インフォマーシャルとは、インフォメーションとコマーシャルを掛け合わせた造語。テレビ番組を通じて視聴者に訴求し、購買につなげるダイレクトマーケティングの手法のひとつです。アメリカで誕生し、日本にもたらされて約30年。コロナ禍の在宅時間の増加よりTV通販市場は拡大、成長戦略の軸にすえる企業が増えるなど、いま、再び注目されています。
このシリーズでは、TVインフォマーシャルの可能性を探るとともに、大広グループがそれぞれの専門性を結集することで得られるシナジーについて解説します。第1回目は、TVインフォマーシャルのこれまでの変遷と、現在地について。
お話いただくのは、TVインフォマーシャルの制作を数多く実施してきた大広WEDOの折橋雄一さん、メディアバイイングを中心にクライアントに伴走するディー・クリエイトの宮入穂高さん。後半にはコールセンターの体制づくりでプロジェクトを支えるアイビーシステムの小林かほりさんにも参加いただきます。
[インタビュイー]
折橋 雄一
(株)大広WEDO プロデュースDivision プランニングチーム
TV通販枠のバイイング、TV通販会社の営業担当を経て、ダイレクトマーケティング業務に従事。TVインフォマーシャルを中心にした企画・制作・メディア運用から、CRM戦略立案や顧客育成プログラム立案等のクライアントサポートを推進。
宮入 穂高
(株)ディー・クリエイト カスタマ―ビジネスプロデュース局 CBP部 部長
2010年ディー・クリエイト入社。メディアの買付セクションを経て、現在は営業チームでメディアプランニング、レスポンス分析、インフォマーシャル制作などに従事。これまで担当してきたダイレクト系企業は30社以上。
小林 かほり
アイビーシステム(株)池袋コールセンター サブマネージャー
オペレーターで入社、スーパーバイザーを経て、現在は複数クライアント企業を担当するチームのマネージャーとして従事。通販の新規受電を中心に様々な商材の受電業務を担当。
誰もが驚いた、長尺「29分パッケージ」の衝撃
――TVインフォマーシャルという形態は、どのように始まったのでしょうか。
折橋
アメリカでは、1980年代にケーブルテレビ網が発達し、いわゆるキー局以外のローカルケーブルテレビ局が次々に生まれたことで、放送枠が大幅に増えました。供給が増え、単価が下がったことで、様々な企業が参入しやすくなったわけですが、特に、ダイレクトビジネスを行う企業にとっては、好機となりました。そこで生まれた手法が、買い取った放送枠で自社制作の映像パッケージを放送するTVインフォマーシャルです。このスタイルが日本に取り入れられたのが1990年代初頭。最初の商品はアメリカ製のフィットネス器具だったといわれていますが、深夜枠で、アメリカ制作の映像に日本語訳の音声をのせて流していました。15秒や30秒、せいぜい1分といったCMが基本の時代に、29分の放送枠で1商品しか扱わないTVインフォマーシャルの手法は、とてもセンセーショナルでした。
――それまでにない手法だったわけですね。
折橋
はい。当時も、番組中にコーナーを設ける生コマーシャルとか、番組として複数の商品を紹介するテレビショッピングという手法はありましたが、TVインフォマーシャルの場合は、なんといっても「29分で1商品」という時間の長さが特徴的です。また、出稿する企業側が映像素材を制作し、それをそのまま放映するというスタイルですから、自分たちの商品の良さを時間をかけて、様々な切り口で存分に訴求することができるという意味でも画期的でした。
――その後は、どのように広がっていったのでしょうか。
折橋
日本では、いわゆるバブル崩壊後、放送局も収入減を補う必要がありました。そこでTVで通信販売を行える持ち込み放送枠(いわるゆる通販枠)というものを増やしていったのです。深夜や早朝なども含めて通販枠を増やしていったわけですが、そこに通信販売を行う事業者が参入していきました。
健康食品の通販会社やベンチャー企業などもTV通販枠を利用するようになり、TVインフォマーシャルの市場が一気に大きくなりました。
宮入
ちょうど、多くのBS局・CS局が開局した時期とも重なっていましたね。視聴者がなかなか広がらなかったことから、ここでも、TVインフォマーシャルに向けた29分の放送枠を比較的安価に販売するようになりました。それに通販会社などが反応し、一気に普及したという背景もあります。資本力のある一部の企業しか出稿できなかった広告の分野が、BSやCS局のTVインフォマーシャルによって間口を広げ、スタートアップ企業や中小企業も参入できるようになっていきました。
TVインフォマーシャルの様々なパターン
――TVインフォマーシャルには、どのようなタイプがあるのでしょうか。
折橋
さきほどからお話ししている29分、もしくは14分という番組タイプのものと、90秒から3~4分というスポットタイプのものがあります。
[TVインフォマーシャルの時間枠]
――どのように使い分けるのでしょうか。
折橋
ひとつの基準は、商品の価格帯です。短いスポットタイプでは、何万円もするような高額商品を売ることは難しいので、化粧品の「お試し商品」とか、安価で買いやすい商品、すでに知名度が確立している商品などが適しているといえます。一方、高額な商品は、しっかりと時間を使って訴求することが有効です。29分あれば、商品に関してしっかりとした十分な説明ができます。例えば、社長や開発者がどういう人物で、どういう思いを持って開発したのかとか、原材料がどういうものでどこで生産しているのかといった、商品の背景や企業のこだわりを十分に伝えることができます。29分のTVインフォマーシャルでは、高額な商品や定期購入コースなどでの販売事例もたくさんあります。
[放送時間の長さによる使い分け]
宮入
実際のレスポンスは、放送枠の特徴(放送局、曜日、時間帯)に加えて、商品そのもの、映像素材の内容という3つの要素によって左右されます。ですから、私たちが放送枠をご提案するときも、最初は異なる放送枠を組み合わせてスタートし、最も有効なパターンを見極める、ということを行いますね。
再評価されるTVインフォマーシャル
――あらためて、TVインフォマーシャルという手法の利点・強みについて、教えてください。
折橋
やはり、商品について自由に詳しく説明できるということは企業にとって大きな魅力です。なにしろ、29分のTVインフォマーシャルは、29分間という圧倒的な時間がTV放送で使えるわけですから。
また、躍動感のある映像や音楽を使い、顧客の声を盛り込むなど、見る人の感情にストレートに訴求できることも強みです。
そして、視聴者は、すでに何らかのニーズがあって情報に接するデジタルメディアとは違って、ある意味「偶然に」TVインフォマーシャル番組(商品)と出会うわけです。説明を見て納得しているうちに、これまで意識されていなかった自分のニーズに気づいたりすることもあります。そういう意味でも、多くの人にリーチし、ニーズを喚起するというチカラも持っています
実は、TVインフォマーシャルは、健康食品や化粧品分野だけでなく、サービス分野において、成功の可能性が大きいと思います。例えば、「旅行・観光」、「ホテル・旅館」、「美容」、「金融サービス」、「教育」、「フィットネスやジム」、「不動産」、「ペット関連」、「演劇、エンターテイメント関連」、それに「買取サービス」など。実際にサービスを疑似体験できるようなコンテンツで見せることができるので、非常に分かりやすいのです。疑似体験の中で、自社の「こだわり」もきちんと理解していただくことができますから、納得感も強く感じます。
このサービス領域においては、まだまだTVインフォマ―シャル展開している企業は少ないので、大いにチャンスがありますし、これからどんどん参入社が増えてくると思います。
宮入
「規模の拡大のしやすさ」という点も大きいと思います。通販企業にとってTVインフォマーシャルというのは「売り場」ですから、採算がとれる売り場が増えることはとても価値のあることです。放送局は日本全国で百数十局ある。最初は限定的なテストからスタートして、クリエイティブや尺(放送時間)などの「勝ちパターン」が見つかれば、一気に事業を拡大できるところは大きな魅力ですね。直近のデータでも、健康食品の売り上げトップ20社のうち、約8割はTVインフォマーシャルを活用しています。また最近では、デジタルマーケット専業で展開してきた企業がTVインフォマーシャルを検討する、というパターンも増えてきています。
折橋
さらに言えば、既存顧客の継続率アップや離脱防止にも効果が見込めます。テレビ離れなどと言われていますが、テレビに対する人々の信頼感はまだまだ高い。自分の購入した商品をTVインフォマーシャルを通して見ることは、安心感や自分の選択が間違っていなかったという確認につながりますし、「そういえば、こういう思いでこの商品を買ったんだったなぁ」と記憶を喚起し、継続の意思を強化する効果も期待できます。
宮入
実際に、TVインフォマーシャルを見てかかってくる電話のうち約2割は既存顧客からの問い合わせだったりリピート購入だったりします。TVインフォマーシャルが再購入を促すトリガーになっているのは間違いないですね。
最適解を導く大広グループのシナジー
――様々な効果が期待できるTVインフォマーシャルですが、大広グループとしては、どのような強みを持っているのでしょうか。
折橋
大広には、40年以上前からダイレクトマーケティング分野に取り組んできた、業界でもトップクラスの実績があります。顧客のインサイトに向き合い、顧客の心をつかむコンテンツをつくり続けてきたからこそ、顧客獲得からCRM、カスタマーサポートやコールセンターまでを含めて総合的なお手伝いができると自負しています。
宮入
ディー・クリエイトは、TVインフォマーシャルのメディアバイイングを主力として始まった会社です。TVインフォマーシャルに特化しており、どこの枠で、どんな商品がどれくらい売れたのかといったデータの蓄積には大きなアドバンテージがあると思います。また、テレビ局からたくさんの放送枠をまとめて買い取りますから、クライアントさまの状況や商材の特性に合わせて、放送局、放送の長さや曜日・時間帯を最適な形で組み合わせてご提案することができる強みもあります。さらに、出稿後のデータ分析なども緻密に行うので、確かな効果測定を行いながらプロジェクトを進めていただくことができます。
――アイビーシステムはコールセンターの運営を行っています。どういうことに注力するのでしょうか。
小林
TVインフォマーシャルの対応では、放送予定や番組内容、予測コール数に応じて、最適な人的体制をつくることがとても重要です。また、ターゲットや目的に合わせたトークスクリプトやFAQの作成、実際にお客様に対応するエージェントの研修も欠かせません。対応業務後のレポーティング、分析などにも力を入れています。大広、ディー・クリエイトと緊密に連携し、クライアント企業、商材の情報を共有できるからこそ、万全の体制を整えることができると考えています。
――顧客対応をする上ではどういうことが重要になるのでしょうか。
小林
TVインフォマーシャルを見て電話をされる方の多くは新規顧客ですから、最初に対応するコールセンターはクライアントの「顔」であり、お客様とクライアントの架け橋だと考えています。単に受注するだけではなく、クライアントのファンになっていただきたい。そのために、応対する全員が商品に精通し、たとえば継続して使用いただくことの大切さなどもしっかりとお伝えできるようにしています。コールセンターは、LTVの向上、ロイヤル顧客の育成につながる重要な役割を担っていると考えて業務を行っています。
宮入
アイビーシステムは、クライアントごとに入念な準備をして確実な対応をしてくれる、信頼できるパートナーです。TVインフォマーシャルは深夜や早朝の枠も多いですが、アイビーシステムはそうした通販の対応にも慣れていて、24時間体制で対応してくれる。機会ロスをできるだけなくし、なおかつ過剰にならないような体制を構築でき、とても頼りになります。
折橋
大広とディー・クリエイト、アイビーシステムがしっかりと連携することで、ワンストップでTVインフォマーシャル業務をお受けできる、クライアント企業にとっての最適解をご提案できるというのは強みだと思っています。今はデジタルメディアが大きく伸びている時代ですが、これまでお話ししてきたように、TVインフォマーシャルは強力な顧客獲得のチャネルですし、サービス分野では、大きなチャンスがあると考えています。
――ありがとうございました。次回は、実際の事例に基づいて、TVインフォマーシャルの可能性をさらに深堀りしたいと思います。
まとめ
■日本でのTVインフォマーシャルの歴史は30年以上。現在も効率の良い顧客獲得の有効な手法。
■29分という時間をかけて商品やサービスを魅力的に説明できる他にはないチャネルであり、購入に際して説明が必要な企業やサービス分野では大きなチャンスがある。
■ダイレクトマーケティングの実績を積み重ねてきた大広グループなら、ワンストップで最適なご提案が可能。