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2025.11.26

共感を呼ぶテーマの見つけ方、教えます。不満の声を「共感」に変える「パブリックインサイト」とは?

「こんなことがイヤ」「もっとこうだったらいいのに」… 暮らしの中で生じる、生活者の「不満の声」に耳を傾けることは、商品開発やコミュニケーション開発の出発点として重要です。しかし、不満の中身はさまざまで、個々の声にただ応えるだけでは、多くの人の共感を得ることは難しい…。一体どうすれば良いのでしょうか。

実は、生活者一人ひとりの小さな不満の声の背後には、社会全体が抱える“モヤモヤ”が潜んでいることがあります。そして、このモヤモヤに応えることこそが、多くの賛同を得るための重要なカギとなるのです。

こうした考え方を、大広は独自に「パブリックインサイト」と名付けました。今回のコラムでは、このパブリックインサイトを通し、一人の生活者の不満の声を起点として、多くの人の共感を得るためのテーマや訴求ポイントを探っていく方法をご紹介します。

 

パブリックインサイトは、世間の一定層が抱える共通認識や違和感

N=1の声を聴くだけではうまくいかない

「N=1」とはマーケティング用語のひとつで、簡単に言うと「一人の生活者」のことです。これまでにもさんざん、商品開発や広告・販促などのコミュニケーション開発においては、生活者の声を聴くことが大切だ!と叫ばれてきました。実際、このコラムを読んでくださっている方も、既にユーザーインタビューやSNS分析などを通じて、個々の不満の声を拾い上げておられるかもしれません。

しかし、それらをどのように活かせば良いのか? たとえば「この機能が使いづらい」「このデザインが気に入らない」といった声に対して、別の機能を追加したりデザインを変更したりするだけでは、売れる商品になるとは限りません。なぜなら、一人の生活者(N=1)の声はあくまでも個人的な問題であり、多くの人にとって共感されるとは限らないからです。

“社会のモヤモヤ”が突破口になり得る!

他方で、一人の生活者の声の背景には、個人の体験を超えた“社会的なモヤモヤ”が潜んでいることがあります。それは、世の中の多くの人が日常生活の中で抱えている、何となくの共通認識や違和感のようなもの。このような場合、そのN=1の声は個人の問題であると同時に、社会全体の問題となる可能性があります。

もし、N=1の不満の声が、社会が抱えるモヤモヤへと昇華されるのであれば、それに対する改善の提案は、社会全体から賛同を得られやすいでしょう。つまり、このような提案は、単なる生活者の声への対応にとどまらない、より本質的な課題に応えることとなるのです。

私たち大広では、こうした“社会のモヤモヤ”を「パブリックインサイト」と呼んでいます。パブリックインサイトを通してN=1の声を見ることで、多くの人が注目する問題提起となり、より広く共感される大きなテーマを見出すことができると考えています。
Public InsightというレンズパブリックインサイトをレンズとしてN=1の声を見つめることで、商品揮発やコミュニケーションの軸となる、ブランドのテーマやストーリーを描き出すことが可能に!

“社会のモヤモヤ”に応えた好例

過去にも世間では、「これってパブリックインサイトの活用に当てはまるよね」と言えるマーケティング事例が話題になったことがありました。

例えば、あるヘアケアブランドが就活生の本音をテーマにしたキャンペーン。就職活動において、黒色のひっつめ髪が“暗黙のルール”となっている現状に対し、「本当にそんな慣習が必要なの?」という疑問を投げかけたところ、社会全体が何となく感じていた違和感(パブリックインサイト)に対して、「髪型はもっと自由でいい」という応援メッセージとして伝わり、多くの共感を得ることができました。

また、ある食品企業が冷凍食品を使うことに対して、「『手抜き』ではなく『手間抜き』です」とSNSで発信した事例。家庭料理においては「手づくりであるべき」という価値観に対して、「手間を省くことは悪ではない」というメッセージが、多忙な現代人が感じていたモヤモヤを解消するものとして、多くの共感を呼びました。

これらの事例に共通するのは、個々の不満の声にとどまらず、社会全体が何となく感じている違和感に応えている点です。繰り返しになりますが、N=1の声はこのように社会のモヤモヤ(パブリックインサイト)のレンズを通して見ることで、多くの人の共感を得られるテーマへと昇華させることができます。

パブリックインサイト・メソッドとは

N=1の声をパブリックインサイト

SNSの投稿やアンケート回答など、世の中にはたくさんの生活者の不満の声があふれています。不満の声にビジネスチャンスがあることは間違いなさそうです。

不満の声に顧客価値のタネがある!不満買取センターの<7月の不満ワード探索>

これらは単なるクレームではなく、生活者のリアルな体験に基づいた貴重なN=1の声ですが、前述の通り、そのままでは個人の主観の域を出ません。重要なのは、多くの人からの賛同を得られるテーマへと昇華させるために、どのようなパブリックインサイトと掛け合わせるのか、ということです。

そこで大広では、適切なパブリックインサイトに早く到達でき、今後さまざまな企業が商品開発やコミュニケーション開発に活用していけるよう、この手法をメソッド化・フレーム化したいと考え、ひとつのツールを生み出しました。

社会のモヤモヤを描く「パブリックインサイトカード」

パブリックインサイトカードは、「化粧」「料理」「ウェルネス」など、大きなカテゴリー分けのもと、1枚ずつのカードにさまざまな“社会のモヤモヤ”が描かれています。カードを見ながら、商品開発やコミュニケーション開発の議論を深めるツールとして活用することができます。

例1:「男ウケ」の呪縛

多くの女性がお化粧をしますが、たとえば「いつもナチュラルメイクでなかなか冒険できない」という声があります。また「肌が弱いのでノーメイクでいたいけれど、変わった人と思われてしまいそう」という声も。

「男ウケ」の呪縛

※開発中につき、カードの内容は変更する可能性があります。

この「男ウケの呪縛」カードを見ることで、それらの声の元をたどれば「メイクは男性から好印象を持たれるようにするほうが良い」という無言の圧、暗黙の了解のようなものが社会に存在することに気づきます。

そして、そこから「メイクって誰のためのもの?もっと、自分のためだけにメイクを楽しむ自由を!」というテーマを導き出せるかもしれません。さらに、近年は美容に興味を持つ男性が増えていることなどから、年代や性別も飛び越えて共感を得られるコミュニケーションを設計できるかもしれません。

例2:「SNS映え料理」への疲労感

SNSには、おしゃれな外食や凝った手料理、お弁当などの投稿があふれています。その一方で「自分はセンスがなくて悲しい」「投稿を続けていると義務のようになってきた」などという声も…。

「SNS映え料理」への疲労感※開発中につき、カードの内容は変更する可能性があります。

この「SNS映え料理への疲労感」カードを見ると「みんな、実は“映え”に食傷気味だよね」という世間の空気感に気づけます。さらに考えを広げると、「もっと簡単に“映える”ようにすれば疲れないのでは?」「“映えなくても”をテーマに、何かメッセージしてみては?」など、商品開発やコミュニケーション開発の方向性が見えてきそうです。


いかがでしょうか。このように、N=1の不満の声をパブリックインサイトカードに照らしながら解釈することで、単なる改善案ではなく、社会的な共感を得られる新しいアイデアや訴求テーマを導き出すことが可能になります。

パブリックインサイトカードの活用提案

「パブリックインサイトカード」の具体的な活用シーンとして、おすすめなのはワークショップ。カードタイプなので、広げてみんなで眺める、グルーピングするといったことが容易です。実際に顧客から上がってきている声があれば、それを横に置きながら「この人の不満の声って、このテーマに関係してるんじゃない?」「この声と、この声はまとめられるよね」といったことなどを話し合えます。 

また、ワークショップに限らず普段の業務の中でも、ルーティーン以外の新たな顧客視点を入れることで、これまでにない発想が生まれやすくなります。「上層部から早急にSDGsに取り組めと言われたけれど、どうすれば…」など、大上段のテーマをなかなか商品やコミュニケーションに落とし込めずにお悩みの場合なども、ブレイクスルーのきっかけとなるでしょう。

 さらに、今はスモールマスの時代。特定の層にだけ刺さるニッチな商品が増えると、プロモーションもバラバラの小分けになってしまって統一感がない…といったお悩みもあるようです。そんな場合も、このカードから横串を貫くストーリーを見つけることができます。


まとめ

生活者の不満の声を聴くことは、商品やコミュニケーション開発の第一歩です。しかし、それだけでは十分ではありません。その不満の背景にある“社会のモヤモヤ”=パブリックインサイトをしっかりと捉え、それに応えることで、より多くの人の共感を得られるテーマが見えてきます。

多種多様なパブリックインサイトを描いた「パブリックインサイトカード」をテーブルに広げ、チームで議論するワークを実施することで、多くの人に賛同してもらえる製品の開発や、コミュニケーションテーマの開発が可能になります。

「大量の不満の声を見つめているだけで、次の一歩が踏み出せない…」とお悩みの方は、ぜひ一度、大広にご相談ください。


最後まで、お読みいただきありがとうございました。大広COCAMPでは、これからも新たな視点からのコミュニケーション開発やマーケティング戦略に関するコラムを掲載してまいります。まだメルマガ未登録の方は、これを機会にぜひ、下記よりご登録ください。

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この記事の著者

飯田 瞬・渡辺 涼雅・佐飛 実弥

飯田 瞬 (写真中央)
2014年に(株)大広に新卒入社。
ストラテジックプランナーとして、10年以上幅広い業種・業界でブランド戦略立案を担当。商品~カテゴリー・企業レイヤーの戦略立案や、ワークショップやプロジェクト業務も経験。

渡辺 涼雅 (写真左)
2021年に(株)大広に新卒入社。
2年間は営業兼ストプラとして新商品ローンチ戦略設計や4マスからデジタルまでの実装推進。ブランディングプロジェクトマネジメント業務などに従事。その後ストプラに専任し、マーケティングコミュニケーションやプロモーションの戦略設計など幅広いプランニングを経験。 PRSJ認定PRプランナー。

佐飛 実弥 (写真右)
2022年に(株)大広に新卒入社。
ダイレクト企業・ブランドを中心に営業職兼マーケティングプランナーとしてコミュニケーション~事業戦略の構築などを担う。その後ストプラに専任し、幅広い業界・業種のコミュニケーションプランニングを経験。2024年に「大広フェムテック・フェムケアラボ」にジョイン。