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2024.10.02

シリーズ「今こそ、インフォマーシャル!」② TVインフォマーシャルって、何ができるの?

ダイレクトマーケティングにとって、今も変わらず有効な手法であるTVインフォマーシャル。シリーズ2回目となる今回は、実際の事例を通じてTVインフォマーシャルの効果について解説します。企業はTVインフォマーシャルに何を期待できるのか、どんな効果を得られるのか、また、最近の傾向についても探っていきます。

[インタビュイー]

宮入穂高_500宮入 穂高 
(株)ディー・クリエイト カスタマ―ビジネスプロデュース局 CBP部 部長
2010年ディー・クリエイト入社。メディアの買付セクションを経て、現在は営業チームでメディアプランニング、レスポンス分析、インフォマーシャル制作などに従事。これまで担当してきたダイレクト系企業は30社以上。

 

折橋雄一_500折橋 雄一 
(株)大広WEDO プロデュースDivision プランニングチーム
TV通販枠のバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にした企画・制作・メディア運用から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。

企業に合わせたオーダーメイドの提案が基本

――前回は、TVインフォマーシャルの歴史を紐解きつつ、放送時間による特性などについて解説いただきました。また、大広グループのシナジーについてもお話しいただきました。

折橋
前回の復習になりますが、TVインフォマーシャルの枠は、14分、29分といった長尺と、60秒、120秒といった短尺に分けられます。長尺の場合は、いろいろな情報を盛り込んでお客様に理解・納得していただくことができますから、販売価格の高い商品や、商品の背景を理解していただきたい商品やサービス分野にも適しています。短尺の場合は、気軽に買える比較的価格の安い商品、もしくは、まず無料のお試し品を申し込んでいただき、段階を経て本品購入につなげる、といった場合に適していることをお話ししました。

――実際にTVインフォマーシャルを放送する時には、ほかにどのようなことを検討するのでしょうか。

宮入
長尺と短尺では、放送される場所にも違いがあります。短尺の場合は、ドラマなどの番組の間に流れることが多いので、その番組を見ているターゲット層に合わせて放送枠を選びやすいという特徴があります。また、長尺と短尺では放送素材の制作費や製作期間も違ってくるため、予算をあまりかけられないとか、早く出稿したいといった場合には短尺を選ぶということも、ひとつの傾向としてあげられます。

インフォマーシャルの時間別の特徴

[放送時間の違いによる特徴]

折橋
予算や制作期間などの事情はクライアントさまによって様々ですから、それに合わせたご提案をする、というのが基本です。情報量の多さからいえば、長尺に勝るものはないと思いますし、いったん29分の映像をつくっておけば、短尺の映像が必要な場合にもそこから編集して制作できますから、多様な放送枠に対応することもできる。時間をかけて視聴者に理解・納得していただくことができるのはTVインフォマーシャルの強みでもありますから、可能であれば、長尺の素材制作を推奨したい、というのが私の意見です。

――放送枠も、企業ごとに提案するのですね。

宮入
はい。前回もお話しましたが、通常、TVインフォマーシャルを放送する場合には、まず、テストを行います。いきなり大きな予算をかけて放送するのはリスクが高いですから。時間や放送エリアの特徴的なところをいくつか組み合わせて、視聴者からの反応をテストします。地方局と大都市圏、深夜・早朝と昼間…という風に、最初はある程度の幅を持たせて放送してみる。もちろん、私たちがこれまで蓄積してきた知見から、その商品に合わせた枠を組み合わせるのですが、その結果を分析しながら次のステップに進みます。

折橋
テスト期間の反応によって、コールセンターの体制も最適なところがわかってきますよね。それらを総合して提案できるところがディー・クリエイトの強みであり、大広グループの提案力にもつながっていると思います。

 

TVインフォマーシャルの傾向と新たな変化

――実際に放送されているTVインフォマーシャルは、どういうジャンルのものが多いのでしょうか。

宮入
ディー・クリエイトが把握しているデータでは、20244月から6月の3カ月間に、5分以上のTVインフォマーシャルが約7万2000本、ひと月に換算すると約24000本放送されています。そのうちの約4割が健康食品、10%あまりがコスメで、この2分野で半分以上を占めていることになります。この傾向は、時期を問わず変わっていません。

TVインフォマーシャルの商品分野別放送回数

[TVインフォマーシャルの商品分野別放送回数]

 

――その中でも、最近の変化があるとすると、どういうところでしょうか。

宮入
一般の食品は増える傾向が見られますね。魚介類などの特産品や、おせちなども増えました。また、旅行などのサービス系も伸びてきています。これについては、後でもう少し詳しくお話ししたいと思います。

 

――TVインフォマーシャルによってどのような効果が期待できるのか、実際に手掛けられた事例でご説明いただけますか。

宮入
はい。ある健康食品の事例ですが、すでに29分のTVインフォマーシャルを継続して放送していたが、売り上げが伸び悩んでいたというものがありました。私たちがご相談を受けて、その原因が何なのか――映像素材の内容なのか、放送枠の問題なのか…といった状況分析を行いました。

その事例では、商品の基幹成分が、有効性は非常に高いがまだあまり知られていない、耳慣れないものだったのですが、既存の映像素材では十分に理解が得られていないというのが私たちの分析でした。そこで、その成分について丁寧に訴求したほうがいいというご提案をして、私たちで新たな映像素材を制作しました。見直しの議論の中で、クライアントからは29分が長すぎるのではないか、という意見も出たのですが、成分の訴求も含めて、商品をきちんと理解していただくには、29分という長さが必要だと判断しました。

――どのような結果になったのですか。

宮入
5年の間に売り上げが3倍以上に伸びました。その間、映像のブラッシュアップのお手伝いもし、放送枠の最適化も図りながら、お付き合いが続いています。

宮入穂高

「体験型」商品もTVインフォマーシャルが活きる!

――さきほど、サービス系の商品でもTVインフォマーシャルが増えているというお話が出ましたが…

宮入
はい。サービス系のTVインフォマーシャルは確実に増えてきています。そのひとつが、旅行です。クルーズ船の旅行プランとか、バスツアーとかですね。それから、シニア向けスマホを販売しつつ、来店促進も同時に行う、というようなものもありました。

折橋
私がかかわった案件では、ゴルフクラブのカスタムフィッティング、旅行積立、育毛サロン、中古車買取などがありましたね。

宮入
リフォーム会社のTVインフォマーシャルも増えてきています。

――共通する傾向はあるのでしょうか。

折橋
TVインフォマーシャルを通して疑似体験の機会を提供する、ということだと思います。サービス分野の商品の場合、「買って終わり」の商品以上に、内容がわからないと警戒感が生まれやすい。だから、実際にどのようなサービスを提供するのか、その流れを見せて安心感や納得感を醸成することが効果的なんです。

一連のサービス内容をそのまま、そこまで見せるかというくらいしっかりと見せることで、リアリティを感じていただけますし、実際に後日サービスを提供する段階では、お客様から「TVで見たのと同じ!」と言われることもあるそうです。そういう意味では、非常にスムーズに商談が進められらます。

余談ですが、制作した29分インフォマーシャルの試写で、その企業のトップが、「これを見ればうちの業務内容が一発で分かるから、新人研修にも使ったらいったらいいんじゃないか」とおっしゃったそうです。それくらいわかりやすい、と。

折橋雄一

宮入
旅行であれば、すばらしい景色やおいしそうな食事を見せて、旅の疑似体験をさせる。リフォームであれば、「こういう手順で工事を請け負う」「こんなに美しくリフォームした事例がある」ということを見せて、「わが家なら…」と想像させる。それを実際に体験してみたい、という気持ちをかきたてるわけです。こうしたサービス系のTVインフォマーシャルには大きな可能性があると思いますし、これからますます増えてくると予想しています。

 

予算の負担を減らす新たな「キャラバン型」など、時代に合わせた変化も

――映像素材の制作にも、新たな傾向が見えているということですが…。

宮入
「キャラバン型」がそうです。「キャラバン型」は、TVインフォマーシャルの黎明期には、ひとつの番組内で複数の企業の商品を「相乗り」で紹介することを指していました。今ではそのスタイルは減ってきましたが、その代わりに、2010年ごろから、制作段階を「相乗り」する新たな手法が広がりました。

――どのようなメリットがあるのでしょうか。

宮入
1社で29分の放送素材を制作するには、やはりそれなりの費用がかかります。そこで、スタジオや制作スタッフ、機材、出演するタレントなどを“相乗り”して制作費用を抑えようという方法です。スタートアップなど予算規模が大きくない企業にとってはメリットがあり、TVインフォマーシャルを活用する動きを後押ししてきました。ただ、一方で、制作でのキャラバンが増えると、どうしても同じスタジオ、同じ出演者や演出が重なり、既視感が生まれるという弊害もあります。

――デメリットもあると。

宮入
はい。29分キャラバンの基本的な作りは、いわゆるテレビの情報番組風のセットがあり、そこに番組進行役とリアクターとなるタレントが複数人いて、商品について語ったり体験したりして購入に繋げるというのが一般的です。そのため、タレントがリアクションを取りやすいオファー(視聴者が購入する条件)が強い商品の方が優位な傾向があります。つまり、通常●●円がこの番組だけ▲▲円!といった内容で、そうなると視聴者は衝動的な購入となりがちです。実際、我々が把握しているところでも、商品が届いた段階で一定数購入の覚えがないというお客様がいらっしゃいました。

そこで、私たちディー・クリエイトでは、これまでの29分型のキャラバンとは一線を画す形の番組を模索し、たどり浮いたのが短尺型のオリジナルキャラバンになります。他の通販番組には出演されていない著名なタレントをホスト役に立て、企業担当者との掛け合いを通じて視聴者目線で商品のUSPを伝えていく番組内容になっています。

実際の例ですが、クライアントから高級なお塩を販売したいという与件を頂いた事がありました。6,000円近くもするお塩なのですが、タレントと企業担当者の掛け合いの中で高級な理由や希少性、開発の想いや味について丁寧に説明していったところ、商品値引きなしで目標CPOをクリアする事が出来ました。また、この時には訴求軸違いの素材を2パターン作り、テストさせる事で明らかな有意差が出て、視聴者が何を求めているのか、というファインディングスがあった事も一つの成果でした。29分ではこのようなABテストは難しい為、短尺型である事のメリットを活用できたと考えています。

ディー・クリエイトのオリジナルキャラバンは、立ち上げから2年あまりが経過して、今では多くの企業から引き合いをいただいています。

 

――TVインフォマーシャルは、制作の部分でも時代に合わせて変化しているわけですね。ありがとうございました。次回は、メディアバイイングのノウハウについてうかがいます。

まとめ

■多様な放送枠から、企業ごとに最適なみ合わせを提案。効果の最大化をはかっている。

■TVインフォマーシャルの可能性は、旅行やリフォームなど、サービス分野にも広がっている。

■放送素材の制作にも、予算を抑えて質を高める新しい取り組みが始まっている。

この記事の著者

COCAMP編集室

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。