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2026.04.06

小売業の周年プロモーションは差別化と来店促進を図る絶好のチャンス―CM×Web施策の成功事例

マスコットキャラクターを持った興梠氏と林氏が並んだサムネイル写真

企業の周年広告・周年プロモーションは「どこも同じ」に見えがち。しかし、こうした節目は競合他社との差別化を図るチャンスであり、社員や関係者が一体となれる希少なモーメントでもあります。
特に小売業界では、そもそも店頭での差別化が難しく、またPBを強化しても「知られていないと選ばれない」現状があるため、周年のチャンスを最大限に活かしたいもの。でも、CMやWeb施策、SNSなど、数あるプロモーション施策をどのように組み合わせれば、認知拡大や来店につながるのでしょうか?
今回のコラムでは、創立30周年を機に初のCMに取り組み、来店促進だけでなくインナーの誇り醸成にまで波及した、100円ショップチェーン「ワッツ」の事例をご紹介します。

興梠 直樹 氏プロフィール写真株式会社 ワッツ
執行役員 事業戦略部長
興梠 直樹 氏

株式会社ワッツ 執行役員 事業戦略部長。約10年前に大阪本社へ異動し、マーケティング部門を牽引。ECサイトの立ち上げや公式アプリのリリースなど、同社のデジタル戦略をゼロから構築した。現在はメディア対応やタレントを起用した大規模なプロモーションも統括。実店舗とデジタルを融合させた事業戦略の立案から実行までを幅広く担い、企業の持続的成長を推進している。


林 憲吾 氏プロフィール写真株式会社 大広
大阪ビジネスデザイン本部
第2ビジネスデザイン局
林 憲吾 氏

2022年中途入社。前職では教育機関を担当し、受験生・保護者ほかステークホルダーに向けた広報活動を支援。入社後は通信・工業系、食品業界のクライアント業務に従事し、顧客価値・ブランド課題に合わせたメディアの最適化・販促企画を含む統合コミュニケーションの実現に向け企画立案・推進にあたる。


【ワッツ30周年記念ムービー】
アバンギャルディのwatts30周年記念ムービーサムネイル写真 ワッツ30周年記念×アバンギャルディ「こまればいったんワッツらゴー!」

「こまればいったんワッツらゴー!」「まぁ、100円で解決したらラッキーやし♪」
そんなメッセージとともに、ワッツ初のオリジナルソングを制作。楽曲に乗せてダンスするのは、TikTokやInstagramなどを中心に話題を集め、世界からも注目されるダンスチーム「アバンギャルディ」。実際のワッツの店内を舞台に、店員に扮したアバンギャルディのメンバーが、100円玉をリレーしながらキレキレの踊りを披露します。

「どこも同じ」を脱却する最大の課題は店名認知の向上

――まず、興梠様に伺います。周年プロモーションをお考えになった当初、社内ではどういった課題感をお持ちだったんですか。

興梠:認知度の低さが大きな課題でしたね。我々は100円ショップチェーンの中で規模的には4番手と言われていて、店舗数も1,800以上あるんですが、「ワッツ」という名前の認知度がなかなか上がらず…。

ワッツはPBも持っていて、日用品だけでなくティーン向け雑貨や、タレントの藤本美貴さんとのコラボ商品なども展開しているんです。でも、商品を知ってもらっても「じゃあワッツって何なの」というところまでは広げられていない。そんな現状があったものですから、創立30周年を機に、大々的に何かできないかと考えていました。

――そこで大広にご相談いただいたわけですね。大広はそれまでにも、何かとお手伝いをしていたのでしょうか。

興梠:いや、そうではなかったんですよ(笑)。

:ちょっとここは僕から話させてください(笑)。

大広とワッツ様との出会いは、数年前に僕が担当していた大学案件で、産学連携にご協力いただけないかという問い合わせをしたことがきっかけでした。それでおつながりができまして、僕のほうからいろんな話をお持ちするようになったんです。

いま思えば本当に恥ずかしくて、興梠さんの懐の深さに感謝しかないんですけれども。まだ企画とも言えないようなプロモーションの草案を僕が無邪気に持って行って、「ここを直したら可能性はあるね」みたいなフィードバックをいただいたり、情報交換させていただいたり。いろんな事情から、きちんと形になることはなかったんですが、そんなアプローチを3年ほど続けていました。

興梠:林さんは変な駆け引きがないんですよね。私も素直に、これだったらオッケーとか難しいとか意見を言えて、キャッチボールのしやすい営業さんだなと思いながらお付き合いしていました。もちろん、大広さんが企業として信頼できることも存じていましたので、周年プロモーションについてご相談させていただいたという経緯です。

アバンギャルディ起用と明確なブランドメッセージで差別化

――ご相談の時点で、すでに「アバンギャルディを起用したい」というお話だったと聞きました。

興梠:そうですね。30周年にあたって「商品でタレントさんとコラボするようなこれまでの切り口とは、ちょっと別のところで何かやりたい」ということを最初に上司から言われていました。

それで、忘れもしない2025年1月。仕事始めの日に出社したら、その上司が「年末年始の番組でアバンギャルディを見た」と。この人たちめちゃくちゃ面白いよね、30周年でもこんな感じの人選がいいよね、と言われたんです。

私も何度かアバンギャルディさんを見たことはあったので、「確かにな」と。詳しく調べてみると、大阪拠点で活動されているし、何と言ってもインパクトがすごい。起用するとなれば、しっかりとした代理店を通さないとダメだろうと思いました。大広さんなら、その辺りの実績もあるだろうと考えたことも、林さんにお声がけした理由です。

:お話をいただいて、僕としてはもうビックリの連続でした。それまでアプローチしてきた3年間で、こんな大きなお話を「任せてもいい」と思っていただけるようになっていたんだ、ということがまず一つ。それから、キャスティングへの目の付けどころですよね。アバンギャルディのちょっとブキミな新鮮さ、面白さが、これから「来る」と直感された、ワッツさんの先見の明。

そして実際、大広には実績もあったんです。僕の担当ではなかったんですけど、東京の担当で、ある企業様でアバンギャルディを起用した案件がありました。すでに事務所との関係もできているわけで、興梠さんには「是非やらせてください」とお答えしました。

――「アバンギャルディで何をするか」は、すぐに決まったんですか。

:事務所に話を持って行くと快諾してくださって、変顔でも何でもやりますよと(笑)。でも、彼女たちの持ち味はやっぱり独特の動きやダンス。それを表現するなら映像作品だろう!ということで、「30周年記念ムービー」をつくることはすぐ決まりました。それをテレビCMとして流すこともできますが、今はインプ単価(インプレッション単価。CPMとも呼ばれる、広告1,000回表示あたりの費用)を抑え、YouTubeなどで配信することも珍しくありません。検討の結果、ちゃんとリーチが稼げて効果検証もできる、後者のデジタルのほうに落ち着きました。

笑顔で語る林 憲吾 氏(対談の様子)

「オールワッツ」で一体感を生んだクリエイティブ制作の舞台裏

――いよいよ実制作という中で、クリエイティブの方向性はどのように?

:「こまればいったんワッツらゴー!」などのメッセージは、大広の村岸勝起というクリエイターによるものです。彼は数々の広告賞を取るほどの力量があるので、僕としても要件はきちんと伝えていったん任せました。

興梠:私どもからは「ワッツが世の中に浸透するような内容にしてほしい」とだけお伝えしていたんですけど、村岸さんのほうから、それだけでは少し弱いですねと。めちゃくちゃ気軽にワッツに行きたくなるようなクリエイティブにしたい!ということで、「まぁ、100円で解決したらラッキーやし♪」というサブメッセージまでご提案いただきました。

:でも、最初にワッツさんと決めていたムービーの方向性をA案とするならば、最終的に実行したプランはB案だったんですよ、実は。

A案は、たとえばアバンギャルディのメンバーがステージの準備をしていて、リップが切れちゃった、買いに行かなきゃ!って時に、ワッツが寄り添ってあげるよ的な、もう少しストーリー仕立ての内容だったんです。でも、アバンギャルディを率いる振付師のakaneさんから、実際にそんなシーンがあるかっていうと想像しづらいですよ、ちょっと無理があるんじゃない?と突っ込まれまして(笑)。そこからは、「シンプルに社名を正しくお伝えする」「100円玉のモチーフを立たせる」ということを重視しました。

興梠:メンバーをお客さんにするんじゃなく、思い切ってワッツのエプロンを着けてもらって、店員さんに扮してもらおう、じゃあもう店内で踊ってもらおう、と一気に方向転換したんです。社内でも「あ、確かにそれがいい!」となって、最後は二重丸の結果になりましたね。

:ダンスに関してはもう我々が口を出すまでもなく、akaneさんの振り付けはクオリティが高くて。練習風景も見せてもらったんですけど、メンバーの皆さんが靴下が擦り切れるまで踊ってくれているのを見て「これでいこう、これでいける」と思えました。

――実店舗での撮影当日のことも教えてください。

興梠:大変でしたよね(笑)。

:いやぁ、大変でしたけど、いい経験ができたと心から思っています。

興梠:アバンギャルディさんは撮影当日の朝に来られるんですけど、前日の夕方から店を閉めて、ワッツの関係メンバーと大広の皆さんで撮影の準備をしたんです。

:棚をどかしてみると、思ったよりも掃除が必要だったりして。正直、そこは本来こちら側で全部やるべきことなんですが、ワッツの皆さんが「あ、ここに洗剤あります」「タワシはこれ使いましょう」みたいに当たり前のように参加してくださって。ちょっと仮眠しましょうかとか言いながら、夜を徹して一緒に床を磨いたんですよ。会社や所属の垣根を超えた「オールワッツ」という一体感があって、本当にかけがえのない時間だったなと思います。

興梠:みんなで創り上げた現場ですよね。残念ながら夜中に帰ってもらったメンバーも、後から動画を見ると「自分が磨いたあそこで撮ったんだ」という思い入れができるので、非常に良かったと思います。ドローンを使ったのも面白かった。

――え、店内でドローン撮影したんですか!でも確かに、あのアングルは人の手では無理かも。

:村岸くんのアイデアなんですけど、せっかく個性が際立っているアバンギャルディの方々なので、チマチマと場面転換するのではなく、ひとつの映像作品としてクオリティを上げていきたいという思いがありました。ドローンも使って店内の全景をひと続きに映しながら、その中でメンバーが各々好き勝手に動いていく、そんな絵面が面白いんじゃないかと。クリエイティブのメンバーが、ドローンの操作に長けているオペレーターさんを知っていて、わざわざ新潟から来てもらったんです。

穏やかな雰囲気で対談している様子

公開後に来店者数が増加、さらにインナーの誇り醸成まで

――完成したムービーは、TVerでも期間限定で公開されていましたね。

興梠:TVerでのCM配信については、先に別の代理店から「できますよ」と話をもらっていて、そっちにお願いすることもできたんです。でも、せっかく大広さんにムービーを作ってもらいましたし、林さんが「ウチなら、もう少しコストを抑えてできますよ」と言ってくださったのでお願いしました。

:自分たちが作ったものはやっぱり、より良い形で配信をして、リーチを最大化したいんですよね。これまで、メディアバイイングで努力を積み上げてきたウチのメンバーの頑張りを活かすことができて良かったですし、興梠さん、ワッツさんに少しばかり恩返しができたのかなと思っています。

――SNSでプレゼントキャンペーンも実施されたとか。

興梠:SNSアカウントは私のほうで別のお取引先と運用しているんですが、せっかく周年記念ムービーを作るので、SNSでも見てくれた人が何か楽しめる企画をやりたいと思っていたんです。

それでワッツオンラインショップの公式Xで、その場でワッツオリジナルグッズが当たるキャンペーンを実施しようと考えました。フォロー、リポストしてから投稿の画像をタップすると、アタリかハズレかの結果がわかるという。その「アタリ動画」「ハズレ動画」も、ムービーの撮影時にあわせて撮ってもらいました。

大道具の100円玉を回して、表が出たらアタリ、裏が出たらハズレを実際に何回もやってもらったんです。ずっと表しか出なければ永遠に終わらないという(笑)。

:何テイクやりましたかね、あれね(笑)。

――肝心の反響についてはいかがでしたか。

興梠:おかげさまで、ムービーは予想以上の大反響でした。100万再生いったら社内でも自慢できると思ってたんですけど、You Tubeで340万、Tik Tokで500万、Instagramで380万。来店者数についても、2005年の9月に動画を公開してから、店舗への来店者数は前年の同月を超えることがどんどん増えてきました。

それまでは、来店者数よりも客単価が前年比で増える傾向だったんですよね。なぜなら我々100円ショップ業界も、100円以上の商品を売り始めていますので、おのずと客単価は上がっていくわけです。その中で9月以降に来店者数が伸びる傾向っていうのは、もう間違いなくムービーを撮ってCMを流した影響があるだろうと。低単価のレシートが増えたのも、「試しに来てみた人」が多いということで、非常にうれしく思っています。

実際、SNSに投稿されるコメントを林さんに拾ってもらったら、「アバンギャルディを通してワッツを知った」という声がものすごくたくさんありました。「初めて行ってみました」「よく行ってた店が実はワッツだった」みたいなコメントが本当にあって、あ、これはもう間違いなく新しい顧客をつかむことができたんだ!と効果を実感しました。

:アバンギャルディに着てもらった店員さんのエプロン、「このエプロン買えないの?」みたいなコメントもありましたよね。実際に店舗で店員さんを見た人が「これがあのエプロンか!」とか。「ちょっとワッツしてくるわ」って買い物に行く人もいて、意外なコメントの広がりが。

――社員の方やパートの方など、インナーに対しての効果もあったんじゃないかと。

興梠:ありましたね。みんなやっぱり、自分が働いているところが世の中に知ってもらえて、「知ってるよ」とか「CM見たよ」って言われるとうれしいじゃないですか。パートさんが自分の子どもに「お母さんが働いてるお店、ワッツだよ」って自信をもって言えるようになった、なんて話も聞きました。

今回すごく思ったのが、ユーザーさんに向けた発信と、社内のメンバーに向けた発信、両方を1つのムービーでできたことが大きかったなと。クリエイティブの仕方や発信の仕方でそれが実現できるんだなと、実際やってみて感じましたね。

熱心に語る興梠 直樹 氏(対談の様子)

周年×CMで好機を捉え今後のLTV(顧客生涯価値)へつなぐ設計にも期待

――昨今は「コストをかけてまでCMする?」という声もあるかと思うんですが、今回の成功によって「CMの力」をあらためて感じられたのでは。

興梠:正直、広告費という金額面だけ見ると、今までで一番お金を使ったとは思います。当初は社内でも、もったいない!といった声がありました。私としてもチャレンジではあったものの、結果としてあまりにも反響が大きかったので、今は皆が「やっぱりCMの力ってすごいんだな、上手く活用していこう」という認識になっていますね。

当初は想定していなかったんですけど、「このムービーを店内でも流せないか」という話にもなりまして、急きょ400あまりの店舗にサイネージを付けたほどです。

:我々サイドとしては、フルファネルのご提案が大広らしさだと思うので、そこが出し切れなかったのは反省点ではあるんですけど。認知度の向上というところに振り切った提案としては、演者さんのご協力もあって4億以上のリーチが出せたことが自分でも驚きでした。まだまだ、広告って一定の効果がしっかり出るものなんだなって。


  LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)…「顧客生涯価値」。一人の顧客が企業と取引を開始してから終了するまでの期間に、企業にもたらす利益の総額を示す指標。

  大広のフルファネル統合支援について:https://www.daiko.co.jp/business-area


――今後、引き続きの展開などは考えておられますか。

:今回やり切れなかった、購買につなげるための施策は引き続きご提案していきたいと思っています。試し買いしていただいたお客様に、再購入していただくにはどうすればいいか、といったあたりですね。すでに興梠さんとも、いろいろと話をしながら検討しているところです。

興梠:今回の成功で社内の風向きも一気に変わりましたので、また一緒に面白いことをやりましょう!


まとめ

  • 周年は、記念の機会をマーケティング施策に転換し、「店名認知→来店」を加速させる好機となります。

  • 社名・価格・100円玉などのブランドコードを核にしたメッセージとキャスティング(今回はアバンギャルディ)を設計し、店名の指名想起を高め、来店動機の形成に繋げました。
  • CM素材をハブにYouTube・TVer配信とXなどのSNS施策に組み合わせ、低CPMで広く届けて効果検証まで一気通貫で実施しました。
  • 店内を舞台にした一体型クリエイティブと「オールワッツ」の制作体制により、話題化と社員の誇りの醸成を同時に実現しました。
  • 公開後にリーチ4億超と来店増を確認し店内サイネージにも展開、今後はフルファネル設計に繋げて再来店とLTVの向上を図ります。

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この記事の著者

COCAMP編集部

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。