企業のパーパスやブランドに込められた意思をどう体現して、社員や顧客にどう体感してもらうか。そんな課題に向き合う経営者やブランドマネージャーは少なくありません。特にあらゆるタッチポイントでの「一貫性」の維持はその難しさの一つ。細部でその意志がブレると、信頼をなくしかねません。では、どうすればいいのでしょうか。パーパスやブランドの意思を、社会課題や顧客インサイト、ファクト、オープンデータなどと照らし合わせながら洞察を重ねます。そのうえで、共感性の高いテーマを設定して、想いを共有する場(「体感してもらう広場」)を設計、賛同する仲間を巻き込み、活動の輪を広げ、ブランドの価値に還元していきます。一貫性を保ちながら自走していくこれら一連の取り組みを大広GrowthXチームでは「Shared Action(シェアードアクション)」とよび、多くの事例をつくってきました。「体感してもらう広場」を入口から設計し、仲間を増やして活動を広げていった「Shared Action」事例として、江崎グリコ様の「ビス校」について大広GrowthXチームの荒巻好宣さんと宮崎あゆみさんに話してもらいました。
荒巻 好宣
株式会社大広 GrowthXユニット ブランドエクスペリエンスグループ部長
プロモーション/クリエイティブセクション、メデイア、プロデュース領域を歴任し、現在は統合コミュニケーション領域のチームを牽引。食品・飲料メーカー、金融業界、エンタメ、BtoB企業、行政案件における事業戦略支援、ブランディング業務に従事。中小企業、スタートアップの成長戦略を支援する「ミラスト」メンバーとしても活躍。クリエイター・オブ・ザ・イヤーノミネート/ACC,JPM等受賞。
宮崎あゆみ
株式会社大広 GrowthXユニット ブランドエクスペリエンスグループ
プロモーション領域から、コミュニケーション領域のディレクションまで。デザイナーの経験を活かし統合的なコミュニケーション提案と実行力で企画を推進。食品メーカー、飲食、インフラ企業、ゲーム、BtoB、地方創生などの幅広いクリエイティブ、ブランディング業務に従事。
Shared Actionは、循環する仕組みづくり
出発点はブランドから発信のケースが多いですが、共感性の高いテーマを発信することで、その想いに共感するステークホルダーを巻き込んで、新しい取り組みを生み出す。そんな風にアクションが次から次へとつながり、自走して、その輪がブランドや企業の価値として戻ってくる。この循環が大事だと考えています。キーとなるのは、想いを共有できる「体験してもらう広場」づくり。体験した人達が「自分たちもやってみよう!」と考える仲間となり、その仲間による新たな取り組みが次々と生まれていく・・・その可能性がイメージできるかどうか。コミュニケーション設計をする際に、常にこのような「自走していくアクションづくり」を中心に置くことを心がけています。

一つの企業やブランドのアクションから仲間が拡がり、輪が拡がる
たとえば、「7才のこどもたちは、他年齢に比べて突出して交通事故に遭いやすい」というファクトデータがあります。小学校にあがったばかりの、7歳の子供たち・・・。そんな子供たちの交通事故を減らしたい!この課題に対して企業やブランドとしてできることは何か。もっと安全安心な街作りに寄与していけるようなアクションはないか。そう考えていた企業は少なくなかったのです。保険会社が7歳の子どもに向けた交通安全のための啓発コンテンツを作成したのをきっかけに、大学と街が連携し子ども目線でのデジタル標識の有効性の検証などを始める。さらに、アパレルメーカーや自動車メーカーが子どもが事故にあいにくい色や形を考えた服や靴の研究にとりくみ発売。そんな風にして7歳の交通事故を防ぐ取り組みの輪は拡がっていきます。その結果、アクションを起こした会社は社会課題の解決に貢献して安心を届けるブランドとして、顧客に再認識されるのです。
「食べる」を学び、体験するShared Action事例
このような「仲間を生むアクションづくり」のShared Action事例が、私が所属するGrowthXチームには、いくつもあります。そのひとつ、江崎グリコ、ビスコの「ビス校」の事例をご紹介します。


はじめに、“ビスコ”のことについて少しご紹介します。ビスコは今年で発売から93年を迎える商品です。子どもたちのすこやかな成長を願い、栄養を補う「酵母入りのクリームサンドビスケット」として誕生し、時代の栄養ニーズに合わせたレシピや栄養設計を改良してきました。現在のビスコのクリームには、酵母の代わりに、子供の成長を考えて配合した、「生きて腸に届くスポロ乳酸菌」と、「つよさを生み出すGCL1815菌」の2つの乳酸菌、そして食物繊維や子どもの成長に必要なビタミンなどの栄養素が含まれています。

ビス校は、2022年に親子で楽しく学ぶファンミーティングとして始まった活動です。ビスコやビスコに含まれる乳酸菌と栄養が、子どもたちのすこやかな成長にどのように繋がっているのか、その仕組みを親子で楽しく学べる場として設計しました。そして、いつもの学校を少しだけ飛び出して、親子で一緒にさまざまな「食べる」(食育や乳酸菌について)について学び、体験するブランドアクションの場になっています。
ビス校の授業内容の一部を紹介すると、親子で一緒にビスコに入っている乳酸菌を観察したり、


乳酸菌(プロバイオティクス)とその餌となる食物繊維やオリゴ糖など(プレバイオティクス)の組み合わせを見つける、シンバイオティクスカードゲームをしたり、


さまざまなクリームから種類や量を選んでオリジナルのビスコをつくる「マイビスコ」体験などを行っています。


授業全体を通して、親も子も、自身や家族のために食事や栄養素を選び抜く力を学び、毎日のすこやかな成長についての知識を持ち帰っていただくために授業内容としています。2026年現在は、ファンミーティングを超えて、ビス校のブランド活動の一つの軸となっています。
「子どもたちの食育を支える学校を作る」という想いをアクションへ
「ビス校」のアクションとしての強さは、2つあると思います。
1つ目は、子どもたちの食育を支える「学校」を作るというという想いのもと、すべてのコンテンツやプロモーションを教育フォーマット(エデュケーション)に落とし込めていることです。教育の視点を常に持つことで単純な商品告知企画ではなくなり、そこに“親子にとっての学びがあるのか?“学びとしての面白さや新しさがあるのか?”で、グリコさまも大広も企画をジャッチしています。そうすることで、コンテンツの一つ一つの質を高めることができたり、子どもをもつ親のn=1視点の課題に常に寄り添い続ける事ができています。

2つ目は、「ビス校」=「学びの場」という、場の設定の汎用性の高さです。例えばKOLをアサインしたYoutube動画、グリコの営業部さまが企画する店舗での販促イベントやプロモーション、公式SNSの投稿内容、商品キャンペーン企画、商品パッケージなど、すべてのフレームで「ビス校」を冠につけることで、戦略的にステークホルダー同士がつながることが可能です。

個人的に特に面白いと感じるのは、我々広告会社の手を離れて、ビス校の出前授業をグリコさまや全国各地のスーパー様のご担当者さまなどで行っていただいていることです。イベントで行った授業台本をもとに、ステークホルダーさまを中心にして、「ビス校」活動を全国へと広げていただいています。想いや場作りがうまく行けば企画は自走する。Shared Actionとして成功するためのひとつのヒントになると思いました。
現時点ではビス校は毎年100万人以上の参加者を目指しています。いつかは日本の子どもたち全員が「ビス校」に通うまでに、この「ビス校」というShared Actionが広がるといいなという夢を持っています。
Shared Actionにご興味がある企業がいらっしゃいましたら、私たち大広GrowthXチームにお声がけください。
ご相談はこちらからどうぞ。
【Youtube動画】
ビスコを通じて「食べる」を学ぶ『ビス校』
まとめ
企業のパーパスやブランドの意思を、あらゆるタッチポイントで一貫して体現することは容易ではありません。その突破口となるのが、ステークホルダーを巻き込みながら自走する設計「Shared Action」です。江崎グリコの「ビス校」の事例が示すように、ブランドの想いを「教育(食育)」という共感性の高いテーマに落とし込み、体験の場を提供することで、顧客や流通といった仲間が主導する自走的な活動へと昇華しています。単なるメッセージの発信にとどまらず、ステークホルダーが「自分たちもやってみよう」と思える共創の仕組みをどう築くか。ブランドの価値を持続的に高め、社会に循環させていくための強力なヒントがここにあります。
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