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2026.04.27

「住」を通じて、子どもたちの感性を育む。「住育」に取り組む積水ハウスがオープンした「住のテーマパーク」のコミュニケーション事例

ジュノパークの展示物のひとつ「再生モノづくりラボ」

住宅メーカーの競争軸は、以前は「性能」や「機能」にありました。しかし今、住まいは単なる“箱”ではなく、そこに暮らす人の体験や価値観までも含めて語られるようになっています。積水ハウスが京都府木津川市に開設した体験型施設「JUNOPARK(ジュノパーク)」が取り組むのは「住育」。「住」にまつわるさまざまな感性を育むエデュテイメント施設として提示する取り組みです。では、この構想はどんな課題意識から生まれ、どんな体験価値として設計されたのでしょうか。そして、その理念を生活者にどう届け、ブランドとの接点へと結びつけていったのでしょうか。今回はこのプロジェクトに携わられた積水ハウスの岩隈様と矢城様、コミュニケーション戦略から伴走した弊社の中牟田、高石を交えて、どのように理念をクリエイティブに、体験を来訪動機へと転換していったのか、そのプロセスを紐解いていきます。

iwakuma01岩隈 博美 氏
積水ハウス株式会社 コミュニケーションデザイン部/CXデザイン室 チームリーダー

2024年積水ハウスに入社。ソーシャル領域のなかでも主に、子どもたちの感性を育むことをテーマにしたキッズ・ファーストプロジェクトの企画・コミュニケーション領域をリード。
2025年8月5日、京都・木津川に開業したJUNOPARKでは、ブランドの思想を社会に開かれたコミュニケーションへと落とし込んだ。
前職では大手自動車メーカーにて、マーケティング・コミュニケーション領域に従事。

 

矢城さん顔写真矢城 利恵香 氏
積水ハウス株式会社 コミュニケーションデザイン部/CXデザイン室

2022年積水ハウスに入社。2025年8月5日、京都・木津川に開業したJUNOPARKでは、企画立ち上げから参加し、企画~施設デザイン、コミュニケーション領域を含めプロジェクトをリード。
その他、戸建事業における新規戦略企画からコミュニケーションの実行にも従事。

 

nakamuta中牟田 佳苗 氏
株式会社大広 ソリューションデザイン本部クリエイティブ局 第3グループ 部長
2011年 九州大学文学部卒業後、大広入社。福岡生まれ福岡育ち。コピーワーク、PR発想のクリエイティブをベースに、手段を問わず統合コミュニケーションを企画・設計。顧客視点のコンセプト開発や丁寧な顧客体験を積み重ねるブランディングが好き。ヤングライオンズコンペティションジャパンPR部門ファイナリスト・インテグレーテッド部門ファイナリスト、ヤングスパイクスジャパン ブロンズ受賞。

 

2高石スクエア写真 高石 瑞希 氏
株式会社大広 ソリューションデザイン本部クリエイティブ局 第3グループ
神戸出身。フリーランスのデザイナー/イラストレーター/アニメ作家として、学術書籍の装丁やアニメMV制作などに従事したのち、学び直しで大学院に入学。「アカデミック・ビジュアライゼーション」「音楽のためのアートワーク」を研究テーマに、デザイン修士号取得。2022年 株式会社大広に新卒入社。以来、アートディレクション・デザイン領域を軸として広告制作に日々励んでいます。

「住育」、それは住まいを学ぶのではない全く新しい体験づくり

まずお聞きしたいのですが、ジュノパークという施設構想は、御社のどんな問題意識やビジョンから生まれたものだったのでしょうか?

岩隈 :積水ハウスが掲げる「住育 」とは、一般的に想起される「住まいを学ぶ教育」とは異なる概念です。当社が目指しているのは、住まいそのものを教えることではなく、「住」というテーマを通じて感性を育むことにあります。食育や木育のように知識習得に重きを置くのではなく、暮らしの中で自分の好きや大切にしたい価値観に気づき、それを育てていくこと。そのきっかけを提供することが、積水ハウスにおける住育の考え方です。

※積水ハウスでは、「住育」を「暮らしのなかで幸せを感じられる、感性豊かな子どもを育む活動」と定義。

矢城 : この言葉を使うにあたっては、社内でも議論がありました。「住育」という言葉からは「住まいを学ぶ教育」というイメージを持たれやすく、自分たちの意図とずれて受け取られる可能性があるからです。そのため、どのように伝えれば本来の意味が正しく届くのかは、コミュニケーション設計における重要な論点の一つでした。

岩隈 : こうした住育の背景には、当社が掲げる「キッズ・ファースト」という社会的使命があります。これは「クオリティ・ファースト」「グリーン・ファースト」と並ぶESG経営戦略の3つの柱の一つであり、近年の中期経営計画の中でも重要な位置づけにあります。その根底にあるのは、高所得国の中で日本の子どもの精神的幸福度が比較的低い傾向にある という社会課題への問題意識です。企業として、この状況に対して何ができるのか。すべてを解決することはできなくても、子どもたちのためにできることに真摯に向き合いたいという思いが、この取り組みの出発点にあります。 ※出典:UNICEF Innocenti – Global Office of Research and Foresight, Innocenti Report Card 19: Child well-being in an unpredictable world, UNICEF Innocenti, Florence, May 2025. https://www.unicef.or.jp/library/pdf/labo_rc19_en.pdf

岩隈 : また、積水ハウスのグローバルビジョンである“「わが家」を世界一幸せな場所にする”という考え方とも深く結びついています。当社にとっての「幸せ」とは、自分の好きなことや大切にしたいことといった自分の価値観を理解し、それに基づいて選択や行動ができている状態を指します。つまり、幸せは外部から与えられるものではなく、個人の内側にある感性によって形づくられるものだと捉えています。ジュノパークは、その感性につながる「夢中の芽」を提供する場として位置づけられています。

矢城 : この考え方は、当社の住まいづくりの進化とも連動しています。創業からの約30年間は「安心・安全」という基盤の確立に注力し、その後は「快適性」の向上へと価値を広げてきました。そして現在、次に提供すべき価値として見出されたのが「幸せ」という領域です。そして、その中核にあるのが、「感性」です。

矢城 : 住まいは単なる機能や性能を提供するだけのものではなく、暮らしの中で愛着を育み、個人の価値観を形づくる「感性の器」である――。こうした考えのもと、ライフニットデザインといった取り組みを通じて、住まいそのものが感性に働きかける存在として設計されています。キッズ・ファーストの思想と住まいの価値拡張は、この「感性」を軸に重なり合っていると思います。   ※ライフニットデザイン(life knit design)は、積水ハウスが2023年に導入した、住まい手の「感性」を重視して空間に落とし込むデザイン提案システムです。顧客の好みを独自の6つの感性フィールドで分析し、愛着を持って長く住める家づくりを目指す、新築・リフォーム向けの考え方。

「キッズ・ファースト」を形にした、子どもの幸福度を実現する体験型施設

キッズ・ファーストというコンセプトを、なぜ“施設”という形で具現化しようと考えられたのでしょうか?

矢城 : 当社がキッズ・ファーストという考え方を社会に伝えていくにあたり、さまざまな手段が考えられる中で、「施設」という形を選んだ背景には、子どもの感性を育むうえで“体験”が不可欠であるという認識がありました。
プロジェクトの初期段階では、「住育」や「感性」という言葉が明確に定義されていたわけではなく、まずは「子どもの幸せのために何ができるのか」という問いから出発しています。専門家や教育関係者との対話を重ねる中で導き出されたのが、「子どもが主体的に意思決定できる状態が“幸せ”につながる。そのためには感性が必要であり、感性は夢中になれる体験の中で育まれる」という考え方でした。こうした理解から、子どもたちに“夢中になれる体験”を提供することが重要であり、その実現手段として最も適しているのが施設であるという判断に至りました。

岩隈  : 子どもたちが純粋に体験に没頭し、「好き」や「大切にしたいこと」につながる夢中の芽を持ち帰ること。そのためには、企業メッセージを前面に出さず、あくまで体験そのものを主役にする必要がありました。
こうした考え方は、施設の体験設計にも色濃く反映されています。ジュノパークでは、当社がこれまで培ってきた住まいに関する知見をもとに、感性に気づくためのきっかけを提供しています。

中牟田 :私たち大人だってそうですが、「住」というテーマを真剣に考えることってあまりないと思います。ましてや、子どもたちにはそれは難しすぎます。でも、感じることならできると思います。プログラムの中に「ゴーストハウス調査隊」というものがあるのですが、これは、不快なことがどうすると快適になるかを体験していきます。これって確かに嫌だなとか、こっちの方が気持ちいいなとか、照明がこういう色だとご飯って美味しそうに見えるとか。そういう気づきを重ねていくことで、そのまま物事のとらえ方が豊かになっていくんですが、普段こんな体験ってなかなかできないですよね。

ゴーストハウス調査隊

 「ゴーストハウス調査隊」体験の様子


高石
:私の経験だと、住んでいる環境に対する感性って、一人暮らしを始めて、そこから何回か引っ越ししていく過程の中で芽生えたように思います。住みやすさや住みにくさを体験し学習するには、時間がかかると思います。自転車って、乗れるようになって初めて、あ、自転車に乗れるってこういうことなんだって体で覚えると思いますが、なんかそんな初期体験を小さい時にできるって、本当にいいなって思いますね。

岩隈  : こうした「住」をテーマにした体験は、従来の教育機会では十分に提供されてきませんでした。学校教育においても、住まいに関する学びは限られた時間にとどまっており、人生に長く関わるテーマであるにもかかわらず、主体的に考える機会は多くありません。その意味でも、日常生活では得にくい気づきを体験として提供する場として、施設の意義は大きいと考えています。

単なる遊びではなく、感性や価値観の形成につながるプログラムの設定

ジュノパークならではの体験を通して、子どもたちにどんなことをお土産にしてもらいたいとお考えでしたか?

矢城  :ジュノパークの各プログラムでは、体験を通じて子どもたちの中にどんな感性が芽生えるかが重視されています。当社では、6つのテーマそれぞれに対して、育んでほしい感性を設定しており、例えばデザインであれば「自己を表現する感性」、ユニバーサルデザインであれば「多角的な視点で捉える感性」といったように、テーマごとに持ち帰ってほしい感性が異なります。重要なのは、こうした感性が後付けの説明ではなく、当社がこれまで住まいづくりの中で本気で向き合ってきたテーマや、そこに携わる社員の想いから立ち上がっていることです。例えばユニバーサルデザインのプログラムを考える際には、当社でその領域に取り組んできた社員が、どのような思いで研究・開発に向き合ってきたのかを掘り下げました。その中で見えてきたのは、「多様な個性を尊重し、それぞれにとって優しい社会をつくりたい」という思いでした。こうした“夢中になって働いてきた人の思い”を、子どもたちにも何らかの形で感じ取ってもらえるように、体験の構成を設計しました。

つまり、アクティビティの出発点には、当社がこれまで夢中になって取り組んできたことがある、ということです。何のためにそれに取り組んできたのか、どんな価値を社会に届けたいと考えてきたのか、何に突き動かされてきたのか。そうした思いや姿勢をブレイクダウンし、子どもたちが体験できる形へと落とし込んだものが、ジュノパークのプログラムになっています。その意味では、プログラムの根っこには、当社の事業や技術だけでなく、当社ならではの価値観やインサイトが通っています。

その一方で、体験の設計は決して「ユニバーサルデザインを学ぼう」「構造を理解しよう」といった、知識伝達型にはなっていません。そうしてしまうと、体験はただの学習で終わってしまい、子どもたちの夢中や好きにつながりにくくなるからです。あくまで出発点にあるのは、そのテーマの背景にある想いや、そこから生まれる感性です。そのため、体験のゴールも「知識を得ること」ではなく、「自分なりに感じること」「気づきを持ち帰ること」に置いています。

プログラムづくりで特に重視されたのは、どうすれば子どもたちが“夢中”になれるかという点でした。専門家とも議論しながら、各プログラムではまず「何だろう?」と興味を引く入口をつくり、次に「思った通りにいかない」という壁にぶつけます。そこで新たな情報やヒントを与え、もう一度試してみる。すると最初には見えなかったことに気づき、「あ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間が生まれます。当社では、この気づきの瞬間こそが、子どもたちが最も夢中になっている状態であり、その積み重ねが感性につながっていくと考えました。

岩隈  : また、課題の難易度設計にも工夫を凝らしています 。簡単すぎると学びにならず、難しすぎると意欲が削がれるため、小学校高学年がぎりぎり乗り越えられる難易度を目安に設計しています。

中牟田 :実際にプロトタイプをつくり、子どもたちに体験してもらいながら改善を重ねるなど、試行錯誤を重ねていらっしゃいましたよね。

岩隈  : 例えば「構造」をテーマとした「2メートルタワー建築」では、観察力や探究心を育むことを目的にしています。思い通りにいかない体験を通じて、視点を変えたり工夫を重ねたりすることで、探究の面白さを体感できるように設計しています。このように各プログラムは、単なる遊びではなく、感性や価値観の形成につながるプロセスとして構成しました。

ジュノパークで提供しているのは、完成された答えではなく、子どもたちが自分自身で気づき、考え、感じるきっかけです。体験を通して芽生えた感性が、これからの人生における選択や価値観の土台となること。それこそが、当社がジュノパークで届けたい「体験価値」です。

2メートルタワー建築「2メートルタワー建築」体験の様子

感性という抽象概念を、視覚的に感じ取れるようにキャラクターを開発

コミュニケーション設計について伺います。オリエンで提示された課題どのように解釈し、どんな工夫をされたのでしょうか?

中牟田 :最初に感じたのは、コンセプトの抽象度の高さでした。「感性」や「住育」は非常に意義のある言葉ですが、生活者にとっては少し崇高で、直感的に理解しづらい。さらに「住宅メーカーの施設」と誤解されやすい点もあり、「これは営業施設ではない」ということと、「ここで得られる体験の価値」をどう魅力的に伝えるかが大きな課題でした。

一方で、6つのテーマを通じて多様な感性に出会える体験施設は他にない価値です。だからこそ、その魅力を“説明”ではなく“直感”で伝える必要があると考えました。そこで初期段階で考えたのが、「感性を記号化できないか」という発想です。生活者にとっての入口は「楽しそう」であることが不可欠です。親が「連れて行きたい」、子どもが「行きたい」と思うには、まずワクワクできる印象が必要です。そのために、感性という抽象概念を、視覚的に感じ取れる形に変換することが重要だと考えました。また「住」というテーマの扱い方もポイントでした。「住まい」と言ってしまうと家に閉じた印象になりますが、「住」は衣食住の一つであり、人間の根源的なテーマです。この“広がり”を保ちながら、かつ感性と結びつける。そのためには、世界観の中心となるクリエイティブの“芯”が必要だと考えました。

高石 :「住のパーク」、つまりジュノパークというネーミングも、その発想から生まれています。略して呼ぶ関西的な語感、ジュノパークであれば「ジュノパ」になりそうだとか口コミのしやすさも含めて、覚えやすく、意味が直感的に伝わる形を意識しました。   

中牟田 :キャラクター開発に至ったのも、この「抽象と体験をつなぐ」という課題からです。

オリエンで提示された6つのテーマは、話を聞けば理解できるものの、入口としては少し難しい。そこで、テーマ・体験・感性を直感的に結びつける“媒介”が必要だと考えました。広告で見た印象と、実際に施設で体験する内容が一致していることも重要です。来場前と来場後で認識がズレてしまうと、期待とのギャップが生まれてしまう。そのため、広告、空間、体験、さらにはグッズに至るまで、一貫した世界観でつながる設計を目指しました。キャラクターは、そのすべてを横断する存在として機能します。ただし、具体化しすぎると解釈の幅が狭まるため、あくまで“余白”を残し、見る人それぞれが意味を感じ取れる設計にしています。

ターゲット設計についてはいかがでしたでしょうか?

岩隈 :コミュニケーションのメインターゲットは30〜40代の母親です。ただし施設の主役は子どもなので、「子どもが行きたいと言い、親がそれを後押しする」という構造になります。

中牟田 :そのため、コミュニケーションは二層構造で設計しています。子どもには「楽しそう」「やってみたい」という感情を喚起し、親には「新しい体験ができそう」「成長につながりそう」と感じてもらう。
各タッチポイントごとに、「誰に何を感じてほしいのか」を細かく設計していきました。

岩隈 :例えばウェブサイトは意思決定をする親向けですが、アクティビティ紹介動画は子どもが理解できる内容にしています。施設内で最初に見てもらうシアタームービーは、子どもの期待感を最大化する役割です。

高石 :交通広告では、「体験後に子どもが言いそうなセリフ」をコピーにしました。「ママ!夕飯のときは照明の色変えてもいい?」など、親がそれを聞いたときに「うちの子、成長したな」と感じる未来を想起させることで、来場動機につなげています。

矢城 :オープン当初は認知拡大を重視しCM投下を行いました。その後、認知が広がるにつれて、「楽しい」だけでなく、「感性を育み、学びや気づきを得る」といった価値にフォーカスしたコミュニケーションへとシフトしています。

岩隈 :媒体によってもトーンは変えています。例えば朝日小学生新聞では、教育意識の高い親子に向けて、より学びの価値が伝わる表現にしました。

中牟田 :最終的に目指したのは、「これまで気づかなかった視点」に出会ってもらうことです。楽しさを入口にしながら、その先にある価値に自然と触れてもらう。その設計が、今回のコミュニケーションの核になっています。 
取材ディスカッションの様子

(6つの感性)のキャラクター化提案は、どのように受け止められましたか?

矢城 :当社ではブリーフを非常に重要視しており、コンペにおいても「ブリーフに応えてくださっているか」は大きな評価軸です。その点で、大広さんの提案は、私たちが求めていた課題にしっかり応えていただいたものだったと感じています。

一方で、キャラクターの提案自体は完全に想定外でした。私たちの中には当初その発想がなかったため、社内では賛否が分かれました。特に「高学年向けの施設に対して子どもっぽくなりすぎるのではないか」「今の子どもはもっと大人びているのではないか」といった懸念は強くありました。

ただ、近年はキャラクターのあり方も多様化しており、使い方次第では大人にも愛される存在になり得るという認識もありました。また、施設のコンセプト自体が抽象的で難易度の高いものであるからこそ、その内容を代弁し、体験の入口をつくる存在として機能するのではないかという期待もあり、最終的に採用に至りました。

岩隈 :実際に運用が始まると、キャラクターはTVCMに出演した子どもたちからも「かわいい」という声が多く、現在ではグッズ展開を中心に非常に高い人気を得ています。

中牟田 :ありがとうございます。一方で、キャラクター提案はオンブリーフかと言われると、そうではなかった部分もあると思っています。私たちとしては、コミュニケーションと施設をつなぐ“真ん中の芯”をどう具体化するかが重要だと考え、その手段として提案しましたが、社内でも最後まで議論はありました。

結果として、結果として、広告だけでなく施設や体験、グッズに至るまで一貫した世界観が構築されていますね。

矢城 :そこは非常に意識して取り組んだ部分です。当初は、広告やウェブなど外に出ていく表現と、施設内の体験や内装との間にトーンのズレがありました。関わるベンダーが分かれていたこともあり、それぞれが別の方向を向きかねない状況でした。

そのため、施設とコミュニケーションを横断する共通のアイデンティティをつくる必要がありました。内装チームやコンテンツチームとも連携しながら、クリエイティブ担当者らを中心に何度もディスカッションを重ね、統一された世界観をつくり上げていきました。

そのプロセスにおいては、大広チームの柔軟さに非常に助けられました。クリエイターは個性が強くなりがちですが、中牟田さんや高石さんは個性を発揮しながらも、他チームの意見を柔軟に受け入れてくださった。一方で、内装やコンテンツ側のチームもそれを受け止める姿勢があり、互いにぶつかるのではなく、「より良いものをつくる」という方向で協働できたことが大きかったと思います。結果として、施設からコミュニケーションまで一貫した世界観を実現できたのは、そうしたチーム全体のバランスの良さがあったからこそだと感じています。

ジュノパークの現在地とこれから。プロジェクトを振り返って

オープンから今日まで、見えてきた手応えや、今後強化したいポイントはありますか?

岩隈 :来場者アンケートでは、満足度が約99%、再来場意向も98%(2026年3月現在)と非常に高い評価をいただいています。この結果は、コンテンツそのものに加えて、現場で対応するコミュニケーターの質の高さによるところが大きいと感じています。企画段階から運営まで、関わるすべての人が同じ想いを共有し、それを現場で判断・実行してくださっている。その積み重ねが、施設全体の体験価値を日々高めている実感があります。また、ジュノパークは木津川市と連携し、子どもの育ちに関する取り組みを進めています。京都府や自治体とも関係を築きながら、地域を起点に「感性を育む拠点」としての役割を広げていきたいと考えています。立地的に気軽に立ち寄れる場所ではないですが、土日は家族連れ、平日は学校行事での来場が増えています。すでに30〜40校ほどに来ていただいており、修学旅行の目的地として遠方から訪れるケースも出てきています。今後はさらに全国へ認知を広げていきたいですね。

このプロジェクトを通じて印象的だったことはございますか?

岩隈 :中牟田さんが、まるで社内の一員のように私たちの想いを理解してくださっていたことが非常に印象的でした。関係者が非常に多いプロジェクトでしたが、細部ではなく「何のためにやるのか」という根幹の部分がしっかり共有されていたことで、大きなズレが生まれなかったのだと思います。

中牟田 :今回のプロジェクトは、「子どもの幸福度」という非常に本質的な課題から出発していました。そこに対して、積水ハウス様だからこそ提供できる体験とは何か、という軸が最初から明確にあったと思います。

一方で、その想いをそのまま伝えても、生活者にとっては入口として難しい部分もある。だからこそ、どの順番で、どう魅力的に届けるかという設計が重要だと感じました。また印象的だったのは、常に生活者視点が議論の中心にあったことです。「子どもは本当に楽しめるか」「親はどう感じるか」といった問いが自然に交わされ、プロジェクト側の都合ではなく、実際の体験としてどうかを重視する姿勢が徹底されていました。その視点を持ち続けたことで、私たちも「本当にワクワクするか」「行きたいと思うか」といったリアルな感覚を軸に設計することができたと思います。

高石 :関係者が多く、領域も多岐にわたるプロジェクトでしたが、最終的に一つの方向にまとまったのは、「想い」への共感があったからだと感じています。私自身も、制作の後半ではキャラクターに命を吹き込む工程に深く没入することができました。彼らがどう動けば子どもたちにとって身近な存在になるのか、どうすれば親しみを持ってもらえるのかを考え続ける時間は、まさに“夢中”になれる体験でした。そのように制作側自身が夢中になれたのは、このプロジェクトの意義や想いに共感できていたからこそだと思います。

中牟田 :プロジェクト全体として、「熱量の積算」が非常に重要だったと感じています。

矢城 :当社だけの熱量ではなく、関わるすべての人の相乗効果で高まっていったものだと思います。

私自身、このプロジェクトに関わった当初は社会人3年目で、子どもや社会課題に対して特別な意識があったわけではありませんでした。ただ、周囲のメンバーが「夢中」というテーマに真剣に向き合い、それぞれが本気で取り組む姿を見ているうちに、自分自身も引き込まれていきました。その熱量が連鎖し、プロジェクト全体を一つに束ねていった。それがジュノパークという形につながっているのだと思います。

ジュノパークの取材を受けていただいた方々

 


まとめ

ジュノパークは、積水ハウスが「住育」という新たな概念を具現化するために創り上げた体験型施設です。「住育」とは、住まいを通じて子どもの感性を育むという思想であり、その説明が難しい抽象的なテーマを、子どもたち自身が「体験」を通じて気づき、学ぶ仕組みとして設計されました。施設では、子どもたちが「好き」や「大切にしたいこと」に出会えるプログラムが用意され、感性を刺激する体験が提供されています。

また、コミュニケーション設計においては、親子双方に共感されやすい愛らしいキャラクターを活用し、施設への訪問意向も着実に伸びているようです。開館より一年を待たずして、「夢中になる体験」が子どもたちの感性を育み、親にとっても「成長を後押しする場」として高い評価を得ています。ジュノパークは、ここでの体験をきっかけに、これからの若い世代に、幸せな生活を築いていってもらうことを目的とする全く新しい発想の施設です。

ジュノパークサイトへのリンクは、こちらです。


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