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2023.06.07

最上位の顧客「協創アンバサダー」に響く戦略コミュニケーションとは?

企業やブランドの応援者であり、口コミを通じて他の顧客に紹介・推奨してくれる最高の存在「アンバサダー」。3年にわたる調査・研究の中で、アンバサダーの中でも最上位に位置する新たな階層「協創アンバサダー」の発見がありました。「協創アンバサダー」はどのようにして生まれるのか、アンバサダー研究から導かれるコミュニケーション戦略とは?連載3回目は、具体的な戦略に先だって、「アンバサダーハリケーンモデル」の現在地について開発者が解説します。

前回の記事はこちら
真の企業アンバサダーはどうやって生まれるのか? 共感と探究のカスタマージャーニー。

もはや、企業と一体化。「協創アンバサダー」の発見。

――前回は、アンバサダーの中にも「商品アンバサダー」と「企業アンバサダー」が存在していること、さらに情報伝達には2つの系統があって、それぞれに「響く」情報が違うこと、そのため企業としては戦略的に情報発信とコミュニケーションをすることが重要だというお話でした。

img_06アンバサダーハリケーンモデル プロジェクトチーム
中村友紀子・折橋雄一

――その後、調査・研究を重ねる中で、新たな発見があったということですが…

折橋:そうなんです。アンバサダーの皆さんにインタビューをしていく中で、企業アンバサダーの中に、さらに上位のアンバサダーがいる、ということがわかってきました。彼らは企業を応援するにとどまらず、企業と一体化して、自分事として企業に関わりたいと考えています。我々はその人たちを「協創アンバサダー」と名付けました。

中村:この研究ではファンが形成されやすい事業分野に絞ってアンケート調査とデプスインタビューを行なったのですが、商品や企業への思いを聞き取る中で、「これはちょっとレベルが違うな」と思えるコメントが見られたのです。

――どのようなコメントがあったのでしょうか。

折橋:たとえば、「社員の人たちが本当に楽しそうに仕事に取り組んでいる様子を知って、本気でこの会社に転職したいと思った」とか、「息子にこの会社のアルバイトの面接を受けるように勧めた」という人がいました。その会社の社員に自分を投影し、企業と顧客という関係を超えて、その会社を見ています。

中村:「できるなら新商品のデザインの開発に関わりたい。もっと売れるデザインのアイデアはすでにある」という人もいました。これはもう、企業の開発メンバーの気持ちですよね。

折橋:「応援する気持ちの表れとしてお金をかける(買う)」「お金を使うことが一番の貢献」「ユーザーを増やしたい。ユーザーが増えれば会社として収益が上がる。もっと役に立ちたい」というコメントもありました。商品を買ったり、意見を言ったりといった行動の目的が、「自分のベネフィット」から、「商品や企業のため」「その商品やサービスを一緒に使っている人のため」という風にレベルアップしていることがわかると思います。

――これだけ熱い気持ちで商品や企業を応援してくれるというのは、企業にとって心強いですね。

折橋:商品アンバサダーが「商品を応援したい」、企業アンバサダーが「企業を応援したい」と考える顧客だとすると、協創アンバサダーは「企業と一緒に歩んでいきたい」と考える顧客です。「その企業にとって何がいいのか」を考え、行動する傾向が顕著なんです。企業にとって顧客から発信される「口コミ」の重要度が増す中で、これだけの熱量のある協創アンバサダーの口コミが、他の顧客にどれほど良い影響を与え、購買行動を促すのか、容易に想像できると思います。

 

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能動的に「行動する」機会と場が、アンバサダーのレベルを押し上げる。

――これまで、商品アンバサダー、企業アンバサダー、そして新たに協創アンバサダーの存在を発見されたわけですが、これは、顧客とのコミュニケーションにどのように役立つのでしょうか。

折橋:アンバサダーを育成することの重要性については繰り返しお伝えしてきましたが、それぞれの階層の顧客が感じている「商品価値」、「企業価値」、「協創価値」とは何なのか?それを明確に言語化することで、適切なコミュニケーションが可能になり、アンバサダー育成が促進できるんです。

――企業が、顧客とのコミュニケーションを考える上で、ポイントになるのはどのようなことでしょうか。

折橋:顧客自身が「能動的に」行動したくなるような情報発信や場づくりを意識する必要があると思います。アンバサダーの度合い(アンバサダー度)が高い人は、そもそも、商品についても企業についても、いろんな情報をよく把握しています。その上で、口コミによって情報を拡散したり、他者に推奨したりするわけですが、アンバサダー度が上がるに従って、能動的な行動のレベルも上がる傾向があります。

中村:商品や企業への思い入れが薄いと、ネットでアンケートに答えるのはいいけれど、実際のイベントに参加するのはちょっと荷が重い、という気持ちになりますよね。でも、アンバサダー度が上がると、行動に対するハードルがどんどん下がって、積極的に参加して、意見を言いたくなる。その体験を重ねることで、アンバサダーのレベルが上がると考えています。

折橋:好きだから行動しているのですが、行動することでさらに好きになっていく=アンバサダー度が上がる、ということです。アンケートに答える、ファンサイトで投稿に「いいね」を押す、という段階から始まって、企業からのリクエストに応えて自分の意見を言う、ファンミーティングに参加する、商品開発にアイデアを出す、というように、自ら行動したくなる。だから、企業側は、顧客それぞれの「顧客価値」に合わせて能動的な行動につながる情報を発信したり、行動できる「場」をつくったりということに、積極的に取り組む必要があるわけなんです。

「あなたの声に耳を傾けています」――カギとなるのは企業からのフィードバック

――顧客とのコミュニケーションをはかる時に企業が意識すべきことは何でしょうか。

中村:顧客へのフィードバックはとても重要です。インタビューの中でも、「三角形のゴミ箱が欲しいという意見を投稿したら、それが商品化された。そのことがとても嬉しくて、ますます(その会社を)好きになった」というコメントがありました。自分の意見が評価される、誰かの役に立つ、というのは根本的な喜びなのだと思います。

折橋:たとえ簡単なアンケートへの回答であっても、それに対して企業からお礼の返事が来ることで、それは顧客を思う企業の「価値を体感できる」体験になる。そうしたコミュニケーションを繰り返すことで、顧客はより能動的に行動を起こしやすくなるのです。自分の言ったことに耳を傾け、答えてくれる、と思うことが次につながる。これが非常に重要ですね。

中村:おもしろいなと思ったのは、他人が出したアイデアへのフィードバックでも「嬉しい」と感じた、と話してくれた人がいたことです。つまり、自分に限らず、企業が顧客に対してどのように対応しているかを顧客は見ているし、企業の姿勢を感じているということだと思います。だから、小さなことでもいいから、「このようなご意見で、こう変えました」と発表することが大切なのだと思います。

折橋:忘れてはならないのは、そうしたフィードバックの内容がすべて、企業姿勢やビジョンに基づいたものだということ、どのチャネルでもその姿勢が一貫しているということです。いつ、どこで接しても揺るぎない信念が見えることが、企業への信頼につながります。

中村:イベントを開催するとか、商品開発プロジェクトを立ち上げる…といったことになると、企業側の負担も大きくなります。でも、もっと簡単にできることからでも協創アンバサダーへの種まきはできる、ということをお伝えしたいですね。

御社のお客様は、ここに価値を感じています――新たに開発した調査で、コミュニケーション戦略が見えてくる。

――企業が顧客に「響く」コミュニケーションをするには、顧客が商品や企業の何に価値を感じているかをきちんと知ることが重要ですね。

折橋:そうです。一所懸命コミュニケーションをとっているつもりでも効果が上がらないとしたら、企業が考えている顧客価値と実際に顧客が感じている価値とがズレているからかもしれない。この連載でも1回目からお話ししていますが、そこはきちんと調査して把握することが重要です。わからないことはお客さんに聞くしかないですよね。でも、すべての顧客に深くインタビューすることは現実的ではありません。そこで、私たちのチームで開発したのが「3つの価値探索調査」です。顧客がどのようなことに価値を感じているのか、簡単に調べられる調査方法です。

――どのような調査なのでしょうか。

折橋:これまでの調査とそこから得た知見をもとに、「商品について」「企業について」「商品/企業に対する能動的な行動」の3つのカテゴリーで質問項目を設定しています。この質問の設定に、これまでの研究のエッセンスが凝縮しているのですが、これに答えていただくことで、顧客が感じている価値を言語化できるというものです。もちろん、調査後の分析が非常に重要になります。

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――それは、どのような企業でも実施できるのでしょうか。

折橋:ファンの存在が前提にはなりますが、ぜひご相談いただきたいです。顧客が感じる価値を顧客自身に確認することで、企業は適切なメッセージを発信することができるようになります。それを、顧客とのあらゆるコミュニケーション活動で展開していくことができるのです。

――ありがとうございました。次回は、改めて具体的な戦略のお話をうかがいます。

次回、「アンバサダー発想のCRMで、優良顧客を生み出すプラス・スパイラルの嵐を起こす!」へ続きます。

まとめ

  • 「協創アンバサダー」は、「企業と一緒に歩んでいきたい」と考える顧客
  • 熱量のある協創アンバサダーの口コミは、他の顧客に最も良い影響を与え、購買行動を促す
  • アンバサダー度を高めるポイントは、「能動的に」行動したくなるような情報発信や場づくりによる顧客に響くコミュニケーション
  • 顧客に響くコミュニケーションのため、顧客が感じる商品や企業の価値を正しく知ることが重要

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。