スキンケア通販において、お試し商品広告での購入、本商品購入、さらに都度購入の回数ごとに継続・離脱の心理を可視化し、「スキンケア・カスタマージャーニーマップ」として1枚のイラストで表現しました。スキンケア通販商品という領域に絞ることによって、顧客インサイトがよりクリアになっています。そして、このマップにより、有効なCRM施策の立案ができるようになります。
この連載では、スキンケア通販での顧客インサイトを解説していきます。
第1回目では、スキンケア商品の顧客インサイトの特徴とカスタマージャーニーマップの概要を解説します。
カスタマージャーニー・マップ シリーズ:カスタマージャーニー・マップで顧客心理が見える!サプリメント通販【第1回】お試し商品広告は”7つの訴求”で新規顧客を獲得する
ビジュアルで理解!スキンケア通販購入のインサイト
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーとは、顧客が商品と出会い、購入、リピートしていく道筋のことです。見込み顧客や顧客との接点を洗い出し、フェーズごとにどんな顧客インサイトがあるのかを書き出し、どんなアプローチを行なうべきかを考えるために活用します。 ただ、テキスト情報が並んだものになりがちで、直感的に理解しにくく、楽しくないのが欠点です。
そこで、カスタマージャーニーを1枚のイラストで描ききることで、直観的にも分かりやすく、ひと目見てインパクトがあり、そこにストーリーが見え、知りたくなるものを作りました。同時に、定性・定量調査の分析結果を効果的に示すことを目指して、メタファーを使って細部まで作り込んでいます。
それが、このスキンケア・カスタマージャーニー・マップです。
広告によってスキンケアの新規顧客を獲得していく段階、いわゆるアクイジションの領域があります。商品との最初の出会いになるわけですが、スキンケアでは、一度使用してみたいという要望が強いので、お試し商品やトライアルセットなどをオファーします。ここで顧客を一度獲得し、本商品購入へ誘導していきますが、本商品もリピート購入していただかないとなかなか利益が出ません。そのため、いかに離脱を防ぎ、継続的に購入していただくかが重要になります。
この顧客のインサイトを理解し、離脱をできるだけ防ぐことが重要になります。
スキンケア・カスタマージャーニーマップの概要
このスキンケア・カスタマージャーニーマップの開発に当たっては、調査を行っています。全国の45歳以上の女性223名を対象に回答を得ています。調査対象のカテゴリーは、通販スキンケア商品です。調査としては、お試し商品の購入時、および本商品の注文時の注文状況から、それぞれのフェーズにおける対象者を事前にスクリーニングし、条件に合致した対象者から随時、回答画面に進んでいただくという形で、購入1回目、2回目、3回目以降というところまで調べています。今回はサプリメントとは違い、定期購入ではなく都度購入ということになります。
それでは、「買い続けるお客様を創造するためのスキンケア・カスタマージャーニーマップ」の概観を説明させていただきます。
マップをご覧ください。
まず、モチーフは、スキー場です。スキー場をイメージしていただくと、理解しやすくなっています。
スキー場では、山のふもとから、リフトに乗って、上まで登っていき、そこからスキーで滑ってどんどん下に降りていきます。この構造が、スキンケアのカスタマージャーニーと同じなのです。
つまり、最初が最も期待値が高く、その後、どんどん下がってくるのです。
スキンケア商品はかなり競合も多い市場で、次々と新しい商品も登場します。広告も盛んで、よく目に留まります。そこで一つの商品を何回も購入していただくという目的を達成するためには、顧客のインサイトを理解して、そのインサイトに即した適切な施策が必要になるのです。
お試し商品広告
マップでは、スタートは画面左の真ん中あたりにあります。スタートは、スキンケア通販広告接触になります。ここでは「お試し商品」または「トライアルセット」になります。
ターゲットの方には、もともと「加齢による肌の悩みを改善したい」という欲求がありますが、それをこのスキンケア通販広告によって刺激するというところがポイントになります。
その「加齢による肌の悩みを改善したい」という欲求を、後ほど説明する16の心理が1つから3つ組み合わさって後押しすることで、「お試し商品」購入に進んでいきます。
ここで興味深いことに、右脳的心理と左脳的心理の組み合わせが多くなっているという特徴があります。サプリメント通販広告の時にはあまり見られなかったことですが、スキンケアの場合は、左脳的なものと右脳的なものの感じ方が非常にはっきりと分かれていました。特にこの右脳的な部分が非常に面白かったので、今回はそのように分けています。右脳的なものとは、感覚的なもの、五感に関するもの、感情的なものを指します。
お試し商品を購入する段階では、左脳的な「成分への理解」、「客観的な裏付け」、「企業への理解」、「利便性」、「価格の魅力」といった論理的な部分も当然ありますが、右脳的な「同年代の実感」、「付加要因(おまけの魅力)」、そして「視覚による感性の刺激」というものが加わってきます。女性がターゲットということもあり、かなり右脳的な要素が強く出てきます。そういう訴求・表現に対してどのような心理的な印象を持つのかというところで、16の心理が出てきます。これについては第2回目で詳しく説明します。
さて、スタートである広告を見て、お客様は行動を起こします。スキンケアの特徴的な点を、ここではスキー場に例えています。
広告を見てお試し商品を買おうとするお客様は、リフトに乗るようなイメージです。リフトで一気に頂上まで登っていくさまが、商品への期待値が最高値に達するという状態と重なります。
これが「お試し商品を買った時」が「期待値マックス」の状態になるということです。
お試しが良ければ継続したい、使ってみないとわからない、期待を超えるインパクトが欲しいといった心理から、お試し商品を買う時にものすごく気分が高揚し、期待値が最大化されます。ここがサプリメントとの大きな違いです。
そして、期待値が最高の状態から、雪山をスキーでだんだん下りていくイメージです。下っていきますから、だんだん期待値は下がるわけです。
この「効果への期待」という力を利用して、いかに次の本商品購入に着地できるのかが実は最も大きな課題になります。
ここは、「最大の難関」と呼んでいます。
この「お試し」から「本商品購入1回目」に至るというところが、スキンケア通販における最大の難関になっています。「F2の壁」とも言われるものです。
スキンケア通販の最重要ポイントは「視点の切り替え」
ここで重要なのは、「視点の切り替え」です。スキンケアも効果感が非常に重要な要素となってきます。サプリメントで言えば効果の有無が問われるところですが、スキンケアもすぐに効果感が現れるわけではないので、そのままでは、効果にフォーカスしてしまいます。そこで、視点の切り替えが必要になるというわけです。サプリメントの場合は定期3回目あたりで「価値の転換」がなされないと離脱してしまいますが、スキンケアの場合は継続のカギを握るのは視点の切り替えになります。
何の視点の切り替えかというと、「使用感の良さ」です。効果感ではなく、使用感の良さです。商品の使用感が良ければ、その先に効果が待っているんだというインサイト、「つけた感じが良くて、私の肌に合っている」と思っていただく、この視点の切り替えです。
「つけた感じ」というところフォーカスしてもらうことで、「私の肌に合っている、つけた感じがいいから合っている。その先には当然、効果がきっとあるだろう」という期待に視点を切り替えてもらうことが、重要なのです。ここが最大の難関なので、これをいかに乗り越えるのかがスキンケア通販にとっては最重要になります。
そして、最大の難関を乗り越えて本商品の初回購入に至る時に、その背中を押すものとして、例えば本商品の初回割引といったジャンプ台のような要素があると、さらに乗り越えやすくなります。
本商品購入1回目のインサイト
そこから先、本商品の初回購入では、「価値の見極め」が非常に大きなテーマになります。この商品の価値が本当に自分にとって良いものなのかというところがテーマになってきます。
2回目購入に進む直前には「価格の坂」というものがあります。本商品になると価格が少し高いという気持ちがどうしても起こってきますので、そこに対して、例えば2回目の割引クーポンなどがあると、「使い心地もいいし、割引なので2回目は使ってみよう」という気持ちになり、継続を後押しする要素となります。ここの阻害要因は、「価格」ということになります。
本商品購入2回目のインサイト
2回目の購入をされた方々のテーマは、「マンネリ」です。一方で「続けないとね」という気持ちも当然あると思いますが、少し飽きてしまうというところが、継続に対して障害になってきます。これをどう飽きさせずに続けていただけるのかという工夫が必要になります。「季節に合ったスキンケアの提案」、「愛用者の声」、「キャンペーン」、「使い方の詳しい説明」といったもので飽きさせないことが重要になります。
この2回目から3回目の本商品購入に至るときのインサイトとしては、「効果を感じる気がするし、別のものを組み合わせるともっと良くなるかも」という心理も出てきています。価格というよりは、飽きさせず、マンネリをどう払拭するのかが問題になってきます。
例えば、「あなたの肌に合わせたアドバイスをしますよ」というアピールをすることで、マンネリ化を防ぐということができます。
本商品購入3回目のインサイト
そして3回目では、「浮気心」がテーマになっていきます。スキンケアは競争が激しい世界ですので、様々な新商品や他社の商品が日々出てきます。広告も目につきますので、そちらの方に関心が行ってしまうこともあります。他社商品の看板、これは広告に見立てていますが、そういったものが目に入りやすくなり、「ちょっと試してみようかな」と、ふらっとそちらに行ってしまうこともあります。これをなるべく防がなければいけません。
さらに継続していくと、「信用できるメーカーだからずっと続けたい」「他の商品もいいよね」という気持ちになっていただき、長く続いていくことになります。その時の企業側からのアプローチとして、「あなたのパートナーとしていろいろご提案しますよ」というメッセージがあります。先ほどの2回目でのマンネリを防ぐための「キャンペーン」、「愛用者の声」、「季節の提案」、「使い方の説明」といったことに加え、お客様の肌に合った他の商品も提案していくと、「この企業は信用できる」というインサイトが生まれ、企業ロイヤルティが上がっていき、継続にプラスに寄与していくことになります。
以上が、全体の概要になります。
「効果感」から「使用感」への視点の切り替えがカギ
通販スキンケア購入者の前提となるインサイト
通販スキンケア購入者の前提となるインサイトですが、双眼鏡を持ったジプシーをイメージしたイラストを見ていただけるとわかると思いますが、「今よりもっといいものがあるはず」というインサイトが常にあります。移り気で浮気症の「基礎化粧品ジプシー」というイメージです。これが基本的な通販スキンケア購入者の前提となるインサイトです。
スキンケア・カスタマージャーニーマップのポイントは「視点の切り替え」
次に、このスキンケア・カスタマージャーニーマップのポイントになりますが、それは「効果感」から「使用感」へ、かなり早い段階で視点を変えることです。通販スキンケアは、広告に接触してお試し商品を購入した時が期待値が最大の状態になります。広告で様々なベネフィットを提示され、「私もきれいになれるかも」「この成分が入っていれば効果が出るかも」というところで、非常に期待値が高まります。
そして、お試し商品を試してみるわけですが、この時は期待値が最大の状態です。ただ、その過度な期待から、いつまでも「効く、効かない」という視点では、すぐに効果が現れないため離脱につながります。これを「使用感の良さ」のほうに視点を変えていただく、フォーカスする視点を変えていただくのです。「つけた感じがいい、自分の肌に合っている」というインサイトを持っていただくと、それは効果へ向かうレールにちゃんと乗っているんだということを感じさせることができます。「このままつけていったら、きっと自分の肌にとって良い効果感が感じられるだろう」というところにつながっていきます。これが本商品購入には重要になります。
スキンケアにおいては、世の中にたくさんのお試し商品が出ているため、常に色々なものを試すことができる状態です。そこから本商品に進んでいただくのは、かなりハードルが高いことです。最大の難関である「F2の壁」を越えて本商品を購入していただくためには、やはりこの「使用感の良さの先に効果が待っている」というところに、きちんと意識を向けていただくことが重要です。
継続のポイントは「新鮮なアプローチ」
さらにその先の継続化、2回目、3回目と使っていただくためには、使い方のアレンジも含めた、常に新鮮なアプローチでマインドを刺激していくことがポイントになります。競合が多く、常にお肌のことを気にかけているという心理がある中で、「他にもっといいものがあるのではないか」という潜在的なインサイトがありますから、常に他のものを探してしまいます。ですから、「これが私に合っているんだ」と思っていただくだけでなく、続けていただくためには、プラスアルファで「使い方のアレンジ」、「季節の提案」、「キャンペーン」といった、新鮮な情報がないと、飽きてしまい、浮気心が発生してしまったりします。こういった形で、常に新鮮なアプローチをしていくことが重要なファクターになります。
さて、具体的に効果感とは、例えば「肌にハリが出る」「毛穴が目立たなくなる」「小じわが目立たなくなる」といった広告での訴求効果です。それに対して使用感とは、「しっとりするのにべたつかない」「肌に吸い込まれるように馴染む」といった感覚です。アプローチとしては、「塗ってみてどうですか?べたつかないですよね?」というように、使用感にフォーカスできるよう誘導していくことが重要になります。
以上がスキンケア・カスタマージャーニーマップの全体像と重要ポイントになります。
次回は、お試し商品広告について、詳しく見ていきます。右脳的、左脳的訴求が8つ存在します。そして、その8つの訴求から16の心理が発生すること、実際には、そのうち複数が重なってお試し商品の購入に至ることを解説します。
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まとめ
・スキンケア通販のカスタマージャーニーをスキー場に例え、顧客インサイトの変化と継続購入の鍵をビジュアル化したマップを開発。
・基礎化粧品ジプシー心理を前提に、使用感へ視点転換し継続購入を促すアプローチが重要。
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