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2024.03.15

ダイレクトマーケティング実践講座〈第15回〉 徹底した顧客の理解がクロスセルを促進する

COCAMPコラムの中でも特に人気のテーマである「ダイレクトマーケティング」。この連載コラム「ダイレクトマーケティング実践講座」では、大広と協働し、様々なクライアントのダイレクトマーケティングやCRMを実行する株式会社クロスエムの中村光輝氏とともに、ダイレクトマーケティングで重要な「事業戦略」「顧客戦略・顧客獲得」「顧客育成」「フルフィル・顧客管理」の4つの領域について、現場の実践に基づき解説していきます。

第15回は、ダイレクトマーケティングにおける③「顧客育成」の「クロスセル・アップセルのポイント」から、「クロスセルの促進」について解説します。

シリーズ一覧は、記事下部をご覧ください

ダイレクトマーケティング実践講座概要の図解

<ダイレクトマーケティング実践講座 講師>

中村 光輝さんのプロフィール写真中村 光輝 
(株)クロスエム 代表取締役
通販会社にて18年間、CRMを中心にマーケティング業務に従事。その後、2014年に独立。主に化粧品や健康食品などのダイレク ト事業を対象に、CRMのプランニングやマーケティング戦略の立案、顧客分析などをサポート。特に、ロイヤル顧客を軸とした戦略・施策のコンサルティングを多数手掛ける。

 

折橋 雄一さんのプロフィール写真折橋 雄一 
(株)大広 顧客価値開発本部 顧客育成局 マネジメントリーダー
メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」を開発。

「クロスセルトライアル」、その考え方と施策例

中村
まずは、クロスセル施策の具体例を見ていきたいと思います。

クロスセルトライアル

「クロスセルトライアル」という、最初に手を伸ばしていただくための施策です。クロスセルの一般的な施策の1つが、サンプルプレゼントです。
例えば、化粧品の販売において、顧客が化粧水を購入した際に、乳液等のサンプルを無料で提供することで、新しい商品を試すきっかけを作る施策です。ターゲットとしては、化粧水をリピート購入している顧客が理想的ですが、リピート購入がまだ安定していない顧客に対しても、乳液等のサンプルをプレゼントすることで、化粧水のリピート購入を促す狙いもあります。

折橋
お届け商品に、サンプル品を同梱するという施策ですね。サンプルで実際に商品をお試しできますから、体感しやすい商品の場合は、特に有効ですね。

中村
留意点としては、このサンプルをどの程度のものにするのか、ということがあります。

クロスセル施策でサンプルを提供する際、そのサンプルの質とコストが課題です。
一般的にコストを抑えたい場合は、一回分しか使えない小さなパウチタイプのミニサンプルを選ぶことが多いですが、顧客にとってはその量では商品の使用感を十分に確認することができないかもしれませんし、魅力を感じにくいかもしれません。そのため、このようなミニサンプルの効果は限定的である可能性があります。
逆に、もう少し大きなサイズのミニボトルでサンプルを提供すると、顧客は商品をじっくり試すことができるので魅力を感じるかもしれませんが、その分コストが高くなります。

そのため、コストに見合ったレスポンスがあるのかというところのせめぎあいで、サンプルのサイズや質をどの程度にするかを検討する必要があります

折橋
サンプルプレゼントの場合、どのくらいの量をお届けするのが良いのかは、商品特性にもよりますよね。使用感の確認や、飲みやすさの確認なら少量でもいいですが、ベネフィットをある程度感じていただくには、それなりの量が必要になります。ここは目的を明確にすることが必要ですね。

中村
次に「定番セット商品」です。
例えば化粧品販売の場合、化粧水を購入している顧客に向けて、化粧水と乳液をセットにしてお得な価格で提供する施策です。このようなセット商品は、特に化粧水のリピート購入が安定している顧客にとって魅力的であり、乳液も同時に試してみようと思わせることができます。

留意点としては、化粧水と乳液の使用サイクルが異なる場合があるため、セット商品が必ずしもすべての顧客にとって便利とは限りません。CRM担当者は、顧客がセット商品をリピート購入することが望ましいのか、次回は個別に買ってもらうことを想定するのかを考える必要があります

折橋
セット商品は、それぞれのアイテムを一緒に使うといいんだな、ということを表現できるので、そういう点でもわかりやすい施策と言えますね。

中村
もう一つの施策は「限定セット商品」です。これは特定の期間や数量限定で提供されるセットで、通常よりも魅力的なオファーが含まれています。
例えば、化粧水を購入している顧客に対して、美容液をクロスセルさせたい場合、美容液や限定アイテムを加えたセットを数量限
定や期間限定で販売します。

化粧品業界では「コフレ」とも呼ばれるこのようなセットは、そのブランドの魅力を高めるための一つの方法です。

折橋
コフレは、複数商品をポーチなどに詰め合わせているものなので、お得ですし、顧客には大変人気ですよね。単なるセットというだけではなく、「期間限定」「数量限定」という希少性を高めるオファーの要素もあって、特にブランドのファン顧客は毎年楽しみにしていますね。

中村
限定セット商品は、化粧水などのリピート購入が安定しており、かつ継続回数が多い顧客向けに良い施策です。これらの顧客は、新しい商品やセットに対する認知も高まっているため、限定セットへの興味も高いと考えられます。

ただし、限定セット商品は名前の通り「限定」なので、顧客がこの商品を何度もリピート購入することは想定していません。そのため、限定セット商品を購入した後、顧客をどのようにリピート購入に繋げるかというアフターフォローが重要です。限定セット商品を購入しただけで終わらせないためには、限定セット購入後の継続購入を図る戦略をあらかじめ練っておく必要があります。

折橋
限定セットはトライアルを促進しやすく、新しい顧客を獲得するための魅力的な施策ですよね。しかし、その後の顧客の購買行動をどう継続させるかが課題です。

中村
クロスセル施策は、狙いとするターゲット顧客のセグメントによって、そのアプローチが異なるため、ターゲットに合わせた戦略を考えることが大切です。

 

ニーズを把握したアフターフォローが「クロスセルリピート」の鍵

折橋
さて、次は、「クロスセルリピート」です。クロスセルで試しに購入いただくことはできるけれども、その商品を継続して購入していただくことが難しいということでしたね。クロスセルの真の課題とも言えます。

中村
下図で説明します。

クロスセルリピート

化粧品を購入している顧客に美容液を試してもらいたい場合、まずはトライアル施策を行います。
顧客が美容液をクロスセルトライアルで買っていただいたときに、化粧水と美容液を一緒に使うメリットを説明するリーフレットを商品に同梱することで、顧客に併用の利点を理解してもらうことができます。また、そのリーフレットには、美容液を継続して購入するとお得になるというオファーも訴求し、初回のトライアル購入時からリピート購入につなげるためのインセンティブを提供します。

折橋
クロスセルリピートをしていただくためには、クロスセルトライアルの段階で、戦略的にオファーを組み立てて、継続化を促すということですね。戦略的に考えておくと。

中村
もう一つ、商品にリーフレットやチラシを同梱しても、使っているうちになくしてしまうこともあります。そこで、美容液を購入した顧客に対して、一定の日数後にダイレクトメールやeメールを送ることで、アフターフォローを行います。また、美容液を使い終わるタイミングを見計らってフォローを行い、顧客にスムーズに継続使用することを促します。

ただし、このようなフォローアップが効果的に機能するためには、顧客がどのようなニーズや目的で美容液をトライアル購入したのかを理解しておくことが大切です。顧客が商品を試す理由を把握しておくことで、カスタマイズされたコミュニケーションを提供し、それぞれの顧客のニーズに合わせたアフターフォローを行うことができます。

折橋
顧客がトライアル購入した理由を把握することですね。例えば、デイリーケアでずっと使う目的で美容液をトライアル購入したのか、季節の集中ケアをしたいという、スポット使いをしたいということで購入したのかで、使い続ける意味も変わってきますよね。

中村
そうです。送付タイミングであるとか、訴求の切り口というところを把握するためにもどんなニーズでトライアル購入したのかを把握することが重要ですね。

いずれにしても、このクロスセルリピート施策の精度を高めるためには、裏側で支えるシステムが非常に重要です。具体的には、ダイレクトビジネスにおける商品同梱の設定やサポートの柔軟性だったり、プロモーションデータをどう分析できるか、といったシステムサポートのことです。

このようなフルフィル面のお話も、今後お話していきたいと思います。

 

次回は、ダイレクトマーケティングにおける「顧客育成」の「クロスセルの促進」の続きをお話していきます。

「ダイレクトマーケティング実践講座」シリーズ一覧
ダイレクトマーケティング実践講座〈第1回〉「ターゲット」を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第2回〉コンセプトづくりのコツ
ダイレクトマーケティング実践講座〈第3回〉 「事業モデル」で戦略が異なる
ダイレクトマーケティング実践講座〈第4回〉「商品企画」における重要ポイント
ダイレクトマーケティング実践講座〈第5回〉安定した利益を生み出す「価格」設定とは?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第6回〉ロイヤル顧客を生みだすための「チャネル」「販促」の考え方
ダイレクトマーケティング実践講座〈第7回〉「顧客戦略」は顧客ステージで変える
ダイレクトマーケティング実践講座〈第8回〉戦略のベースとなる5つの「顧客ステージ」とその特徴
ダイレクトマーケティング実践講座〈第9回〉収益化はロイヤル顧客がカギを握る
ダイレクトマーケティング実践講座〈第10回〉顧客獲得に向けた商品選定と戦略思考
ダイレクトマーケティング実践講座〈第11回〉最初のハードル「F2転換の壁」をどう乗り越えるか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第12回〉リピーターを育てるコミュニケーションの要諦
ダイレクトマーケティング実践講座〈第13回〉ブランドへの信頼を築きクロスセルに導く
ダイレクトマーケティング実践講座〈第14回〉第2のハードル「クロスセルの壁」をどう乗り越えるのか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第15回〉 徹底した顧客の理解がクロスセルを促進する
ダイレクトマーケティング実践講座〈第16回〉アップセルの成否は顧客のロイヤルティの見極めにある
ダイレクトマーケティング実践講座〈第17回〉 「ファン化の壁」を乗り越えて、ロイヤル顧客を作る!
ダイレクトマーケティング実践講座〈第18回〉 ロイヤル顧客を維持するには?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第19回〉ロイヤル顧客の育成で直面する3つの課題
ダイレクトマーケティング実践講座〈第20回〉商品配送における顧客価値を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第21回〉コンタクトセンターの「インバウンド」と「アウトバウンド」とは
ダイレクトマーケティング実践講座〈第22回〉コンタクトセンターにおける「VOCの価値」と「顧客対応品質」
ダイレクトマーケティング実践講座〈第23回〉顧客管理の基礎はデータ分析にある

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。