株式会社Insight Techが運営する「不満買取センター」には日々、世の中のトレンドや社会情勢を反映した不満の声が寄せられています。
Insight Tech代表伊藤友博氏とCOCAMPとのコラボレーション企画「不満の声に顧客価値のタネがある!不満買取センターの<不満ワード探索>」では、そんな「旬な不満」を皆さんにお届けしています。生活者の日常生活で生まれる「ちょっとした不満」に注目し、そこから「生活を素敵にするヒント」を見つけ、解決できる企業に届けようという連載です。
不満買取センターの広報部長「ふーまん」がナビゲーターとなり、その月の注目不満から「こんなのあったらいいのに!」「どうにかなんない?」を紐解いていきます。
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今月の注目不満ワードは「投票所」です。
2025年7月のトレンドワード
2025年7月14日~2025年7月20日週に投稿が増加したトレンドワードです。
この週は、7月20日に第27回参議院議員通常選挙が開催されたこともあり、「投票」「投票日」「投票率」など 参院選に関連する不満の声が多く寄せられました。今回の参院選では期日前投票が過去最多となり、また最終的な投票率が58.51%と2022年の前回参院選の52.05%から6.46ポイント上昇しました。マスメディアだけではなく、SNSでも大いに盛り上がりを見せた選挙でした。
そこで今月は選挙の中でも実際に投票行動を行う「投票所」に注目し、今回の選挙で投票所に関してどんな不満≒期待の裏返しが言及されていたのかを深掘してみましょう。
2025年7月に「投票所」に言及があった不満の全体像とは?
具体的な不満を見る前に、まず、2025年7月(~7月21日)に不満買取センターに寄せられた不満のうち「投票所」に言及がある不満(327件)の全体像を見てみましょう。
不満の内容を集計する辞書をAIを用いて構築し、この辞書に該当する不満の比率(出現率)を集計しました。
AIを用いた集計結果を見ると、まず最も多いのは投票所の「空調」に関する不満でした。酷暑の中での選挙であったことが影響しているといえ、投票における代表的な障壁になっています。
次いで、「ネット・スマホを使った投票ができたらいいのに」という意見が全体の11.0%を占めています。わざわざ投票所に行きたくない、という気持ちの顕れといえそうですし、そのほうが「コスト」がかからないのでは、と考える生活者もいるようです。
また、「投票率」の言及が多いことにも注目です。投票率を高めるためにも投票所の改善や強化の余地があることが推測される結果といえそうです。前述の通り、今回の参院選の投票率は前回のそれと比して高くなっていますが、とはいえ、まだまだ高い水準とはいえず、投票率を高めるための投票所の役割に注目する意義がありそうです。
生活者の不満から投票率を高めるために投票所ができることを深掘りしていきましょう!
オンラインで投票できたら便利だし安全なのでは
リアルの投票所だけでなく、スマホやPCなどオンラインで投票できたらいいのに、という声は多数寄せられています。マイナンバーを活用することで安全で信頼できる投票ができるのではと考える生活者も多いようです。
単に便利だから、というだけでなく、病気や障害で外出しにくい場合の手続きが煩雑であることや、酷暑の中で出歩くのは危険であることなどを踏まえた代替案としての役割を期待する声も寄せられています。
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投票所が休日しか開いておらず、仕事で行けない。期日前投票も場所が遠く、手間ばかりかかる。もっと誰でも気軽に投票できるように、ネット投票など現代的な方法を導入してほしい。
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選挙でオンラインでの投票ができない事。今回の参議院選挙の投票率が、58.51%だったとの事だが、病気、障害で家から出るのが困難な人もあると思うし、連休だしとか、投票所まで徒歩では暑いしと行かなかった人もあると思う。私個人は期日前投票に行ったが。折角作ったマイナンバーカードを利用して家にいても投票できるようにすればいいのにと思う。
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今回の選挙は普段よりも混んでたなぁ。投票所まで行くのも暑いから一苦労ですし、いい加減ネット投票も許可してほしいです。その方が投票率も上がると思いました。
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早くネットで投票できるようにしてほしい。お年寄りが苦手というなら、今の投票所はそのままにして、自由に選べるようにしてほしい。
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参議院議員選挙があるが投票の制度が不満、足の故障などで投票所まで行くのが難しい人もいるのでネット投票などの方法を考えて欲しい
マイナンバーカードを本人認証の手段として様々な行政手続きができるようになる中、投票行動をアップデートするうえでデジタル技術をもっと活用してほしい、という期待は大きいといえそうです。もちろんセキュリティ対応などは万全を期す必要がありますが、投票率をより高める上では有効な一手となりそうです。
投票をもう少し身近で楽しくしては?
投票行動自体をもっとワクワクするものにしてはどうか、といった期待・提案も寄せられました。今回の参院選でもイオンなど商業施設内に投票所が設置された地域がありましたが、「なにかのついで」に行けるような身近で気軽な投票所にしてほしいという期待も一定数寄せられていました。また、「ついで」だけでなく、催しや屋台などワクワクするような仕掛けと連動させることで、選挙・投票を楽しいイベントデーと認識させるような「パーセプションチェンジ」(認識の転換)も投票率を高めるうえで生活者に期待されているようです。
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住んでいる地域の期日前投票会場に商業施設が含まれていないことが不満。せっかく投票に行くなら何かのついでに行ける会場のほうがいい。
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商業施設内やスポーツ施設、文化施設内で投票できるようにすれば、投票日についでに投票できるし、イベントと連動させれば投票を楽しく演出できるのに。
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選挙割が全然身近じゃないこと。現状だと民間の自主的な取り組みにとどまっているけど、自治体や商店街、あるいは地区の団体がサポートしてもっと大々的にしてほしい。そうしたら投票率も上がるのでは?
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選挙の投票率が悪い。投票率を上げるために投票所の近くに屋台を出してほしい。
まさに選挙・投票を楽しいイベントデーと認識させるような「パーセプションチェンジ」の象徴ともいえる「選挙割」についても、民間の自主的な取り組みとしてだけでなく、自治体や商店街のサポートで地域のイベントにしてほしいといった声も寄せられています。
投票証明書をもっと入手しやすくして
その「選挙割」においてキーとなる投票証明書についても一定数の声が寄せられました。各地でキャラクターを印刷したりするなど様々な工夫が注目を集めていますが、「投票証明書のもらい方がわかりにくい」「案内が不十分」といった不満が発生しているようです。
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選挙割を楽しみにしていました。投票所で、投票証明書の場所が分かりにくい。
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投票後で 投票所来所証明書が必要な方はお声かけください、と机に表記しているのに 担当者が不在だった。その横にも2人分机と椅子があるのに3人とも不在で 声をかける人がいなかった。 もし誰かが席をはずすにしても 誰か一人はいるべき!
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どの店が選挙割があるかわからなくて困っている。投票証明書を配る際に投票所で教えてほしい。
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期日前投票に行った帰りに電気屋に寄ったら、投票の証明書でポイントがもらえるとありビックリ。投票所で何も言われず何も渡されなかった自分はポイントがもらえなかった。ちゃんとみんなに配ってよ。不公平じゃないか。
「選挙割の案内もしてほしかった」という声も聞かれています。もちろん、投票行動やこれに関わる手続きを最優先する必要があるのは言うまでもありませんが、それとは別に、せっかくの取り組みをしっかりと案内・誘導するような対応があると投票体験をよりポジティブなものにすることができそうです。
不正対策、しっかり対策しているんだろうけどなんだか不安
選挙が信頼できる結果になっているかどうかを不安に思う生活者も一定存在するようです。とくに、「なぜ鉛筆なんだろうか」「鉛筆は書き換えができるのでは」と投票が鉛筆であることを不安に感じる生活者がいるようです。
しっかりとした理由や対策のもとでの鉛筆利用になっていることを改めて周知するなど、選挙における不正対策を改めて発信することで、選挙の信頼性に関する理解を改めて促すことが求められそうです。いうまでもなく、不正選挙であると指摘するネット上のフェイク投稿に対する対処も厳格に行う必要があります。
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投票所は、なぜ鉛筆なのでしょうか?ボールペンじゃダメな理由があるのでしょうか?鉛筆だと消せてしまうので不正されないか不安です。
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選挙の投票所。 投票用紙に鉛筆で記入するけど、不正されないようにボールペンで記入するようにして欲しい。
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投票所に管理側の人間がけっこう居るな、と私も思ったが、あれが人件費の無駄だと言う意見をもって減らしたら、不正監視の目が減って良くないと思う。投票結果を不正操作させないためにも、ある程度の人数は必要!互いに監視し牽制する意味でも必要だ。
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投票所で、入場券がなくても投票できてしまうので、なりすましなどの不正を防ぐためには本人確認はきちんとしてほしい。
不正対策の周知を強化し、安心感を高めることが投票率向上に有効です。
まとめと提言
2025年7月の参議院選挙で寄せられた「投票所」に関する不満を分析した結果、投票所の環境、デジタル化の遅れ、不正への不安、投票率向上策の不足が主な課題として浮上しました。投票率58.51%は前回より上昇したものの、さらなる改善が必要です。
デジタル投票の導入
マイナンバーを活用したオンライン投票を試験導入し、病気や酷暑で投票所に行けない人々の参加を促進。セキュリティ対策を万全に。
投票所の環境改善
エアコンや冷水機を設置し、混雑緩和やバリアフリーを強化。高齢者や障害者向けの送迎サービスを拡充。
投票の楽しさ演出
選挙割の周知強化や商業施設内投票所を全国展開。投票証明書の配布を標準化し、SNS映えするデザインで投票を魅力的に。
不正対策の透明性
監視体制の信頼性を周知し、フェイク情報に対抗。可能な範囲で段階的にボールペンやマークシートを導入、本人確認の厳格化で不正不安を解消。
上記はあくまで「投票権を持った生活者からの期待」に基づく提言です。
実施に際しては様々な制約や対応が求められるとは思いますが、これらの施策をパッケージにして総合的に取り組むことで、投票所や投票に関わる抵抗やハードルを下げ、より気軽に安心して、そして未来を期待して投票できる選挙環境が実現されることが望まれています。