コンタクトセンターで生まれるリアルな対話は、顧客が企業やブランドに対して感じる価値に大きく影響することがわかってきました。今回のテーマは、顧客からの信頼性を高め、企業へのロイヤルティ向上を可能にするトークスクリプトと人材教育について。前回に引き続き、ダイレクトマーケティングの分野で画期的なソリューションを提供している株式会社ディー・クリエイトの取り組みを聞きました。
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顧客とつながるコンタクトセンター〈第1回〉コンタクトセンターは、ブランドの一部
[インタビュイー]
富田 芳光(とみた よしみつ)
株式会社ディー・クリエイト
代表取締役社長
瀬上 康晴(せのうえ やすはる)
株式会社ディー・クリエイト
CEM局 カスタマーエンゲージングマネジメント部
部長
戦略的トークスクリプトで、顧客のインサイトを引き出す。
コンタクトセンターで顧客に対応する際、とても重要な役割を果たすのが「トークスクリプト」です。一般的には会話の内容や流れを決める「対応のマニュアル」ですが、ディー・クリエイトの設計は、少し変わっているようです。
「スクリプトの設計は、多くの場合、『お客様はどのような理由で解約されるのか』ということをクライアントにお聞きしたり想定したりする ところから始まります」と話すのは、株式会社ディー・クリエイトでコンタクトセンター業務を統括する瀬上氏。解約理由からスタートするというのは意外ですが、「どのような解約理由があるのか、がわかると、そこをケアするためにはどうすればよいか、という発想になる。結果的に『継続』につながると考えています。たとえば、新規顧客が獲得しにくくなっている昨今は休眠顧客復活の活動も重要度を増してきていますが、休眠顧客復活のアウトバウンドも『復活させること』だけが目的ではなく、休眠に至ったインサイトを掘り下げることで、『復活させること』はできなくてもCRM プログラムを見直していくことにもつなげられます」(瀬上氏)
また、ダイレクトマーケティングの分野では、アクイジション(新規顧客獲得)領域とリテンション(既存顧客維持)領域を別々に管理する場合が多く見受けられますが、そこにも、異なる考え方があるようです。「私たちディー・クリエイトでは、アクイジションとリテンション、お互いの領域によいフィードバックができることを意識してスクリプトを組み立てています。新規のお客様に最初にどのような対応をしたのか、どのような情報をお伝えしたのか、ということが、その後の継続率を大きく左右することもわかっています。ですから、そこで何を伝えるか(何のためにどのような種を撒くか)、どこでどのような情報を引き出すか(何の材料を集めたいのか)という設計がとても重要ですが、それらが事業全体によりよく作用するように、戦略的に考える必要があると考えています」(瀬上氏)
トークスクリプトは「マインド醸成ツール」
ディー・クリエイトのトークスクリプトは、顧客に対する効果だけを狙ったものではありません。瀬上氏は、トークスクリプトは『コミュニケーターのマインド醸成ツールである』と言い切ります。つまり、なぜそこでそれを聞くのか、どういう思いでその話をするのか、という、トークの背景にある「マインド」を理解し、共有するためのツールでもある、ということです。
「たとえば、ある顧客フォローのアウトバウンド(発信業務)に関して、いちばん大切なポイントとして共有したのは『何かを売り込むのではなく、お客様を知ることが目的だ』ということでした。副次的には、お客様ひとりひとりの状況に合わせて製品情報も提供しますが、メインは『お客様を知り、お客様とつながること』です。企業が一方的に伝えたいことを伝えるのではなく、お客様ひとりひとりに合った価値を提供する。それによって、アウトバウンドが、お客様にとって『わずらわしいこと』から『何か有益なことが起こる体験』に変わる――そこまでブレイクダウンして全員で共有することで、ディー・クリエイトが目指す「マインド」がつくりあげられていくのです」(瀬上氏)
さらには、顧客へのヒアリングが単なる「作業」にならないようにすることも重要だといいます。 「たとえば、化粧品の場合、受注のときにはお客様のお肌悩みをお聞きして、その解決にお役に立てることを強調することで継続率が伸びるのですが、突然『お肌悩みはなんですか?』と聞かれても、なかなか答えにくい。そこで、少し遠回りなのですが、『このたび、広告のどのような点にご興味いただいたのですか?』という聞き方をするんです。すると、当然、お悩みを含んだ回答が返ってくる。そこから紐解いてお聞きすることで、お客様も答えやすく、心を開いていただきやすくなるし、なぜ、その商品を手にとっていただいたのか、ということが理解できる。私たちがつくるスクリプトは長い、と言われることもあるのですが、あえて回り道をして、お客様が話しやすい流れに なるよう設計しています。私たちがすごく力を入れているところですね」(瀬上氏)
事業を学び、人を知る。対応力を磨く人材育成。
様々な顧客に臨機応変に対応し、インサイトを引き出すために不可欠なのが、コミュニケーターの教育です。ディー・クリエイトが徹底しているのは、ダイレクトマーケティングの事業構造をしっかりと理解すること。通販検定の受験などもその一環です。広告で顧客を獲得しただけでは成り立たない構造、継続購入やクロスセルの重要性、新規顧客を獲得する意味、それがどのようにCRMにつながっていくのか――それらを理解した上ではじめて顧客対応の業務を担当するといいます。
「アクイジション領域とリテンション領域の連携なども、コミュニケーターが事業の構造や意味を理解していて初めて成立することだと思います」。そう話すのは、ディー・クリエイト代表取締役社長の富田氏。「それと同時に、お客様の立場に立つ、お客様の視点を理解するということも重要です。お客様はひとりひとり、お考えも感じ方も異なりますから、トークスクリプトのやりとりがすべてをカバーできるわけではありません。対話の意味を的確にとらえ、言葉の背景にある気持ちについて考え、お客様のインサイトを引き出せる――そんな人材を育てたいと考えています」(富田氏)
社内のコミュニケーションもまた、人材教育の一環だといいます。瀬上氏は、「大前提として優しくされた人でないとお客様に優しくできない、と考えている」といいます。「この部分の教育には『魔法の一手』はないんです。たとえば、上司として部下に接する時にもお客様に接するように接する。それを続けることで、コミュニケーターは『お客様に対してもこういう態度を求められているのだ』と徐々に体感し、実践できるようになっていくと思っています」(瀬上氏)
お客様の立場で考えることができなければ、本当のインサイトを引き出すことはできない――ディー・クリエイトの方針は一貫しています。「たとえば、店舗への来店予約を躊躇されているお客様が、対話を続けるうちに、『まだまだコロナが怖い』と打ち明けてくださった、という事例がありました。クライアント企業様は、その声をもとに、店舗でのコロナ対策の徹底ぶりをそれまで以上に強く打ち出したり、お客様から集めたお声を元にサービス改善につなげたりと、お客様との絆づくりへお役立ていただいております。コンタクトセンターでのお客様との対話は、よりよいCRMにつながる――私たちはそう確信しています」(富田氏)
マーケティング発想のトークスクリプトと、コミュニケーターの対話力で、顧客のインサイトを引き出す。そこで生まれる対話から、企業戦略が生まれる――ディー・クリエイトでは、コンタクトセンターからそんな循環を創り出す取り組みが続いています。 次回は、AI時代のコンタクトセンターについてうかがいます。
顧客とつながるコンタクトセンター〈第1回〉コンタクトセンターは、ブランドの一部
顧客とつながるコンタクトセンター〈第2回〉「対話技術」で、顧客価値を生みだす
顧客とつながるコンタクトセンター〈第3回〉AI時代こそ、リアルな対話が活きる
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ディー・クリエイト CREDENTIAL
まとめ
■マーケティング発想のトークスクリプトで顧客の心理を掘り下げる。
■「何を話すか」の前に「なぜその話をするのか」の理解が重要。
■事業構造の知識と、顧客インサイトへの理解で、対話をCRMにつなげる。