販会社にて18年間、CRMを中心にマーケティング業務に従事。その後、2014年に独立。主に化粧品や健康食品などのダイレク ト事業を対象に、CRMのプランニングやマーケティング戦略の立案、顧客分析などをサポート。特に、ロイヤル顧客を軸とした戦略・施策のコンサルティングを多数手掛ける。

 

折橋 雄一さんのプロフィール写真折橋 雄一 
(株)大広 顧客価値開発本部 顧客育成局 マネジメントリーダー
メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」を開発。

物流コストをいかに抑えるか

折橋
今回から最後のパートである「フルフィルメントと顧客管理」に入っていきます。
「フルフィルメント」とは、商品の受注から顧客への配送までの一連のプロセスのことです。注文管理、在庫管理、梱包、出荷、配送、返品処理などが含まれます。ここでは、ダイレクトマーケティングにとって重要なポイントに絞って基礎的な内容についてお話していきます。
「顧客管理」については、顧客データの活用についてお話していきたいと思います。

中村
まずは「フルフィルメント」のポイントについてお話します。特に、商品を送る際の配送費用は年々高くなっていますね。通販ビジネスを展開している企業にとって大きな負担となっています。
皆さんも通販を利用する消費者としてご存知かもしれませんが、ここで改めて配送料について確認しましょう。

配送料は荷物を目的地まで届けてもらうためにかかる費用 です。この費用は、通販ビジネスでは事業の負担になるコストです。
配送料は、荷物がどこからどこへ運ばれるか、つまり距離によって変わります。当然、遠隔地への配送は費用が高くなります。また、荷物のサイズも料金に影響します。小さな荷物は比較的安価に送れますが、大きいものは、さらに配送料が高くなります。要するに、配送する距離と物のサイズや重さによって配送料は変動します。

折橋
健康食品などで、非常に小さいサイズであれば、500円以下で配送することも可能ではありますね。ですが、例えば家具を送るとなると、サイズが大きいため、配送料もかなりかかってしまいます。  冷凍でお届けする食品など特別な条件が加わることでも配送料はかなり高くなります。

中村
配送料は、商品の購入価格との関係で考える必要があります。例えば、1,000円や2,000円といった比較的安価な商品を販売しているビジネスでは、商品の価格が1,000円でも配送料がも同じく1,000円かかると、消費者は支払う総額が倍になるため 、購入をためらうかもしれません。企業は、この配送料を商品価格に上乗せするか、それとも別途消費者から配送料をいただくかを決める必要があります。これは、企業姿勢も含めて考えるべき問題です。

この物流関係では配送料以外に、いわゆる物流センターコストといったコストもあります。商品をピッキングして梱包するとか、あるいは在庫管理をするといったような、配送に至る前の物流センターのコストが該当します。そういう意味ではこの物流関係のコストが、現在の通信販売においては、非常に事業を圧迫するコストになっているのが実態です。  

折橋
配送料は、お客様に負担していただくことも可能ですが、倉庫での保管や商品のピッキング、梱包作業といった物流センターの費用も発生します。これらは自社のコストとなります。このようなコストをしっかりチェックし、いかに無駄を排除していくかが重要ですね。

中村
そうですよね。この物流関連のコストは通常、利益を圧迫するため、ビジネスにとってマイナスの要素と見られがちですが、別の角度から見ると、「商品同梱」という売り上げを増やす販売促進の側面もあります。
商品同梱というのは、商品を配送する箱にチラシやサンプルなどを一緒に入れて送る方法です。これには商品の正しい使い方を説明する説明書や、リピート購入を促すオファーチラシ、関連商品のクロスセルを促すチラシなどが含まれます。どんなツールを同梱するかによって、さまざまな販売促進が可能になります。

商品同梱で顧客とコミュニケーションする

折橋
商品同梱は、お客様とのコミュニケーションに使えるものです。商品の説明書、パンフレットなどできちんと商品を理解していただくのは当然ですが、挨拶状やプレゼントなどが入っていると、きちんとした企業から良いものを買ったという印象も演出できますよね。商品を使う前から期待感が高まります。
逆に、配送された箱に商品しか入っていないなんてことになれば、顧客は少しがっかりするかもしれませんね。

中村
サンプルやプレゼント品を商品に同梱する場合、そのサイズや重さによっては配送料が大幅に上がることがあります。そのため、顧客が喜ぶかもしれないが、コストがかかりすぎる場合は別の方法を検討する必要も出てきます。企業は、商品同梱で何を送るかをしっかり検討しないといけません。

折橋
商品同梱は、基本的にお客様への情報到達率が比較的高い手法だと言われています。お客様は注文した商品の配送箱を開けた際、その中に入っているチラシやサンプルを目にする可能性が高いため、コミュニケーションの絶好の機会となります。さらに、別途でダイレクトメールなどを送付する場合に比べて、配送料はかかりません。

中村
通販会社は、顧客に情報が届きやすく売り上げにつながるため、商品同梱を多用します。しかし、顧客は自分が関心のない同梱物、特にセールスチラシが多すぎると、うんざりしてしまい、それらを見ずに捨ててしまいます。また、その不満がたまると、同梱物を入れないでほしいという要望を企業側にすることもあり、顧客との貴重なコミュニケーション手段を失うことになります。そのため、同梱物の量を適切に調整することは、企業にとっての課題の一つといえます。

折橋
我々も初回購入の際の商品同梱物に何を入れるべきなのか、2回目、3回目の購入時はどうするか、などをプランニングして企業様にご提案しますが、顧客のインサイトを考えることが重要だと思っています。まずは、購入した商品を正しくしっかりと使用していただき、ベネフィットを感じやすくすることを目指します。

商品同梱とは


商品同梱の条件設定

中村
商品同梱に関して、もう少しお話をさせていただきたいと思います。
どの商品にどんなものを同梱するかは、事前に条件を設定しないといけません。例えば、通販では「全数同梱」といって、すべての出荷箱に同じチラシを入れることがあります。この場合は、特にシステムを使わなくても、全ての箱にチラシを入れるよう物流センターに指示すればいいのですが、特定の条件で同梱する場合はシステムを使ってその条件を設定する必要があります。
図をご覧ください。

商品同梱の条件設定


商品を配送する際の同梱条件には、主に2つの切り口があります。
一つは、注文内容に基づいて出荷箱に同梱するかどうかを決める「受注条件」というものです。もう一つは、「顧客条件」と言って、どのような顧客が購入した場合に何を同梱するかを決める方法です。これらの条件は、CRMや販促戦略を考慮して設定されます。

「注文内容」によって同梱を判断するというのは、例えば、 注文金額が1万円以上の場合にはプレゼント品を入れるとか、商品Aを買ったらその説明書を同梱する、また商品AとBを一緒に買ったらその併用のメリットを伝えるチラシを入れるなど、注文の詳細内容に応じて様々な同梱物を設定することができます。
また、より複雑な設定として、商品A以外の商品を購入した顧客には商品Aの販促チラシを入れるといったことも可能です。

「顧客条件」は、例えば3月が誕生日と顧客マスターに情報登録をされている方がいて、3月に商品を購入されたら「お誕生日おめでとうございます」というバースデーカードを入れるとか、あるいはロイヤル顧客という設定をしていて、ロイヤル顧客が購入したら何らかのサンプルを入れるとか。
あるいは過去に商品Aを購入した顧客が、今回何らかの商品を購入したら、こういうチラシを入れるとか、以前チラシBを同梱して、その顧客が今回購入したらアフターフォローのチラシを入れるとか、色々な受注条件、顧客条件を組み合わせることによって、非常に細かい条件を設定がすることが可能です。  

折橋
ただ、そのように細かく柔軟な同梱設定ができるのはすべての会社に当てはまるわけではないですよね。かなり高度なシステムも必要になるかと思います。システム費用も相当かかりますから、難易度が高いですね。
そういう設定が可能な会社であれば、CRM施策をより丁寧で詳細に行うことができますね。

中村
このように顧客のニーズに合わせた商品同梱設定を行うことで、余計なチラシや顧客が不要と思う物を送らず、顧客が本当に知りたい情報や喜んで受け取っていただけるツールを的確なタイミングで提供できます。これは顧客のロイヤリティを高める効果があります。これによって、単発の施策ではなく、継続的な関係を築くためのストーリー性があるCRM施策を展開することが可能になります。今後のダイレクトビジネスにおいては、このような細やかな顧客体験の設計が重要になると思います。
通販ビジネスにおける物流機能を考える際は、単なる運用コストの観点だけでなく、商品同梱などのCRM施策をどこまできめ細かく行うか、システム環境も含めて判断することが必要です。

折橋
次回は、ダイレクトマーケティングにおける④「フルフィル・顧客管理」の「フルフィルメント」の「コンタクトセンター」について解説します。 

「ダイレクトマーケティング実践講座」シリーズ一覧
ダイレクトマーケティング実践講座〈第1回〉「ターゲット」を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第2回〉コンセプトづくりのコツ
ダイレクトマーケティング実践講座〈第3回〉 「事業モデル」で戦略が異なる
ダイレクトマーケティング実践講座〈第4回〉「商品企画」における重要ポイント
ダイレクトマーケティング実践講座〈第5回〉安定した利益を生み出す「価格」設定とは?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第6回〉ロイヤル顧客を生みだすための「チャネル」「販促」の考え方
ダイレクトマーケティング実践講座〈第7回〉「顧客戦略」は顧客ステージで変える
ダイレクトマーケティング実践講座〈第8回〉戦略のベースとなる5つの「顧客ステージ」とその特徴
ダイレクトマーケティング実践講座〈第9回〉収益化はロイヤル顧客がカギを握る
ダイレクトマーケティング実践講座〈第10回〉顧客獲得に向けた商品選定と戦略思考
ダイレクトマーケティング実践講座〈第11回〉最初のハードル「F2転換の壁」をどう乗り越えるか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第12回〉リピーターを育てるコミュニケーションの要諦
ダイレクトマーケティング実践講座〈第13回〉ブランドへの信頼を築きクロスセルに導く
ダイレクトマーケティング実践講座〈第14回〉第2のハードル「クロスセルの壁」をどう乗り越えるのか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第15回〉 徹底した顧客の理解がクロスセルを促進する
ダイレクトマーケティング実践講座〈第16回〉アップセルの成否は顧客のロイヤルティの見極めにある
ダイレクトマーケティング実践講座〈第17回〉 「ファン化の壁」を乗り越えて、ロイヤル顧客を作る!
ダイレクトマーケティング実践講座〈第18回〉 ロイヤル顧客を維持するには?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第19回〉ロイヤル顧客の育成で直面する3つの課題
ダイレクトマーケティング実践講座〈第20回〉商品配送における顧客価値を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第21回〉コンタクトセンターの「インバウンド」と「アウトバウンド」とは
ダイレクトマーケティング実践講座〈第22回〉コンタクトセンターにおける「VOCの価値」と「顧客対応品質」
ダイレクトマーケティング実践講座〈第23回〉顧客管理の基礎はデータ分析にある

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。