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2024.05.01

ダイレクトマーケティング実践講座〈第24回〉打つべき手が見える形でデータを整理し活用する

COCAMPダイレクトマーケティング実践講座第24回

COCAMPコラムの中でも特に人気のテーマである「ダイレクトマーケティング」。この連載コラム「ダイレクトマーケティング実践講座」では、大広と協働し、様々なクライアントのダイレクトマーケティングやCRMを実行する株式会社クロスエムの中村光輝氏とともに、ダイレクトマーケティングで重要な「事業戦略」「顧客戦略・顧客獲得」「顧客育成」「フルフィル・顧客管理」の4つの領域について、現場の実践に基づき解説していきます。

第24回は、「顧客管理」の「データ活用」の続きと「データ項目」を解説します。

シリーズ一覧は、記事下部をご覧ください
ダイレクトマーケティング実践講座全体概要

<ダイレクトマーケティング実践講座 講師>

nakamura中村 光輝 
(株)クロスエム 代表取締役
通販会社にて18年間、CRMを中心にマーケティング業務に従事。その後、2014年に独立。主に化粧品や健康食品などのダイレク ト事業を対象に、CRMのプランニングやマーケティング戦略の立案、顧客分析などをサポート。特に、ロイヤル顧客を軸とした戦略・施策のコンサルティングを多数手掛ける。

 

orihashi折橋 雄一 
(株)大広 顧客価値開発本部 顧客育成局 マネジメントリーダー
メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」を開発。

 

折橋
さて、これまで見てきたデータ分析をどうやって施策に活かし、検証をしていくのか、いわゆるPDCAというところの話に入りたいと思います。

データ分析を最大限に活用するためにも、施策対象となる顧客のセグメンテーションというものが非常に重要になってきますね。

中村
はい。データ分析を活用し、効果的な施策を立案・実行するためには、顧客を正確に分類するセグメンテーションが重要です。クロスセルなどの施策も、適切な顧客セグメントに対して行うことで精度が向上します。さらに施策精度を高めるためにも、商品同梱などのマスター設定やコンタクトセンターでの情報反映といった連携を最適化することも重要です。

このようにデータ分析を生かすための業務が顧客管理ではいくつか発生します。

データ分析から始まり、それを基にして施策立案、そして実行し、データを検証する。このプロセスをワンストップで、且つスピーディに行っていくことがとても重要になってきます。顧客課題や施策意図が深く共有されず、それがバラバラに進んでしまうと適切な集計分析、施策検証にはならないので、実際にきちんとつながっていること、マスター設定も含めて一気通貫で動いていくことが必要です。

折橋
データ分析を踏まえて、ターゲットをなるべく正確に特定すること、そしてその特定顧客に対して有効な施策を実行することがCRM施策の精度に関わってくるということですね。

DM24-01分析

 

ターゲット顧客の特徴によるセグメンテーションで施策の精度は上がる

折橋
下の図をご覧ください。
施策の精度を高めるには、ターゲットセグメンテーションが非常に重要です。ダイレクトビジネスは特定顧客に焦点を当てたビジネスモデルであるため、施策の精度を高めるためには、ターゲット顧客の特徴を細かく理解することが不可欠です。これにより、ターゲットの条件を具体的に設定でき、顧客の購買行動の特徴を把握した上で、ストーリー性のある一連の施策を展開することが可能になります。

DM24-02ターゲットセグメンテーション

中村
左からデータ分析を通じて、まず顧客の実態を把握します。顧客のデータ分析からメインターゲットやサブターゲットの購買行動特徴や課題を明らかにする。顧客全体ではなくて、その中でもこういった顧客のこういう行動に特徴がある、だからメインターゲットをこう置きましょうと考え、設定していくことがダイレクトビジネスにおいては特に重要です。

 そのうえで、施策を立案するにあたり重要なのは、分析から抽出した課題を解決するための具体的な施策の策定です。また、メインターゲットやサブターゲットの条件を施策実行時の条件設定にどう落とし込むかが鍵となります。

多くの企業が理想的なシステム環境を持たず、DMの対象抽出は可能でも商品同梱の詳細な設定は難しい現実があります。そのため、対象顧客設定における連携は非常に重要です。

そうして初めて、DMリストの抽出から発送し、実際に顧客が購入し、さらにその購入した商品にチラシを同梱し、アウトバウンドリストを抽出してフォローコールをかけるといった一連の流れをスムーズに進めることができます。

折橋
アウトバウンド時にも、オペレーターの画面上で、顧客が受け取ったDMやチラシの情報を把握し、それに基づいたスクリプトで適切に対話することが重要ですよね。顧客が納得するトークができれば、クロスセルやリピート購入へと繋がる可能性が高まります。ターゲット顧客をできるだけ正確に特定し、その顧客に対してワンストップで施策を実行することが、効果的なCRM施策になりますね。

中村
施策立案においては、セグメント内容をどれだけ正確に条件設定できるかが施策の精度を左右します。そのためには、顧客に関する様々な要素をデータ項目として整理しておく必要があります。つまり、購買行動などの特徴をデータとして項目化し、それを活用しやすいデータに一次加工して蓄積することが次の課題になってきます。

データを項目で管理することでCRMの精度は高まる

折橋
「データ項目」という話に移りたいと思います。

データ項目に関しては、CRMや顧客管理におけるデータベースの話になりますが、主にどのようなデータを扱うかについて話を進めたいと思います。

中村
こちらの図をご覧ください。

DM24-03データ項目の種類

真ん中に顧客の基本情報、いわゆる「顧客マスタ」を置いています。ビジネスにおける特定顧客を扱う際、顧客番号は全てのキーコードとなります。ただし、顧客基本情報だけでは顧客分析には不十分です。そこで、左側の購買履歴とつなげる。さらに商品情報と商品番号で紐づけることで、RFMIRecency, Frequency, Monetary,Item)分析などが可能になり、顧客がいつどのような商品をどれくらい購入したかを把握できるようになります。

一方で、それを今度は、ブランド側からのアクションやその施策の適正化の観点で見ようとすると、右の顧客ランク(ポイントシステムがあれば顧客ごとのポイント情報)や、プロモーション情報(メールやDMをどのくらい送っているかなど )を紐づけて見ることになります。さらには、ブランドからのアクションに対する顧客の態度を見ようとすると、顧客からの問い合わせやお客様の声といった情報など、コンタクト履歴も重要になります。

これらのデータを適切に項目化し、管理することがCRMの精度を高める鍵となります。正確なデータ項目の設定とデータベースの設計が、分析と施策の成功に不可欠です。

そして、CRMのクオリティが上がらない要因の1つが、これらのデータ運用における維持管理の難しさです。一度設計したデータ項目ではあっても、新しい商品カテゴリが追加されたり、新たな販促施策や媒体が追加されたりすることがあります。また市場環境の影響も含めて、顧客の意識や購買行動は変化します。これらの背景から、データ項目や分類体系、またその集計データのしきい値など、分析や施策に的確に活用しようとすると、多少なりともチューニングは不可欠です。このようなデータベースの最適化という課題をマーケティング施策への連動という知見を踏まえて運用できることがダイレクトビジネスにおいては重要です。

折橋
適切な答えを導き出すために、いろいろな必要データ項目を正しく設定する。そういったデータ項目化をして、活用しやすいようにデータを一次加工しておかないと分析の精度も上がらないし、施策にも生かせないということですね。

データの「インテリジェンス化」で次のアクションが見えてくる

中村
ウェブ時代に入りデータを多く得られる企業は増えましたが、そのデータを有効活用し、分析や施策に反映させることができている企業はまだ多くありません。データには段階があり、初期段階の「ローデータ」を蓄積するだけでは、分析や施策への応用は困難です。

ローデータ、つまり初期段階の加工されていない状態でデータを蓄積しても、それを分析し施策に繋げるのは難しいです。

データ分析には一般的に3段階があり、1段階目はこのローデータの状態ですが、この状態のデータを見てもどのように解釈したらよいのか、分析の使い道を判断するのは難しいです。

それを2段階目の「インフォメーション」化、データを集計しやすく加工して、簡易な意味が分かる状態にしたデータにします。例えば、ある数字が前年と比較して低い、特定の商品が他の商品と比べてどれほど高いかなど、基本的な評価が行えるようになります。
ただ、2段階目のデータでも、次に取るべきアクションがまだ具体的には判断がつかず、その重要度はわからない状態です。「見ればわかるけど、具体的にはどうしたらいいの?」といった状態で、データを持つ多くの企業がこの段階にあるのではないでしょうか。

そこで、3段階目の「インテリジェンス」化です。集計や分析の結果を基に、次の具体的なアクションに結び付く知見がわかる状態のデータです。例えば、前年から悪かったのはこのセグメントの顧客のこういう要素が%低かったからというように、客観的にファクトをもって仮説に結び付けられるまでの状態にする。そうすることで、売上が悪かったのは、この要素が□%低迷したことによるところが大きく、いくつかある課題の中でも着手するべき優先順位が高いといった判断ができます。さらに、その要素からドリルダウン(1つの概要要素から関連する複数の詳細要素に展開すること)ができるようにしておけば、課題を具体化することができ、改善策へと具体的に反映できるようになります。

データをインテリジェンス化しやすい形でデータベースに蓄積する、そして常にデータの利用者がストレスなく分析しやすい環境を整えることが、ダイレクトビジネスをスピーディに推進するためには重要です。

DM24-04データの3段階

中村
顧客分析の基本となるRFMですが、実際には一人の顧客において様々なRFM値が存在します。

図をご覧ください。
顧客Aさんが化粧品A10回購入し継続中で、最近は化粧品Bを試しに1回購入したが、それ以上は続いていない状況です。また、健康食品は過去に5回購入したものの、最近は購入が止まっており休眠状態にある。健康食品は化粧品とは別に注文していた、そんな実態があるとします。

顧客Aさんの購買データを分析すると、会社全体の商品を合わせた場合のRF値では、顧客Aさんはアクティブな状態で、累計購入回数は15回です。しかし、化粧品のみを見た場合、最近の購入がありアクティブで、累計購入回数は10回です。一方で健康食品だけを見ると、最近の購入がなく休眠状態で、累計購入回数は5回です。さらに商品ごとに分けて見ると、それぞれの最近の購入状況(Recency)と購入回数(Frequency)が異なります。このように、いろいろな階層によって、RFM値が存在することになります。

DM24-05分析データの蓄積

中村
顧客をより深く把握するということは、多様な切り口で一人の顧客をさまざまに評価できる必要があります。

先ほどの例で言えば、顧客Aさんはブランドから累計15回購入しているリピーターですが、化粧品Bはまだ初回購入したばかりなのでF2転換させるための施策が必要です。また健康食品は商品Cを5回購入した後、購入がなく、休眠活性施策を行いたいところです。つまり、顧客Aさんに対して、リピーター対象のクロスセル施策と、化粧品BF2転換施策、また健康食品Cの休眠活性施策を同時期に行う可能性があるということです。場合によっては、クロスセル、F2転換、休眠活性の3つの施策で、それぞれ異なる商品を、異なるオファー施策で訴求する可能性もあり得ます。このような状況では、顧客Aさんはどの商品を買えばいいのか、またどのオファーでも使用できるのか、迷ってしまいます。ブランドからの提案やメッセージが一本化されておらず、このブランドに対する顧客Aさんのロイヤルティは上がらないでしょう。その結果、ロイヤル顧客化が進まないということになります。

またそれぞれの施策の観点で見ても、化粧品BF2転換施策の際、化粧品Aをすでに15回しているので、あらためてブランドの紹介をする必要はありませんし、それより化粧品Aと併用するメリットを訴求したいところです。また健康食品Cに関する施策では、化粧品Aを購入した際に商品同梱で休眠活性チラシを入れるのがいいか、あえて別途DMで訴求したほうがいいか、テストをしてもよいかもしれません。

このように個々の商品施策を行う際も、対象顧客に関するいろいろなRFM情報を駆使することが、その施策精度を高めることになり、ひいてはロイヤル顧客化につながるということです。

分析のレベルが高まるにつれて、基本的なRFM値を都度集計するだけではなく、あらかじめ一次集計されたデータを基礎データとして集計分析できることが重要です。

私が以前勤めていた会社では、一人の顧客に対して常時3040個のRFM値を保持していました。そうした基礎データをインテリジェンス化したデータとして保持することで、それぞれの施策担当者が、分析の精度を高めると共に、施策への迅速且つ的確な反映に繋がります。

折橋
次回は、いよいよこの連載の最終回になります。ダイレクトマーケティングにおける「フルフィル・顧客管理」の「顧客管理」の「顧客データベース」と「顧客管理の運用」について解説します。 

ダイレクトマーケティング実践講座講師の中村・折橋へのご質問やご相談は、こちらへお寄せください。

「ダイレクトマーケティング実践講座」シリーズ一覧
ダイレクトマーケティング実践講座〈第1回〉「ターゲット」を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第2回〉コンセプトづくりのコツ
ダイレクトマーケティング実践講座〈第3回〉 「事業モデル」で戦略が異なる
ダイレクトマーケティング実践講座〈第4回〉「商品企画」における重要ポイント
ダイレクトマーケティング実践講座〈第5回〉安定した利益を生み出す「価格」設定とは?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第6回〉ロイヤル顧客を生みだすための「チャネル」「販促」の考え方
ダイレクトマーケティング実践講座〈第7回〉「顧客戦略」は顧客ステージで変える
ダイレクトマーケティング実践講座〈第8回〉戦略のベースとなる5つの「顧客ステージ」とその特徴
ダイレクトマーケティング実践講座〈第9回〉収益化はロイヤル顧客がカギを握る
ダイレクトマーケティング実践講座〈第10回〉顧客獲得に向けた商品選定と戦略思考
ダイレクトマーケティング実践講座〈第11回〉最初のハードル「F2転換の壁」をどう乗り越えるか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第12回〉リピーターを育てるコミュニケーションの要諦
ダイレクトマーケティング実践講座〈第13回〉ブランドへの信頼を築きクロスセルに導く
ダイレクトマーケティング実践講座〈第14回〉第2のハードル「クロスセルの壁」をどう乗り越えるのか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第15回〉 徹底した顧客の理解がクロスセルを促進する
ダイレクトマーケティング実践講座〈第16回〉アップセルの成否は顧客のロイヤルティの見極めにある
ダイレクトマーケティング実践講座〈第17回〉 「ファン化の壁」を乗り越えて、ロイヤル顧客を作る!
ダイレクトマーケティング実践講座〈第18回〉 ロイヤル顧客を維持するには?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第19回〉ロイヤル顧客の育成で直面する3つの課題
ダイレクトマーケティング実践講座〈第20回〉商品配送における顧客価値を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第21回〉コンタクトセンターの「インバウンド」と「アウトバウンド」とは
ダイレクトマーケティング実践講座〈第22回〉コンタクトセンターにおける「VOCの価値」と「顧客対応品質」
ダイレクトマーケティング実践講座〈第23回〉顧客管理の基礎はデータ分析にある
ダイレクトマーケティング実践講座〈第24回〉打つべき手が見える形でデータを整理し活用する
ダイレクトマーケティング実践講座〈第25回〉CRMに欠かせない「顧客管理」、その重要な3つのポイント

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。