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2024.02.26

ダイレクトマーケティング実践講座〈第11回〉最初のハードル「F2転換の壁」をどう乗り越えるか

COCAMPコラムの中でも特に人気のテーマである「ダイレクトマーケティング」。この連載コラム「ダイレクトマーケティング実践講座」では、大広と協働し、様々なクライアントのダイレクトマーケティングやCRMを実行する株式会社クロスエムの中村光輝氏とともに、ダイレクトマーケティングで重要な「事業戦略」「顧客戦略・顧客獲得」「顧客育成」「フルフィル・顧客管理」の4つの領域について、現場の実践に基づき解説していきます。

第11回は、ダイレクトマーケティングにおける「顧客戦略・顧客獲得」の「顧客獲得」から、「F2転換」について解説します。

シリーズ一覧は、記事下部をご覧ください

ダイレクトマーケティング実践講座概要の図解

<ダイレクトマーケティング実践講座 講師>

中村 光輝さんのプロフィール写真中村 光輝 
(株)クロスエム 代表取締役
通販会社にて18年間、CRMを中心にマーケティング業務に従事。その後、2014年に独立。主に化粧品や健康食品などのダイレク ト事業を対象に、CRMのプランニングやマーケティング戦略の立案、顧客分析などをサポート。特に、ロイヤル顧客を軸とした戦略・施策のコンサルティングを多数手掛ける。

 

折橋 雄一さんのプロフィール写真折橋 雄一 
(株)大広 顧客価値開発本部 顧客育成局 マネジメントリーダー
メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」を開発。

 

F2転換:初回顧客をいかに再購入させるか

折橋
難しい課題を乗り越えてなんとか初回顧客を獲得しても、多くの場合、顧客が2回目の購入に踏み切ってくれないのが現実です。新規顧客を獲得した後の最初の大きなハードルが「F2(2回目の購入)の壁」です。

中村
どの業界でも、初めて商品を購入した顧客が再び購入する確率はおよそ30%です。現在の健康食品や化粧品の業界でいうと、30%の再購入率は比較的良いとされています。業界によっては、20%以下、場合によっては10%以下というのが実状です。つまり、多くの顧客は一度購入した後、再度購入することなく離れていくというのが現実です。

初回顧客をいかに再購入させるか

折橋
お試し商品は、初回購入のハードルは低いですよね。初回購入(F1)で多くの人に商品を手に取ってもらうためには、お試しサイズやトライアルキットのような商品は、効率的に大量の顧客を獲得できます。
ただし、初回購入からF2購入への移行率はかなり低い。多くの場合、30%以下。さらに、F2までいけばその後は継続率が高く安定するというわけではありません。
F2からF3F4へとどんどん減っていきます。結果として、5回目、6回目の購入(F5F6)まで到達する顧客はほとんど残っていないというケースもあります。つまり、最初に多くの顧客を獲得できても、その後の継続状態によっては、顧客がほとんど残らないというケースもありますね。

中村
お試し商品の利用期間は短いかもしれませんが、その短い期間内で商品の価値を顧客にしっかりと伝え、本商品の購入を促すことが重要です。市場には様々な競合商品があり、広告を通じて顧客の注意を引くのは簡単ではありません。広告だけでは、自社商品の詳細をじっくりと読んで理解してもらうのは難しいでしょう。そこで、F2に移行してもらうために、お試し商品を届けた際、自社の商品価値やブランドコンセプトをじっくりと顧客に知ってもら機会が必要です

折橋
お試し商品を使ってもらう間に、いかに丁寧なアフターフォローをするのかというところがポイントにもなってくるわけですね。
自社のことを知ってもらうためのきっかけ作りとして、お試し商品を提供する。そういうふうに考えたほうがいいかもしれませんね。

中村
一方で、図の右側は、定期購入で新規顧客を獲得するパターンで、そのまま定期購入の継続を高めていくことになります。
単品定期モデル、単品リピートモデルというのが、特に通販業界で今、主流になっているのは、定期購入に誘導した方が、顧客が初期段階では非常に安定する、残存するという実績があるからです。
しかし、このモデルのデメリットは、新規顧客が初めて購入する際のハードルが高いことです。新規顧客獲得数のボリュームとしてはやっぱりお試し商品ほど高くはありません。

折橋
そして、定期購入で獲得できたとしても、2回目や3回目の購入(F2、F3)で大きく顧客数が減少してしまうなら、結局は少数の顧客しか残らず、意味がありません。
そのため、新規顧客獲得で定期購入に成功したとしても、その後の継続購入を維持するための丁寧なフォローアップとサポートが欠かせませんね

中村
もうひとつ重要なこととして、都度購入の場合、顧客が自らの意思で次の購入を選ぶのに対し、定期購入では自動的に商品が届くという点です。顧客が明確に購入を止めたいと決定し、定期の解約手続きをするまでは、商品の配送が続きます。ここでの解約プロセスが顧客にとってネガティブな体験となれば、ブランドへの印象も悪化してしまいます。一度離れた顧客が再び戻る可能性は、この解約時の体験に大きく左右されるため、解約プロセスがスムーズであることが、将来的に顧客を取り戻すチャンスを保つ上で非常に重要になります

折橋
そうですよね。「定期解約させてくれない会社」というネガティブなイメージがついてしまいますよね。
顧客獲得からF2継続化のフェーズが、ブランドに対する第一印象を作ることになるので、お客様の利便性を考え、真摯に対応することが大切ですね。

中村
どうやってブランドに対する良い印象を顧客に持ってもらうかが大切です。例えば、セールスがしつこいと感じさせず、定期を解約する顧客にスムーズに対応することが求められます。
顧客は短期間のうちに様々な体験をしますが、ブランド側はそれらの体験を通じて単に継続率を高めるだけでなく、ブランドの良いイメージや認知を構築することが求められます。これは、長期的に見たときに、優良顧客やロイヤル顧客を育てる基盤となります。初期段階から、この課題に取り組むことが、結果的に顧客のロイヤルティを高め、継続的な関係へとつながるのです。

 

「顧客のモチベーションを保つ」ことの重要性

初回顧客の課題

中村
初回顧客の課題を総合的に整理しておきたいと思います。
初回顧客は、広告を見て「とりあえず試してみよう」というと軽いお試し感覚で購入します。
広告を通じての最初の接触時には、ブランドや商品に対する期待が高まっており、ポジティブな印象を持って初回購入に至ります。

しかし、顧客が競合商品を使っている場合は特にそうですが、商品の配送に時間がかかると、購入した当初の高いモチベーションや期待感は時間とともに薄れていきます。商品が到着する頃には、他の商品に興味を移していたり、注文したことさえ忘れていたりする場合もあります。その結果、商品が使われないまま放置されることもあります。また、新しく購入した商品を数回試しただけで、特に目立ったベネフィットを感じなければ、使わなくなってしまうことも少なくありません。

そういう意味では、初回顧客はモチベーションが低くなった状態で商品を試し、初めて購入した商品を使い切る前に関心を失い、使用を中止してしまうことも多いのが実際です。その結果、F2転換に進む割合が低いという問題が生じているのです。

折橋
顧客が持つ期待感やモチベーションを維持し、商品を最後まで使用し続けてもらい、F2購入につなげることが、アフターフォローの重要な役割ですね。
顧客が期待した価値を素早く実感し、納得することができれば、継続化にもつながりますし、初期段階でのブランドロイヤリティの形成に寄与しますね。

中村
初回購入時の顧客の期待とモチベーションを保つためには、コストや手間を惜しまず、顧客との接触を増やすことが大切です。顧客と頻繁にコミュニケーションを取ることが、非常に重要なフェーズということになります

 

フォローすべき3つのタイミング、それぞれのコミュニケーションのポイント

折橋
さて、次にF2継続を促す戦略についてお話ししていきましょう。

中村
F2の壁が非常に高く大きな壁であるということは、今まで話した通りです。そのため、様々な方法で顧客のフォローアップを行うことが求められます。特に重要なのは、「商品を使い始める前」、「商品を使用中」、「商品を使い終わった後」という、顧客体験の3つの大きなフェーズです。これらに合わせて、適切なタイミングに適切な情報を提供することが、リピート購入を促進する上で非常に重要です。

F2継続させるための打ち手

折橋
商品を使い始める前のフェーズでは、まずは初回購入に対するお礼をきちんとすることです。
簡単なことでもいいから、初めての購入に感謝するメッセージを伝えることで、顧客がブランドに良い印象を持つよう努めることが大切
また、商品が届くまでの間に顧客の期待とモチベーションを下げないように、いろいろな情報をお届けすることも考えたいですね。

中村
もう一つ。多くの企業が採用しているのが、商品と同時にお届けする初回同梱資料というのがポピュラーな施策の一つです。
資料には商品をすぐに使いたくなるような魅力的な文言やキャッチコピーを添えます。これにより、そのまま商品を使わずに放置してしまうのを避けるという狙いもあります。

折橋
以前、調査をしたことがありますが、顧客は、初回の同梱物を最もよく見ています。その後はだんだんと見なくなっていく傾向にありますが・・。とにかく、このチャンスに何を同梱していくのかが勝負ですね。
顧客が商品を受け取った後、すぐに使用を開始してもらうことが目的ですから、商品を使い始める際に役立つ商品リーフレットやガイドブックなどのツールは必要ですね。

中村
スキンケア商品のように使い方に注意点やポイントがある場合もあります。使用方法によっては、効果を感じにくくなることもあるため、顧客が正しく商品を使用し、期待される効果を感じやすくするための情報提供が重要です。そこで、商品冊子やリーフレットが大きな役割を果たします。

折橋
スキンケアの場合は、使用量が少ないことが効果感に影響を与えるということをよく聞きますね。どうしても、もったいないので、使用量を抑え気味にしてしまうんですね。ですから、推奨の使用量をわかりやすく示して、実際にその量を使っていただけるように促すというのを一生懸命考えてツールを作っていました。

中村
顧客が商品を速やかに使用し始め、その効果を少しでも実感してもらえるよう導くことが重要です。そして、商品を継続して使用してもらうためには、まだ競合商品が横にある状態ですから、顧客が早期にその商品の効果を実感することが大切です。いろんな意味での商品ベネフィットを感じてもらえるように、適切なタイミングでフォローを行い、「この商品は自分が期待した通りの商品だな」と効果に気づかせることを誘導していきます。

折橋
広告で表現されていた効果がストレートに実感できなくても、「自分の肌に合っている」という“使用感”は「続ければ期待できるかも!」と思っていただけることに繋がるので、とても重要ですね。

我々が開発した、「スキンケアカスタマージャニーマップ」という通販スキンケア購入者のインサイトを可視化したツールがあるのですが、そこでは顧客の「効果感への過度な期待」から「使用感の良さ」へ視点を変えながら、効果へ向かうレールにきちんと乗っていることを感じさせることが、お試し商品から本商品購入には重要、としています。

そこをきちんとフォローして、価値に気づいていただくということをしないといけませんね。

参考)大広オリジナル スキンケアカスタマージャーニーマップ01参考)大広オリジナル スキンケアカスタマージャーニーマップ02

中村
顧客が商品を使い切るまでをフォローするのが、「商品使用中」のフォローアップとなります。そして、商品が終わりに近づいたタイミングで、顧客がスムーズに継続購入してもらうためのDMやメールを送るのが一般的な方法です。

この際、値引きや割引などの特典を提供することもあります。

このように、商品の特性や課題を理解した上で、継続購入への移行を促す戦略を立てることが、顧客育成の最初のゴールとなります。

まとめますと、F2継続化の施策というのは、「タイミング」と「情報のセグメント」ということが大切です。
しかし、初めて購入する顧客は、まだ企業やブランドへのロイヤルティが高くないため、DMやメールをじっくりと読み、理解していただくことは難しい。
そのため、文字量を多くするのではなく、一目で全体の要点が掴めるような、視覚的にわかりやすいDMやメールを作ることが求められます。初回顧客が「読んで理解する」のではなく、「見てわかる」クリエイティブであることが大切です。
タイミングを見計らい、初回顧客が必要とする情報を適切にセグメントした上で、最小限で、且つ、わかりやすく情報を届け、商品の価値を感じてもらうことが目指すべき点です。F2継続させるための打ち手ということになります。

次回は、ダイレクトマーケティングにおける「顧客戦略・顧客獲得」の「顧客獲得」から、「リピーター化」についてお話していきます。

「ダイレクトマーケティング実践講座」シリーズ一覧
ダイレクトマーケティング実践講座〈第1回〉「ターゲット」を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第2回〉コンセプトづくりのコツ
ダイレクトマーケティング実践講座〈第3回〉 「事業モデル」で戦略が異なる
ダイレクトマーケティング実践講座〈第4回〉「商品企画」における重要ポイント
ダイレクトマーケティング実践講座〈第5回〉安定した利益を生み出す「価格」設定とは?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第6回〉ロイヤル顧客を生みだすための「チャネル」「販促」の考え方
ダイレクトマーケティング実践講座〈第7回〉「顧客戦略」は顧客ステージで変える
ダイレクトマーケティング実践講座〈第8回〉戦略のベースとなる5つの「顧客ステージ」とその特徴
ダイレクトマーケティング実践講座〈第9回〉収益化はロイヤル顧客がカギを握る
ダイレクトマーケティング実践講座〈第10回〉顧客獲得に向けた商品選定と戦略思考
ダイレクトマーケティング実践講座〈第11回〉最初のハードル「F2転換の壁」をどう乗り越えるか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第12回〉リピーターを育てるコミュニケーションの要諦
ダイレクトマーケティング実践講座〈第13回〉ブランドへの信頼を築きクロスセルに導く
ダイレクトマーケティング実践講座〈第14回〉第2のハードル「クロスセルの壁」をどう乗り越えるのか
ダイレクトマーケティング実践講座〈第15回〉 徹底した顧客の理解がクロスセルを促進する
ダイレクトマーケティング実践講座〈第16回〉アップセルの成否は顧客のロイヤルティの見極めにある
ダイレクトマーケティング実践講座〈第17回〉 「ファン化の壁」を乗り越えて、ロイヤル顧客を作る!
ダイレクトマーケティング実践講座〈第18回〉 ロイヤル顧客を維持するには?
ダイレクトマーケティング実践講座〈第19回〉ロイヤル顧客の育成で直面する3つの課題
ダイレクトマーケティング実践講座〈第20回〉商品配送における顧客価値を見極める
ダイレクトマーケティング実践講座〈第21回〉コンタクトセンターの「インバウンド」と「アウトバウンド」とは
ダイレクトマーケティング実践講座〈第22回〉コンタクトセンターにおける「VOCの価値」と「顧客対応品質」
ダイレクトマーケティング実践講座〈第23回〉顧客管理の基礎はデータ分析にある

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。