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2023.09.06

顧客とつながるコンタクトセンター〈第3回〉AI時代こそ、リアルな対話が活きる

AIの普及とオムニチャネル化によって、企業と顧客のコミュニケーションの方法は激変しました。この環境変化の中で、顧客とのリアルな接点であるコンタクトセンターはどのように変化していくのでしょうか。引き続き、多くのコンタクトセンターを運営し、様々な企業にソリューションを提供している株式会社ディー・クリエイトの取り組みを聞きました。

前回の記事はこちら
顧客とつながるコンタクトセンター〈第2回〉「対話技術」で、顧客価値を生みだす

[インタビュイー]
富田 芳光(とみた よしみつ)
株式会社ディー・クリエイト
代表取締役社長

瀬上 康晴(せのうえ やすはる)
株式会社ディー・クリエイト
CEM局 カスタマーエンゲージングマネジメント部
部長

AIと人間、それぞれの得意分野で相乗効果を。

ダイレクトマーケティングの分野では、AIによるチャット対応など、デジタル技術の導入が急速に進みました。企業にとっては、データの取りやすさをはじめとする様々なメリットも見えています。
ディー・クリエイトでコンタクトセンター業務を統括する瀬上氏は次のように話します。「お問い合わせに至るまでにホームページのどのページを見ていたのか、AIを使ったチャットなどではお客様がどこで離脱したのか――そうしたデータは、CRM戦略を立てる上で貴重なヒントになります。加えて、今までの一問一答式のFAQ(よくある質問)など に比べると質問により柔軟に対応できること、なにより、AIの持つ情報処理能力や学習能力、そして365日24時間稼働できるところは、企業にとっては大きなアドバンテージになると思います」(瀬上氏)

では、コンタクトセンター業務の中で、コミュニケーターとの役割分担はどのように行なえばよいのでしょう。難しい課題ですが、方法次第で相乗効果が上げられるといいます。瀬上氏は、経済学者デビッド・アーカーのブランド論から引用しつつ、次のように話します。

「アーカーは、商品の価値を伝えるために、『機能的ベネフィット(商品そのもののベネフィット)』、『情緒的ベネフィット(商品を使用することによって喚起できるプラスの感情/体験)』、『自己表現ベネフィット(商品を使用したことで可能になる新しい自己実現)』が必要だと述べていますが、このうち、AIをはじめとしたツールで補えるのは、実は「機能的ベネフィット」の部分だけだと考えています。
『情緒的ベネフィット』を訴求するには、やはり表情や声色が必要ですし、『自己表現ベネフィット』を訴求するには、お客様の思いや、なりたい姿を引き出し、そこに合わせた1to1の訴求をすることがとても大事です。
ですから、いわゆる『正確な説明』『論理的な説明』が求められる商品知識・業務知識の領域についてはAIが、人の感情に寄り添う領域では有人のコンタクトセンターが重要になってくると考えています。お客様が話をされながらどのように感情が動いたかを察知し、それを踏まえてお話をしていく、というようなところはやはり人でなければできない部分。それぞれの得意分野を活かして相乗効果につなげられればいいと思います」(瀬上氏)

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実現したい「未来」を感じ取って寄り添う。そこに価値が生まれる。

AIをはじめとするデジタル技術とうまく棲み分けながら、人間だからこそ可能になる対応を深めていく――そこに、顧客価値を生み出すコンタクトセンターの姿が見えてきます。

「お客様が商品購入を決断される背景には、その先に実現したい具体的な何かがあると思っています。たとえば膝関節に有効なサプリメントを購入される方は、膝の痛みを取りたいということはもちろんですが、その先に何か夢が――昔は登山が好きだったので、もう一度山に登ってみたい、というような夢あるのではないかと考えるのです」(瀬上氏)対話によってそうした思いを引き出すことができれば、顧客は商品を通してよりたしかな価値を感じられる。それは、商品や企業に対するロイヤルティ向上につながります

クライアント企業の要望は、多くの場合、「まずは商品情報をしっかり伝えてほしい」ということ。しかし、それだけに力点を置くと、企業が伝えたい情報を一方的に伝えることになりかねず、顧客によくない印象を与える結果になる場合もあるといいます。「デジタル化、AIの普及で、人間が対応する場面が限られる時代になったからこそ、その機会にはお客様の思いをお聞きする、言葉の背景にあるものを引き出すことが必要だと思っています」(瀬上氏)

戦略的コンタクトセンターが、顧客価値もブランド価値も最大化する。

コンタクトセンターはこれからどう展開していくのでしょうか。 よりアクティブな組織として活動できると話すのは瀬上氏。「長期的な視点でとらえれば、お客様からの信頼を構築し、絆を強める役割を担っていけるのではないかと思っています。そのためには、見えにくい効果をいかにして可視化するか、ということがこれからの課題ですが…」(瀬上氏)

 より戦略的なコンタクトセンターが求められるようになると話すのは代表取締役社長の富田氏。「最前線に立つコミュニケーターが事業構造をしっかり把握していること、お客様の立場に立ち、インサイトを引き出す技術とマインドを持っていること、この両方があってこそ、LTV向上に貢献するコンタクトセンターを構築できる。私たちが目指す姿も、そこにあります」(富田氏)

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ディー・クリエイトは2023年、「Discover Mind」という企業ステートメントを掲げました。「クライアント企業様のマインド=潜在的なニーズを発見してお役に立ちたいという思い、そして、クライアント企業様にあらためてお客様のことを知っていただき、お客様と共想し、共創することで長く愛されるブランドを構築して欲しいという思いが込められています」(瀬上氏)

本来、どんな企業も「思い」や「解決したいこと」があって商品を開発し、それを世に問うていたはず。しかし、関わる人数が増え、セクショナリズムが進んでくると、根底にあった「Mind」が意識されにくくなる状況が生まれがちです。「私たちは、クライアント企業様の商品開発やブランドに込めた思いをしっかりと汲み、あらためてその思いに根差した活動を設計することで、その商品やブランドの価値を最大化するお手伝いができればと考えています」(瀬上氏)

企業と顧客との貴重な接点であり、顧客の様々な声と思いが集積するコンタクトセンターは、顧客の声をもとに、顧客にとって真に価値ある商品やサービスを提供できる=有効な事業戦略の起点になり得る場所。富田氏は、「顧客価値の宝庫」と表現します。

「私たちディー・クリエイトが運営するのは、事業や商品への思い、ブランドの持つ価値をクライアント企業様と共有できるコンタクトセンターであり、人材と技術と提案力を持ったマーケティング発想のコンタクトセンターです。私たちは、それらをさらに磨きながら、多くの企業のお手伝いをしたいと考えています」(富田氏)

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時代の変化とともに役割を進化させてきたコンタクトセンター。顧客と企業をつないで、新しい可能性を拡げています。

顧客とつながるコンタクトセンター〈第1回〉コンタクトセンターは、ブランドの一部
顧客とつながるコンタクトセンター〈第2回〉「対話技術」で、顧客価値を生みだす
顧客とつながるコンタクトセンター〈第3回〉AI時代こそ、リアルな対話が活きる

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ディー・クリエイト CREDENTIAL 

まとめ

AIと人は適切に住み分けることで、よりよい顧客価値が提供できる。

■デジタル化の時代だからこそ、人による対話の意義も高まる。

■コンタクトセンターは、事業戦略に欠かせない「顧客価値の宝庫」

この記事の著者

瀬上 康晴

株式会社ディー・クリエイト CEM局 カスタマーエンゲージングマネジメント部 部長