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2025.11.04

見てもらえるWeb動画は何が違うのか〜Web動画「令和のトレンド病撃退ストレッチ」3作品の事例から〜

動画で多くの視聴者を集めるためには、ターゲット層を明確にし、ニーズに合った魅力的なコンテンツを作成することや、動画のタイトルやサムネイルを工夫して視聴者の興味を引き、SNSで積極的に宣伝することが重要。
「見てもらえる動画の作り方」と検索すると、そんな解説が多く上がってきます。しかし、それらを踏まえた上で作った動画の視聴数が伸びない、効果的なクリエイティブがわからないなど課題を抱えている企業が多いことも事実です。
とりわけコロナ禍を経て健康ブームが続くなか、自宅で気軽にできるトレーニング動画は、動画の中でも激戦区。さまざまなコンテンツが乱立しています。この環境の中でも視聴数を稼ぎ、エンゲージメントを構築できる動画のクリエイティブとはどんなものでしょうか。
、(株)大広WEDO クリエイティブディレクターの浅川さん、(株)大広 コピーライター / プランナーの内波さんをお招きし、Web動画「令和のトレンド病撃退ストレッチ」3作品の事例から視聴者が見たくなる動画制作のコツをひも解きます。

画像1-1浅川 仁
大広WEDO 東京クリエイティブ局 第1制作部
クリエイティブディレクター/CMプランナー

1992年入社。大阪府出身。
大広系列会社でCRに特化した大広インテレクト、DBDを経て、大広。そして、大広WEDOに。CMプランナー、CDとして、金融、保険、トイレタリー、食品など多くの企業のCMに携わる。現在は主に、顧客視点を捉えたダイレクトマーケティング施策を多数手掛けている。また外部クリエイターとの協業などにも多数携わっており、得意とする。

画像2内波可菜
株式会社 大広 CXデザイン本部 クリエイティブ局 第2グループ
コピーライター/プランナー

他店にて、営業、デジタルの経験を積んだ後、2023年大広入社。PR発想を軸とした、社会と新しい合意形成ができるようなクリエイティブが好き。
販促会議「協賛企業賞」、宣伝会議「眞木準賞」、BOVA FINALIST、週刊少年ジャンプ原作賞ストキン受賞、その他地方の新聞コンペ受賞など

動画マーケティングの現状と課題

――今回は、けんぽれん(健康保険組合連合会)様の「令和のトレンド病 撃退ストレッチ」3作品を題材に、“見てもらえるWeb動画は何が違うのか”というテーマでお話を伺いたいと思います。
まずは浅川さん、内波さん、それぞれ普段どのようなお仕事をされているのか、簡単に自己紹介をお願いします。

浅川
大広WEDOでクリエイティブディレクター兼CMプランナーをしています。動画をメインに、現在はダイレクトマーケティング案件を多く担当しています。特に大手健康食品ブランドのレスポンス獲得を目的としたCMやWeb動画を企画制作しています。

内波
私はコピーライター兼プランナーです。食品・飲料を中心に、ヘルスケアや住宅関連など幅広いブランドを担当しています。

――今や動画マーケティングは活況です。なぜここまで動画がマーケティングに活用されるようになったのか、理由をどう見ていますか?

浅川
性別や年齢などでターゲティングしやすい点もありますが、一番は「感情を動かす速さ」だと思います。長い文章で説明するよりも短時間でターゲットの気持ちを動かせる。例えば「この商品でどういう気分になれるのか」といったメリットを、共感を伴って伝えられるのが動画の強みです。

内波
静止画と比べると情報量が多く、一つの訴求にとどまらず段階的に見せることで理解度を高められる点も大きいですね。拡散力もありますし、ターゲットが日常的に接しているメディアは今やほとんど動画です。ターゲットリーチという観点でも動画は有効な手段だと思います。

――一方で、動画を使った施策がすべて成功しているわけではないですよね。クライアントが抱えがちな悩みにはどんなものがありますか?

浅川
多くは「見てもらえない」「拡散されない」といった点です。特に認知度の高いタレントを起用できない案件では「テーマをどうするか」「どうストーリーを作り拡散につなげるか」が悩みの種です。

内波
マーケティング上のクリエイティブで言えば「何を、どの優先順位で伝えるか」「何をフックにしてどう展開するか」が難しい。クライアントが言いたいことと、生活者が聞きたいことをどう整理するか。そこに私たちクリエイティブが入る意義があると思います。

――動画が埋もれ、スルーされてしまうのはなぜでしょう?

浅川
選択肢が多く似たようなコンテンツが溢れている中で、ターゲットが曖昧な動画は「自分向けではない」と判断されやすい。差別化が欠かせません。サムネイルの工夫もかなり重要だと思います。

内波
「惹き」が弱いとスルーされやすい。内容が同じでも導入やちょっとした工夫でクリック率や視聴率は変わります。

成功事例から見る、視聴者の心を捉える要素とは

――今回のような健康促進動画を探す生活者の心理はどういうものだと思いますか?

浅川
「腰痛を治したい」など目的を持って検索するケースもありますが、SNSのタイムラインで流れてきて「ちょっとやってみよう」となる場合もあります。重要なのは、最初のきっかけ作りですね。

内波
今回は「働く世代の予防意識」をテーマにしました。病気になる前の段階で“不健康の種”に気づいてもらう。健在ニーズよりも「自分は健康」と思っている人に「もしかして?」と気づきを与えることを狙いました。主な配信先をYouTubeとXにしたのも、偶発的な気づきを広げたかったからです。

令和のトレンド病撃退ストレッチ-3movie

令和のトレンド病撃退ストレッチ!|健康コラム | けんぽれん「健康保険組合連合会」


――感情を喚起する“見られる動画”にはどんな秘訣があるのでしょうか?

浅川
僕が思っているのは、最初の数秒でまず “掴む”ということですね。それと最後まで飽きさせないこと。まあ、当たり前のことではあるんですが、それに尽きるかなと思います。僕は音楽と同じだなと思っていて、やっぱりイントロが重要だと思うんですね。イントロで惹きを作って、途中で転調して最後まで飽きさせずに聴かせるっていう。だから同じメロディーでも何か違うアレンジを加えるとか、だれさせない工夫っていうのは音楽、特にJ-POPの作り方に近いのかなって、このインタビューに臨んで改めて僕は感じました。

内波
“?”を仕込むのも大事です。「ゴリラ腕って何?」と気になって見てしまう。さらに相馬理(そうまさとる)さんのように、時勢に乗っていて、コアファンを持つ人をキャスティングすることで、ファンからの拡散も期待できました。

――けんぽれん様の今回の3本の動画制作にはどんな背景があったのでしょうか?

浅川
この動画を作る大きなテーマは、 超高齢社会に伴う医療費の増加です。 それに対していかに一人一人が健康を維持するか、いかに個人が健康意識を高めていくかが重要で、大きな意味で医療費を抑えるための施策の一つです。 そのための手助けとかきっかけ作りができる健康促進動画というのが今回のテーマになっています。いかにこの動画で健康維持を自分ごと化してもらうかが重要です。

見てもらえる動画の秘訣を探る

――「トレンド病」というタイトルが新しいニーズを掘り起こしている印象があります。
新しい顧客価値を表現しているように思えたのですが、このテーマがどういうふうに開発されていったのかお話を聞かせてください。

浅川
まずオリエンが来た時に、この仕事は軸となるフレームが重要だなという風に感じました。
腰痛や肩こり解消の運動、みたいな健康増進のためのいわゆる普通のトレーニングを紹介しますというだけでは、数多ある動画が溢れている中で埋没してしまいます。なので軸となるクリエイティブフレームが重要になると考えたんです。

その際に、生活者のトレンドを掴むことが重要で、「現代病」というテーマはどうだろうと。最新の「現代病」の症例をセレクトして、その対策のストレッチを紹介するという切り口にしようということですね。調べてみるとデジタル社会の弊害とか、コロナ以降の巣ごもりの弊害からくる疲れとか症例があって。その中には自分も常日頃感じていることや、「あるある!」みたいなこともありました。そういう視点も症例のセレクトの基準としながら、いくつかピックアップして、けんぽれん様とも相談しながら最終的に「ゴリラ腕」「テクノストレス不眠」「現代人の低体温化」という症例をセレクトしました。名前のインパクトも狙っていたりはするんですけど、「自分も思い当たるな、でも言われてみなければ感じなかった」というような症例を意識して選んでいきました。

「低体温化」については、得意先の方も実は自分もそうなんですよ、みたいな話があったりして、 症例の探索にうまくリンクしていったっていうところもありました。 同時にその解消となる今回のストレッチについては、Tarzanなどの雑誌でもトレーニングの監修をされている澤木一貴さんに入っていただいて、考案したという感じですね。 

――テーマ開発の経緯はそういうことだったのですね。「見てもらえる動画」の表現開発についてはいかがでしたか?外せない秘訣みたいなことはあるのでしょうか?

浅川
「見てもらえる」黄金率みたいなことまで、自分の中でできてはいないんですけど、「惹き」は一つじゃダメだなっていうのは、肌感覚で日頃から思っていました。今回の事例で言うと、エッジが立ったテーマが見つけられたなって思ったんですけど、それを具体的に動画として見てもらう工夫として、そこにさらに何か上乗せしていかなきゃいけないなって思っていて。

まずはキャストですね。ストレッチを紹介する方は拡散力のある方を前提にしたいというのがあって。最終的には、相馬理さんという当時、爆上戦隊ブンブンジャーという戦隊ヒーロー番組に出られていた方に出演していただきました。その相馬さんのファンやブンブンジャーのファン、こういう番組は親世代も見ていますから、そのあたりの拡散力も期待してキャスティングできたことで、惹きをひとつ作れた。

さらに動画の舞台設定も相馬さんというキャスティングと「トレンド病」というテーマに合わせて、 相馬さんをヒーローに仕立てたサイバー空間に仕立てました。いわゆる普通のトレーニングルームなどで収録している他のトレーニング動画とはちょっと見え方を変える工夫で、惹きをさらにひとつ作っています。さらに演出としても、ストレッチを行う際に症状の象徴であるキャラが登場します。「ゴリラ腕」だったらゴリラが出てくる、というように。それがストレッチをすることによって、だんだんと弱っていくことで、ゴリラ腕が解消されていくみたいな演出を入れています。視覚的に理解できるようにしているんですね。トレーニング動画でありながら、ちょっとしたゲーム性も入れて見て飽きさせない工夫をしています。

最後まで見てもらう、何度も見てもらうためには、二の矢、三の矢の「惹き」になる仕掛けを入れていくことが重要です。 例えテーマが強くてもそこで終わっちゃだめで、 アウトプットも強くないとだめなんですよね。
私たちはアウトプットでどこまでこだわれるかっていうのが重要かなと思っています。

――さっき動画の作り方をJ-POPの曲に例えておっしゃっていましたね。それがとてもユニークな視点に思えます。

浅川
例えば朝の連続テレビ小説のテーマ曲があります。あの曲も、1番と2番では違うメロディーになったりするんですよね。 後半からさらに新しいメロディーになったり、一曲の中でいろんな表情を見せる構成になっているように思えます。たまたまですけれど、そういうJ- POP の構成を、「惹き」をいくつも用意することの参考にしている気がします。 

――先ほどこの案件の背景には医療費の増加という社会課題があったと伺いました。オリエンからはどんなことが読み解けましたか。

内波
今回の企画にあたっては、老若男女を問わず多くの層の効果的な健康づくりに寄与する動画という与件がありました。高齢者向けでもなく若者向けでもない、という与件の中で、 ターゲットセグメントではなく、世の中の風潮、世の中ゴトで切り取る方が届きやすいのではと考えました。

そこで、多くの人が困っており共感できる症状でありながら、言語化できなかった、病気の種だと知らなかったという発見驚きがある症状を探索しました。

また、その症状を「令和の新しい現代病です」という大きなフレームにのせて伝えることで、与件を満たせると考えました。現代病にふさわしい症状はあれど、それを解決するストレッチをどう用意するかが、企画をする上での肝になりました。解決するストレッチがある症状もあれば、新たに作っていかないといけない症状もあります。

例えば「低体温症」。低体温になる直前の人に向けてどんなストレッチをすべきか、プロのトレーナーの方と一緒に議論して開発しました。従来のストレッチとは異なる「新しい情報」として、世の中に届き受け入れられたのかなと思います。

――社会課題やその背景を理解することから、より多くの人に共感をしていただくコンテンツが生まれたのですね。得意先からはどんな評価をいただいていますか?

浅川
けんぽれん様がこれまで実施した動画施策よりも、 結果として多くの「いいね」やリポストももらっています。担当者様からもとても好評で、この次の動画施策も競合ですが獲得できまして、少しずつクライアント様からの信頼を得ることができてきたと感じています。

大広のクリエイティブ力とその姿勢

――大広は「顧客価値」を標榜しています。今回伺った事例を含めて、大広クリエイティブのWeb動画制作の強みはどんなことになりますか?

浅川
大広は総合広告会社ですのでTVCM制作のノウハウを動画コンテンツに活かせていると感じます。今回はオールターゲットっていうオリエンでしたが、テーマ設定やフレーム作りもマス広告的な解釈でアプローチすることができました。クリエイティブ・ディレクターがTVCMとデジタルを並行してディレクションできて、そこに大広が得意とするダイレクトマーケティングの知見や、「惹き」を重ねることのような個人的な知見を積み重ねてアウトプットを作れることが強みかもしれません。

動画コンテンツの興味喚起ポイントになる「惹き」を何個も作るみたいな切り口っていうのは、他のどんな案件でも応用が効くかなと思っています。動画のテーマ探しはもちろん大切なんですけども、 そこで終わらないっていうことが重要です。

アウトプットとしての起爆スイッチというか、二の矢、三の矢みたいなポイントを打っていくっていう、そのフレームは結構重要かなって思っていますね。そのポイントを粘り強く作れるかが、案件獲得に関係してくるのかなと思っています。 

内波
今回の事例にもあてはまりますが、予算に関わらず得意先の要望に寄り添いながらも生活者に受け入れられるクオリティを追求することが、クリエイティブとして重要だと考えています。また、その姿勢が大広のDNAなのかなと思います。

――社会課題を軽やかに紐解いて、新しい顧客価値をそこに見つけること。そして表現上の「惹き」を重ねることなどは、「見てもらえる動画」のクリエイティブのヒントになりそうです。今日はありがとうございました。


まとめ

  • 動画制作においてターゲット層を明確にし、彼らのニーズや心理を理解することが重要である。
  • 成功する動画コンテンツには、視聴者の興味を引くための「惹き」が複数存在することが重要である。
  • 社会的なニーズや課題を捉え、それに基づいたクリエイティブなアプローチを取ることで、より広い層にリーチすることができ、企業が顧客価値を高めるための戦略的な視点を持つことが重要です。

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この記事の著者

COCAMP編集部

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。