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2025.12.15

【大広とクロスな人たち】 第2回「文脈を編み出し、接点を増やす。広告チームにこそPRパーソンを」マドベ/片山悠さん

大広とクロスな人たちシリーズキービジュアル

2025年4月に大広の社内ユニット、大広GXU(グロースクロスユニット)が誕生しました。さまざまなプレイヤーとクロスし、新たな価値をグロースすることを目指す本ユニット。そのメンバーとつながりのある方々に、大広GXUとの仕事を通して見えた、強みや可能性をお聞きする本連載。第2回はアパレル案件で、PRの視点やノウハウを注入していただいた株式会社マドベの片山悠さん。広告とPRの違い、PR視点で企画を立てるコツ、そして大広GXUへの期待について語っていただきました。

片山プロフィール(4T5)

片山 悠
株式会社マドベ PRディレクター

大学卒業後、オズマピーアールでプランニングからメディアリレーションズまで一貫して従事した後、2017年にメルカリに入社。同社では主にコーポレート領域を中心に、PR戦略の立案からオウンドメディアやリスクコミュニケーションまで幅広い業務を経験。2017年全社MVP受賞。2019年にマドベを創業し、事業会社の戦略パートナーやクリエイティブエージェンシーのプランナーとして活動。2021年から2025年まで博報堂ケトルに参画し、PRディレクターとして企業のPRを支援する。2025年からデザインファームのKESIKIに参画中。主な受賞歴にPRアワードグランプリ、ACC CM FESTIVALなど。

塩脇プロフィールT

塩脇 生成
株式会社大広GXU ブランドエクスペリエンスグループ クリエイティブディレクター/コピーライター/プランナー

編集プロダクション、転職メディア、出版社、広告会社などを経て、2023年に博報堂ケトルへ。2025年より現職。主な受賞歴はACC、JAA広告賞、毎日広告デザイン賞、CCNなど。

 

広告は収束。PRは発散。

塩脇:片山さんとはケトル在籍時に組む機会が多く、PRをわかっていなかった自分は常に新鮮な驚きや学びを得ていました。おさらいも兼ねて基本的なことを聞きますが、広告とPRって何が違うんでしょう?

片山:違いはいくつかあります。たとえば、マーケティング/広告活動は前提として消費者と向き合うもの。単一の向き合いが基本だと思いますが、PRは複数のステークホルダーと向き合って仲間を増やす活動。消費者だけではなく、投資家やその企業で働きたいと思っている人、地域の人など、あらゆる方面で仲間をつくることで効果が最大化されます。
また、他社との違いを探すのが広告だとしたら、他者と握れるところを探すのがPR。握れるというのは、共感できる部分や文脈と言ってもいいかもしれません。

塩脇片山さんは、その業界や商品まわりにどんな文脈があるかを徹底的に調べてからアイデア出しをしているという印象があります。

片山:広告会社やPR会社が作ったものではなく、既存の文脈にいかに乗っていくかが大事。多種多様な文脈を熟知していることがPRパーソンには求められます。

塩脇:広告とPRではアウトプットの仕方にも違いはありますか?

片山:収束と発散の違いと言えるかもしれません。1つのコアメッセージをコピーやビジュアルに収束させていくのが広告だとしたら、PRは複数のメッセージを発散させていくもの。たとえば、ウイスキーを売りたいとして、健康文脈では低糖質を訴求して、こだわりという文脈でシングルモルトとその他の違いという話を語るなど、拡げていきます。

塩脇:たしかに、広告は1つのことを強く伝えろと教わります。PRはベクトルが逆なんですね。

片山:あらゆる場面で生活者にコンタクトして、「最近いろんな場面でウイスキーの話を聞くな」という状況を生み出せる可能性があります。その「情報とのばったり感」をつくれるのもPRの力だと思います。

塩脇:前回登場した皆川さんも「1粒で何度も美味しい(いろんな文脈でコンタクトできる)企画は、良い企画」ということを繰り返し言っていました。最初から発散を意識してアイデアを練っていくやり方というのは、広告制作者、特にコピーライターにはないかもしれないですね。

片山:とは言え、PRの発散の先にも収束はあって。複数の編み出された文脈から強度のあるものを見定めて、コアを決めてさらに発散させていくイメージです。また、何か問題/課題があったとして、「それを解決できます!」と提示するのが広告だとしたら、PRは解決策ではなく問いを立てることも得意です。企業活動と問いを重ね合わせて、さらに解決策を探していく。また、「何を言うか?」「どう言うか?」がコピーには大事ですが、PRは「誰が言うか?誰に言ってもらうか?」が大事。WHATやHOWよりも、WHOを意識することで問題提起の伝わり方や社会の動き方が大きく変わります。

塩脇:PRの教科書として教えてもらった『ローマ法王に米を食べさせた男 (高野誠鮮 著/講談社+α新書)』にもその重要性が記されていますね。誰を動かすと、世の中が動くか。お米のPRのために、ローマ法王を動かした実話です。

「未来のプレスリリース」で、企画は判断できる。

塩脇:PR的な視点で企画を立てる際のコツやフレームはあるんですか?

片山:必ずやるのは、考えた企画が実現した時のことを想像して、頭の中でプレスリリースを書いてみること。初めてリリースを読む人に伝わる企画になっているか?何が新しさとして伝わるか?社会性はあるか?「初」や「最大」といったトピックはあるか?未来のプレスリリースを想像してみると、総合的に企画を判断することができます。

塩脇:皆川さんからは「企画が実現した時の、ニュースの見出しをイメージしよう」と言われていましたが、見出しとは違いますか?

片山:見出しは、広告コピーに近いものになる気がします。プレスリリースの場合は「このメディアにはこの部分が拾われて、また別のメディアには見出しがこの文脈で使われる」といった発散のイメージができます。複数の「撒き餌」を仕掛けるイメージでしょうか。「撒き餌」が足りないように感じる時は、何が企画にあれば良いかも判断できます。そのように、企画を批評的に見られるのもPRパーソンの強みかもしれません。

塩脇:他にも注意していることはありますか?

片山:PRパーソンとして、自分は「チームの中で、一番外側にいる人」だと意識することです。PRを担当していると企業愛や商品愛が強くなり過ぎることがあるのですが、PRパーソンとしては、客観的に外から見た感想を言えなくなると危ない。社会との接点にいるポジションであることを意識して、常に冷静な愛が必要です。

塩脇:なるほど、中と外の境目にいる感じですね。あ、だから片山さんの会社名は「マドベ」なんですか?

片山:まさに!社会との接点にいて調光したいという想いから名付けました。

2片山氏と対談

最初にPRパーソンを入れることで、戦略が変わる。

塩脇:広告会社と仕事をする場合、「こうしてくれたら楽なのに」と思うことはありますか?

片山:仕事に呼んでいただくタイミングですね。「もっと前から声をかけてくれたら良かったな…」というケースがありがちで。企画や表現が決まった段階で「このCMで、どうパブリシティを獲得しようか?」と相談していただいても選択肢が限られるので、クライアントからオリエンを受けたところで呼ばれるのが一番良いですね。そのタイミングであれば、「一人称的なCMよりも第三者に紹介してもらう方が重要なので、メディアを巻き込むシンボリックなアクションをやりましょう」といった提案もできるかもしれない。フィーの関係で呼びにくいのかもしれないけれど、そこは相談してもらえれば調整するので、たとえフィーが発生しなかったとしても最初に呼んでほしいですね。

塩脇:たしかにPRパーソンが最初からチームにいると、普通のチームを組んだ時とは戦略自体が大きく変わる場合がありますよね。それも、ケトルに居た時に感じた驚きです。

片山:企業参謀のように活躍しているクリエイティブディレクターやコピーライターの方はいて、PRパーソンもそうなれると思っています。ただ、難しいのはPRという仕事の性質上、実績のアピールがしづらい。少しずつ理解を深めて、仲間を増やして、仕事の領域を拡げていくしかないと思います。

塩脇:僕もその理解者の1人として、大広の案件で最初から片山さんに参加してもらい、やっぱりとても良かったと思いました。片山さんとしての感触はどうでしたか?

片山:大広さんとは初めての仕事で、新鮮だったのは企画打ち合わせの時にストプラや営業の人も企画を考えてきたこと。職種で担当を区切らずみんなで考えていて、良いチームだなと感じました。

塩脇:たしかに、職種関係なくみんなで進めた仕事でしたね。その時の企画出しでも、片山さんから時事ネタや社会的なトレンドがぽんぽん出ていた印象があるのですが、何かインプットのコツはありますか?

片山:インプットは仕事だと思っているので、めちゃくちゃニュースを見ています。たとえば、LINEのメディアアカウントはどんなものでも全て友だち追加して、時間があるときに情報収集。いろんな文脈のネタを頭に入れておいて、発散のさせ方やPRネタがとっさに出るようにしています。

塩脇:頭の中にPRネタアーカイブがあるんですね。早速、全アカウントを友だち追加して、インプットを真似してみます。最後に、大広GXUに期待すること、一緒にやりたいことはありますか?

片山:社外プレイヤーとX(クロス)して稼ぎを生み出すという動きはとても良いことだと思います。特にPRパーソンは独立が加速しているので、そういった人たちと組むのはメリットもある。広告代理店が扱う規模のプロモーション全体にPRの知見が入ると、大きなうねりになりやすいと思います。
個人としては、サービスやプロダクトを考えるような仕事を一緒にしたいですね。たとえば、みんなが悩む社会課題があったとして、それに特化したサービスを開発できれば、生まれた時からPR的なプロダクトとして社会に拡げやすい。

塩脇:サービス開発にPRパーソンを呼ぶという発想はなかったです。機会をつくって、すぐに呼びます。

片山:あとは、PRを軸に仕事しようという発想の人が広告会社に増えるとありがたいですね。PRパーソンを、プロモーションのパーツではなく、全体のOSとして見てもらえると。PRは広告に比べると不確実性が高く、うまくいかないことも正直あります。そこを1回きりで終わりではなく、たくさん仕事するなかで良い事例を積み上げていきたいですね。


まとめ

広告とPRは似て非なるもの。広告が「情報を収束した強いメッセージ」なら、PRは「文脈を発散させる問題提起」。誰が言うか、誰に言うか、その視点が社会を動かす力になります。今回の取材で見えたのは、PRパーソンを企画全体のOSとして組み込むことで、広告がもっと深くなる可能性があること。従来の方法やチーム構成では生まれない広告をつくるヒントがもらえた対談でした。

【参考】  
マドベ/片山悠  https://madobe.jp/


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この記事の著者

塩脇 生成

株式会社大広GXU ブランドエクスペリエンスグループ 

編集プロダクション、転職メディア、出版社、広告会社などを経て、2023年に博報堂ケトルへ。2025年より現職。主な受賞歴はACC、JAA広告賞、毎日広告デザイン賞、CCNなど。