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2024.04.24

【事例あり】D2Cとは?特長や販売モデルの違い、メリットや価値を解説

近年耳にすることも増えた「D2C」ですが、何となくイメージはできるけど、実態はよく分からないという方も多いのではないでしょうか?似たような言葉にダイレクトビジネスがありますが、D2Cはダイレクトビジネスという大枠のなかに含まれる、よりデジタルを基点としたビジネスモデルです。

この記事ではD2Cと似ている言葉の意味やメリット・デメリットを、事例をまじえて分かりやすく解説します。

D2Cとは?ビジネスモデルや普及した理由

D2Cとは「Direct to Consumer」の略称で、事業者(メーカー)が直接消費者に販売するビジネスモデルのことです。近年のD2Cでは、自社ECサイトを通じて消費者に商品をダイレクトに販売する方法が主流になっています。

D2Cのビジネスモデルの図解

(D2Cのビジネスモデルの図解)

上図のように、ECに顕著なモデルである従来の小売店仲介型では、製造会社と消費者の間には、卸売・小売店・ECモールなどが関与します。D2Cは間に入る会社がないため、製造会社がECサイトの運営や配送を担います。

BtoCや通販、ダイレクトビジネスとの違い

前章で比較した従来の小売店仲介型のように、「BtoC(B2C)」や「ダイレクトビジネス」、「通販」、「SPA」などのD2Cと混同されやすい言葉があります。それらについて、1つずつ確認していきましょう。

●BtoC
BtoCは「Business to Consumer」の略称で、企業と消費者の間で行われるビジネス全般を指します。そのため、製造から販売まで1つの企業が一貫して行うD2Cも、そうでない従来の小売店仲介型も、BtoCに含まれます。

●ダイレクトビジネス
まず、D2Cはダイレクトビジネスという大きな枠組みに含まれます。そのため、製造会社が顧客と直接やり取りを交わし、購入につなげていることは共通しています。一方、異なる点としては、D2Cのほうがより明確な世界観と顧客からの共感で購買行動を促進している点や、よりデジタルに軸足を置いている点などが挙げられます。

●通販
通販とは「通信販売」の略で、実店舗を介さずに通信機能を使って商品を購入できるビジネスモデル全般を意味する言葉です。D2Cの場合も、商品の製造者とECサイトの運営元が異なる販売スキームの場合でも、インターネットという通信機能を使ったショッピングである点では共通しているため、どちらも通販であるといえます。

●SPA
SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel/製造小売業)は、自社商品を直接消費者に販売する点では同じ意味ですが、D2Cが業界を限定しないのに対し、SPAは主にアパレル業界で多く使われる言葉です(SPAの代表的なメーカーとして、ユニクロやGAPが挙げられます)。自社が持つ実店舗で商品を販売することが多く、大規模な直接販売により効率性を上げ、品質や価格に反映します。D2Cも同じような側面はありますが、より小規模なビジネスが多く、後述するブランドの世界観を重視するという側面が、より色濃く出ています。

D2Cが普及した背景

D2Cビジネスは2010年代後半にアメリカで広まり、その後、日本に上陸しました。広まった要因は以下の通りです。

  • スマホやデジタルツールの普及
  • EC取引の一般化
  • SNSの発達
  • ライフスタイルや価値観の変化による消費行動の多様化

スマホやパソコンを用いてWebサイト経由でモノを買うことが一般的になり、さらに、情報源も変わりました。マスメディアだけでなく、SNSや口コミサイトなどでの個人の意見も重視されるようになり、モノの探し方や買い方が変わっていったのです。D2Cは、そのような時代の変化とともに生まれたビジネスモデルといえるでしょう。

●ダイレクトマーケティングの歴史(前篇)についてはこちら
D2Cビジネスを読み解く!前篇「ダイレクトマーケティングの歴史」

●ダイレクトマーケティングの歴史(後篇)についてはこちら
D2Cビジネスを読み解く!後篇「ダイレクトマーケティングの可能性」

特長と成功事例 | D2Cで生まれる魅力と価値

D2Cは、そのスキーム以外にも「D2Cらしい」といわれる以下の要素があります。

  • 顧客データを活用したものづくりができる
  • 一貫した世界観でファンをつくる
  • ユーザーとともにブランドを育てる

ここからは、成功事例をもとにD2Cの特長をご紹介します。

顧客データを活用したものづくりができる

顧客データを直接入手できるD2Cは、消費者のニーズを統計的に把握しやすいため、それらを活用して顧客体験を設計し、ブランドを強化することができます。たとえば、顧客の商品レビューや購買データを生かして商材を改良したり、顧客の好みに沿った商材案内メールを送ったりすることができます。

【成功事例:Casper Sleep Inc.(キャスパースリープ)】
マットレスなどの寝具のブランドで、質の高い睡眠を顧客に提供するための研究に力を入れています。睡眠に関する顧客データを収集するために、睡眠を記録するモニターを集めてイベントを開催したり、ユーザーが睡眠データをシェアできるアプリを開発したりしています。それらのデータを使って、マットレスや枕などの商品を改善しているのです。また、マットレスの100日間お試しサービスなどを導入することで、実店舗に出向かなくとも寝具を購入しやすい環境を作り、顧客の賛同を得た事例になります。

一貫した世界観でファンをつくる

D2Cのビジネスでは、「コト」体験をストーリーとして提供することが重要視されます。創業を思い立ったストーリーや社会への課題意識を発信したり、商材へのこだわりを存分に語ったりするのも効果的でしょう。ブランドの世界観を好んだユーザーがファン化すれば、一過性の購入ではなく、継続した購買行動につながります。 

【成功事例:株式会社はたけのみかた】
「破棄される不ぞろい野菜がもったいない」から始まった事業です。お母さんが不安なく使えるベビーフードを作りたいと、旬の野菜を中心に作られたおかゆや、おじやをECサイトで販売しています。ECサイトは、商品ごとに素材の魅力や生産者のこだわりが記載されており、企業の世界観や想いが伝わりやすいデザインとなっています。また、スーパーといった実店舗のスペースを借りて直接販売を行い、顧客からの声を取り入れることにも積極的です。一貫した離乳食の安全性・品質へのこだわりを伝え、顧客満足度の向上に成功した事例です。 

●株式会社はたけのみかたさまの詳細はこちら
D2Cを実施している企業から学ぶ、新しいビジネスの作り方。(vol.1)

ユーザーとともにブランドを育てる

D2Cは、ファンマーケティングやクラウドファンディング、SNSのライブ配信など、ユーザーと交流しながらブランドを大きく育てていくことが可能です。ユーザーとのつながりが強まることで、顧客の声を取り込んでビジネスを改善していくことができます。また、商品だけでなく企業のカルチャーや価値を共創することで、ユーザーは企業に対しての愛着や信頼を抱き、長期的に企業に利益を与えてくれる存在となるのです。

【成功事例:株式会社オープンエア】
D2Cでクラフトビールを販売する企業で、自社の持つコミュニティ型の複合施設「NATURE STUDIO」を通じて町おこしを目指したブランディングを展開しています。NATURE STUDIO内で実際にクラフトビールを飲むことができる「タップルーム」を設置し、定期的なイベントを開催することで、常に顧客と関係構築できる環境を整え、ビール好きから評価されるブランドになりました。

●株式会社オープンエア(open air)さまのD2C事例の詳細はこちら
~顧客データをどう生かすか~データの先の“人”を見つめる D2Cビジネス

そのほかの事例一覧

そのほかのD2Cの事例を一覧表でご紹介します。

企業名 業界 D2Cの事例
株式会社クラシコム

雑貨
(北欧雑貨)

2017年5月時点で約1,600万PVを誇る北欧雑貨のECサイト「北欧、暮らしの道具店」をはじめ、SNS、インターネットラジオ、オリジナルWebドラマなどユーザーと多くの接点を持ち、独自の世界観を保ちながらブランドを築いている
株式会社FABRIC TOKYO アパレル
(スーツ)
ユーザーがECサイトに入力した情報をもとにスピーディーなスーツ製作に成功
THINK OF THINGS
(コクヨ株式会社)
雑貨
(文房具用品)
カフェ付きの実店舗とノートやペーパーボードなどを販売するECサイトを活用することで、幅広くユーザーとの接点を持つ
株式会社バルクオム

化粧品
(メンズ化粧品)

リップクリームといったメンズ用の化粧品をECサイトで販売。独自の世界観を重視し、Instagramを駆使した認知拡大に成功


D2Cビジネスのメリット

D2Cには、以下のようなメリットがあります。

  • 収益性の向上につながる
  • 顧客データが収集できる
  • 販売の自由度が高い
  • スモールスタートしやすい


収益性の向上につながる

大きなメリットとして、コストの削減により収益性を確保できる点が挙げられます。これは、D2Cでは製造から販売までを同じ事業者が行い、中間業者への販売手数料やECモールへの手数料を支払う必要がないためです。

顧客データが収集できる

事業者間でのやりとりが発生しないため、顧客データをスムーズに収集できるのも、D2Cのメリットです。年齢や住んでいる場所、購入した時間帯など、有益な顧客データを資産化でき、それらのデータを活用して商品を開発することができます。

販売の自由度が高い

事業者間での制約がなく、販売方針を自由に決められるという点もメリットといえるでしょう。既存のECモールを通じて商品を販売するとなると、その進め方や規約に準ずる必要があります。自社でECサイトを運営するD2Cであれば、好きなときにキャンペーンを打ったり、販売する商品を変更したりできます。

スモールスタートしやすい

D2Cは、実店舗を持たなくてもできるビジネスモデルのため、スモールスタートしやすいというメリットもあります。自社の商品を小売店といった仲介業者へ置いてもらうための営業活動をする必要もなく、立ち上げ当初からコストやリソースを軽減できます。

D2Cビジネスのデメリット

いくつかのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。

  • 顧客開拓をするための時間が必要
  • 集客が必要
  • ブランディングが必要
  • 初期コストがかかる


顧客開拓をするための時間が必要

商品のクオリティが秀でていたとしても、ユーザーがその商品を知っていなければ購入にはつながりません。キャンペーン施策をしたり、顧客一人ひとりに合ったアプローチをしたりして、顧客開拓に時間をかける必要があります。

集客が必要

実店舗を持たずにスタートすることが多いD2Cは、物理的に人目に触れる機会が少ないため、集客に力を入れなくてはいけません。広告を出すといったプロモーション活動を行い、認知される機会を自ら作っていく必要があります。

ブランディングが必要

競合と差別化を図るため、ブランディングに力を入れる必要があるのもD2Cのデメリットでしょう。中長期的に安定した運用を行うには、顧客に商品を購入してもらうだけではなく、ブランドの認知向上を図り、繰り返しECサイトに来てもらうことが重要です。

初期コストがかかる

実店舗型よりも手軽に始められるとはいえ、初期段階でコストがかかることも挙げられます。ECサイトの構築費以外にも、提携する決済代行会社への手数料や、広告費、運用のための人件費などがかかります。

D2Cを始めるときのポイント

これからD2Cを始める方は、以下のようなポイントを意識しましょう。

  • 商品に競合優位性を持たせる
  • SNSを常に活性化させる
  • 早い段階で既存顧客向けの施策も考える
  • 配送は迅速に行う
  • ECと相性のよい商材を選ぶ
  • オフライン連携を強化する
  • 起業だけではなく、新サービスの販路に用いる

上記のなかからいくつかピックアップし、解説していきます。

ECと相性のよい商材を選ぶ

D2Cを立ち上げるときは、商材選びが重要です。ECサイト経由の購入が一般的な商材、世界観の追求が付加価値になる商材、生産者・製造者から直接購入することが安心感につながる商材などは、D2Cの特長を生かせるためおすすめです。

一般的に、ECと相性がよい業界は参入しやすいと考えられ、特にアパレルやコスメは前述の世界観の追求が効果的な業界です。

物販系分のBtoC-EC市場規模


経済産業省※1※2の市場調査によると、アパレルのEC市場規模は2014年では1兆2,822億円でしたが、2022年には2兆5,499億円まで拡大しており、2022年のEC化率は21.56%まで高まっています。そのほかにも、市場規模が拡大している生活家電や家具、食品業界なども狙い目の業界です。

ただし、参入のしやすさから競合となるD2C企業も多く、競合との差別化が重要になります。あえてECが参入しにくい業界を狙っていくという考え方もあるでしょう。

●コスメ業界のD2Cについてはこちら
美容D2Cの成功と失敗。 競争の舞台裏にあるルールとは?

オフライン連携を強化する

D2C企業も増加傾向にある昨今では、ECだけでなくオフラインとの連携も視野にいれると、競合との差別化が図れ、顧客獲得の場を広げることができます。

たとえば、世界観の体験に重きを置いたコンセプトストアや、期間限定のポップアップストアを開く。体験型イベントを開いて、ユーザーの生の声を集めるなど、商材の販売以外を目的とした店舗も増えています。オフラインでの体験が、ファンや新規顧客数の増加、商品改良につながり、オンラインでの成果にもつながっていきます。

OMOやオムニチャネルといった、オンライン・オフラインを融合する考え方は2020年代にますます重視されるため、検討しておくとよいでしょう。

起業だけではなく、新サービスの販路に用いる

商材開発やブランディング、顧客開拓など、起業に時間を要するD2Cですが、既に創業してから時間が経過している企業であれば、それらに必要なリソースを幾分か軽減できます。既存のブランド力や技術力があれば、今まで直接販売したことがなくとも信頼を得やすく、異なるターゲットに対する新しい商材の販路開拓にも使えます。

たとえば、受注生産や加工を行う中小のものづくり企業が、初めて自社製品を開発・販売する際は、始めから大量生産して卸売業者に委託するよりも、D2Cでスモールスタートするほうがリスクは少ない場合もあります。商品力や信頼性があることは、歴史ある企業ならではの大きな強みといえます。

まとめ

D2Cは、製造から販売までを1つの企業が一貫して行うことで、コストを抑えながら売上の向上を目指せるビジネスモデルです。企業の色も出しやすく、集めた顧客データでさらなる商品開発やブランディングが可能になります。

ただし、起業時には顧客開拓や集客に伴うマーケティングやブランディングなど、一定のコストと知識が必要です。「D2Cの立ち上げを検討しているけど、経験や知識がなくて不安」という方は、D2Cビジネスの支援をしている、信頼できる企業との連携も視野に入れてみてはいかがでしょうか?

●Brand Activation/D2Cの機能専門会社はこちら
https://www.daiko.co.jp/brand-activation/organization/

※1出典:「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」,経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html
(最終確認:2024年3月29日)

※2出典:出典:総務省 統計局 インターネット通信販売の現状について
https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/cpi/pdf/008-2.pdf
(最終確認:2024年3月29日)

この記事の著者

COCAMP編集室

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。