前回の記事では、クリーンビューティが生まれた背景、地球環境や人々のマインドの変化とともに、メインカレントになったお話をしました。クリーンビューティ第2回目の今回は、さらに注目のトピックス、そして、なぜ愛されているのか、に迫りたいと思います。
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SDGs時代の美容事業〈第1回〉クリーンビューティ、ラティーナに大手が注目!
ウォーターレスも注目のキーワード!
クリーンビューティの世界では、水を使わない、というのも5、6年前から欧米でトレンドに。ヘアケアシャンプーやボディシャンプーは、しだいに固形か粉になる、とも言われています。
固形石鹸なら紙で包めばOK。プラスチックの容器がいらないし、廃棄物も減らせる。また、容器を運ぶ輸送コストや排気ガス、CO2も減らせる、という考え方です。フランスのブランドでは、すでに固形シャンプーを出しているところもあります。
容器だけでなく、「原料」にもアップサイクルの波
アップサイクル。不要になったものに手を加えて、モノの価値を高めること。これも、サステナブルや持続可能、廃棄物ロスの動きを汲んだ、一大トレンドです。
パッケージに段ボール素材や生分解性プラスチックを使うだけでなく、原料にもアップサイクルの波が来ています。日本でも、植物のアップサイクル原料を活用したブランドが開発されています。
また、たとえば、最近イギリスですごく人気なのが、コーヒーの残渣を街中から回収し、そこから美容成分を抽出して、化粧品を作っているブランド。店舗もあり、カフェ風のすごくおしゃれな佇まいで、イギリスのELLEやVOGUEでもよく取り上げられていました。
アメリカでは、登山が趣味のご夫婦が山奥に引っ込み、山ライフや登山ガイド、山を守る活動を楽しみながら、山の原料に注目して、アップサイクルで化粧品を作っている活動もあります。その活動には、男女問わず、山好きな人が集まってくるそうです。
クリーンビューティは、美容というより、ある意味生き方の選択肢
結局、クリーンビューティは、美容の選択肢というだけでなく、生き方やライフスタイルの選択肢でもあるのです。環境への意識が高いZ世代やミレニアル世代は、特にそうで、購買層のメインにもなっています。
効き目がどう、というより、ナチュラルなものがいいんだ、という、人間の本能、直感に訴えるところがあり、それも響いているのだと思います。
もちろん、スキンケアの成分や科学が好きで、成分や配合の%まで追いかける、欧米ではスキンタレクチュアル、中国なら成分党と言われる人たちもいます。Z世代やミレニアル世代より少し上ですが。でも、クリーンビューティ派で、かつ、成分・配合が好きな人たちもいて、やはり時代の波はクリーンビューティ、という感じです。
先程の、山奥のご夫婦の例もそうですが、結局、クリーンビューティは、ブランドを立ち上げた人の考え方やイズム、哲学、ストーリー、そういう個性みたいなものに、惹かれる人が多い。SNSの時代は特にそう。作った人の哲学やストーリーにスポットが当たったり、世界観が人を魅了したり。
さらにいうと、クリーンビューティコスメは、パッケージ1つとっても、シンプルでおしゃれなものが多い。ひとが惹かれてしまう要素がそろっています。
物心ついた頃から、温暖化やサステナブルが、考え方やライフスタイルに浸透しているZ世代やミレニアル世代は、部屋に置くものも、自分たちのナチュラルなライフスタイルになじむものを選ぶ……。ゴテゴテしたものは置きたくない。そのあたりも意識してデザインしているのだと思います。
クリーンビューティは、美容界のメインカレントをしばらく席巻し続けると思いますし、もはやクリーンビューティが当たり前、という時代も来るかもしれません。
奈部川貴子
美容アナリスト・鍼灸師
女性誌にて美容ジャーナリストとして執筆を重ねながら、化粧品のプランニング、商品開発、コンセプト策定などをサポート。特に異業種からの化粧品事業参入時のコンサルティング実績多数。また、独自の整顔メソッドfacemappingに基づくサロンワークとセルフケア啓蒙、化粧品のマッサージ法監修、化粧品会社の施術開発なども行う。
(協力)ライター/遠藤理香
COCAMP大人美容部では、研究の一環として、企業ご担当者様との対話会(無料)なども行っております。ご相談窓口(ページ下部「相談する」)よりお気軽にお問い合わせください。
SDGs時代の美容事業〈第1回〉クリーンビューティ、ラティーナに大手が注目!
SDGs時代の美容事業〈第2回〉 クリーンビューティの哲学をビジネスに活かす
SDGs時代の美容事業〈第3回〉ダイバーシティが、化粧品の世界にもやってきた!
SDGs時代の美容事業〈第4回〉顧客インサイトを掴むキーワードは、ジョイオロジー。
まとめ
サステナブルやSDGsの潮流はしばらく続くでしょう。企業は、クリーンビューティをモノだけでとらえず、顧客にとってどんな価値があるのか、本質的な部分を考えることが大切です。さて、その美容ブランドは、今の時代を生きる顧客に、どんな体験や物語を提供できるでしょうか。
この記事の著者
COCAMP大人美容部
<写真左から>
柳 恵理 (株)大広 第3ビジネスデザイン局 部長
原田 裕美 (株)大広 ソリューションデザイン統括局 COCAMP編集長
堀米 華子 (株)大広 ブランデッドダイレクト局 クリエイティブディレクター/アートディレクター ※所属は2024年6月現在