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2026.04.09

外部人材との共創がもたらすイノベーションとは 〜入山章栄氏、金谷智氏と語る、スポーツ・教育現場での事例〜

文化放送のラジオ番組「浜松町Innovation Culture Café」(通称:浜カフェ)。早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄(いりやま あきえ)氏が、各界のイノベーターをゲストに招き、「仕事」「組織」「社会」のアップデートについて議論します。この番組に、株式会社大広の上垣内淳(うえがいと じゅん)氏が出演。株式会社LX DESIGN 代表取締役社長 金谷智(かなたに さとし)氏とともに、「スポーツ×教育 外部人材が現場をアップデートするには?」というテーマのもと、2回にわたって語り合いました。それぞれの現場に外部人材の新しい視点が入ることで、どのような価値が生まれているのか。それが引き起こす、イノベーションや社会変革の可能性とは? 今回のコラムでは上垣内氏が、番組での発言内容を振り返るとともに、対談で得られた気付きや、自身の活動に込める想いなどについて語ります。

a_uegaito上垣内 淳(うえがいと・じゅん)
株式会社 大広Growth X ユニットソーシャルデザイングループ
チーフプロジェクトマネージャー

2006年大広に新卒で入社。入社から10年はプロモーションプランナー・コミュニケーションデザイナーとして、企業のイベント企画・実施や統合企画を担当。その後5年間営業職にて、企業のブランディングや新規事業開発に従事。2021年よりD2Cビジネス推進局に所属し、引き続き得意先企業の新規事業開発やスタートアップ企業のマーケティング支援を行う。2023年より、ビジネスグロースチームを率いる。社外では、「GAMBA OSAKA新規事業開発」「NewsPicks NewSchool運営」等にも関わる。週末はサッカーチームコーチ。2025年より社内新規事業「Daiko Social Sports」立ち上げ、代表を務める。

外部人材が常識にとらわれず「問いを立てる」ことの意味

  私は数年前から、プロサッカークラブ「ガンバ大阪」で新規事業開発に参画しています。「広告会社の社員でサッカー好き」という立場を活かして何かお手伝いがしたい!と考えました。そして外部人材として、スタジアムでの観戦体験をより良いものにする提案などに取り組んできました。また今回、番組でご一緒した金谷智さんは、学校と多様な外部人材をつなぐ人材活用プラットフォームサービス「複業先生」を展開。企業人や専門家が学校の授業に参加する仕組みを通じて、教育現場にリアルな学びと共創の機会を届けておられます。

外部人材と業界組織の関わりによるイノベーションが、なぜ必要とされているのか。番組の中で話し合いましたが、振り返ると大きく3つの背景にまとめられると思います。
◼️変化の激しい時代
コロナ禍を経て、多くのことが変わりました。たとえばオンラインでの交流が当たり前になり、そのためのテクノロジーも進化。世の中の働き方も、在宅や複業が認められるなど一気に変わりました。その中で、僕のような外部人材や、金谷さんのようなスタートアップ企業のサービスが関われる余地が生まれた、と考えられます。
◼️内部リソースの限界
ガンバ大阪の例で言うと、年間に何十試合もある中、その運営だけで手いっぱいになっていたようです。内部のリソースが足りないところへ、外部人材の視点を入れ、運営のマンネリを打破しようという意図を感じました。金谷さんが関わる教育現場はさらに切実で、この20年で教員の採用試験倍率は6分の1にまで減り、教員不足が顕在化しています。
◼️業界の閉鎖性
これまで教育現場では、「外部に何かを頼む」ということがほとんどなかったとのこと。スポーツ界も、実は閉鎖的なところがある業界ではないかと感じています。選手からそのままOBとなった人が組織運営に関わっていたりするので、新しい視点が出にくくなっているのではないでしょうか。

このようなことはスポーツや教育現場に限らず、私が日頃、関わっているクライアントワークでも同じことが言えます。その会社ならではの「常識」だとか「ルール」、そこに縛られすぎて、いつの間にか課題が見えづらくなっていたり、変えるのは無理だとあきらめてしまっていたり…。そこへ我々のような広告会社の人間が入って「そもそも、なぜこうなっているんですか?」「そのやり方、本当に最適なんでしょうか?」といった“問いを立てる”ということが実際よくあります。それこそが、外部人材が入る意味だと思うのです。

新たな顧客価値を生み出した「ガンバ大阪」での実践

  番組は前編、後編のように2回に分けて放送されました。1回目の放送では、僕はスポーツの現場、金谷さんは教育の現場で、実際にどのような取り組みを行ったかについて詳しく話しました。
私がガンバ大阪で取り組んだのは、スタジアムでの試合観戦において、新しい顧客価値を創造することです。スタジアム観戦では芝生の匂いがしたり、ボールの音がよく聞こえたりと臨場感が楽しめる一方で、テレビ中継では当たり前のように付いてくる「なぜ、あの選手が交代したのか」「なぜ、イエローカードが出されたのか」といった解説を聞くことはできません。「迫力」と「情報」、両方そろわないことを何とかしたいと考えました。
  そこで提案したのが、美術館の音声ガイドのように、目の前で起きているプレーを解説音声とともに楽しめる観戦体験です。リアルタイムでの音声配信サービス「CHEEROHONE(チアホン)」を活用し、自分のスマートフォンを使って、イヤホンでライブ解説を聴きながらサッカー観戦を楽しんでもらえるようにしました。もともと自分がサポーターとして感じていた違和感と、外部人材としての視点の両方があったからこそ、生み出せたアイデアかなと思っています。
チアホン7  番組内ではそこまで言わなかったのですが、このチアホンというサービス自体、既存のものではなく、今回のアイデアに合わせて完成しました。ガンバ大阪のオーナー企業様はパナソニックさんなのですが、ちょうど僕らが音声ガイド付きの観戦体験を企画している時に、パナソニックさんのほうでも同じようなことに使える技術を開発中ということで、技術者の方が合流してくださったのです。自分たちだけでは絶対、高速でアプリサービスを作ったりはできなかったので、ご縁も感じましたし、共創の面白さも体感できました。
  また、金谷さんのほうからも「複業先生」について詳しくお話をしてくださり、ホストの入山さんとの興味深いやり取りがありました。特に、外部から来た人が授業をやってみて「学校の先生ってすごく大変で難しい仕事なんだな」と実感し、「あなた方は凄いんですよ!」と伝えることで、現場の先生方も誇りを持てる。結果、お互いにリスペクトしあえる関係になる、というお話が印象的でした。
  ガンバ大阪との取り組みでも、チーム運営者の方々から「ファン心理がわかるからこそ、こういうアイデアが思い浮かぶんですね」と言っていただけましたし、最初は「それはやったことがないから難しいです」などと言っておられた方も、だんだん柔軟になっていかれるのを感じました。外部人材は「新しいアイデアを出す」だけでない、人の意識や関係性そのものを変えていく存在なのかもしれません。

「外注」から「共創」へとジャンプするのに大切なこと

  一方で、私も金谷さんも、組織の中に外部人材が入ることの難しさも感じています。2回目の放送ではそのあたりが話題となりました。金谷さんは、年に1人だけ複業先生が学校に来たとしても、あまり何も変わらない。年間、かなりの人数が外から入ってくることで、現場の先生方は「自分たちがマイノリティなんだ」というメタ認知がつくとおっしゃっていました。そこで初めて、学校は“ひらかれた場所”になるのでしょう。
  僕も、ガンバ大阪に外部人材として入った最初のうちは、「あれ?何かうまくいかないな」という感じがありました。なぜだろうと考えて分かったのが、「我々の役割が曖昧」だったということ。内部の方々の間で、チーム運営の課題の棚卸しだとか、外部人材の役割の定義づけが足りなかったと思いますし、僕たちもどこまで踏み込んでいいのかわからなかった。完全にスタック(停滞)状態でした。こうした「役割曖昧問題」は、どんな業界でも外部人材の登用時に起こりやすいものだと思います。また、外部人材に「外注」するという意識が抜けず、なかなか「共創」まで進めないという問題もあるのではないでしょうか。番組では「外注」から「共創」へとジャンプするために何が必要かを話し合った結果、以下のようなポイントが出てきました。

◼️外部人材の役割を明確化する
ガンバ大阪でも、「何のために外から人を呼ぶのか」をあらためて内部の方々中心に話し合っていただくことでテーマのようなものが見え、そこに向かって一緒に走り出せるようになりました。

◼️ある程度は「任せる」
「変えるべきところは委ねよう」という覚悟を持たないと、いつまでも前例や内部のルールにとらわれたままになります。外部人材に任せることで、新しい視点が活かせます。

◼️継続的に関与する
金谷さんの「複業先生」でも、最初は「年間5人」などの少ない人数からサービスを利用してもらい、次第に人数を増やしながら継続していくというお話でした。多くの外部人材が長く関わっていくことで、内部の人々の視野がひらかれ、「外注」から「共創」へと意識が変わっていきます。

  番組ではこのような話になったのですが、さらに付け足すならば、「まず外部人材に学んでもらう」ということもポイントかなと思います。外部人材は「外から答えを持ってきてくれる人」ではありません。一緒にモヤモヤやアイデアを言語化して、新たな価値の「共創」を目指すのであれば、外部人材にも「同じ土俵」に立ってもらう必要があります。そのために、自分たちの業界や組織について最初にインプットするのです。
  実は、ガンバ大阪での取り組みも、「ガンバ大阪サッカービジネスアカデミー」という講座から始まったもので、私はこのアカデミーの1期生となる受講生でした。講座の導入期では、サッカービジネスの基礎や社会課題について学び、ガンバ大阪のOBの方による講義などもありました。そうやって業界について知り、「同じ土俵」に立ってから、具体的なスタジアム集客などについての企画を進めていったわけです。
  このアカデミーは3期まで続き、チアホン以外のアイデアも実現しています。他のメンバーが起案した「ガンバ大阪 防災キャンプinパナスタ」もそのひとつ。ホームスタジアムであるパナソニックスタジアム吹田で、一般のファンの方々が、試合直後のピッチサイドにテントを張って泊まれる企画です。

スタジアムのテント_s

  スタジアムのシャワールームも使用でき、ピッチ上でのアクティビティも実施。さらに防災講座で本格的な防災知識も学べます。もうすぐ7回目のキャンプが開催され、新規顧客の獲得や収益アップにもつながっています。

さらなる共創と価値創造を目指す「Daiko Social Sports」

  「ガンバ大阪サッカービジネスアカデミー」で学んだ仲間たちの中からは、起業して法人化したチームも生まれました。僕自身も、大広の中で「Daiko Social Sports」という取り組みをスタートさせました。スポーツクラブ、地域、企業を横断的につなぎ、「競技の枠を超えた社会的価値」を創出する新規事業開発プログラムです。
  スポーツ分野にこだわるのは、自分自身サッカーが大好きだから、という理由ももちろんあるのですが、やはりスポーツには求心力があると思うのです。試合に勝てば大騒ぎして、負ければ誰もが下を向いて歩く。そんな、みんなの心を一つにまとめるスポーツのチカラを、地域や企業の活性化につなげられたら…というのが私の思いです。具体的には、先にお話しした「音声解説による観戦体験」や、「スタジアムの防災拠点としての活用」のような取り組みをもっともっと生み出していきたいと考えています。すでに、あるラグビーチームのホームタウン移転に伴い、新しい地域の中でどのようにファンを獲得していくかというご相談もいただいています。
  2026年度からはJリーグで「スポーツポジティブ」の活動が始まるので、よりソーシャル活動の必要性が高まると読んでいます。これはJリーグの各クラブについて、気候変動対策への取り組み状況を「見える化」する通信簿のようなもの。施設のエネルギー効率や、リサイクル・廃棄物削減の進捗、ファンや選手の移動に伴うCO2排出量の管理…、これらをわかりやすく評価するわけです。「みんなの気候変動対策へのモチベーションを上げるには…?」、そんな場合も我々にご相談いただけます。
  今後も、スポーツの求心力を、地域や企業の活性化、環境保全、防災、教育などに活かすにはどうすればいいか、多様なパートナー様とともに考え、新しい事業モデルの社会実装を進めていく所存です。どうぞよろしくお願いいたします!

【パートナー企業・自治体募集】
現在、「Daiko Social Sports」では
●スポーツを活用した新規事業開発
●地域連携型の社会課題解決プログラム設計
●教育・次世代育成とスポーツを掛け合わせた取り組み
などにご関心のある共創パートナー(企業・自治体・スポーツ団体)を募集しています。
ご相談・お問い合わせはこのサイトの右上「✉️相談する」からご連絡ください。

【参考】
チアホン開発の詳細はこちらからどうぞ↓
ファンの目線で課題を解決!Jリーグスタジアムでの新しい顧客体験開発

当日の放送はこちらからお聞きいただけます↓
https://open.spotify.com/show/0ZoF6m1HfZxjKuxb8EMPhD

Jリーグ気候アクション https://www.jleague.jp/climateaction/ 


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この記事の著者

上垣内 淳

2006年大広に入社。
入社から10年はプロモーションプランナー・コミュニケーションデザイナーとして、企業のイベント企画・実施や統合企画を担当。
その後5年間営業職にて、企業のブランディングや新規事業開発に従事し、昨年より新設のD2Cビジネス推進局にてプロジェクトマネジメントに取り組む。2022年よりWellbeingのプロジェクトを立ち上げる。
社外では、「GAMBA OSAKA新規事業開発」「NewsPicks NewSchool運営」等にも関わる。2児の父で、週末はサッカーチームコーチ。