2025年4月に大広の社内ユニット、大広GXU(グロースクロスユニット)が誕生しました。さまざまなプレイヤーとクロスし、新たな価値をグロースすることを目指す本ユニット。そのメンバーとつながりのある方々に、大広GXUとの仕事を通して見えた、強みや可能性をお聞きする本連載。第7回は、2012年から下北沢で営業を続ける、ビールの飲める書店「本屋 B&B」です。毎日イベントを行うユニークな書店でもあるB&Bで、これまでに数千回のイベント企画を担当してきた中川さんと酒井さんに、その苦労や秘訣をお聞きしました。
中川 紀彦
株式会社博報堂ケトル 編集者/プロデューサー
編集プロダクションや制作会社を経て、2014年に博報堂ケトルへ。同時にB&Bのイベント企画/運営にも参画。以来12年間、多数のイベントに関わる。編集者として培ったコンテンツ作りのスキルと、音楽への幅広い知識や愛をイベントに注ぐ。『下北沢経済新聞』編集長。
酒井 和也
株式会社博報堂ケトル 編集者/プロデューサ
芸能プロダクションやスタートアップ、広告会社などを渡り歩き2023年から現職。雑誌、新聞、テレビといったメディアを担当してきた知見や、趣味の「格闘技/プロレス好き」をイベント企画に生かしている。
塩脇 生成
株式会社大広GXU ブランドエクスペリエンスグループ クリエイティブディレクター/コピーライター/プランナー
編集プロダクション、転職メディア、出版社、広告会社などを経て、2023年に博報堂ケトルへ。2025年より現職。主な受賞歴はACC、JAA広告賞、毎日広告デザイン賞、CCNなど。
「毎日イベントを行う本屋さん」。
塩脇:2012年に下北沢で誕生した「本屋 B&B(books and beer)」。店名の由来でもある、ビールが飲める本屋さんという素敵な特徴があります。加えて店内で“毎日”イベントを行うという、プランナーから見ると狂気的な側面も…。中川さんは2014年からかなりのイベントに関わっているそうですね。
中川:100%ではないですが、多くのイベントに携わってきました。
塩脇:2014年からこれまでに、4000本くらいのイベントを企画/運営してきた計算になります。とてつもない数ですね…。
中川:大変そうと言われるのですが、コロナ前は今よりずっとシンプルで。話を聞きたくなる著者同士の組み合わせとトークテーマを企画して、交渉して、当日運営するという流れでした。
酒井:コロナ後、トークイベントのライブ配信が始まってからが大変だったんですよね。
中川:当日の受付やイベント進行に加えて、配信準備やオンライン参加者の対応まで一人で担うことになって、さすがに回らなくなりました。専任のスタッフに入ってもらったり、作業分担したりすることで、ようやく余裕が出てきました。その後、酒井さんが参加してくれて、担当イベントを以前に増して分担できるようになり本当に助かっています。
塩脇:中川さんが参加したばかりの12年前と比べて、イベントのテーマや方向性は変わりましたか?
中川:昔はエンタメ系が多かった印象ですね。「ちょっとお酒飲むついでに」くらいのノリで来る人も多かった。今はもう少し、テーマがシリアスなものも増えてきましたね。エンタメよりも「今困っている・悩んでいること」に対するテーマを求められる傾向が強くなっています。このあたりは、出版市場や読者の変化と連動しながら、イベントの中身も更新しています。
塩脇:中川さんも酒井さんも、イベント企画は得意ですか?
中川:得意とはいまだに思えませんが、がむしゃらにやっていたら、なんとなくできるようになったという感じです。今でも当てが外れてしまうことがよくありますから、傾向やセオリーは見えつつも日々トライ&エラーを繰り返していますね。下北沢という場所の特性やB&Bの文脈と、音楽好きといった自分の強みを掛け合わせて企画をひねり出しています。
酒井:自分の好きなジャンルや得意な領域なら、パッと企画アイデアが湧いてきますよね。でも、それ以外の馴染みの薄い分野となると…正直なところ、すごく悩みます。イベントテーマは間口を広げ過ぎてもダメですが、絞り過ぎても広がらない。そのバランスはやりながら分かってきました。テーマは最終的にその場で結論が出なくても良いし、参加した人が課題を持ち帰るような形もアリだと思っています。
中川:ライブ性やタイムリーさも大事ですね。よく聴いている芸人さんのラジオと連動した企画を行なった時には、数百人が集まって、本を百部単位で販売したこともありました。これは会心のイベントでしたね。
イベントは「実験場」でもある。
塩脇:B&Bのサイトを見ると、錚々たる方々が登壇されていますね。
中川:普通の本屋さんには我々のようなイベント専任スタッフはいませんし、こんなに長くやっている人もいない。場としても経験と歴史がある分、著名な方にもオファーできているという面があると思います。
酒井:登壇者の記録は全部B&Bのサイトに残っていて、これはある意味貴重なデータベースになっています。
塩脇:別のテーマでイベントを組みたい時の候補者リストとも言えますね。すごい財産だ。
酒井:出版社からイベントを依頼されるパターンも増えています。「B&Bなら何とかしてくれる」と思ってもらえているのかもしれません。イベントが終わったあと、出版社や出演者から感謝の言葉をいただけることも多くて、そういう時は本当に嬉しいです。
中川:チームとしてイベント企画/運営を行っているので、みんなでアイデアを出して企画を作っていけるのも頼られるポイントかも。複数で話し合うことでバランスも取れますし、企画や人選の面白さも高めていける気がします。
塩脇:具体的にはどんな議論を?
中川:反応が読めないけど、面白くなりそうな組み方を議論したり。そうしたことを積極的に試せるのも強みですね。
酒井:また、強い賛否があるテーマや登壇者を扱うかどうかは、毎回イベント企画チームで話し合います。明確な正解がない中で判断を重ねることで、B&Bとしてのスタンスが少しずつ形になってきたと思います。
B&Bだから生まれる商品体験。
塩脇:企業と組んだイベントも多いですか?
酒井:はい。最近だと、食品の新商品の発売に合わせて料理家の方に登壇いただき、トークを聞きながら実際に商品を味わってもらうイベントを実施しました。トークの撮影動画は広告活用できますし、PR用の1枚絵を撮るにも最高のシチュエーションだと思います。
塩脇:この空間は絵になりますね。
中川:過去には、本棚を丸ごと1つお菓子のPRに活用したり、1週間1クライアントで枠を抑えて毎日登壇者を変えイベントを実施したり。かなり柔軟に対応しています。
酒井:「商品体験の場」としての新たな価値も生み出せると考えています。仮に椅子の体験を想定した場合、お店で短時間座るのとイベント中に1時間座るのとでは、魅力の伝わり方が全く異なるはずです。このような形で、商品のリアルな体験価値を届けるといった展開も可能です。
塩脇:体験も設計できるのは面白い!今後、どんなイベントを企画したいですか?
中川:色々話してきましたが、最終的には「自分が見たいかどうか」に立ち返ることが多いんです。これを知りたい、これを見てみたいと思えるものは、他の人にとっても価値になるのではないか…今後もそこを大事にしていきたいですね。
酒井:企業コラボでは、メーカーから研究機関まで多種多様な使い方をされていますが、「この場所でやること自体に意味がある」という点は共通しています。
中川:お酒を飲みながらリラックスしてトークが聞けて、その場の空気感も含めて体験になる。結果として、B&Bという場所ならではのプロモーションとして機能していると思います。企業との取り組みでは、そこも追求していきたいですね。
まとめ
B&Bは本屋でありながらイベントメディアでもあります。数千回のイベントを通じて積み重ねてきたのは、「テーマや人をどう組み合わせれば新たな発見が生まれるか」という設計力。企業コラボにおいても、それは変わりません。単なる発信の場ではなく「聞いて、試して、共感できる」仕組みがあります。B&Bの2人は試行錯誤を続けながら、今夜もまた新たなイベントに挑んでいきます。
【参考】
本屋 B&B https://bookandbeer.com/
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「大広とクロスな人たち」シリーズ一覧
第1回「良い人みんなでつくる時代」 みんな/皆川壮一郎さん
第2回「文脈を編み出し、接点を増やす。広告チームにこそPRパーソンを」マドベ/片山悠さん
第3回「日常の延長で広告体験を味わってもらう“銭湯”の魅力」 ピクセル/大塚輝さん
第4回「オノマトペは、“人の心を鷲掴み”にする言葉」 明治大学/小野正弘さん
第5回「ネコが広げる、つながりとアイデア」 SUNDAY ISSUE/太田メグさん
第6回「“うっかりプロ野球選手”から始まった、世界の野球を知るキャリア」 カメラマン/八木虎造さん
第7回「毎日の実験的イベントで発見を生む」 本屋 B&B/中川紀彦さん・酒井和也さん
この記事の著者
塩脇 生成
株式会社大広GXU ブランドエクスペリエンスグループ



