顧客からの受注や問い合わせに対応するかつての「コールセンター」は、いま、企業と顧客との貴重な接点を生み出す「コンタクトセンター」として大きな注目を集めています。そこは、いわば企業活動の最前線。DXの時代にあって、顧客とのリアルな対話から何を生み出し、事業戦略につなげていくのか――。ダイレクトマーケティング分野を中心に、多くの企業にソリューションを提供している株式会社ディー・クリエイトの取り組みについて聞きました。
[インタビュイー]
富田 芳光(とみた よしみつ)
株式会社ディー・クリエイト
代表取締役社長
瀬上 康晴(せのうえ やすはる)
株式会社ディー・クリエイト
CEM局 カスタマーエンゲージングマネジメント部
部長
コンタクトセンターは、「ブランド体験」を担う。
ここ20年ほどの間に、コンタクトセンターは大きく変化しました。顧客対応のチャネルは電話に加えてメールやウェブ、チャットなどへと広がり、その位置づけも、お客様に働きかけて積極的に利益を生み出す役割へ、すなわちコストセンターからプロフィットセンターへの転換が求められてきました。
「電話を通じてお客様が企業側の人と接する機会は減りました。しかし、だからこそ、対話 、そして1本の通話を通して与える印象がより強まっている、と私たちは考えています」。そう話すのは、株式会社ディー・クリエイトでコンタクトセンター業務を統括する瀬上氏。「コンタクトセンターは、いわば、企業ブランドの「体験ブース」である――そのような認識で、より戦略的な役割を果たす場所として、積極的に活用するべきだと考えています」(瀬上氏)
コンタクトセンター業務をディー・クリエイトに委託するクライアント企業の認識はどうでしょうか。「お客様にとっての価値があるモノやコトを提供する――「顧客価値を高める」ことの重要性については、ずいぶん浸透してきたと思います。ただ、『コストセンターからプロフィットセンターへ』という場合の「プロフィット」という言葉は、まだまだ短絡的な利益という文脈で語られがちです。たとえば、解約抑止や定期購入の引き上げなどは、たしかに利益を生みはしますが、お客様との関係で言えばごく短期的な活動です。本来、「プロフィット」の中には、一貫してブランドの価値を訴求し、そこから得られる「長期的な信頼」とか「絆」のような意味も含まれると思うのですが、そこまでには至っていないと感じています」(瀬上氏)
長期的な視点で、顧客に信頼される「コンタクト」を。
たとえば、セールスが中心で、お客様から敬遠されがちなイメージのある「アウトバウンド(発信業務)」も、方法次第で顧客に感謝されるような対応が可能になるといいます。「ある損害保険会社では、大きな地震の発生時にコンタクトセンターを通じてお客様に連絡し、『わずかな被害でも補償対象になる場合がある』ことをお知らせしました。これに対して、SNSなどで『ありがたかった』『感動した』という投稿が広まった、という事例があります」(瀬上氏)
地震保険の補償が使われることは、保険会社の業務としては短期的には「マイナス」です。しかし、顧客自身が気づいていなかった補償の可能性を知らせることは、その企業の保険に加入していることの価値を改めて認識させました。「長期的に見れば、企業への信頼を醸成し、LTVを高めることにつながったのだと思います」(瀬上氏)
ディー・クリエイトでは、このような顧客フォローのアウトバウンドに力を入れているといいます。「使い方にわからないことがないかお聞きしたり、何かわずかでも良い兆しをお感じになっていないか丁寧にヒアリングしたり…いわば『売らない』アウトバウンドです。お客様からは『また定期的に連絡してほしい』といった嬉しい声もいただきました」(瀬上氏)
その後の調査では、話ができた顧客の継続率は5%から10%も上昇。コンタクトセンターの戦略的・積極的な活用が、LTVの向上に貢献することが見えてきます。
顧客の声を事業戦略につなげるセンター運営
コンタクトセンター業務が注目される理由は、他にもあります。株式会社ディー・クリエイト代表取締役社長の富田氏は、「自社の顧客の顔が見えない」ことが、多くの企業に共通する課題になっているからだと話します。「新規顧客獲得のハードルはどんどん高くなっていますから、既存顧客を大切にしてLTVを高める重要性はどの企業も痛感していると思います。そのために、VOC(Voice of Customer:顧客の声)を集めることはとても重要なポイントなのに、それが十分にできていないと感じているようです。ダイレクトマーケティングは、既存の流通を介する事業に比べるとお客様との接点は多いのですが、それでも、企業側にまで声が届かない。お客様との唯一の接点として、コンタクトセンターへの期待が高まっているのだと思います」(富田氏)
だからこそ、ディー・クリエイトでは、顧客の声を提案に結びつけるコンタクトセンター運営を重視しているといいます。「どんなコンタクトセンターでも、お客様に言われたことは記録し、集計しますが、それをただ羅列してホットボイスとして報告 する場合が多いと思います。ディー・クリエイトでは、お客様の声を継続的に収集・分析し、どこに課題があるのか、それを解決するためにできることは何か、といったご提案につなげています」(瀬上氏)
そこで重要になるのがコミュニケーターの意識だといいます。「ひとりひとりがマーケティング視点をもってお客様と接することが必要ですね。お客様のインサイトをしっかりと把握し、お客様の感じている課題を聞き取り、その背景には何があるのか、と考えながら話を聞く。マーケティングの起点になるような性格を持ったコンタクトセンターを運営することで、クライアント企業の課題解決につなげることが可能になると考えています」(富田氏)
コンタクトセンターは、もはやブランドの一部である。
「マーケティングの起点になるコンタクトセンター」を可能にするためには、コミュニケーターが、その企業の価値、ブランドの価値を、どれだけ理解し身をもって感じているか、ということがとても重要になります。
「以前実施した調査から、顧客のロイヤルティに影響する要素が大きく2つあることが見えてきました。ひとつは商品の効果をどう実感するか、もうひとつがコンタクトセンターの対応です。コミュニケーターとのやりとりが、企業姿勢やサービス、情報も含めた「ブランド体験」になっているということです。そこで好感を抱き、信頼できると感じることが、お客様のロイヤルティにつながっていくのだと考えています」(富田氏)
「その意味では、マインド教育、マインド醸成がとても重要になっていると思います。我々のクライアントである企業様が どんな思いでこのブランドを立ち上げたのか、商品を開発したのか――そういった商品の背景にある価値をコミュニケーターが深く理解し、企業の「顔」としてお客様に伝えられるかどうか、そこがポイントになると思っています」(瀬上氏)
顧客の信頼を醸成してLTV向上につなげていく――真の「プロフィット」につながるコンタ
クトセンター実現には、人の対話力も大きな力になりそうです。次回は、トークスクリプトと人材育成についてうかがいます。
顧客とつながるコンタクトセンター〈第1回〉コンタクトセンターは、ブランドの一部
顧客とつながるコンタクトセンター〈第2回〉「対話技術」で、顧客価値を生みだす
顧客とつながるコンタクトセンター〈第3回〉AI時代こそ、リアルな対話が活きる
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ディー・クリエイト CREDENTIAL
まとめ
■コンタクトセンターは、顧客にとって企業・ブランドの体験ブースである。
■短期的な利益だけに固執しない、戦略的視点が必要。
■コンタクトセンターに集約される情報は、マーケティングの起点になる。
この記事の著者
富田 芳光
(株)ディー・クリエイト 代表取締役社長