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2024.12.13

シリーズ「今こそ、インフォマーシャル!」⑤良いインフォマーシャルはこうつくる!

今こそ、インフォマーシャル!⑤

シリーズ5回目の今回は、いよいよ実際の制作ノウハウについて。視聴者にササる放送素材をつくるテクニックとは。あの表現にはこんな裏付けがあったのか…。誰もが目にしたことのあるTVインフォマーシャルの、29分の映像の中に盛り込まれている制作ノウハウについて、大広WEDO折橋氏に語っていただきます。

[インタビュイー]

折橋雄一_500折橋 雄一 
(株)大広WEDO プロデュースDivision プランニングチーム
TV通販枠のバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にした企画・制作・メディア運用から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。

 

テレビ番組やテレビCM とはまったく違う、良いインフォマーシャルの条件とは?

――いきなりですが、ダメなインフォマーシャルのカタチがある、とのことですが。

折橋
はい。インフォマーシャルの素材をつくるにあたっては、当然、視聴者に訴求するための戦略とか、効果的な見せ方とかがあるのですが、それがわかっていないために効果につながらないものが結構あるのです。テレビで流す映像素材といっても、テレビ番組やCMとは考え方がずいぶん違いますから。

――それらとは、どのように違うのでしょうか。

折橋
たとえば、「続きはCMの後で!」と、視聴者をじらす演出はテレビ番組ではよくありますが、インフォマーシャルのお客様は待ってくれません。知りたいことはすぐ言わないとチャンネルを変えられてしまう。また、CMで使うような美しいイメージ映像は、インフォマーシャルの素材としては情報が足りないし、画面の美しさを優先して電話番号のような情報を小さくレイアウトしてしまうと、視認性が悪くなり、注文しづらいですよね。それはダメです。インフォマーシャルは、注文してもらうためのものなので。

――なるほど、同じ考え方では良いインフォマーシャルにならない、ということですね。情報の内容はどうでしょうか。

折橋
出稿する側の企業は、言いたいことがいっぱいあるわけです。自信を持って売っている商品ですから。そこで使いがちなのが、詳細なスペックや、特殊な専門用語、開発の理論などです。でも、情報を受け取る側の心理や知識量などを考えずに発信すると、まったく理解されず、買いたい気持ちを喚起できない。伝える情報は、「お客様が理解できるか」「聞きたい・見たい情報か」「聞いて・見て買いたくなるか」、という基準で、内容や表現方法を考える必要があります。そもそも視聴者は、あらかじめ興味があって視聴しているわけではなく、TVをみていたら偶然インフォマーシャルに出会ったという状況ですから、受け身です。だから徹底的に分かりやすくないといけません。

それに加えて、前回もお話しした薬機法など関連法への理解。これがないと、効果を狙うあまり場合によっては違法な表現をしてしまいかねません。

悪いインフォマーシャルとは

――インフォマーシャルならではのセオリーがあるわけですね。

折橋
結局のところ、情報の送り手側が自分たちの都合を視聴者に押し付けてしまうと、インフォマーシャルとしてうまくいかない、お客様からのレスポンスを得られない、という結果になると思います。

以下に、インフォマーシャルの核となる要素をまとめました。

インフォマーシャルの核となる要素

折橋
お客様にとってのベネフィット=商品が提供できる価値を、明確に、魅力的に伝えること。そのベネフィットを生み出しているUSPUnique Selling Proposition=商品やサービスの独自の強み)を、具体的に、お客様が納得できるように伝えること。そして、私は「一発明快ビジュアル」と呼んでいますが、それらを伝えるときに、お客様の感情に訴えかけるような、パッと見て一瞬で納得できるビジュアルで見せること。こうした基本的な要素を核として持った素材をつくると、訴求力の強い、良いインフォマーシャルができると思います。

重要なのは、どれだけ「お客様視点」で発信できるか。

――そういうポイントを押さえた上で、大切なこととは何でしょうか。

折橋
やはり、「お客様視点」ですね。先ほども申し上げたように、送り手発想、送り手の都合で発信する情報では、お客様は聞いてくれません。伝わりません。お客様の視点で考えて、お客様が聞きたい情報、お客様にメリットのある情報を伝えることが重要になってくると思います。

――伝え方の工夫という面ではどうでしょうか。

折橋
複雑な言葉や理屈で説明したり説得したりしても、なかなか購入には至りません。商品を買いたいと思うかどうかは、「感情を動かされるかどうか」で決まります。その意味で、五感に訴えかけるシズル映像やシズルワード、あたかもその場で自分が使っているような、疑似体験をさせるような表現が重要ですね。理屈ではなく、「五感を刺激し、疑似体験させる」ことを心掛ける必要があると思います。

――画面を通した疑似体験ですか。

折橋
その商品を使っている人の体験談はその代表です。視聴者は、画面の登場人物に自分を投影して、使用感を体験するわけです。映像で伝えるのが難しい嗅覚や触覚への訴求も、「〇〇のような、とっても香ばしい香り」「とろっーとした、クリーミーな感じ」などのように、オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)を使って表現するなど、工夫すれば十分に伝えられます。ちなみに日本語は特にオノマトペが多い言語だそうです。

「繰り返すこと」の重要性、良いインフォマーシャルの時間構成

――インフォマーシャルの素材には、時間構成上の特徴もあるのですよね。

折橋
長尺のインフォマーシャルの場合、購入者の約半数が15分以内の視聴で購入を決めており、10分以内という人も3分の1程度いることがアンケート調査でわかっています。そこで、56分の短いブロックで情報を完結させ、ブロックごとにCTACall to Action=行動喚起。注文を促す呼びかけ)の枠を設けて、番組のどこから見ても商品を理解でき、かつ注文できるよう制作します。そのブロックを、29分なら4回繰り返すわけです。

購入時のインフォマーシャル視聴時間

――あえて、同じ情報を繰り返すのですね。

折橋
といっても、各ブロックで同じ内容を繰り返すわけではありません。その商品で最も伝えたい情報――お客様のベネフィットやUSP(独自の強み)に関して、切り口や表現方法を変えて発信します。たとえば、野菜を原料にした商品で、「その主成分のすばらしさ」がUSPだったとします。その場合、その原料野菜と普通の野菜の違い、その原料野菜を育てる畑の環境の良さ、加工する工場のレポート、開発者の思い…というように、切り口を変えて伝えていくわけです。それらに、異なる体験談を組み合わせるなどして、短い時間でも理解でき、なおかつ続けて視聴しても飽きさせない工夫をします。短い時間でも納得して注文できるように、また、インフォマーシャルを冒頭から視聴できるかどうかも分かりませんので、冒頭から見ていない前提で制作しています。

――それで、実際に視聴者は番組全部を見ないで購入しているのですか?

折橋
はい。グラフを見てください。これは、あるTVインフォマーシャルにおけるお客様からの受電数を集計したものです。

受電分布例

折橋
グラフは、インフォマーシャルの放送開始から35分後までの受注を1分単位で集計し、受注数の構成比として示しています。同じインフォマーシャルですが、複数の放送回数で確認するためです。また、4つのCTAの位置もピンク色で表現しています。

この例では、フリーダイヤルを表示した開始2分からコールセンターに電話が入っていて、その後もほぼ切れ目なく受電しています。実は、これはレスポンスのよいコンテンツに共通する傾向なんです。

また、各ブロックのCTAで受電の「ヤマ」ができているのがよくわかると思います。CTAの決まり文句で、フリーダイヤルを読み上げた後、「今すぐお電話ください」と呼びかけるのは、そういうとお電話していただけるからです。このグラフを見ても、番組中のCTAが有効に機能していることが分かります。

短いブロックを繰り返し、お客様が好きなタイミングで注文できるようにすること、それがインフォマーシャルの重要なセオリーのひとつです。

PDCAサイクルを回してレスポンスを上げる!

――受電の様子など、データから様々なことがわかるのですね。

折橋
はい。調査をしてデータをとり、それをもとに改訂しブラッシュアップできるということは、店頭販売にはないインフォマーシャルの強みであり、とても重要なポイントです。

たとえば、さきほどの受電のデータでは、1回目のCTAのヤマが2回目以降に比べると少し低かった。つまり、直前の第1ブロックの内容に修正の余地があると考えます。他の調査の内容と合わせて、素材のどの部分をどのように修正すべきかを分析するのです。

――どのような調査をするのでしょうか。

折橋
我々大広では様々な調査メニューを設計しているのですが、たとえば、インフォマーシャルの制作前には、ロイヤル顧客を対象にアンケート調査を行ったり、クライアント企業に蓄積されているお客様の声を分析したりすることで、ターゲット層のインサイトを探ります。何が魅力でこの商品を購入したのかをクリアにします。そして、インフォマーシャル制作後には、購入者に対する「受電時の購入者調査」と、番組視聴者に対する「ターゲット視聴調査」などを行います。

「受電時の購入者調査」では、注文時に購入者に対してコールセンターのオペレーターが「どのシーンが印象に残りましたか?」という質問をし、回答いただくというものです。購入のための電話ですから、そんなに複雑なことは聞けませんが、購入意欲を刺激した要因をつかむのに有効です。ただ一方で、自分が購入する商品についてのネガティブな要素などは表れにくい傾向があります。

「ターゲット視聴調査」は、実際には購入していないけれど購入意欲がある人(ターゲット層)にインフォマーシャルを見ていただき、質問に回答いただくものです。この調査では、ニュアンスの豊かな詳細な回答が得られる場合が多く、また、未購入であることからネガティブな意見も引き出しやすい傾向にあるため、素材の改善につながる意見が得られます。

 

――そうした声によって、放送素材を改訂していくということですね。

折橋
はい。設計によっては、本放送の前にトライアル放送と調査を実施してレスポンスを上げるための改訂を行う場合もありますし、放送前にウェブでストリーミング調査を実施して放送でのリスクを軽減するための改訂を行う場合もあります。そうした調査を基に「個別シーン評価表」というものを作成し、シーンごとに分析・評価を行います。評価が高かったシーンは増やすなどして強化し、評価が低かったシーンは削除するなどして、どんどんブラッシュアップしていくわけです。

――放送しながら改善していくのですね。

折橋
きちんと調査をしてお客様の声を聞き、それを分析しながら進めていくので、どこが良くてどこが悪いか、ということが明確になってきますし、改善によってレスポンスも維持できる。

我々大広の調査メニューは、長年、インフォマーシャルに携わり、様々な方法を試行錯誤してつくりあげたものです。勘や経験ではなく、明確なエビデンスに基づいてPDCAサイクルを回していく。それができるのがTVインフォマーシャルの強みであり、我々大広の強みでもあると考えています。

次回からは、この調査結果の蓄積から、具体的なシーンを例に用いながら、良いインフォマーシャル表現と悪いインフォマーシャル表現の特徴を解説します。意外な表現が効果があったり、逆に、効果を台無しにしている表現ってこんなちょっとしたことなのか、ときっと驚かれると思いますよ。

――知っているのと知らないのとでは、大違いということですね。楽しみです!


まとめ

■いいインフォマーシャルをつくるには、お客様視点を徹底することが重要。

■お客様にとってのベネフィットと、それを裏付ける情報を、一発明快ビジュアルで見せる。

■短いブロックを重ねる構成で、すぐに理解でき、いつでも注文できる番組をつくる。

■お客様の声に基づく調査・分析で常に素材を改訂、PDCAサイクルを回してレスポンスを上げる。


 

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この記事の著者

折橋 雄一

メディアバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にしたアクイジション領域から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。調査と分析を核としたPDCAと、得られた知見を統合しオジリナルメソッドを開発することに力を注いでおり、通販の顧客インサイトを可視化した「カスタマージャーニーマップ」や口コミ循環のマーケティングモデルである「アンバサダーハリケーンモデル」、顧客育成のプロセス全体を描いた「CRMサクセスマップ」を開発。