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2026.09.18

大和リース・フォレストバンクの事例に学ぶ~アイディアで終わらせない新規事業開発~

新規事業の開発において、社外のパートナーとの共創の進め方がわからずアイディアだけで終わってしまったり、 PoC(実証実験)までは進むものの、その先の本格的な事業化や収益化に至らないという壁に直面するケースは少なくありません。大企業特有の意思決定の遅さや、スタートアップのリソース不足など、さまざまな課題を乗り越え、事業を持続・スケールさせるには何が必要なのでしょうか。 このコラムでは、大和リース株式会社の社内新規事業と、スタートアップである株式会社フォレストバンクが立ち上げた事業を紐解いて、新規事業開発のリアルな現場の取り組みをご紹介します。

※このコラムは2026年8月25日に、スタートアップ支援を行うNPO法人「生態会」と総合広告会社の大広が共催したセミナー「企業の新規事業はどう成功するのか?」の内容をもとにお届けします。

なぜ多くの新規事業は「アイディア」や「PoC」で終わってしまうのか?

新規事業の開発現場では、「アイディア出しのワークショップは盛り上がるが、そこから具体化しない」「実証実験(PoC)まではスムーズに進むものの、一向に本格的なビジネスとしてスケールしない」という声が絶えません。なぜ多くのプロジェクトが、アイディアやPoCの段階で足踏みを繰り返し、フェードアウトしてしまうのでしょうか。 その背景には、大企業とスタートアップそれぞれが直面する構造的な課題が存在します。

大企業が直面する「意思決定と時間軸の壁」

大企業において新規事業が進まない最大の要因の一つが、既存事業とは異なる意思決定のスピードとリスクヘッジの姿勢です。慎重な社内調整や多段階の承認プロセスを経るうちに、立ち上げまでに数年単位の時間を要してしまうケースは珍しくありません。また、「失敗を極度に恐れる文化」や「明確な短期収益の証明を求められる」ことで、初期の検証段階から脱却できず、事業化の意思決定が下せないままPoC止まりとなってしまうのです。

スタートアップが直面する「リソースと需要捉えの壁」 

一方でスタートアップは、決裁スピードは早いものの、圧倒的な資金力や体力、販売チャネルなどのリソース不足に常に脅かされています。また、自社プロダクトのアイディアや技術に固執するあまり、実際の顧客ニーズや「売り先」の確保を後回しにしてしまい、PoCは成功したもののマネタイズの壁にぶつかって事業が立ち行かなくなる、ということも少なくありません。 

「共創」のすれ違いとマネタイズの難しさ 

昨今注目される大企業とスタートアップの共創事業や、地域課題・社会課題の解決を目指すSDGs領域の取り組みにおいても課題は山積しています。両者の時間軸や言葉の定義、求める成果のギャップからすれ違いが生じたり、「社会に良いこと」を追求するあまり持続可能な収益モデルが後回しになり、一発屋のCSR活動で終わってしまうケースも数多く見られます。

アイディアを机上の空論で終わらせず、持続して成長する「本物の新規事業」へと育てるためには、泥臭い現場力で顧客の真のニーズを掴み、大企業のアセットとスタートアップの実装力を正しく掛け合わせる仕組みが必要不可欠なのです。 
大企業という枠組みの中で、この重厚な「意思決定と時間軸の壁」を突破し、泥臭く現場を巻き込んで事業化を成し遂げた実例とはどのようなものでしょうか。 次章では、7年という歳月をかけて構想を結実させ、独自のポジションを築き上げた大和リースの社内新規事業「DL-TOWN」の挑戦を紐解いていきます。

大和リースが仕掛けるECサイト「DL-TOWN」の現場力

建築事業者がなぜ、あえて競合となり得るECサイトに挑むのか? 

大和リースは、プレハブなどの建築を行う「規格建築事業」、商業施設の開発・運営を手掛ける「流通建築リース事業」、カーシェアリングや自走式立体駐車場の企画・設計・施工を行う「リーシングソリューション事業」、屋上緑化や省エネ関連機器のリースを行う「環境緑化事業」の4つの事業を行っています。ご紹介する新規事業は全国各地にFrespoやBiVi、BRANCHなどの商業施設を開発する「流通建築リース事業」の事業部から生まれました。同社が地域特化型オンラインショッピングサイト「DL-TOWN(ディーエル タウン)」を開設した背景には、商業施設ビジネスに対する強い危機感と新たな価値創造への挑戦がありました。 
構想がスタートしたのは2019年。全国174拠点の商業施設を運営する中で、商業施設の飽和やオンライン購買の波を前に、「リアルな場を持つ自社だからこそ提供できるデジタル価値とは何か」を模索し始めたのがきっかけでした。 大企業特有の慎重な意思決定プロセスや手探りの検討期間を経て、2020年のコロナ禍によるオンライン需要の急増、そして上層部からの「失敗を恐れずに新しい可能性へ挑戦しよう」という後押しを受け、7年越しとなる2025年4月1日にECサイトを開設して「DL-TOWN」はスタートしました。 

「日本の隠れた宝物」を届けるための差別化と、泥臭い現場ネットワーク 

大手ECモールが乱立する中で、「DL-TOWN」が掲げたコンセプトは「日本の隠れた宝物をあなたに」。単なる商品の通販サイトではなく、同社が培ってきた「地域との繋がり」を最大限に活かした独自の強みで差別化を図っています。 その根底にあるのが、同社が誇る全国47都道府県の事業所ネットワークと、愚直なまでの現場力です。事業立ち上げ期には、全国の営業所の営業マンが足を運び、地元で愛される魅力的な出店者を開拓。東日本大震災をはじめとする災害時に応急仮設住宅の建設・支援を行ってきた歴史と自治体との深い信頼関係を背景に、「DL-TOWN」では能登半島や岩手県大船渡市などの「復興応援特集」を実施しました。また、北海道むかわ町とは地域連携協定を機に自治体ぐるみの出店へと発展させるなど、他社には真似できない地域密着の形を作り上げています。
復興支援特集能登店舗紹介ひらみゆき農園

大船渡店舗紹介Kyassenn
リアルとデジタルを横断し、小さな成功体験を積み重ねる 

「DL-TOWN」は、オンライン上だけに閉じたサービスではありません。同社が運営する自社商業施設の集客力を活用し、リアルな販売イベント(マルシェ)やポップアップショップを定期的に開催。出店者と消費者が直接顔を合わせ、ストーリーや魅力を語り合える場を提供しています。 
DL TOWN マルシェ社内の人事異動や限られたリソースといった大企業ならではの課題に直面しながらも、現場でのリアルイベントや新しい挑戦(ライブコマース等)を通じ、顧客の生の反応を糧としながら着実に「小さな成功体験」を積み重ねている「DL-TOWN」。「まずはやってみる」という企業の姿勢と、地域に根差した現場力が、アイディアで終わらせない事業の足腰を形作っているのです。

スタートアップの株式会社フォレストバンクが挑む「未活用農作物×高付加価値化」

「日本の農業を救いたい」から始まった

一方圧倒的な情熱と機動力で事業を進めるのが、大阪発のスタートアップ、株式会社フォレストバンクです。 代表の小林氏が「日本の農業を救う」と決意したのは高校生の時。親類が多く住む宮崎県で高齢化や収益難により農家が廃業していく現状を目の当たりにし、強い危機感を抱いたのが原点です。そこで日本の農業について調べた小林氏は、多くの説明文の中に「日本の農作物は世界一品質が高い 」という表現に出会います。本当にそうなのか。そのことを実感するために、2014年から2018年にかけて世界15カ国の食べ歩きを行いました。その旅を通じて、日本の農作物の圧倒的な品質の高さを確信した後、今度は約4年かけて日本全国の小規模農家を訪問。本質的な課題解決は泥臭い現場の実践にしかない、という信念のもと、農家の人たちと直接対話して、信頼関係を築き、現場の課題を徹底的にヒアリングしました。そしてたどり着いたのが「未活用農作物(規格外のC品)×高付加価値化」というビジネスモデルでした。

法制度を味方につけた独自のビジネスモデルと「需要起点」の開発

農家で廃棄されたり近所に配られたりしていた規格外(C品)の農作物を、B品レベルの価格で買い取り、自社工場で加工して賞味期限のない高濃度ジェラートへと変身させる。これにより、農家の新たな収益源を創出しています。また、ジェラートの品質の高さにこだわったのもこのビジネスを成功させた要因の一つでした。フォレストバンクのジェラートは農作物の含量が約70%、着色料や香料も使用していません。しっかりとした果物や野菜の味がするおいしさが認められて、同社の商品は高級ホテルなどでも採用されています。 
フォレストバンク商品同社の強みは、アイディア先行のモノづくりではなく、徹底した「需要起点」の事業推進にあります。あらかじめ顧客(道の駅、高級ホテル、大手流通等)から「こういうものが作れたら買いたい」という具体的な要望とニーズを引き出し、確実な需要を捉えてから商品開発や設備投資を行う。事業を始めた当初は、飛び込み営業という実践的な行動力で顧客網を拡大していきました。

社会課題解決を「しっかり儲かる仕組み」として持続させる 

「SDGsや社会貢献という言葉だけに頼ると、消費者にとってはネガティブ(購入に至らない理由)に働くこともある」と小林氏は語ります。 だからこそ同社は、果汁・果肉を贅沢に70%以上使用した圧倒的な商品力を追求し、まずはビジネスとして確実に利益を上げることを最優先にしています。企業としてしっかり収益を確保し、それを農家へ適正に還元して循環させる。この「きれいごとで終わらせない収益モデル」こそが、フォレストバンクがスピード感を持って社会課題解決を事業化できている最大の要因です。

総合広告会社「大広」×NPO法人「生態会」がつなぐ共創

NPO法人「生態会」が果たすハブの役割 

大企業とスタートアップという、文化も意思決定のスピードも異なる2社を繋ぎ、共創の扉を開いたのが、関西の起業エコシステムを可視化 しコミュニティの発展に寄与するNPO法人「生態会」です。「生態会」ではオンライン取材を敢えて行わず、どんなに遠くても必ずスタートアップ企業のもとに足を運んで生の声を拾い上げているとのこと。この圧倒的な「現場力」と確かな「目利き力」が、「DL-TOWN」の伴走支援を行っていた大広の問いかけに対して「農家ネットワークと高い技術力を持ち、即座に動けるフォレストバンク」という最適なパートナーを瞬時に見出し、紹介することができました。

事業を現場でスケールさせる、大広GXU(グロースクロスユニット)の伴走支援 

大広のGXU(グロースクロスユニット)は、従来の「完成した商品の広告を作る」という枠組みを超え、事業構想の段階から現場の泥臭い実行フェーズまで徹底して伴走しています。 大和リースの「DL-TOWN」においては、立ち上げ後の課題であった「自社の商業施設(リアル)とECサイト(デジタル)をどう繋ぐか」という部分に着目。体験価値を設計してリアルマルシェの企画提案や、生産者のストーリーを直接届けるライブコマースの推進、SNSを活用したファンづくりなどの支援を行い、事業の足腰を強化してきました。

アセットと実装力が交差し誕生した新プロジェクト「47 Spoons(仮称)」 

大和リースが持つ全国174拠点の商業施設や自治体とのネットワーク。フォレストバンクが誇る全国の農家網と未活用農作物を高付加価値化する加工・配送の実装力。そして生態会を介して両者をつないだ大広の企画・伴走力。 それぞれの強みが組み合わさったことで、単なる異業種交流にとどまらない新たなビジネス構想が芽吹いています。それが、47都道府県の未活用農作物を救い、ご当地アイスとして商品化するプロジェクト「47 Spoons(仮称)」です。 大和リースのEC/商業施設による販売拠点、や地域事業者・自治体とのネットワーク、という強みと、全国の農家・地域素材のネットワーク、それをジェラートにする開発・製造力、さらには冷凍流通の実装力が欠け合わさったからこそ可能になる、オリジナル商品「全国ご当地アイス企画」が現在進行形ですすめられています。

新規事業を「アイディアで終わらせない」ための3つの提言

大企業による社内新規事業の挑戦と、スタートアップの課題解決型ビジネス。一見すると対照的な2つのアプローチですが、その根底には事業をアイディア止まりにさせないための共通した本質が存在します。 現場で汗を流し続ける大和リースの高村氏とフォレストバンクの小林氏の言葉から、新規事業を成功へと導くヒントを紐解きます。 

社内外の「仲間」をつくり、小さな成功体験を積み重ねる

「新規事業をやっていて、他社さんの『こんなこと始めます』というプレスリリースを見ると『わあ、仲間だな!』と思うんです。社内でも社外でも仲間づくりはすごく大切。新しい挑戦にはアレルギーを示す人もいますが、今は小さな売上や取り組みでも、いずれ会社を支える事業になるかもしれない。そう信じて仲間と一緒に前に進むことが大事です。」(大和リース 高村氏) 
大企業での事業化には、社内調整や異動など様々な壁が立ちはだかります。だからこそ、社内外に熱量をもった「仲間」を増やし、小さな成功体験を着実に積み重ねて実績と信頼をつくっていく姿勢が欠かせません。 

社会課題に甘えず「しっかり儲かる仕組み」から逃げない

「皆さん、社会のことを考えすぎて、売上につながずに失敗してしまうケースが多いと感じます。自分たちの会社がしっかりと利益を残し、それを農家さんに還元して循環させて初めて、企業として農家さんを救うことができる。人を守るためにも、まずはビジネスとしてしっかり成り立たせる。それが何より大切です。」(フォレストバンク 小林氏) 
アイディアや社会貢献の美文句だけで事業は継続できません。泥臭い現場力で需要を捉え、自社もパートナーも適正な利益を得られる持続可能なビジネスモデルを構築することこそが、PoC止まりを打破する絶対条件です。 

 新規事業の成長に伴走する「大広」の伴走力

総合広告会社である大広は、古くから培ったダイレクトビジネスやD2Cのノウハウを軸に、新規事業の「事業構想(フェーズ1)」から「持続的な顧客体験提供(フェーズ5)」までを一貫して支援する事業伴走パートナーです。 
大広の支援図特に大広のGXU(グロースクロスユニット)は、ストラテジックプランナー、クリエイター、ビジネスデザイナーなど多様な専門家で構成され、従来の広告制作にとどまらない推進力・実行力を強みとしています。 
大企業、スタートアップにかかわらず、その企業がもつ強みを発見して、ワンチームとなり、市場で選ばれ続ける「本物の事業」へと着地させることがGXU(グロースクロスユニット)の役割です。 新規事業をアイディアやPoCで終わらせず、持続して稼げるビジネスへ育てたい。そうお考えの方は、ぜひご相談ください。最前線で共に汗を流し、事業の成長まで全力で伴走します。

0825集合写真_修整ずみ左から大広GXUメンバー北村早苗、生態会西山裕子氏、大和リース高村愛理氏、大和リース辻亜紀氏、フォレストバンク小林亮氏、GXUメンバー池田龍人、GXUユニット長濱口隆義、GXUメンバー上垣内淳

【参考】
DL-TOWN https://www.dl-town.com/
株式会社フォレストバンク https://www.forest-bank.co.jp/
NPO法人「生態会」 https://www.seitaikai.com/

※セミナーのアーカイブ動画では、コラムではご紹介できなかった、お話もご覧いただけます。視聴お申し込みはコチラから。


まとめ

新規事業開発において、アイディアの具体化やPoC以降の事業化・収益化に課題を抱えるケースは少なくありません。本記事では、大和リースの社内新規事業やフォレストバンクの未活用農作物を巡る取り組みを通じ、大企業とスタートアップそれぞれの視点から事業化を阻む要因と突破口について解説しています。社内外の仲間づくりや現場の声を直接聞く確かな需要の捉え方など、新規事業開発を成功へ導くためのヒントにしていただければ幸いです。


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このコラムの著者

上垣内 淳

2006年大広に入社。
入社から10年はプロモーションプランナー・コミュニケーションデザイナーとして、企業のイベント企画・実施や統合企画を担当。
その後5年間営業職にて、企業のブランディングや新規事業開発に従事し、昨年より新設のD2Cビジネス推進局にてプロジェクトマネジメントに取り組む。2022年よりWellbeingのプロジェクトを立ち上げる。
社外では、「GAMBA OSAKA新規事業開発」「NewsPicks NewSchool運営」等にも関わる。2児の父で、週末はサッカーチームコーチ。