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2023.05.31

D2Cビジネスを読み解く!〈前編〉ダイレクトマーケティングの歴史

ダイレクトマーケティングという概念は、1961年、米広告代理店「ワンダーマン」の創設者・レスターワンダーマンによって初めて世に送り出されました。以来顧客と直接コミュニケーションを図り、個別にアプローチを行うというマーケティング手法は、それぞれの時代に合った要素を取り込みながら発達してきました。

今回は日本のダイレクトマーケティングの歴史を振り返りつつ、考え方や手法がどのように変わっていったのかを整理し、今注目されているビジネスの仕組み「D2C」への理解を深めます。

日本に通信販売が広まった70年代

日本の近代的な通信販売が始まったのは1970年代です。この時代にテレビ・ラジオショッピング・カタログ販売といった業態が次々と生まれていきました。中間業者を介さないので商品をより安価に提供できることができ、マスメディアやカタログを売り場として活用し市場を切り開いていきます。

通信販売が普及する要因となったのが「宅配便」の誕生です。低コストで小口の荷物を個人宅へお届けする環境が整い、流通の高速化を図ることで市場が拡大していきます。こうして電話や手紙で注文すると自宅に商品が届く通信販売は、マーケティングの4Pにおける「Place」に大変革をもたらし、店頭販売に対するディスラプションとなっていきます。

80年代、特定のカテゴリーに特化した単品リピート通販が誕生

それまで通信販売のプレイヤーとしてはディノスやニッセンといった専業企業が中心で、カタログを使って多品種の商品を販売するスタイルが主流でした。

ところが80年代に入るとさまざまなカテゴリーに特化した通販会社が登場します。自分達で作った商品を全国に流通させることが可能になったため、主戦場を通販に置く企業が増加。商品を直接顧客にお届けできるので「店頭では手に入らないような品質の良いものを低価格で提供」という広告コミュニケーションも行われました。

「単品リピート型通販」が生まれたのもこの頃です。特に一定のペースで消費される健康食品や化粧品は通販ビジネスとの相性が良く、さまざまな商品に特化した通販会社が生まれていきます。
またこの頃NTTのフリーダイヤルサービスが始まり、電話をフックにしたテレマーケティングが活発化。1987年には国内通販市場は1兆円を超えます。

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インターネットが普及し始める90年代、大手メーカーが相次いで参入

90年代にはカタログ通販企業が全盛期を迎えます。後半に入るとダイレクトマーケティングの中心的インフラとなるインターネットが登場。95年に「ウインドウズ95」が発売されると、ネット上で商取引が行われるようになり、カタログ/テレビショッピングなどに大きな変化をもたらします。大手メーカー・小売も次々とダイレクトマーケティング市場に参入。販路はインターネット上に急拡大していきます。

90年代終盤にはプラットフォーマーによるモールも次々と開設されました。One to oneマーケティングやCRMといった顧客起点のマーケティングが注目され始めるのもこの頃です。流通においては佐川急便が宅配サービスをスタート。価格競争も起き、通信販売の環境がさらに整備されました。

インターネットが急速に普及した2000年代、Amazonが業界トップに

「IT革命」という言葉に象徴されるように、2000年代に入るとインターネットが急速に普及します。AmazonやGoogleが日本でのサービスを開始。インターネット環境さえあれば、企業と顧客がつながってどこででも取引できる環境が整っていきます。

また顧客情報を大量に処理できるようになり、データマーケティングや通販システムも進化していきます。かつてカタログに売り場を展開したように、インターネット上にマーケットプレイスを設けた楽天やAmazonといったプラットフォーマーによるオンラインショッピングが活況を呈していきます。

一方で老舗企業の成長が鈍化。他企業に買収されるようなケースも出てきます。インターネットが一般化すると、消費者自らが情報を検索して比較・検討して商品を購入。その情報を消費者が広く発信していくというプロセスが加わり、消費者の購買行動も変化していきます。

2010年以降、デジタルマーケティングが進化。D2Cビジネスが急浮上

2010年代になるとスマートフォンが急速に普及し、SNSやブログも一般に浸透。消費者が発信する場が増えていきます。企業と顧客はよりダイレクトにつながりやすくなり、EC取引はいつでもどこでもてのひらの上でできるようになりました。ビッグデータやAIを活用して顧客の嗜好や行動を分析し、「個」をターゲットにしたデジタルマーケティングが進展していきます。

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他方で「Place」にもたらしたイノベーションは完了します。企業と個客が直接取引する、メーカーと個客が直接対話する、個客の自宅に商品を直接お届けするといったことが当たり前になり、通信販売の価値はもはや陳腐化してしまいました。次第にカタログ販売企業の凋落が目立ち、単品リピート販売もこれまでのような成長を持続できないところが増えていきます。

やがて2018年頃にはアメリカで急速な広がりを見せていたD2Cビジネスが日本に上陸。D2Cという概念が提唱され定着しています。

次回、D2Cビジネスを読み解く!〈後編〉ダイレクトマーケティングの可能性へ続きます。

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。