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2025.07.11

顧客体験(CX)をつくるとは「幸福感を高める体験」をつくること~真の顧客価値の追求が幸福体験を生み出す

顧客体験(CX)という言葉は、現代ビジネスにおいて欠かせないキーワードとなりました。多くの企業がCX向上を掲げ、顧客満足度やロイヤルティの向上に努めています。しかし、「顧客体験をつくる」とは、単に製品やサービスを提供するだけ、あるいは顧客を満足させるだけでもありません。その先にある本質的な意味を問い直す時期に来ています。それは突き詰めると、顧客が真に求める「価値」を提供し、その結果として顧客の幸福感を高める体験をつくり出すことではないでしょうか。そして、この「顧客の幸福」という視点は、近年注目が高まるウェルビーイング経営という概念にもつながっていくものです。

なぜ、顧客価値が「幸福感」と結びつくのか?

現代の消費者は、もはやモノやサービスの機能的な価値だけで購入を決めるわけではありません。私たちは、製品やサービスから得られる感情的な価値や意味を強く求めるようになっています。この感情的な価値こそが、現代において特に重要視される顧客価値の本質の一つです。

例えば、あるカフェでコーヒーを飲むときを想像してみてください。「喉が潤う」という機能的な価値はもちろんのこと、「居心地の良い空間でリラックスできる」「店員さんの優しい笑顔に癒される」「環境に配慮した豆を使っていることに共感できる」といった、さまざまな感覚的・感情的な要素が、その一杯のコーヒー体験を特別なものにし、これがまさしく顧客価値となります。

こうした感情的な顧客価値は、顧客の心に深く響き、単なる「満足」を超えた「喜び」や「充足感」を生み出します。これこそが、私たちが日々求める「幸福感」に直結する要素なのです。企業とのあらゆる接点を通じて、顧客がポジティブな感情を抱き、自身の生活が豊かになったと感じる瞬間、それがまさに顧客価値が提供され、顧客の幸福感を高める体験が提供された瞬間と言えるでしょう。

顧客の幸福はどこで生まれる? ~企業活動のすべてが「幸福感を高める接点」に

顧客の幸福感を高める体験は、特定の部署や活動だけで生まれるものではありません。驚くかもしれませんが、企業のあらゆる活動が、顧客の感情に影響を与え、その幸福感に貢献する可能性を秘めています。これはつまり、企業のすべての活動が顧客価値提供の機会である、ということです。

接点となる企業活動にはどのようなものがある?

企業のすべての活動が、顧客に顧客価値をもたらし、「幸福感」へとつなげる接点になり得ます。接点となる活動にはどのようなものがあるのでしょうか。

宣伝活動(広告、プロモーション、キャンペーンなど)~幸福への「期待」を紡ぐ最初の顧客体験

広告やプロモーションは、顧客が企業やブランドと出会う最初の重要な接点であり、まさしく顧客体験の一部です。単に製品情報を伝えるだけでなく、その製品やサービスが顧客の生活にどのような良い変化をもたらし、どんな未来を描けるのか、つまり「幸福への期待」を紡ぎ出す役割を担います。これは、企業が提供する顧客価値を最初に提示する場でもあります。例えば、ある車の広告が「家族との忘れられない思い出」を強調するなら、それは単なる移動手段としての車ではなく、「家族の絆を深める道具」としての顧客価値を提示しているのです。しかし、この期待が現実の体験と大きく乖離してしまうと、顧客は失望し、むしろ不幸な体験になってしまうため、宣伝活動には顧客価値と期待値のマネジメント視点も不可欠です。

営業活動(セールス活動)~信頼と共感の創造による顧客価値の提供

顧客と直接対面する営業担当者の言動は、企業の顔として強い影響力を持っています。顧客の課題に真摯に耳を傾け、最適なソリューションを提案し、購入後のサポートまで含めて信頼関係を築くことは、顧客に安心感と満足感、ひいては幸福感を与えます。これは、営業担当者が顧客価値を直接届ける重要な役割を担っているからです。強引なセールスではなく、顧客に寄り添う姿勢こそが、幸福な顧客体験を生み出します。

採用活動~企業の文化と価値観の伝達、潜在的な顧客価値の醸成

採用活動は、未来の社員となる「候補者」にとっての重要な顧客体験です。しかし、それだけではありません。採用プロセスでの企業の透明性や誠実な対応は、候補者だけでなく、その候補者を通じて社会全体に企業の文化や価値観を伝えます。もし採用体験がポジティブであれば、その評判は広がり、潜在顧客にも好意的な印象を与え、ブランドへの信頼感へとつながります。これは、企業の倫理観や姿勢という間接的な顧客価値を伝えることにも繋がります。

製品開発・サービス設計~ニーズを超えた感動による顧客価値の提供

顧客の声を深く理解し、そのニーズに応えるだけでなく、期待を超えるような革新的な製品やサービスを生み出すことは、顧客に大きな驚きと喜び、つまり幸福感を与えます。使いやすさ、デザインの美しさ、機能の充実度、そして持続可能性への配慮など、細部にまで込められた企業の想いが、顧客の心に響きます。これこそが、機能的価値と感情的価値の両面で顧客価値を最大化するプロセスです。

流通・パートナー企業との接点~一貫した顧客価値の提供

製品やサービスが顧客の手元に届くまでのプロセスに関わる流通業者や販売代理店、アライアンスパートナーといった関係会社も、顧客体験の重要な一部です。彼らの対応品質やサービスレベルが、顧客の最終的な体験に直結します。企業は、自社のブランドガイドラインを共有し、パートナーシップを通じて一貫した高品質な顧客価値を提供できるよう努める必要があります。

カスタマーサポート・アフターサービス~安心感と問題解決による幸福、そして顧客価値の再確認

製品やサービスの使用中に生じる疑問や問題に対するサポートは、顧客の不安を解消し、安心感を提供します。迅速かつ的確で、何よりも共感的な対応は、顧客に「大切にされている」と感じさせ、困難な状況から救われる幸福感につながります。トラブル時の対応こそが、ブランドへのロイヤルティを決定づける重要な機会であり、企業が顧客価値を再確認し、深化させる場となります。

 CSR活動(企業の社会的責任)~共感と社会貢献による間接的な顧客価値の提供

企業が環境保護、地域社会への貢献、公正な労働慣行など、社会的責任を果たす姿勢は、顧客の共感を呼び、その企業の製品やサービスを選ぶことにポジティブな意味を与えます。顧客は、購入を通じて社会貢献に参加しているという間接的な幸福感を得ることができ、ブランドに対する誇りや愛着を深めます。これは、倫理的な側面からの顧客価値提供と言えるでしょう。

デジタル体験とリアル体験、それぞれの幸福への貢献と顧客価値

今日の顧客体験は、デジタルとリアルが融合した形で提供されます。デジタルは、私たちの生活に「利便性」と「効率性」という幸福をもたらしました。オンラインショッピングで欲しいものがすぐに手に入ることや、チャットボットで疑問がすぐに解決することは、顧客の時間を節約し、ストレスを減らします。これにより、より多くの時間を大切なことに使えるようになり、間接的に幸福感を高めるのです。これは、デジタルが提供する独自の顧客価値です。
一方、リアルな体験は、「感動」や「つながり」といったデジタルでは得にくい幸福を提供します。実際に製品に触れること、店舗で温かい接客を受けること、イベントで同じ興味を持つ人々と交流すること。これらの体験は五感を刺激し、深い共感を生み出し、記憶に残る「心の豊かさ」につながります。デジタルで興味を持った顧客が、最終的な購入や深いエンゲージメントのためにリアルな場を求めるのは、まさにこうした幸福感を追求する行動と言えるでしょう。リアルな体験は、デジタルとは異なる種類の顧客価値を提供します。デジタルとリアルは、互いに補完し合うことで、より豊かな顧客体験と顧客価値を創出します。

社員一人ひとりが顧客価値を創造し、幸福感を高める

顧客の幸福感を高める上で、最も直接的で、しかし見過ごされがちなのが、社員一人ひとりの行動や発言です。顧客が企業に抱くイメージは、ウェブサイトのデザインや広告だけでなく、電話応対のトーン、店舗での店員の笑顔、メールの返信速度、あるいはSNS上での社員の振る舞いといった、あらゆるタッチポイントで形成されます。社員の誰もが「企業の顔」となり、顧客に直接的または間接的に影響を与え、顧客価値を創造しています。

例えば、困っている顧客に対して、マニュアルを超えた共感的な対応をする社員の存在は、顧客に「この会社は自分を大切にしてくれる」という安心感と信頼感を与え、深い幸福感につながります。これは、社員が自らの行動を通じて顧客価値を提供している瞬間です。社員が活き活きと働き、企業文化がポジティブであれば、それは必ず顧客にも伝わり、ブランドに対する好意や信頼、ひいては幸福感を高める要因となるでしょう。

ウェルビーイングと顧客体験の関係性~顧客価値と幸福の循環

顧客の幸福感を高める体験、すなわち顧客価値を追求することは、容易ではありません。顧客の多様なニーズや変化する価値観に対応し、デジタルとリアルを融合させながら、一貫した質の高い体験を提供するには、企業全体での取り組みが不可欠です。

ここで、ウェルビーイング経営という考え方が、顧客体験と顧客価値の追求において大きな意味を持ちます。ウェルビーイング経営とは、従業員の心身の健康や働きがいだけでなく、顧客、地域社会、ひいては地球全体の幸福に貢献することを目指す経営のあり方です。

特に、従業員のウェルビーイングは、顧客価値の質と顧客体験に直接的な影響を与えます。従業員が身体的、精神的、社会的に満たされている状態(従業員のウェルビーイング)を重視することで、彼らは最高のパフォーマンスを発揮し、顧客に心からのサービス、つまり真の顧客価値を提供できるのです。従業員が幸福でなければ、顧客に真の幸福を提供することは難しいでしょう。ウェルビーイング経営はそのための環境を整えます。単に福利厚生を充実させるだけではありません。企業のミッションやビジョンを社員と共有し、働きがいを育み、オープンなコミュニケーションを奨励することで、社員一人ひとりが「顧客価値を提供し、顧客の幸福に貢献する」という意識を強く持つようになります。これにより、社員の自律性が高まり、彼らの創造性やホスピタリティが顧客価値と顧客体験の質を向上させる原動力となるのです。


【参考】ウェルビーイング経営とは?

「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉は、「幸福」や「良好な状態」と訳されますが、単に身体的に健康であるだけでなく、精神的、社会的に満たされている状態を指す、より包括的な概念です。そして「ウェルビーイング経営」とは、企業が自社の利益追求だけでなく、企業活動に関わるすべてのステークホルダー(従業員、顧客、取引先、地域社会、株主など)の心身の健康と幸福を追求する経営手法を指します。

ウェルビーイング経営の多角的な側面

この経営手法は、特に以下の3つの側面に焦点を当てています。

  • 従業員のウェルビーイング
    最も中心となるのが従業員の幸福です。従業員が肉体的、精神的、社会的に満たされ、生き生きと働ける環境を整えることを目指します。これは、単に福利厚生の充実や残業時間の削減に留まらず、働きがい、自己成長の機会、良好な人間関係、ワークライフバランスなど、多岐にわたる要素を含みます。これが重要なのは、従業員が幸福でエンゲージメントが高いほど、生産性や創造性が向上し、離職率の低下にもつながるからです。結果として、企業の競争力強化や企業価値向上に大きく貢献します。
  • 顧客のウェルビーイング
    記事で詳しく述べているように、製品やサービスを通じて顧客に単なる満足以上の喜びや充足感、豊かな体験、すなわち真の顧客価値を提供することで、顧客の幸福感を高めることを目指します。これは、顧客との長期的な信頼関係構築やブランドロイヤルティの向上に繋がります。
  • 社会・地球のウェルビーイング
    企業が事業活動を通じて、地域社会の活性化や環境問題への貢献など、より広範な社会的責任(CSR)を果たすことで、社会全体のウェルビーイング向上に貢献する視点も含まれます。これは、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献とも密接に関わっています。
健康経営との違い

ウェルビーイング経営と似た言葉に「健康経営」がありますが、両者には明確な違いがあります。

  • 健康経営
    従業員の「身体的健康」に焦点を当て、健康診断の受診促進や運動習慣の定着支援など、主に健康維持・増進を目的とした経営手法です。
  • ウェルビーイング経営
    健康経営の概念をさらに広げ、身体的健康に加え、精神的・社会的な幸福、働きがい、人生の充実度といった、より広範な「幸福」を追求します。従業員だけでなく、企業を取り巻くあらゆるステークホルダーの幸福を目指す点も特徴です。
なぜ、ウェルビーイング経営が注目されるのか?
  • 人材不足の深刻化
    労働人口減少が進む中で、企業が優秀な人材を獲得・定着させるためには、単なる給与や福利厚生だけでなく、「この会社で働きたい」と思えるような、心身ともに満たされる環境が求められています。
  • 働き方や価値観の変化
    多様な働き方が広がり、仕事だけでなくプライベートの充実も重視する価値観が強まっています。企業は、個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を提供することが不可欠になっています。
  • 持続可能性への意識の高まり
    SDGsの浸透により、企業には経済的価値だけでなく、社会や環境への貢献がより強く求められるようになりました。ウェルビーイング経営は、この「持続可能な社会」の実現に貢献する経営戦略と位置付けられています。
  • 投資家からの評価
    近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の重要性が高まっており、従業員の幸福や社会貢献に積極的に取り組む企業は、持続的な成長が見込めると評価されやすくなっています。
ウェルビーイング経営の具体的な取り組み例

ウェルビーイング経営の取り組みは多岐にわたりますが、例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 柔軟な働き方の推進:テレワーク、フレックスタイム制、時短勤務など、従業員が働き方を選択できる制度。
  • 心身の健康サポート:メンタルヘルスケア、カウンセリングサービス、フィットネス補助、健康増進プログラム。
  • コミュニケーション活性化:社内SNS、フリーアドレス制、ランチ補助、社内イベント。
  • キャリア支援:キャリアコンサルティング、リスキリング支援、明確な評価制度。
  • エンゲージメント向上: 従業員サーベイによる現状把握と改善、感謝を伝える文化の醸成。
  • 社会貢献活動への参加機会:CSR活動への従業員参加促進。

ウェルビーイング経営は、企業が持続的に成長し、社会の中で存在意義を高めていくための、現代における重要な経営戦略と言えるでしょう。


顧客体験のつくり方~幸福を追求するための戦略と顧客価値の最大化

顧客の幸福感を高める体験、すなわち顧客価値を追求するためには、戦略的なステップを企業活動の根幹に据えるべきです。

顧客起点・顧客志向が基本~幸福のタネ=顧客価値を見つけ出す

顧客体験を語る上で、最も重要なのが顧客起点、顧客志向であることです。単に自社の都合や製品の機能だけを考えるのではなく、顧客の視点に立って、彼らがどんな時に喜び、どんな時に不満を感じるのかを深く理解することから始めます。顧客の日常生活や価値観、そして彼らがまだ気づいていない潜在的なニーズに耳を傾けることで、幸福な体験のタネ、すなわち真の顧客価値を見つけ出すことができます。 また、ここでいう「顧客」とは、商品やサービスの最終的な受け手だけではありません。従業員、パートナー企業、地域社会、株主など、企業のすべての関係者(ステークホルダー)もまた、顧客と捉えるべきです。彼らの幸福も追求することで、企業全体のウェルビーイングが高まり、それが最終的にエンドユーザーの幸福な顧客体験と顧客価値へと繋がります。

テクノロジーの恩恵を十分に活用する

現代において、顧客体験を向上させる上でテクノロジーは不可欠な要素です。単なる効率化のツールとしてではなく、顧客一人ひとりの幸福をパーソナライズして提供する手段として積極的に活用しましょう。膨大な顧客データを分析し、それぞれの顧客に最適な情報やサービスを適切なタイミングで提供することで、顧客は「自分だけのために考えられている」と感じ、幸福感は一層高まります。これは、テクノロジーによって顧客価値を最大化する取り組みです。チャットボットによる迅速な問題解決、AIを活用したパーソナライズされたレコメンデーション、VR/ARによる没入感のある体験提供など、テクノロジーの活用範囲は無限大です。

テクノロジーだけじゃない!顧客の心を動かすデザインと「言葉の力」

テクノロジーの活用はもちろん重要ですが、それだけで顧客の幸福感が生まれるわけではありません。製品やサービスのデザイン、そして顧客とのコミュニケーションにおける言葉の選び方もまた、顧客価値の質と顧客体験の質を大きく左右します。直感的で使いやすいインターフェースデザイン、心を動かすコピーライティング、温かみのあるサポートメッセージなど、細部にまで顧客への配慮が行き届いているかどうかが、顧客の感情に直接訴えかけます。テクノロジーは手段であり、その先に「いかに顧客の心を動かすか」という人間的な視点と、それによって提供される顧客価値が不可欠なのです。

継続的な改善サイクルを回す~幸福感と顧客価値の測定と分析

顧客の幸福を追求する旅は、一度ゴールにたどり着けば終わりというものではありません。顧客の価値観や社会は常に変化しています。そのためには、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、幸福感を具体的なデータとして測定し、分析することが不可欠です。これには、提供された顧客価値が実際に幸福感に繋がったかを検証する意味合いも含まれます。

幸福感と顧客価値の測定方法の例

  • 定性的なアプローチ
    顧客インタビューやフォーカスグループを通じて、彼らの感情や体験の詳細なストーリーを把握します。アンケートの自由記述欄やSNS上のコメント分析も有効です。提供した顧客価値がどのように受け取られたかを深く理解できます。
  • 定量的なアプローチ
    ・NPS(ネットプロモータースコア):顧客が友人や同僚にサービスを推奨するかどうかを測る指標で、顧客の満足度やロイヤルティ、ひいては幸福感の高さ、そして顧客価値の浸透度を示唆します。
    ・顧客ロイヤルティ指標:リピート率、継続利用率、顧客生涯価値(LTV)など、顧客が長期的に企業と関係を築いているかを示す指標。これらは、提供された顧客価値が持続的な関係構築に貢献しているかを測ります。
    ・感情分析:テキスト分析ツールを用いて、顧客の声に含まれる感情のポジティブ・ネガティブ度合いを測定します。顧客価値がどのような感情を喚起したかを可視化します。
    ・特定の行動の誘発:ポジティブなレビュー投稿数、SNSでのエンゲージメント、紹介制度の利用率なども間接的な幸福感と顧客価値の表れと捉えられます。
  • 従業員のウェルビーイング測定
    従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイを通じて、従業員の幸福度と顧客の幸福度との相関関係を分析し、両者の「幸福の循環」、ひいては従業員が顧客価値提供にどれだけ貢献しているかを可視化します。

これらの測定結果を基に「どれだけ顧客の幸福に貢献できたか」「どのような顧客価値が幸福に繋がったか」という視点も取り入れて効果を測定しながら、継続的に改善していくことが重要です。

幸福感を高めるCXを実践する企業の事例~顧客価値創造の具体例

顧客の幸福感を追求する企業は、すでに世界中でその価値を証明しています。彼らは単に製品やサービスを売るだけでなく、独自の顧客価値を創造し、それを幸福感として提供しています。

  • Apple:
    製品のデザイン、使いやすさ、そして直営店での体験を通じて、顧客に「創造性」や「自己表現」の幸福感を提供しています。これは、機能的価値を超えた感情的な顧客価値の典型です。単なる機能だけでなく、使うこと自体が喜びとなる体験を徹底的に追求しています。
  • Starbucks:
    「サードプレイス(家でも職場でもない第三の場所)」という概念を提唱し、単にコーヒーを売るだけでなく、居心地の良い空間と温かい接客を通じて、顧客に「くつろぎ」や「つながり」の幸福感を提供しています。これもまた、空間と体験によって提供される顧客価値です。バリスタのホスピタリティや、パーソナライズされた注文体験も、顧客の幸福に貢献しています。
  • Zappos:
    靴のオンライン販売を手がけるZapposは、「WOWサービス」を掲げ、顧客サービスを企業の核としています。顧客がどれだけ喜んでくれるかを最優先し、手厚い返品ポリシーや24時間体制のコールセンターなど、顧客の期待を超えるサービスを提供することで、深い「安心感」と「信頼」という幸福感を生み出しています。これは、サービスを通じて圧倒的な顧客価値を提供する事例です。
  • LUSH(ラッシュ):
    LUSHは、ハンドメイドのコスメを通じて、顧客に単なる製品以上の体験を提供しています。彼らが提供する幸福感は、製品の香りで満たされる五感の喜びだけでなく、「倫理的消費」による満足感が非常に大きいのが特徴です。動物実験を行わない、環境に配慮した原材料の使用、過剰包装の廃止など、企業の透明性と倫理的な姿勢を徹底し、顧客はLUSHの製品を購入することで、自分自身をケアする喜びとともに、社会貢献の一端を担っているという「善行による充足感」や「共感」を得られます。これは、製品そのものの価値に加えて、企業の理念が顧客価値となる好例です。店舗でのカラフルで香りにあふれた体験、店員の製品知識とフレンドリーな接客も、顧客の心を豊かにします。
  • Airbnb(エアビーアンドビー):
    単に宿泊場所を提供するだけでなく、旅行者がその土地に暮らすように滞在し、現地の文化や人々と交流する「非日常的な体験」をデザインしています。個性豊かな宿泊施設、現地の人との交流を促す「体験」プログラム、安全・安心への配慮のほか、ホストとゲスト間の相互レビューシステムも信頼構築に貢献しています。顧客は、ホテルでは味わえない「冒険心」や「発見の喜び」を感じ、旅先での新しい「つながり」や「思い出」を築くことができます。これは、単なる場所の提供ではなく、体験という形の顧客価値を創出している例です。
  • Patagonia(パタゴニア):
    アウトドアブランドのパタゴニアは、高品質な製品提供はもちろんのこと、環境保護への強いコミットメントをブランドの核としています。「リペア(修理)すれば買う必要なし」というメッセージを掲げ、製品の長期使用を推奨したり、売上の一部を環境保護活動に寄付したりしています。また、製品が環境に与える負荷を最小限に抑える努力を惜しみません。顧客はパタゴニアの製品を身につけることで、自身が「持続可能な社会に貢献している」という意識を持つことができます。製品の機能性だけでなく、その裏にある「企業としての信念」に共感し、深い満足感と「倫理的な誇り」を感じることで、ブランドへの強い愛着と幸福感が生まれます。これもまた、企業の哲学そのものが顧客価値となる典型的な事例です。

これらの企業は、単に製品やサービスを売るだけでなく、顧客の感情に深く寄り添い、多角的な接点を通じて「幸福」をデザインすることで、顧客から熱狂的な支持を得ています。「顧客の幸福感」を高めるCXは、単に製品やサービスの質を高めるだけでなく、企業のブランド哲学、倫理観、そして顧客との情緒的なつながりをいかに深くデザインし、顧客価値として提供できるかにかかっています。顧客は、企業が提供する「価値」に共感し、その「体験」を通じて自身の生活が豊かになることを求めているのです。

まとめ~幸福を追求する企業こそが選ばれる時代へ~

顧客体験をつくること。それは、単に製品やサービスを売る行為を超え、顧客の人生や暮らしに寄り添い、その幸福感を高める顧客価値をデザインすることに他なりません。広告やプロモーションといった宣伝活動から、営業、製品開発、採用、流通、そしてCSR活動に至るまで、企業のあらゆる接点が、この幸福な体験、すなわち顧客価値を創出する機会となります。

そして、この顧客の幸福追求、ひいては顧客価値の最大化を企業全体の戦略として掲げるウェルビーイング経営は、持続的な成長を実現するための羅針盤となります。従業員が幸福であれば、顧客価値の提供がより円滑になり、顧客も幸福になり、その幸福が企業に還元される。この幸福の循環こそが、これからのビジネスにおいて最も重要な価値となるでしょう。

あなたの会社は、顧客のどのような「幸福」に貢献したいですか? そして、その「幸福」をすべての接点で一貫して提供できる顧客価値として提示できていますか?

 

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この記事の著者

COCAMP編集部

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。