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2024.01.19

ダイレクトマーケティング実践講座〈第5回〉安定した利益を生み出す「価格」設定とは?

【COCAMP】ダイレクトマーケティング実践講座

COCAMPコラムの中でも特に人気のテーマである「ダイレクトマーケティング」。この連載コラム「ダイレクトマーケティング実践講座」では、大広と協働し、様々なクライアントのダイレクトマーケティングやCRMを実行する株式会社クロスエムの中村光輝氏とともに、ダイレクトマーケティングで重要な「事業戦略」「顧客戦略・顧客獲得」「顧客育成」「フルフィル・顧客管理」の4つの領域について、現場の実践に基づき解説していきます。

第5回は、ダイレクトマーケティングにおける「事業戦略」の「マーケティング戦略」から、「価格」について解説します。

前回の記事はこちら
ダイレクトマーケティング実践講座〈第4回〉「商品企画」における重要ポイント

ダイレクトマーケティング実践講座概要

<ダイレクトマーケティング実践講座 講師>

nakamura中村 光輝 
(株)クロスエム 代表取締役
通販会社にて18年間、CRMを中心にマーケティング業務に従事。その後、2014年に独立。主に化粧品や健康食品などのダイレク ト事業を対象に、CRMのプランニングやマーケティング戦略の立案、顧客分析などをサポート。特に、ロイヤル顧客を軸とした戦略・施策のコンサルティングを多数手掛ける。

orihashi折橋 雄一 
(株)大広 顧客価値開発本部 顧客育成局 マネジメントリーダー
メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」を開発。

「オファー」の影響を織り込んで価格を設定する

折橋
今回は、マーケティング戦略の中の「価格」についてお話していきます。
価格は、プロダクトと密接に関連しています。特にダイレクトマーケティングやダイレクトビジネスにおいて、価格の意味や重要性についてお伝えしていきます。

 価格を決める際には、競合との比較が重要な視点の一つです。競合と比較してどのような価格を設定するかを考えます。また、原価を考慮して価格を検討することも重要です。どのマーケティング戦略においても、これらは必須の視点です。競合が存在する中で、どのような価格を設定し、どのような戦略で対抗していくかを考える必要があります。特にダイレクトマーケティングにおいては、これらの視点が重要ですね。

中村
はい。しかし、ダイレクトビジネスの特徴として、それだけではなかなか価格設定が困難な場合があります。

 その一つが、「オファー」(顧客に商品やサービスを購入する際の付加価値や特典を提示すること)で、価格設定に大きく影響する要素の一つです。
オファーには、値引きや割引を提供するオファー、お試し商品のオファー、定期購入の価格オファーなど、いくつかの種類があります。価格設定をする際には、それぞれのオファーを考慮に入れる必要があります。

オファーの視点で商品価格について考えると、複数の価格が存在します。下図をご覧ください。
通常価格は基本となる価格であり、例えば5,000円という商品の場合、通常価格で販売されていないと二重価格の問題が生じます。「通常価格」は5,000円であるとした場合、例えば2個まとめて9,000円で購入できるという「まとめ買い価格」を設定することもあります。これにより、一個あたりの価格は4500円となります。10%相当の割引ですね。

商品価格の種類

折橋
通販では、単品リピートモデルの場合、定期価格が最安値になることがよくありますよね。例えば、通常価格が5,000円の商品でも、定期コースを選ぶと4,000円で提供することができるといったような販売方法が一般的です。

中村
そうです。しかし、その場合、原価設計をする際には5,000円で売る前提の原価と、4,000円を基準に考えた原価率とは異なることになります。そのため、粗利率も異なることになります。ただ、単品リピートビジネスのモデルでは、定期購入が売り上げの大部分を占めるため、売上計画は4,000円で計算されるほうが妥当です。つまり、実際の価格は定期コース価格で考える必要があるということです。

このように考えると、商品をどのような価格で売るかは、販売方法も含めて決めることが重要です。商品をどのような価格で販売するかを考慮した上で、商品開発を行う必要があります。

【価格】 市場性だけでなくオファーも考慮(COCAMPダイレクトマーケティング実践講座第5回)折橋
ダイレクトビジネスにおいては、競合環境や市場の需要だけで価格設定するのではなく、オファーを考慮して価格を決定する必要があるということですね。

ダイレクトビジネスで避けられない「配送料」は顧客心理を読み解き決定する

折橋
通販の視点では、配送料も重要な要素ですね。年々高くなっているため、大きなインパクトを与える要素となっています。

そこで、配送料に関して考えないといけないことがあります。配送料を無料にするか、つまり会社が負担するか、あるいは実費を顧客に請求するかは、ビジネスの考え方によって異なります。

 中村
そうですね。ただし、配送料を無料にする場合は、当然、売上との関係を無視することはできません。そのため、価格設定の際には配送料を考慮しないといけません。

 通販で商品を購入する顧客は、基本的に配送料無料を好みます。特に女性の場合は、配送料を別途払うことを意識する方が多いです。そのため、支払う配送料が300円であろうと、顧客にはインパクトが大きいのです。
どのように配送料を見せるのか、企業姿勢としてどのように受け止められるかなど、企業は配送料の扱い方や顧客の心理を考える必要があります。

【価格】 配送料のインパクト(COCAMPダイレクトマーケティング実践講座第5回)「配送料のインパクト」について、上の図をご覧ください。2つありますが、まず上の「単価の低い商品の場合配送料のインパクトは大」です。

一回の購入で商品単価が1,000円の商品A5,000円の商品Bがあります。

配送料は、商品のサイズや重量などによって異なりますが、ここでは、同じサイズや重量の商品で、単価が1,000円と5,000円の場合として考えてみましょう。仮に配送料が500円かかるとします。顧客に実費請求として別途配送料をお支払いいただく場合、商品A1,000円の商品に対して500円の配送料がかかりますので、合計金額は1,500円になります。

一方、商B5,000円の商品に対して500円の配送料がかかり、合計金額は5,500円になります。このように、商品Aは単価が1,000円であるにも関わらず、500円の配送料が加わることで1.5倍の支払金額となり、配送料のインパクトが大きく感じられるかもしれません。

折橋
配送料のインパクトは意外に大きいですよね。商品代金が安ければ安いほど負担に感じてしまいます。下手したら、配送料のせいで買うのをやめてしまうかもしれない。

そういう意味では、1,000円程度の商品のみを継続的に買っていただくというのは、通販ビジネスではなかなか難しいですね。

 中村
もうひとつ違う視点になりますが、「配送料のインパクト」の「まとめ買いにより配送料を減らすことも可」をご覧ください。

月に1個、年12個で買っていただく場合、商品を11,000円で12個購入していただくと、合計12,000円の商品代金がかかります。ただし、毎月商品を購入していただく度に配送料500円がかかる場合、一回あたりの支払い金額は1,500円になります。そのため、12回の購入で合計18,000円の支払いが必要になります。

上図の左側は、商品Aをまとめて購入する場合の支払い方法です。具体的には、商品A11,000円でまとめて3個購入し、それを年に4回繰り返すことで合計12個を購入いただく場合です。
この場合、1回につき1,000円の商品代金に、3個の商品をまとめて購入するための配送料500円が加算されます。この商品は共通のサイズ感で送ることができるとお考えください。したがって、1回あたりの支払い金額は3,500円になります。結果的に、合計4回の購入で14,000円が支払われることになりますが、配送料のかけ方や購入頻度を変えるだけで、顧客が支払う金額自体が4,000円も変わってしまうことにな
ります。

 折橋
まとめ買いを促進することによって、配送料を削減することができますね。商品Aをまとめて3個購入する場合には、まとめ買いにより価格を下げることもあり得ます。

このような要素を考慮して価格設定を行い、顧客にどのように購入していただくかを考える必要がありますね。

中村
オファーや配送料を総合的に考慮して、適切な価格設定を行うことが重要です。顧客に最適な購入方法を提案し、まとめ買いを奨励することで配送料を削減することも可能です。これらは価格設定において留意点になります。

 リピーターであればあるほど、長年リピーターになるほど、顧客は一番安く購入するためにどのような購入方法を選ぶべきか気にすることが多いです。1円でも安く買える計算を心掛ける顧客が多いと感じています。
そのため、例えば年に数回、特定の顧客に20%オフのダイレクトメールを送付した場合、顧客は割引のダイレクトメールを認知することになるため、割引のダイレクトメールが届くまで購入を待つことも自然な選択となります。

 折橋
「割引待ち」になってしまうというのは、企業の売り上げ、収益にとっては必ずしも良いことではありませんね。

中村光輝×折橋雄一(COCAMPダイレクトマーケティング実践講座第5回) 中村
まとめ買いには留意すべき点やデメリットも当然存在しますので、それらを考慮しながら設定する必要があります。

例えば、商品の鮮度が重要な商材の場合、購入から何ヶ月か経つと商品の新鮮さに少し不安を感じる場合もあります。商材の特性によっては、まとめ買いがデメリットになることもあります。

折橋
他にもデメリットはありますね。まとめ買いを推奨することで顧客とのコミュニケーションが減るということです。接触回数が減ってしまうので、商品同梱のチラシや会報誌などを見ていただく機会が減ってしまいます。別送すればいいんですけど、コストがかかりますから、なかなか実施している企業は少ないかもしれませんね。

いずれにしても、企業とのコミュニケーションの減少は顧客のロイヤルティを形成しにくくする要因となってしまいます。

いつ利益が生まれるのか?「顧客収益」を予測し価格を決める

中村
デメリットについてもう少しお話しさせていただくと、顧客収益の視点も重要ですね。下の図をご覧ください。顧客単位で見た場合、どの時点で顧客が累積で利益化するのかというところを表しています。

縦軸が累積利益を表し、横軸が初回顧客からフリークエンシーやマネタリーが増えていくことよってロイヤル顧客へと移行していく過程を表しています。

【価格】 顧客収益も考慮(COCAMPダイレクトマーケティング実践講座第5回)中村
ダイレクトビジネスでは、収益と損益が比較的明確であり、初回顧客の段階では一般的に赤字の状態から始まることが多いです。特に獲得コストが高い現在の状況では、そうなりがちです。

したがって、初期段階では赤字がほぼ確実であり、初回顧客だけでなく、F22回目購入)やF33回目購入)の段階でも赤字状態になることがあります。

つまり、累積で見ると、赤字の状態が一定期間続くことも少なくありません。顧客が一定回数リピートすることで、はじめて累積の赤字が解消されることになります。したがって、購入一回当たりの利益が少ない場合、累積的に利益を生み出すためには、ロイヤル顧客が非常に重要となります。

 収益性の高い商品を多く販売することで、販促をあまり行わなくてもたくさんの商品を購入くれる顧客も現れます。そのような顧客が増えること=ロイヤル顧客の数を増やすことで、事業収益を安定させ、新規顧客の獲得にも予算を回すことができます。このような構造になることで、事業の収益が安定し、安定的な事業成長が実現できるといえます。

 折橋
ロイヤル顧客の重要性というのがとてもよく分かります。事業として安定させるためには、多くの利益をもたらしてくれるロイヤル顧客の数を増やすことがとても大切ですよね。

 中村
事業としては、一回の購入における収益化が難しい場合、新規顧客の獲得効率を向上させるか、クロスセルによって顧客単価を上げるかのどちらかが必要ということになります。
新規顧客の獲得、またはクロスセルを意図した価格というものを意識しながら、どの商品でどれだけの利益を得るのか、またはロイヤル化に向かって、どのように買ってもらうのか、商品ラインナップと価格設定が重要になってきます。

つまり、新規顧客獲得商品であれば、獲得コストを考慮した商品の価格設定が必要ですし、クロスセル目的の商品ということであれば、利幅が低くても単商品で利益を生み出す可能性があります。このように商品ごとの目的に応じた価格を設定することが重です。

次回は、「マーケティング戦略」の「チャネル」と「販売促進」 についてお話していきます。

ダイレクトマーケティング実践講座〈第6回〉ロイヤル顧客を生みだすための「チャネル」「販促」の考え方

 

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。
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