現代社会において、働く人々の心身の不調や、妊娠・育児期におけるメンタルケアといったヘルスケア課題は、個人の問題に留まらず、企業の生産性や社会の持続可能性を揺るがす大きな課題となっています。しかし、多忙な日常の中で健康管理のために時間や労力を割き、それを継続することは容易ではありません。こうした中、2026年の現在、生成AIや「フィジカルAI」の進化、そして先進的なデジタル技術を活用した「ヘルステック」が、私たちのライフスタイルに自然に溶け込みながら課題を解決する新しい市場を創出し始めています。
このコラムでは、「ライフスタイルWEEK夏」内『フェムケアフェア』で大広フェムテック・フェムケアラボが行ったパネルディスカッションから、パナソニック株式会社と塩野義製薬株式会社、株式会社ファミワンの3社が挑む、テクノロジーとライフスタイルが融合したヘルスケアビジネスをご紹介します。
ヘルステックとは?今なぜ注目されている?
ヘルステック(HealthTech)とは、「ヘルスケア(健康・医療)」と「テクノロジー」を組み合わせた言葉。AI、IoT、ビッグデータなどの最新技術を活用して、病気の予防・診断・治療から介護や創薬に至るまでの幅広い分野で、新たなサービスやシステムの提供を行う取り組みを指します。
このヘルステックが今注目されている理由としては、大きく3つあります。一つめは、高齢化と医療費の高騰。日本をはじめとする超高齢化社会においては、医療・介護需要の増大と現役世代の負担増が課題であり、テクノロジーを活用した効率化が急務となっています。二つめは、予防医療への関心向上です。ウェアラブル端末の普及により、個人の日々の健康データ(心拍数や睡眠時間など)を誰でも手軽に収集・可視化できるようになりました。三つめは、医療DXの推進です。政府が主導するオンライン資格確認や電子カルテの標準化など、医療現場のデジタル化(医療DX)が進んでいます。ヘルステックは医療従事者の負担軽減や医療の質の向上だけでなく、私たちが自発的に健康を管理するサポートとして期待されているのです。次の章からは、ヘルステック事業化の事例をご紹介していきます。
ヘルステックが助けになる体調ナビゲーションサービス~パナソニック「RizMo」
健康でありたいと誰もが願いながらも、食事や運動、検温といった健康行動を継続することは難しいものです。パナソニックが開発した体調ナビゲーションサービス「RizMo(リズモ)」は、この「継続のハードル」をテクノロジーによって極限まで下げるアプローチをとっています。就寝時にショーツの腹部へ小さな機器をクリップで挟むだけで、睡眠の量・質・リズムに加え、衣服内温度を自動で計測します。腹部周辺で測る衣服内温度は、従来の口中で測る基礎体温とは、計測部位も計測の仕方も違いますが、同じように、低温期と高温期を把握できて、月経周期の管理に使えるのです。朝寝起きの計測のような手間もないため、ユーザーは無理なくデータを蓄積できるのが大きな強みです。
蓄積されたデータはアプリを通じて個人特有の体調リズムとして可視化され、次の周期に起こりやすい不調の予測や、より適切なタイミングでのアドバイスを可能にします。生活者の日常を邪魔せず、無意識のうちに健康データを取得してフィードバックする仕組みは、これからのヘルステックが目指すべき「自動的に健康になれる暮らし」の体現と言えるでしょう。
【RizMoについての詳細はこちら】
【公式】体調ナビゲーションサービスRizMo(リズモ)
経済産業省 令和7年度「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」報告書
「DX×心理カウンセリング」による周産期支援を事業化~塩野義製薬「妊娠・育児期の心サポートアプリ」サービス
ヘルスケア領域におけるテクノロジーの貢献は、身体的なバイタルデータの計測に留まりません。塩野義製薬が開発を進めているのは、DXと心理療法を掛け合わせた「妊娠・育児期の心サポートアプリ」です。
新しい命の誕生という幸福なライフステージの裏で、妊産婦の死亡理由の第1位が自殺であることや、約85%の妊産婦がうつまで行かなくてもメンタルの不調を抱えているという事実。最近の研究では、母親だけでなく、父親にも産後うつと同じような症状が起きていることがわかってきました。このことは子供への虐待など次世代にも影響を及ぼす、深刻な社会課題となっています。しかし、専門家による従来のマンパワーだけでは、網羅的かつ切れ目のない支援を届けることには限界がありました。
同社はこの課題に対する取組みの一つとして、24時間いつでも、専門家とともに設計した AIフレンドと気軽に会話ができる仕組みの構築を目指しています。AIフレンドとおしゃべりしていく中で、自分の心や体の状態を理解したり、それをどう支援していくべきか、パートナーなど周りの人間関係の質の向上やサポート体制の構築というところまで介入できるような、世界的に認められた心理カウンセリングをベースにしたサービスです。科学的アプローチでありながら、日常的に気軽に使えるこのサービスは、これから新しい命を生み育てていく世代の心理状態が深刻化する前からサポートできるサービスという、新たな事業が生まれる可能性を示しています。
※1 Akaishi et al. JAMA Network Open 2023
※2 Tokumitsu et al. Ann Gen Psychiatry, 2020
※3 2021年自社市場調査(第一子妊娠中+第一子産後1年以内400名)
※4 Sci Rep 10, 13770 (2020)
※5 こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第21次子供家庭庁報告)
※ 本アプリは疾病の治療・予防を目的としたものではありません
オンライン健康相談を次の行動つなげるサービス~人とデジタルの融合で健康をサポートする「ファミワン」
テクノロジーがどれほど進化しても、最終的な解決や安心の拠り所として「人」の存在は不可欠です。2015年の創業以来、妊活や更年期、育児など多岐にわたる健康相談を専門家がサポートしてきたベンチャー企業・ファミワンは、「人とデジタルの融合」を事業の強みとしています。同社は全国あるいは海外にいる多様な専門家(看護師、心理士、助産師、栄養士、キャリアアドバイザーなど)のネットワークをオンライン上に構築し、一対一の相談を多くの人々へ効率的に届けるプラットフォームを確立しました。
さらに、自宅で手軽に行える卵巣年齢や子宮内フローラの検査キットを提供し、自宅で採取した検体を専門機関で分析、結果を送信するサービスも始めています。これにより医療機関への受診が促されるなど、次なる具体的なアクションへのきっかけ(行動変容)が生まれています。
ファミワンの取り組みは、温かみのある対人相談でありながら、AIやITをフル活用することにより継続的な支援を可能にしています。単発のセミナーや医療機関の受診で終わらせず、生活者の移り変わっていく悩みに長く寄り添い続ける基盤として、テクノロジーが機能している好例です。
【ファミワンのサービスについての詳細はこちら】
ファミワン ヘルスケア相談
ファミワン 法人向け福利厚生サービス
異業種連携によってさらに広がる市場と事業機会
ここまで、ヘルステックの事業化の事例を3つご紹介しましたが、パナソニック「RizMo」のサービスはファミワンとの連携も行っています。「RizMo」でご自身の状態を可視化し、気づきを与えたあと、実際の解決行動に移す場合のサポートをファミワンが担っているのです。ファミワンの担う専門的な相談を「RizMo」のサービスの料金内で何度でも利用できるという仕組みで、今後も、利用者のセルフケアを支える企業(食品、サプリ、運動、美容等)とも連携して、さらに提供できるサービスの幅を広げていくことも検討しているそうです。
このように、ヘルステックの分野においても新市場開拓の鍵は「企業間のタッグ」にあります。自分の強いところと、別の強いところをうまく補完し合って進めていく。大企業、ベンチャー、専門家、デバイスを持つ会社、それぞれの強みを持ち寄ることでコラボレーションが生まれます。蓄積されたデジタルデータと、身の回りにある製品や専門的なカウンセリングといったリアルなものが結びついたとき、製品やサービスの伝え方、お客様との接点は劇的に変わります。ヘルステックは、医療やIT業界だけの閉じられた市場ではありません。異業種が手を取り合い、生活者のライフスタイルそのものを豊かにリデザインしていく巨大な新市場が、今まさに目の前に広がっています。
ヘルステックでの事業創造は、大広フェムテック・フェムケアラボへ
大広フェムテック・フェムケアラボは日本の広告会社初のフェムテック領域専門チームです。2020年に原体験を持つメンバーが、専門/年齢/性別/拠点の垣根を超えて社内R&Dチームとして始動しました、「選択肢が増えて選べることが社会浸透し、“自分らしく生きやすい”を当たり前にすること」をビジョンとして掲げ、広告会社の持つ知見を活かして、事業開発支援やマーケティングの支援を行っています。
ヘルステックの事業は新しい価値を生み出す可能性を秘めています。一社ではなかなか難しいことも、違う専門分野を持つ企業がタッグを組むことで実現できることがたくさんあるはず。どういう企業とどうタッグを組めばいいのかとか、商品やサービスのアイディアはあるけどどうすれば実現できるか、お客様とどうやって接点を持てばいいのか等、ヘルステックでの事業創造にご興味をお持ちの方はぜひ大広フェムテック・フェムケアラボにお声がけください。
e-mail: femtech_lab@daiko.co.jp
【参考】
ファミワンコーポレートサイト https://famione.co.jp/
大広フェムテック・フェムケアラボ https://femtech.daiko.co.jp/
(DL資料) 大広フェムテック・フェムケアラボクレデンシャル資料
まとめ
ヘルステック市場の急拡大に伴い、企業にはデジタル技術の活用と異業種連携による新たな価値創造が求められています。本記事で紹介した先進事例のように、データ連携や対人支援の融合を通じた体験設計こそが、新市場開拓の鍵となります。ヘルステック領域への新規事業開発に興味をお持ちの方、自社単独での事業開発に課題をお持ちの方は、生活者視点での事業構想からパートナーシップ構築まで支援する大広フェムテック・フェムケアラボへぜひご相談ください。貴社の強みを活かしたヘルステック事業の創出を強力にバックアップします。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。大広COCAMPでは、これからも事業支援・事業開発に関するコラムを掲載してまいります。まだメルマガ未登録の方は、これを機会にぜひ、下記よりご登録ください。
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