性格によって人の行動様式が異なることに疑いはありません。顧客の性格がわかれば、その情報をマーケティングコミュニケーションに活用できることも明らかです。しかし、人の性格を推し測ることは容易でないため、これまで性格データは、十分には活用できていませんでした。
近年、技術の進歩によって性格データを簡単に取得できる方法が考案されています。性格データによって、コミュニケーションがどう変わるのか。新しいビジネスの可能性について、ディグラム・ラボの木原誠太郎氏、吉田賢治氏、大広の鈴木良平氏にお話を伺いました。
【インタビュイー】
木原 誠太郎(きはら せいたろう)
ディグラム・ラボ株式会社 代表取締役/リサーチプロデューサー
電通やミクシィでマーケティングを担当し、様々な企業のコンサルティングに関わる。2013年、「ディグラム・ラボ」を設立。現在は、心理学×統計学で人間の本質を分析し、カウンセリングする「ディグラム」の研究を進めている。京都芸術大学 客員教授。
最新著書は『新ディグラム性格診断 9タイプが解き明かすあなたの真実』(プレジデント社)ホンマでっか!?TV(フジテレビ系列)や「ニノなのに(TBS系)」や「かまいたちの机上の空論城(関西テレビ)などテレビ出演多数。
吉田 賢治(よしだ けんじ)
ディグラム・ラボ株式会社 クリエイティブディレクター
1978年生まれ。出版社のWeb制作部門からキャリアをスタートし、以来25年以上にわたり、Webサイト制作を中心に広告・映像など多岐にわたるコンテンツ開発に携わる。2018年からは、性格診断をマーケティングに応用するおもしろさに惹かれ、ディグラム・ラボに参画。ユーザー心理に基づいたコミュニケーション設計や診断コンテンツの企画を得意としている。
鈴木 良平(すずき りょうへい)
株式会社大広 ソリューションデザイン本部 副本部長
商品やサービスが生活者に選ばれ、ファンになるまでのフルファネルの戦略設計に豊富な経験を有する。ブランドマーケティングとダイレクトマーケティングの両面で、生活者の行動を促進する戦略シナリオを構築するのが得意。
一般的な顧客データ分析では、マーケティングが上手くいかない理由
マーケティングにおける調査は、企業が市場のニーズやトレンドを理解し、効果的な戦略を立てるために不可欠なプロセスです。調査で得られたデータは、消費者の行動、競合他社の動向、製品やサービスの評価などを判断する材料となります。調査データにより、企業はターゲット市場を正確に特定し、顧客のニーズに応じた製品開発やプロモーションを行えるのです。
このマーケティング調査のデータは、年齢、性別、収入、職業、居住地などのデモグラフィック情報や、顧客の購買行動、使用頻度、ブランドロイヤルティなどの行動情報として分類されるのが一般的です。この中に、人の「性格」が要素として含まれることは極めてまれなのが現実です。
しかし、人間の性格は千差万別で、性格によって考え方や行動様式がさまざまであることに疑いはありません。であるなら、顧客データに「性格」情報がないことは、顧客の特徴を正しく理解し、効果的なマーケティング戦略を立てるのに、不都合だと言えるでしょう。
実は、さまざまに活用されている「性格」データ
マーケティングで意外と見過ごされがちな「性格」という要素ですが、ビジネスの現場では自然と取り入れられています。例えば、人材育成の現場では、性格データがさまざまに活用されています。性格診断ツールを用いて参加者の性格特性を把握し、個々の強みや弱みを理解することは一般的で、研修プログラムは参加者の特性に応じた内容にカスタマイズされ、より効果的な学習が可能となります。また、チームビルディングにおいて、性格データを基にしたグループ分けが行われ、異なる性格特性を持つメンバーが協力し合うことで、創造的な問題解決が促進されることもあるでしょう。
このように、人によって性格が異なり、性格によって行動様式が異なる以上、これをマーケティングコミュニケーションに活用しない手はありません。しかし、性格データをうまく取得できないという高い壁が存在します。性格データを取得する方法がなかったゆえに、性格データをマーケティングコミュニケーションで活用できなかったとも言い換えられるのです。
性格データがコミュニケーションの成果につながる
性格データを取得できる「ディグラム診断」
ディグラム・ラボが考案した「ディグラム診断」は、先の壁を乗り越えることに成功しました。ディグラム診断では、簡単な20問の設問に答えるだけで、その人の性格を分類できるといいます。そして、この性格分類に、30万人を超える大規模調査による行動データを結びつけることで、それぞれの性格ごとの行動パターンの違いまで把握できるにようになりました。つまり、調査データの分析に性格の要素を含められ、マーケティングコミュニケーションに活用できるようになったのです。
「性格によって訴求パターンを変えるとセールスが良くなることがわかっています。例えば、この性格の人には、『まず最初に結論を言った方が良い』というように、コミュニケーションのやり方を変えるだけで結果が良くなります」とディグラム・ラボの木原氏。性格ごとに異なる行動パターンを知ることは、マーケティングコミュニケーションを考える上で、重要な示唆を与えてくれるのです。
性格データで広告素材を使い分けるメリット
すでに、大広とディグラム・ラボは協働で、性格データを取り入れた広告コミュニケーションを実践しています。
例えば、ある食品のデジタル広告では、性格データごとに異なる訴求ポイントの広告クリエイティブを用意しました。ここでは、デモグラフィック情報や過去の購買データによって広告素材を出し分けるのではなく、性格に合わせた最適な訴求クリエイティブを使うことで、コンバージョンレートを高めるのが狙いだったとのこと。
「マーケティングで顧客を深掘りする方法はいくつかあるのですが、どれもやり尽くしたということがしばしばあります。でも、性格診断という新しい切り口で顧客を見てみると顧客の解像度が一段上がるんですよね」(大広・鈴木氏)
顧客の解像度が上がると、最適なクリエイティブも変わります。
「論理性の強い性格の人は、この商品でどんな目的を達成できるかを考えながら広告を見るので、データを根拠にした『〇%改善されますよ』というようなメッセージを作ります。反対に、自分で何をしたらいいかわからないけどなんとなく他人に認められたいという性格の人には、『みんなやっていますよ』『あなたもやりましょう』というクリエイティブを作ればいい」(ディグラム・吉田氏)
「今まではそういうクリエイティブの出し分けを感覚的にやっていたんですよね。『ファクトを出した方がいい』とか『みんな使ってる』を出した方がいいとか、過去の経験則をもとに判断していた。そこに、性格という要素を加えるとロスがなくなって、確度の高いクリエイティブが作れるようになると思います」(鈴木氏)
顧客一人ひとりの性格に合わせて関心の高いメッセージの出し分けることは、広告効率を高める効果をもたらすというわけです。
顧客の“行動喚起“を生み出す装置として機能する性格診断
また、性格診断というアンケート自体に、顧客の行動を促す効果があることもわかってきています。
「単に広告を見せるだけじゃなくて、アンケートに答えてもらうこと自体にエンタメ的な要素があるなと思います。性格診断が顧客のアクションにつながっているという意味ですごくいい仕掛けになる」(鈴木氏)
「あなたはこういう人だから、こうした方がいいですよ」というアプローチは、生活者の行動喚起させやすい」(木原氏)
性格データを取得する役割を持った性格診断は、回答する過程自体にコミュニケーション上の意味があり、それが参加者に次のアクションを起こすきっかけを生むという効果をもたらすのです。
性格データは、企業のさまざまな活動で活用できる
性格データをマーケティングに取り込む活動を続ける中で、性格診断をエンターテインメント要素もからめることで、幅広いビジネスへの活用の可能性が見えてきています。
セールスへの活用
例えば、不動産セールスのシーンでの性格診断。
「お客様の来店時に、まず性格診断に回答してもらう。その結果は即時に営業担当者が把握できる仕組みになっているので、顧客に合った最適なセールストークがわかる。そのおかげで商談がスムーズになります」(木原氏)
採用への活用
採用のシーンでも性格診断は活用されています。
「転職活動の中で不安を抱いている人は少なくないので、そういう気持ちに寄り添うコンテンツも有効です。今の性格のままでいいんだよ、とか、こういう風にしたらもっとよくなるよとアドバイスをする。企業が転職希望者をモチベートする形になるので、企業のイメージアップにつながるかもしれません」(吉田氏)
CRMへの活用
性格データの活用は、購入などサービスを利用する場面に限られません。購入後の継続的なアプローチ、例えばCRMへの活用も可能です。
「顧客をファンにしていく過程、つまり購入後のアプローチでも性格診断は活用できるんじゃないかなと思います。たとえば、合理的で短気な人には、購入後のCRM施策において、ダラダラ説明するよりも簡潔なメッセージを届けたほうがいい…というように、性格ごとに出し分けができれば効果的ですよね。性格データがあることで今まで間違ったアプローチをしていたケースでも、性格に合わせた適切なアプローチに切り替えればロイヤリティを高められる。そんな可能性もある気がします」(鈴木氏)
まとめ
- 性格データを活用することで、顧客のニーズをより深く理解し、ターゲットを絞ったマーケティングが可能になる。
- ディグラム診断は、簡便で迅速な性格データの収集を可能にした。
- 性格データを用いることで、広告のパーソナライズが進み、顧客満足度が向上する。
- 性格に基づくマーケティングは、顧客との長期的な関係構築を目指すCRMにも活用できる。
ディグラム診断では、20問の設問に答えるだけで、性格診断の結果が出力されます。性格データを活用する新しいマーケティングコミュニケーションに関心がある方は、一度、試してみてはいかがでしょうか。
ディグラム診断を始める(https://digram-shindan.com/enquete)
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