2025年4月に大広の社内ユニット、大広GXU(グロースクロスユニット)が誕生しました。さまざまなプレイヤーとクロスし、新たな価値をグロースすることを目指す本ユニット。そのメンバーとつながりのある方々に、大広GXUとの仕事を通して見えた、強みや可能性をお聞きする本連載。第3回は西新井・堀田湯の元店長であり、銭湯×広告コラボを知り尽くした、株式会社ピクセルの大塚輝さん。銭湯の広告メディアとしての魅力、銭湯とコラボする際の注意事項、成功条件など、これまで50件以上のコラボ案件を経験してきた大塚さんだからこそ語れる内容を深掘りしてきました。
大塚 輝
株式会社ピクセル マネージャー
ウェディングプランナーから、銭湯の番台へ。2022年の堀田湯リニューアルプロジェクトをきっかけに銭湯事業に携わり、リニューアル以降は店長として運営責任者を務める。「西新井の街を、温める。」をコンセプトに店舗運営にとどまらず、街全体を巻き込んだ地域づくりに挑戦。また、堀田湯と小杉湯と博報堂ケトルがつくった銭湯広告社「沸かす株式会社」の代表として、銭湯と企業をつなぐ新たなプロモーションを企画。新規開発を通じて、温浴事業の可能性を広げている。
塩脇 生成
株式会社大広GXU ブランドエクスペリエンスグループ クリエイティブディレクター/コピーライター/プランナー
編集プロダクション、転職メディア、出版社、広告会社などを経て、2023年に博報堂ケトルへ。2025年より現職。主な受賞歴はACC、JAA広告賞、毎日広告デザイン賞、CCNなど。
ウェディング出身、異色の銭湯店長。
塩脇:まずは大塚さんの少し変わった経歴から伺っていきたいんですが、前職はウェディングプランナーでしたよね。
大塚:そうです。前職の社長だった堀田さんに「家業の堀田湯の店長をしないか?」と誘われて、堀田湯の店長になりました。
塩脇:もともと銭湯にはあまり興味なかったそうで、思いきった決断だなと。銭湯の店長って、そういう方は多いんですか?
大塚:ほとんど聞いたことないですね。店長の8~9割くらいは家業を継ぐ二代目・三代目の方だと思います。
塩脇:2022年にウェディング業界から銭湯に来て約3年。すでに50件以上の「堀田湯×企業」コラボを実現している大塚さん。最初はどんな点に苦労しましたか?
大塚:初めてのコラボが、誰もが知る超大手飲料メーカーだったんです。店長になってまだ1週間くらいの頃で「何も分からない僕が、こんな大企業の人たちとミーティングして良いのか?」という衝撃から始まりました。コラボを企画した博報堂ケトルの方々に、進行管理からアウトプットの意識まで、本当にたくさん教えてもらいながら進めていきました。
塩脇:2023年に僕が銭湯広告社「沸かす」の一員になった頃には、大塚さんはケトルメンバーのような動きをしていましたよ。企画から入って、進行管理もメディア対応もこなしていて、「なんだこの店長さん…」と(笑)。
大塚:ほぼ毎月のようにコラボがあったので、鍛えられましたね。ケトルの方々には「外の人」ではなく「仲間」として育ててもらったので、なんとか応えなければいけないと必死でした。
銭湯という、「没入メディア」。
塩脇:50件以上のコラボを実現してきた今。銭湯コラボの魅力は何だと思いますか?
大塚:日常の中で、自然に商品との接点が生まれることですね。おしゃれな街やイベントに行くような、気合いを入れた外出ではなく。ふらっとお風呂に入りに来る生活導線の中に商品が入り込める。そういった点で、バスケア商品、シャンプー、ドライヤー、飲料、食べ物など、日常商材との相性がすごく良いと思います。
塩脇:「広告だ!」という警戒心もなく、裸でリラックスしてから飲む一杯や、お風呂系の商品にとっては「最高の体験場所」になりますね。
大塚:もう1つ大きい魅力が、銭湯って今では貴重な「スマホを触れない場所」なんですよ。頭や体を洗っている時に、目の前に鏡広告があれば必ず目に入るし、お風呂の中でもぼーっと貼ってあるポスターなんかを眺めてしまう。
塩脇:視聴率100%メディア!たしかに、銭湯の中に入ったらスマホを触れないので、銭湯の暖簾をコラボ仕様に変えるとフォトスポットのようになりますね。これまでのコラボで一番感動した経験は何ですか?
大塚:コスメブランドとの仕事で、浴室にボディスクラブを置いて使い放題にしたんです。過去最大の行列ができて、それも若い女性がたくさん来てくれました。また、常連のおじさんたちが番台スタッフに商品のことを聞き、「それ買っていくわ」と購入していく姿に感動しましたね。本当はボディスクラブに興味があるけど、デパートの正規店には入りづらい。でもいつもの銭湯なら、商品のことを気軽に色々聞けるし、買っていける。銭湯って、そういう人にも商品が届く場所なんだと気付きました。
塩脇:逆に、注意している点はありますか?
大塚:一番大切なことは「常連さんが喜んでくれるか」。どれだけコラボで新しいお客さんが来ても、普段から来てくれる常連さんの居心地が悪くなったら意味がない。だから、企画には「銭湯がやることで、みんなが喜んでくれる必然性」が欠かせません。
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大黒湯の継承と、これからの大きな野望。
塩脇:大塚さんが最近まで店長を務めていた堀田湯と、事業継承されてマネージャーを担当する大黒湯についても触れたいです。
大塚:それぞれ対照的な楽しみ方ができる銭湯ですね。堀田湯はサウナ・水風呂・露天風呂など、“頭を使いながら選ぶ楽しさ”がある銭湯。対して、大黒湯は内風呂が2つでサウナや露天はないシンプルなお風呂。その分、“考えずに過ごせる居心地の良さ”があると思います。そんな特性も生かして、「このコラボは大黒湯のほうが良い。これは堀田湯向き」のような判断もできるかもしれないですね。
塩脇:堀田湯は足立区 西新井を象徴するような空間にもなり、大塚さんとご一緒した仕事では自治体(足立区)に動いてもらったこともありましたよね。
大塚:クライアントの話を聞くうちに「自治体まで仲間に入れて、企画を広げたほうが絶対良い!」と、足立区にも動いてもらうような流れになりました。堀田湯の実績があったからというよりは、企画に社会性や大義名分があったので乗ってこれたのだと思います。
塩脇:その仕事で、大塚さんはほぼプランナーのような動きをしていたと思いますが、「もっと企画したい!」という欲求はありますか?
大塚:めちゃくちゃあります。やっぱり広告に限らずアイデアを出せる人は強い。アイデアを考える訓練にもなるので、企画からどんどんやりたいです。
塩脇:最後に。これからやってみたいこと、野望はありますか?
大塚:東京都の全銭湯を巻き込んだコラボイベントのような、大きなプロジェクトに挑戦したいですね。もっと言えば、東京都じゃないほうが面白いかもしれない。どこか都道府県の銭湯組合と一緒になって、まるごと1つの地域を盛り上げてみたいです。
塩脇:全銭湯をコラボというのは聞いたことがないですね、是非チャレンジしましょう!
大塚:例えば、1年というスパンで契約していただいて、もっと深くコラボする仕事もしてみたいですね。普通は数週間なので、長期スパンでお互いに成長できるような取り組みにもトライしたいです。
塩脇:「全銭湯コラボ」と「年間コラボ」、どちらもワクワクしますね。実現に向けて企画を練ります!
大塚:この3年間、「誰よりもお風呂企画を考えてきた銭湯の店長」だと思います。レポートや積み上げてきたデータもあります。銭湯で何かしたいなら、まず最初に相談してほしいですね!
まとめ
いかにも「広告の顔つき」をした広告体験で、人の心は動きにくい。銭湯で起こる広告体験は強いメッセージを押し付けるのではなく、そっと寄り添う。だから心に入り込む。どんな状況で、どんな風に出会うか。その必然性があれば、商品の良さは想像以上に伝わっていく。銭湯は「人の生活とブランドを同じ温度でつなぐ場所」であると、あらためて勉強になりました。
【参考】
ピクセル/大塚輝
堀田湯 https://www.instagram.com/hottayu_nishiarai/
大黒湯 https://www.instagram.com/daikokuyu.kamimeguro/
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この記事の著者
塩脇 生成
株式会社大広GXU ブランドエクスペリエンスグループ



