一緒につくろう、顧客価値のビジネス。

お役立ち資料 相談する
お役立ち資料 相談する

2024.04.19

ダイレクトマーケティング実践講座〈第22回〉コンタクトセンターにおける「VOCの価値」と「顧客対応品質」

COCAMPコラムの中でも特に人気のテーマである「ダイレクトマーケティング」。この連載コラム「ダイレクトマーケティング実践講座」では、大広と協働し、様々なクライアントのダイレクトマーケティングやCRMを実行する株式会社クロスエムの中村光輝氏とともに、ダイレクトマーケティングで重要な「事業戦略」「顧客戦略・顧客獲得」「顧客育成」「フルフィル・顧客管理」の4つの領域について、現場の実践に基づき解説していきます。

第22回は、ダイレクトマーケティングにおける④「フルフィル・顧客管理」の「フルフィルメント」の「コンタクトセンター」の続きを解説します。

シリーズ一覧は、記事下部をご覧ください

ダイレクトマーケティング実践講座概要の図解

<ダイレクトマーケティング実践講座 講師>

中村 光輝さんのプロフィール写真中村 光輝 
(株)クロスエム 代表取締役
通販会社にて18年間、CRMを中心にマーケティング業務に従事。その後、2014年に独立。主に化粧品や健康食品などのダイレク ト事業を対象に、CRMのプランニングやマーケティング戦略の立案、顧客分析などをサポート。特に、ロイヤル顧客を軸とした戦略・施策のコンサルティングを多数手掛ける。

 

折橋 雄一さんのプロフィール写真折橋 雄一 
(株)大広 顧客価値開発本部 顧客育成局 マネジメントリーダー
メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」を開発。

VOCをデータ化し、課題解決の糸口に

折橋
コンタクトセンターに関わることでは、非常に大切なものとして、お客様の声(VOC)があります。
「VOC(Voice of Customer)」とは、お客様から電話やハガキ、メールなどで日々企業に寄せられる声です。

中村
お客様のインサイトを把握するために、VOCはとても重要です。そして、企業からお客様にかけるアウトバウンドだけでなく、お客様が直接企業に連絡してくるインバウンドでもVOCは得られます。
相談やお問い合わせ、クレームからはもちろんですが、私の経験では、商品注文時のお客様のさりげないコメントからも大きなヒントを得ることがあります。

折橋
インバウンドでは、基本的にお客様からの注文内容やお届け先などを確認しますが、その会話の中での発言にヒントが詰まっているということですね、具体的には、どのようなことがありますか?

中村
例えば、顧客が電話で商品Aを注文した場合、商品Aを購入した履歴は残りますが、実際は商品Bと迷っていて、オペレーターに商品Bの情報を尋ねていても、そのやり取りは購入履歴には反映されません。そのため、このようなインバウンドでのやり取りを把握するには、VOCデータとして意図的に記録することが必要です。そうすることで、「商品Aを購入する顧客が実は商品Bにも興味を持っていた」という傾向を把握することができるのです。商品担当者や販促担当者がコンタクトセンターのモニタリングを常に行っているわけではないので、このような情報をVOCデータとして体系的に収集し、分析することが非常に重要です。

折橋
なるほど。特に受注時は必要事項を確実に聞き取ることが大切ですから、それ以外の情報は記録しないことも多いでしょうね。
ただ、それ以外といっても、顧客が商品を選択する際に重要視していた点や、それを掲載しているチラシやWEBページなどのわかりやすさに関する情報は、売上に直結する重要なヒントになりますよね。

中村
とは言え、「お客様が商品Aを購入する際に商品Bと迷う」という実態やその理由は、VOCからだけでは完全には把握できない可能性があります。そのため、さらなる顧客理解を深めるためにアンケート調査を実施することがあります。

折橋
問題を見つけるためには、顧客からの直接的なフィードバックを収集することがとても重要だということですね。特に、インバウンドでのVOCの収集は、顧客の顕在意識から生まれる課題を抽出する上で非常に役立ちます。そして、そこからさらに深い理解のためにアンケート調査も行うべきですね。VOCから発見した課題をヒントに、より定量的に、より理解を深めるためにアンケート調査を設計すると効果的です。

中村
もう一つ例を出すと、顧客が商品CとDを注文しようとした際に、注文内容が現在のキャンペーンに適用されるかどうかを不安に感じているといったケースがよくあります。このようなキャンペーンに関する質問などは、顧客からの “ちょっとした”声として得られます。
この場合は、キャンペーン広告やダイレクトメールの内容が分かりにくいことが原因かもしれません。プレゼントをもらうための条件やその対象商品が明確でないと、顧客は混乱します。キャンペーンの条件をはっきりと大きく表示したり、具体的な例を示したりして、どの商品がキャンペーンの対象なのか、その条件内容をわかりやすく伝える必要があります。
このような顧客の声は、キャンペーンの改善点を見つけるきっかけになるので、インバウンドのVOCを確認することが重要です。

折橋
VOCをきちんと把握するためにも、お客様との会話を記録する仕組みが必要ですよね。

中村
そうなんです。しかし実際には、インバウンドのVOCをシステムに蓄積している企業は必ずしも多くはありません。そのため、インバウンドのVOCをどのようにしてデータ化するかは、システム構築だけでなく、VOCデータの登録ルールなども含めた課題として、顧客把握のための重要なテーマとなっています。

VOCの価値

顧客対応品質の3つの基本要素

中村
コンタクトセンターでは、「顧客対応品質」も非常に大切なポイントです。
「顧客対応品質」とは、コンタクトセンターのオペレーターや実店舗での販売員が提供する顧客対応の良し悪しを指します。これには、顧客が受けたサービスにどれだけ満足しているかという点が評価の対象となります。

折橋
オペレーターや販売員の対応が素晴らしいと、顧客のロイヤルティが上がりますよね。
特に通販ビジネスでは、顧客は企業のスタッフと直接顔を合わせる機会がありません。電話での対応が顧客体験の主な接点ですから、そこでの対応が素晴らしかったら、「マインドロイヤリティ」が高まりますよね。

中村
顧客がロイヤルカスタマーになるプロセスを考えると、顧客対応品質は非常に重要ですから、顧客対応品質に力を入れる通販企業が増えていると思います。

折橋
顧客対応では、ご指摘をいただいた顧客に対して真摯に対応することが重要ですよね。そこでの適切な対応が顧客にとって素晴らしい体験となり、結果として顧客のロイヤルティが高まることもあります。

中村
コンタクトセンターにおける顧客対応品質の基本要素としては、一つは電話などの繋がりやすさです。コストを重視するあまり、人員配置に制限をかけることが多いため、少なくない企業で電話が繋がりにくい状況が起こっています。
特に、よくリピートしてくれるロイヤル顧客は、コンタクトセンターへ電話をかけることが頻繁にあると想定されます。そういったお客様が電話をかけた際に、繋がりにくいという体験をされると、サービスに対する満足度が下がりかねません。特に、本当に必要なときに電話が繋がらないのは問題です。だからこそ、繋がりやすさは顧客サービスの質を左右する重要な要素と言えます。

二つ目は、応対の丁寧さです。電話が繋がっても、もし対応が雑だったり、感じが悪かったりすると、顧客の満足度は低下します。丁寧な言葉遣いや、顧客にとって心地よいと感じられる応対が求められます。また、言葉は丁寧でも、事務的、機械的な対応で心がこもっていないように受け取られることもあります。コンタクトセンターでは人と人とのやり取りが行われるため、顧客が丁寧な印象と心地よさを感じられるような、心を込めた対応が必要です。

最後に三つ目は、処理の適切さです。顧客が連絡をする目的は、注文すること以外に、何かしらの問題を解決することにあります。したがって、顧客の要望や問題が正確に理解され、適切に処理されているかが重要となります。それができているかどうかが、サービスの質を測るうえでの大切なポイントです。

折橋
確かに、まず電話がきちんとつながること、待たせないことはとても重要ですね。毎回心地よい対応と適切な処理が実施されるのであれば、素晴らしい顧客体験となり、ロイヤルティは上がります。

中村
コンタクトセンターのサービス品質には、商品やサービスに関する知識の専門性も関係してきます。新規の顧客であれば、商品やサービスについての認識がまだ浅いため、オペレーターもそれほど専門的な知識がなくても十分に対応できることが多いです。
しかし、長年利用しているロイヤル顧客の場合、企業のスタッフよりも商品やサービスに詳しいことがあります。そのような顧客は、基本的な情報を理解しているうえで、さらに詳しい情報を求めて連絡してくることが多く、定型的な対応では満足しないこともあります。

折橋
ロイヤル顧客には、専門性のある一段階深い情報をもって対応しないと、満足のいく情報を得られなかったとがっかりさせてしまうことになりますね。だからこそ、ロイヤル顧客に対応するオペレーターは、豊富な知識と高い接客能力が求められますね。

顧客対応品質の評価方法

中村
顧客対応品質の評価方法には、いわゆるモニタリングというものがあります。これはオペレーターの対応を実際に観察したり、通話を録音して後で聞き直したりする方法です。
また、調査もあります。顧客サービスに関するアンケートやインタビューなど、さまざまな調査方法を用いて顧客対応の品質や顧客の満足度を測定します。
他にも、ミステリーコールというものがあります。「ミステリーショッパープログラム」と同様に、顧客になりすました覆面調査員が電話をかけ、電話の繋がりやすさ、応対の丁寧さ、処理の適切さなどを評価する方法です。これは調査の一環としても機能し、実際の顧客体験を基にサービス品質をチェックすることができます。尚、この覆面調査員には、自社の顧客に担当していただく場合もあります。

私がかつて勤めていた会社でも、自社顧客に覆面調査員の役をお願いして、定期的にミステリーコールプログラムを実施していました。実際の顧客目線で対応品質をチェックしていただくことで、リアルな評価を得ることができました。もし関心があれば、自社顧客を用いたミステリーコールを設計するのも良いかもしれません。  
ただし、その際には対象顧客に関して留意する必要があります。新規顧客とロイヤル顧客では持っている情報や企業に求める内容が異なるため、顧客セグメントを踏まえてミステリーコールの調査設計を立てるべきです。

顧客対応品質

「フルフィルメント」のポイント

折橋
それでは、フルフィルメント、主に物流とコンタクトセンターについてのまとめをお願いします。  

中村
 1つ目は、物流おける商品同梱。効果的な商品同梱を行うことで、顧客のリピート率やクロスセルに効果を発揮します。商品同梱は、通販ビジネスでは、非常に有効な販促手法です。

2つ目は、コンタクトセンター。顧客課題に応じてインバウンドとアウトバウンドをどのように位置づけ、管理するかを考える必要があります。コンタクトセンターはコストがかかりますが、単なるコンタクトセンターとして機能させるのではなく、どうやってプロフィットに結び付けていくのかをしっかりと設計することが大切です。  
   
3つ目は、コンタクトセンターの運用における顧客対応品質の重要性です。人との接触を通じて品質の高い対応を行うことは、商品を買ってもらうだけでなく、顧客のロイヤルティを高めるきっかけになる重要な要素です。従って、顧客のロイヤルティを高めるためには、意図的に顧客対応品質に注力することが重要です。

フルフィルメントのポイント

折橋
次回は、ダイレクトマーケティングにおける④「フルフィル・顧客管理」の「顧客管理」について解説します。

「ダイレクトマーケティング実践講座」シリーズ一覧
ダイレクトマーケティング実践講座〈第1回〉「ターゲット」を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第2回〉コンセプトづくりのコツ
ダイレクトマーケティング実践講座〈第3回〉 「事業モデル」で戦略が異なる
ダイレクトマーケティング実践講座〈第4回〉「商品企画」における重要ポイント
ダイレクトマーケティング実践講座〈第5回〉安定した利益を生み出す「価格」設定とは?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第6回〉ロイヤル顧客を生みだすための「チャネル」「販促」の考え方
ダイレクトマーケティング実践講座〈第7回〉「顧客戦略」は顧客ステージで変える
ダイレクトマーケティング実践講座〈第8回〉戦略のベースとなる5つの「顧客ステージ」とその特徴
ダイレクトマーケティング実践講座〈第9回〉収益化はロイヤル顧客がカギを握る
ダイレクトマーケティング実践講座〈第10回〉顧客獲得に向けた商品選定と戦略思考
ダイレクトマーケティング実践講座〈第11回〉最初のハードル「F2転換の壁」をどう乗り越えるか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第12回〉リピーターを育てるコミュニケーションの要諦
ダイレクトマーケティング実践講座〈第13回〉ブランドへの信頼を築きクロスセルに導く
ダイレクトマーケティング実践講座〈第14回〉第2のハードル「クロスセルの壁」をどう乗り越えるのか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第15回〉 徹底した顧客の理解がクロスセルを促進する
ダイレクトマーケティング実践講座〈第16回〉アップセルの成否は顧客のロイヤルティの見極めにある
ダイレクトマーケティング実践講座〈第17回〉 「ファン化の壁」を乗り越えて、ロイヤル顧客を作る!
ダイレクトマーケティング実践講座〈第18回〉 ロイヤル顧客を維持するには?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第19回〉ロイヤル顧客の育成で直面する3つの課題
ダイレクトマーケティング実践講座〈第20回〉商品配送における顧客価値を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第21回〉コンタクトセンターの「インバウンド」と「アウトバウンド」とは
ダイレクトマーケティング実践講座〈第22回〉コンタクトセンターにおける「VOCの価値」と「顧客対応品質」
ダイレクトマーケティング実践講座〈第23回〉顧客管理の基礎はデータ分析にある

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。