COCAMPコラムの中でも特に人気のテーマである「ダイレクトマーケティング」。この連載コラム「ダイレクトマーケティング実践講座」では、大広と協働し、様々なクライアントのダイレクトマーケティングやCRMを実行する株式会社クロスエムの中村光輝氏とともに、ダイレクトマーケティングで重要な「事業戦略」「顧客戦略・顧客獲得」「顧客育成」「フルフィル・顧客管理」の4つの領域について、現場の実践に基づき解説していきます。
(図表)ダイレクトマーケティング実践講座の全体概要
第2回は、ダイレクトマーケティングにおける「事業戦略」の「ターゲット」の続きから、「ブランドコンセプト」について解説します。
シリーズ一覧は、記事下部をご覧ください
ロイヤル顧客が共感するブランドコンセプトを作る
中村
ターゲットセグメントのもう一つの重要な視点というのが、ブランドコンセプトの作り方です。
ダイレクトビジネスで単品リピートを行う企業は多いですが、ブランドのコンセプトが曖昧で伝え方が不十分な場合があります。
しかし、そのブランドのロイヤル顧客はブランドコンセプトに共感していることが多いです。逆に言うと、共感しないとロイヤル顧客になりづらいと言えます。
そのため、ブランドコンセプトをしっかりと作り上げることが重要であり、その際にターゲティングの視点を考慮することが非常に大切です。
折橋
ブランドコンセプトは、企業の視点だけで作ってしまうのが、悪い作り方ということになると思います。
通販会社のダイレクトマーケティングにおいては、ブランドコンセプトをお客様に直接的に届け、共感を得ることが非常に重要だということですよね。良いブランドコンセプトを作るには、「お客様」の視点を取り入れないといけない。
中村
そうです。私も以前、通販会社で働いていた際、お客様と一緒にブランドコンセプトを作り上げた経験がありますが、このとき、お客様の反応が非常に良かったですね。ロイヤル顧客の意見や声を取り入れ、お客様の視点を大切にすることで、よりお客様に届くコンセプトになると感じました。
折橋
企業側の視点だけでなく、特に自社のコアターゲットであるロイヤル顧客の視点を取り入れ、ブランドコンセプトを作り上げることが、共感を得られやすく、表現も含めて素晴らしいコンセプト作りにつながるわけですね。
(図表)ブランドコンセプトは顧客視点も入れることが重要
ブランドのこだわりやブランドストーリーという視点でコンセプトを言語化する
中村
コンセプト作りにおいては、ブランドのこだわりやストーリーという視点が重要です。
ブランドのこだわりについては、ターゲットのインサイトに合わせて自社の強みを提供することが大切。
また、ブランドストーリーについては、コアターゲットやロイヤル顧客に対する想いやブランドのこだわりをストーリー化することで、共感を得られやすくなります。
折橋
ブランドストーリーを作り上げ、お客様にきちんと届けている通販会社は結構ありますよね。「お客様にきちんと届ける」ということが、ロイヤル顧客を作る上でも非常に重要だと思います。
中村
はい。
新規顧客やライトユーザーの段階では、ブランドストーリーはちょっと重い印象を与えることもあります。しかし、ロイヤル顧客に近づくにつれて、より納得感を求めていますし、愛着を感じているブランドが本当に素晴らしいブランドだったんだなと再認識するためにも、ブランドストーリーはあったほうがより共感しやすいものになると思います。
こういったブランドのこだわり、ブランドストーリーを踏まえて、よりシンプルな表現で、お客様にきちんと届くように言語化をすることで、ブランドコンセプトを作っていけるといいですよね。
折橋
そう、ロイヤル顧客が共感できる表現にできるかが重要ですよね。そのブランドが大好き、という感情につながるコンセプトを作り上げられたら素晴らしいです。ロイヤル顧客がしっかりブランドコンセプトを認識してくれるようになる。
そうなると、口コミもどんどん拡散していきますので、コンセプト作りは非常に重要ですよね。
中村
そうです。繰り返しますが、ロイヤル顧客が共感できる表現を用いることが重要です。
ちなみに、ちょっと違う視点でいきますと、このブランドコンセプトに共感する人数、顧客数というのが、結局はその事業の最終的には売り上げの規模感の目安になってくると思います。私の経験則なんですが、売上の規模というのは、アクティブ顧客数より、ロイヤル顧客数のほうが関連性が強いと思います。そういう意味では、事業戦略の立案時点でブランドコンセプトが共感できるものに設計できるとよいですね。
折橋
アクティブ顧客数ではなく、ロイヤル顧客数が売上げの規模と相関しているということは、それだけ熱心にブランドを購買し、応援してくれているからですよね。
ロイヤル顧客は、リピート購入を繰り返し、口コミで新規の顧客を紹介してくれます。なぜなら、ブランドストーリーに共感し、ブランドに深い信頼を持っているから。競合他社に流れる可能性も低い。だからこそ、ロイヤル顧客を増やすことは、長期的なビジネス成功に欠かせない要素となるわけですね。
(図表)ブランドコンセプトの作り方
まとめ
ブランドコンセプトが曖昧で伝え方が不十分だと、顧客はロイヤル化しません。ブランドコンセプト作りは、ターゲットセグメントにも関係する重要なポイントです。
- ブランドのこだわり、ブランドストーリーを踏まえて、よりシンプルな表現で、お客様にきちんと届くようにコンセプトを言語化します。
- ロイヤル顧客が共感できる表現であることも重要です。
次回は、ダイレクトマーケティングにおける「事業戦略」のなかの「事業モデル」について解説します。
<ダイレクトマーケティング実践講座 講師>
中村 光輝
(株)クロスエム 代表取締役
通販会社にて18年間、CRMを中心にマーケティング業務に従事。その後、2014年に独立。主に化粧品や健康食品などのダイレクト事業を対象に、CRMのプランニングやマーケティング戦略の立案、顧客分析などをサポート。特に、ロイヤル顧客を軸とした戦略・施策のコンサルティングを多数手掛ける。
折橋 雄一
(株)大広 顧客価値開発本部 顧客育成局 マネジメントリーダー
メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」を開発。
ダイレクトマーケティング講座〈第2回〉はいかがでしたでしょうか?COCAMPでは、これからも、みなさまの業務に役立つコンテンツを掲載してまいります。これを機会にメルマガ登録をお願いします。
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「ダイレクトマーケティング実践講座」シリーズ一覧
ダイレクトマーケティング実践講座〈第1回〉事業戦略①最も重要なターゲティング
ダイレクトマーケティング実践講座〈第2回〉事業戦略②ロイヤル顧客が共感できるブランドコンセプト
ダイレクトマーケティング実践講座〈第3回〉事業戦略③事業モデル~単品リピートとクロスセル
ダイレクトマーケティング実践講座〈第4回〉マーケティング戦略①商品企画
ダイレクトマーケティング実践講座〈第5回〉マーケティング戦略②価格
ダイレクトマーケティング実践講座〈第6回〉マーケティング戦略③チャネルと販売促進
ダイレクトマーケティング実践講座〈第7回〉顧客戦略①顧客構造と顧客ステージ
ダイレクトマーケティング実践講座〈第8回〉顧客戦略②顧客ステージごとの特徴を詳細に解説
ダイレクトマーケティング実践講座〈第9回〉顧客戦略③カスタマーシェアと収益化
ダイレクトマーケティング実践講座〈第10回〉顧客獲得①獲得商品は何が良い?勝ちパターンは?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第11回〉顧客獲得②F2の壁をどう乗り越えるか?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第12回〉顧客獲得③リピーター化のポイント
ダイレクトマーケティング実践講座〈第13回〉クロスセル・アップセル①クロスセル施策の順番
ダイレクトマーケティング実践講座〈第14回〉クロスセル・アップセル②クロスセル施策の課題
ダイレクトマーケティング実践講座〈第15回〉 クロスセル・アップセル③クロスセルを促進するには?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第16回〉アップセルの成否は顧客のロイヤルティの見極めにある
ダイレクトマーケティング実践講座〈第17回〉 「ファン化の壁」を乗り越えて、ロイヤル顧客を作る!
ダイレクトマーケティング実践講座〈第18回〉 ロイヤル顧客を維持するには?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第19回〉ロイヤル顧客の育成で直面する3つの課題
ダイレクトマーケティング実践講座〈第20回〉商品配送における顧客価値を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第21回〉コンタクトセンターの「インバウンド」と「アウトバウンド」とは
ダイレクトマーケティング実践講座〈第22回〉コンタクトセンターにおける「VOCの価値」と「顧客対応品質」
ダイレクトマーケティング実践講座〈第23回〉顧客管理の基礎はデータ分析にある
ダイレクトマーケティング実践講座〈第24回〉打つべき手が見える形でデータを整理し活用する
ダイレクトマーケティング実践講座〈第25回〉CRMに欠かせない「顧客管理」、その重要な3つのポイント