デジタルネイティブと呼ばれ、オンラインでの購買や情報収集が当たり前のZ世代。これから消費の中心となる彼らの実態や変化の早さに、戸惑う方も多いのではないでしょうか?
大広の若者研究所D’Zlab.では、Z世代の「ぶっちゃけ」なホンネを様々な切り口で研究し、マーケティングや広告、広報施策におけるアプローチの最適化、また彼らを巻き込んだ施策を検討・実施しています。
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Z世代の「ホンネ」から、未来潮流を読み解く〈第1回〉恋愛事情編
「Z世代のファッション事情」の実態を探ってみたら何が見えるか?!
物心ついた中高生の時期には一人一台スマホが当たり前、学生時代にはTwitterやInstagram、TikTokなどのSNSが次々に誕生する環境で育ったZ世代。10代~20代前半にコロナ禍を経験した彼らのファッション事情は一体どうなっているのでしょうか。 今回は、自身もZ世代である筆者が、現役大学生に“ぶっちゃけのホンネを”聞き、ファッションアイテムの選び方や購入時のこだわりポイントに垣間見える価値観を探索してみました。
Z世代にとって、リアル店舗は「確認」の場
自分で服を買うようになった頃には、ZOZOTOWNなどファッション系ECサイトが当たり前に存在していたZ世代。オンラインでの買い物への抵抗は少なく、単価の低いアクセサリー小物から福袋までオンラインで購入することが当たり前のようです。特に“オンラインで購入するまで”のプロセスにZ世代らしさが現れていました。
【Z世代のオンラインで購入するまでのプロセス】
オフラインの店舗とオンラインの情報をうまく活用し、ベストなものをお得なタイミングで購入する、お買い物上手なZ世代ですが、もうひとつ特徴的なことがあります。実は、オンラインにしか店舗のない新ブランドを気軽に購入することも多いのです。オンラインとかオフラインとか関係なく、自分が好きなもの、似合うものを探し求め、購入するのです。オンラインとオフラインを境目なく行き来し、立体的な情報収集をした上で選択・購入する買い物行動は、Z世代ならではの「リアルな感覚」です。
SNSへの投稿はシェアではなく自分用?!
「Z世代って何でもかんでもSNSにアップしてシェアするでしょ!」と思っている方も多いと思います。きっと今この記事を読んでいる、昭和生まれの皆さんよりははるかにシェアしていますが、彼らに聞いてみると実は意外とシェアしていないらしいのです。というより、「(したい気持ちはあるけど…)できない」がホンネであることがわかってきました。
彼らが言うには、インスタグラム のタイムライン投稿などはインスタグラマーの投稿のように“完成度の高い”画像を載せたいのだそうです。SNSに“残る”から。
例えば服を載せるなら
- ちゃんと綺麗な背景の場所で
- 自撮りではなく“他撮り”された全身写真で
- ポーズがキマっていて
- しっかり加工調整して
…と理想は高め。納得いかない投稿が残るのは嫌だから気軽に投稿できず、結局投稿しなくなってしまうというわけです。
では、Z世代は、どのようにSNS投稿を活用しているのでしょうか?
リアルな実情は、友人などにシェアするのではなく“自分用の記録”として投稿後すぐにアーカイブすることでSNSを活用しているようです。
たとえば、
- SNSに投稿した!という満足感は欲しいから投稿はする。けれど人には見せない。
- 買い物時、手持ちの服とのコーディネートを考えるための、自分だけの「オンラインクローゼット」として投稿する。
- 友達と遊ぶとき、前と同じ服を着てしまわないように(=同じ服の写真にならないように)「自分用アルバム投稿」をする。
といった活用の仕方をしています。
ファッションの話から少し脱線しますが、Z世代である筆者自身のTwitterの使い方についても驚かれたことがあります。私はフォロー・フォロワーゼロの完全閉鎖鍵アカウントをつくり、そこに思ったことを書き出すことで気持ちを整理したり、覚えておきたい瞬間の写真を投稿して備忘録として活用しています。
Z世代以外の世代には、「シェアしないSNSの使い方」は珍しく映るようですが、Z世代にとっては当たり前のことかもしれません。
時系列に保存され、位置情報や関連アカウントのタグ付けができるSNS。情報をうまく整理したり、保存・管理するために活用するのがZ世代のリアルです。(デジタルネイティブな世代は常識を超えて独自の活用法を生み出していくってことですね…!)
“コロナ世代”ならでは!マスクもファッションアイテムに
Z世代と話していてふと気になったのがマスク。前面と紐部分でバイカラーになっているものなど色とりどり、形も様々。「マスクってどうやって選んでる?」と聞いてみると、そのこだわりの強さに驚きました。みんなもれなくお気に入りのメーカーがあったりします。
「自分に似合うか」「ぴったりかどうか」がマスクを選ぶ基準になっているとのこと。「私はこの色のマスクだと顔色がよく見える」「私の顔の形だと、このマスクを選ぶと横顔が綺麗」など、彼らは“自分のベストマスク”を把握しています。服装やメイクの雰囲気に合わせて色を変えたりもするそう。
いちばん驚いたのは、サイズ選び。自分にとってのジャストサイズをmm単位で把握しているのです。「ちゃんと顔にフィットして、小顔に見えるか」がポイントだそうで、サイズを条件にネットで探す人もいます。
おしゃれに目覚める高校~大学時代にマスクをつける時間が長かったZ世代にとって、マスクはもはやファッションアイテムになっています。(Z世代なのに、コスパ重視で薬局の白マスクを買っていた私はかなりショックを受け、その日のうちに色のついた立体マスクを買いに行きました…)
Z世代らしさがギュッと詰まった「診断」文化
Z世代とファッションやメイクの話をしていると、骨格や顔などの診断の話題がでてきます。体格や肌・瞳の色、顔のパーツの形や配置などをもとに診断、ひとりひとりに似合う「服の形状」「色づかい」「雰囲気」を提示してくれるというもので、SNSや様々なサイトで簡単な自己診断方法も紹介されています。
「自分にピッタリなものを選びたい」というZ世代の価値観ともマッチしており、彼らはもれなくと言っていいほど診断してもらっていて、自分がどういうタイプなのかを知っています。SNSで紹介される服やコスメ情報にも「○○タイプ、必見!着痩せするコーディネート」など、どのタイプの人におすすめなのか記載があります。
この「診断」ブームの背景には、3つのZ世代らしさがあるのではないか?と思っています。
① オンラインでのショッピングが当たり前
実店舗がないブランドでの購入やオンライン情報だけで購入を決めることが多いZ世代。どんなアイテムが自分に似合うのか、だれを参考にしたら間違いがないか、を見定めるために、精度の高い情報を集める必要があります。
② コスパ・タイパ思考
費用対効果のコスパに加え、タイパ=タイムパフォーマンスを重視するZ世代。限られたお金と時間を、自分にとっていちばん価値のあるように使いたいというインサイトを持っています。 買ってみたけどなんだか似合わなくて箪笥の肥やしになってしまうことを避けたいのはもちろん、膨大なアイテムや情報の中から、自分にとってベストなアイテムを効率よく見つけたい!そんなZ世代のインサイトを「診断」は満たしてくれます。
③ 青春時代のコロナ禍
「診断」関連のワードを検索数で見てみると、コロナ禍で緊急事態宣言が出た後の2020年5月ごろから検索件数が増加しています。当時のZ世代は高校~大学生で、自分で服を買い始める時期にコロナが直撃。店舗で実物を見て決めたり、コーディネートを考えたりできる機会が少なかったはず。だから、着てみなくても似合うかわかる診断がブームになったのではないでしょうか。
出典:ヤフー・データソリューション DS.INSIGHT
D’Zlab.について
大広は、2018年6月16日付けで立ち上がった「次世代ロールモデル研究プロジェクト」を前身とした新たな若者研究プロジェクトとして、大広Z世代研究所「D’Z lab.」を発足しました。多様性・個性というキーワードを通じて語られることの多いZ世代について、彼らを一括りの世代として捉えて語るのではなく、多様な価値観・個性をより深く捉えていきたいという意思のもと、活動テーマの幅をさらに広げ、エリア別という視点を軸としてZ世代の価値観・個性を研究していくプロジェクトとして活動しております。Z世代にまつわる調査やセミナー、D‘Z lab.独自のネットワークを活用した企業との共同活動等を実施しています。
まとめ
世代間で価値観や意識の違いが生まれ、社会は常に変化しています。今回は「ファッション事情」からZ世代の特徴的な行動や意識、価値観を探索し、彼らのホンネに迫りました。
今後、消費のボリュームゾーンとなり、未来社会の舵を取っていくことになるZ世代。彼らを知り、よりよいコミュニケーションをとっていくことは、ビジネスにとってこれまで以上に大切な課題であるはずです。
大広のD’Zlab.では、Z世代と企業をつなぐため、Z世代とともによりよい社会をつくっていくために、これからも最新のリアルなホンネを追い続け、分析していきます。
この記事の著者
井口 桃花
株式会社 大広 大阪ブランドアクティベーションプロデュース本部第2プロデュース局 「若者研究所 D’Zlab」研究員