Z世代とは、1990年代後半から2000年代前半に生まれた世代のことで「デジタルネイティブ世代」とも呼ばれます。今回の記事では、Z世代の定義や価値観の特徴、他世代との違いを押さえたうえで、これらがZ世代の活動にどのような影響をもたらすか、Z世代に行うべきマーケティングとは何かについて解説していきます。
Z世代の定義
Z世代とは、1990年代後半から2000年代前半に生まれた世代の総称であり、海外では「Generation Z」、国内では「脱ゆとり世代、デジタルネイティブ世代」とも呼ばれます。出生年に明確な定義はありませんが、一般的に1997~2012年頃であるとされ、2010年代半ば以降に生まれたα世代に次いで、現時点で2番目に若いとされる世代です。
世界的に見れば、2001年に発生したアメリカ同時多発テロ事件や、2008年に起こったリーマン・ショック、2019年以降の新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行といった、世界情勢の停滞・不安定化の影響を受けている世代といえるでしょう。
また、国内のZ世代に目を向ければ、いわゆる「ゆとり教育」を脱した「ポストゆとり世代」であり、長期的な不景気が続く「失われた30年」を生きる世代といえます。
Z世代の特徴
Z世代の人々は、他世代の人々と比べると、現実主義・悲観主義的な思考をしやすく、将来へのリスク認識が高いと考えられています。加えて、モノや財産の豊かさよりも、生活の質や心の充足感、コミュニティや自身を取り巻く環境といった質的側面を重視する、ポスト物質主義的価値観も持ち合わせる点が特徴です。
世界経済の停滞や世界的なパンデミック、環境変動や相次ぐ武力紛争・戦争を目の当たりにしていることで、将来に対する不確実性を感じ、保守的な行動を選択するようになったのがその理由と考えられています。
また、インターネット環境の普及による情報過多社会のなかで、幼い頃から多様な価値観や情報に触れる・啓発される機会が多いことから、多様性に対して寛容であるとされます。
これらの考え方が表れやすい場面の例は以下の2点です。順番に見ていきましょう。
- 消費活動
- 情報収集・発信
消費活動
Z世代は、消費活動についても保守意識が強く、コストパフォーマンスを重視するのはもちろん、レビューや口コミなどインターネット上でほかの消費者の評価を収集し、慎重な選択をする傾向にあります。
また、シェアリングサービスの利用やサブスクリプションサービスへの加入など、実際的な「モノ」の所有よりも、コト(娯楽や経験そのもの)を重視する点も特徴です。
一方で、インターネット環境が普及し、同じ価値観や趣味嗜好を共有するコミュニティが形成しやすくなったため、自分の興味関心のある事柄には消費が活発になる傾向もあります。
ほかに、動画を倍速で視聴する、数十秒~数分程度の短い動画を好むといった、時間当たりの質的な充足度(タイパ:タイムパフォーマンス)を重視しやすいというのも、Z世代独自の特性です。
情報収集・発信
Z世代は生まれたときからインターネットやソーシャルメディアに触れていることから、デジタルツールを駆使して欲しい情報を見つけたり、主張したいことを効率よく発信したりする能力が高いと考えられます。
お店探しはInstagram、ニュース速報はX(旧Twitter)、自習はYouTubeというように、手に入れたい情報の種類や、発信したい内容に合わせてソーシャルメディアツールを使い分けるスキルを持ち合わせています。
Z世代と他世代との前後関係
アルファベットで区別されている年代には、X・Y・Z世代があり、XからZへ進むにつれ年代が新しくなり、Z世代の次の世代はα世代と呼ばれています。X世代は1965~1980年、Y世代は1981~1996年、α世代は2010~2025年頃に生まれている世代とされるのが一般的です。
これらは海外諸国でも共通の通称であるのに対して、「バブル世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」など、以下の表のように日本国内での出来事をもとに名付けられた世代区分も存在します。
Z世代と他世代との前後関係
上の表で注意すべき点は、日本の世代区分は生まれた年ではなく、過去の出来事に基づいており、その影響を最も受けた世代に後から付けられているということです。たとえば、バブル世代はバブル期に生まれた世代ではなく、バブル期に就職活動をした世代であり、ゆとり世代はゆとり教育が始まった年に生まれた世代ではなく、その時期に学校で教育を受けた世代となります。
Z世代と他世代との違い
具体的に、Z世代と他世代ではどのような点が異なるのでしょうか?ここからは、X・Y・α世代それぞれとZ世代を比較し、その違いを見ていきましょう。
X世代との違い
X世代はZ世代の親世代にあたり、アナログ社会からデジタル社会への遷移を最も強く体験している世代です。
保守的・自律的であることが特徴で、仕事での成功を重要視する傾向にあると考えられています。その背景には、不遇時代への不安感情から、安定した生活を望んでいることが理由に挙げられます。
X世代の後半は、バブル崩壊後の慢性的な不景気の時代に生まれ、核家族化の進行や親が共働きをする家庭環境を経て、就職氷河期の経済的な厳しさを経験した世代です。不安定な給与支給や雇用を避けるため、プライベートの充実よりも仕事での成功と安定を求める意識が強いと考えられるのです。
また、Z世代との最大の違いは、情報収集の手段にあります。以下のグラフのように、Z世代がインターネット上のソーシャルメディアやSNSで情報収集するのに対し、X世代はテレビやアナログ媒体が多いといえます。※1
各世代の情報収集手段
Y世代との違い
Y世代(ミレニアル世代)は、α世代の親世代にあたります。生まれたときからデジタル社会で育っているため、デジタル技術を理解し、使いこなしている世代です。現在のデジタル社会を担う世代でもあり、InstagramやFacebook、TikTokといった媒体の創設者・開発者はいずれもこの世代に生まれています。
また、Y世代は2001年に起きた同時多発テロ事件、2008年のリーマン・ショック事件、2011年の東日本大震災など数多くの社会問題を、中高生~20代後半頃に経験している世代です。そのため、社会問題に敏感で、解決に向けて主体的に貢献したいという意識が強いとされています。
Y世代のZ世代との違いは、仕事や消費において「意義」や「社会貢献」を重視する傾向が強いことでしょう。不確実で複雑な社会を生き、それらへの問題意識が高いからこそ表れる特徴といえそうです。
α世代との違い
α世代は、Z世代よりもさらに進んだデジタル教育を受けている点が特徴です。新型コロナウイルスの流行により、リモートでのオンライン授業をはじめとしたオンライン上でのコミュニケーションに問題なく対応している世代でもあります。
Z世代との大きな違いはありませんが、親がY世代にあたることから、家庭内でのデジタルへの理解度や活用度の高さという点では、Z世代よりもさらに上を行っていると考えられるでしょう。
Z世代に行うべきマーケティングとは
Z世代に行うマーケティングを考えるときは、Z世代の特徴を押さえなければなりません。Z世代に効果が期待できるマーケティングには、主に以下の3つが挙げられます。
- SNSマーケティング
- 体験型コンテンツ
- インフルエンサーマーケティング
SNSマーケティング
SNSマーケティングとは、SNSでの広告出稿や企業アカウントの運営などにより、SNSを利用している人に情報を発信することです。SNSが持つ拡散力も相まって、日頃からSNSを活用するZ世代の目に留まりやすい点がメリットといえるでしょう。
企業アカウントの運営であれば一般的に無料で始められる場合も多く、コストパフォーマンスに優れている点も魅力的といえます。
体験型コンテンツ
Z世代の主な情報収集手段はSNSやインターネットではあるものの、そこで単に商品の概要や魅力を投稿するだけでは、マーケティングとしては不十分でしょう。
動画で商品を紹介したり、ライブ配信等でスタッフが商品の詳細を伝えつつ質疑応答に答える場面を設けたりなど、静止画だけでなく、より商品のイメージが付きやすい体験を提供することが大切です。
また、実際に顧客が商品を手に取ってオフラインでの商品体験ができるポップアップショップの出店や、実際に現地へ足を運ぶからこそ体験できるイベントを提供することで、企業への親近感と特別感を抱かせることができます。
ネット上で好みの衣服を探し、実店舗で確認してから購入するといったように、Z世代はオンラインとオフラインをうまく使い分けながら購買活動を行う傾向があります。従って、このような体験型コンテンツの提供は、購入へのイメージを具体化させる効果的な施策であるといえるでしょう。
●Z世代のファッションにおける情報収集事情について、詳しくはこちら
Z世代の「ホンネ」から、未来潮流を読み解く〈第2回〉ファッション編
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、SNSやYouTube、TikTokなどのフォロワー数が多く、あるコミュニティ内での支持を集めているインフルエンサーに商品を紹介してもらうことです。
インフルエンサーに商品を紹介してもらうメリットは、企業よりも消費者との距離が近いことにあります。コミュニティ内や消費者レビューでの情報を活用しながら商品を品定めするZ世代にとって、効果が期待できる施策といえるでしょう。
このように、Z世代とのコミュニケーションは、いかにデジタルデバイスでの体験の質を高めるかが重要といえます。
また、Z世代のSNS利用は、勉強しながら、家事を手伝いながら、移動しながらといった「ながら利用」が主であることも踏まえ、見てもらいやすいシーンを考慮することもポイントです。
●Z世代の「ながら行動」分析によるコンテンツ設計の考え方について、詳しくはこちら
Z世代の「ながら行動」にコンテンツ設計のツボがある!
まとめ
これまで、Z世代の定義や特徴、他世代との違いについて解説してきました。デジタルに慣れ親しみ、これからの消費活動を担う世代だからこそ、彼らの特徴や行動意識は、企業にとってもより意識すべき重要な情報といえます。ご紹介した内容を参考に、Z世代とのコミュニケーション状況を振り返ってみてはいかがでしょうか。
※1出典:「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書<概要>」、総務省情報通信政策研究所
https://www.soumu.go.jp/main_content/000887659.pdf
(最終確認:2024年4月1日)