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2023.01.18

口コミ循環の購買モデル「アンバサダー“ハリケーン”モデル」“売れ続ける”企業は何が違うのか。

購買行動が大きく変革する中、新規顧客の獲得にも既存顧客の維持にも、新しい発想が求められています。
突破口はどこにあるのか? 真に効果的なコミュニケーションとは?
消費者の心理と行動から、それらを解明する「アンバサダーハリケーンモデル」の開発者に聞きました。

顧客獲得・継続に、今までのビジネスモデルが通用しない!――アンバサダーの必要性。

――まず、ここでいう「アンバサダー」とはどのような存在なのでしょうか。


折橋:ひと言でいえば、「企業やブランドの応援者」です。企業やブランドに強い愛着と忠誠心を持つ顧客を「ロイヤル顧客」といいますが、アンバサダーはそれを超える存在といっていいと思います。愛着や忠誠心があるだけでなく、商品やブランド、企業のことを深く理解し、他の顧客に紹介したり推奨したりして購買を後押ししてくれることが大きな特徴です。

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――企業の成長にとって重要な存在、ということでしょうか。

折橋:そうですね。企業が成長を続けるために顧客の維持・拡大は不可欠ですが、ひとりひとりの顧客で考えれば、長く顧客でいていただき、継続的に購入していただくこと、かつ、企業の複数の商品を購入し続けていただくこと――つまり、「長期継続」+「クロスセル」の2つが重要となります。アンバサダーは、それらを満たした上に、口コミを通じて他の顧客に働きかけてくれる存在ですから、企業にとっては強力な味方といえると思います。

――「アンバサダー」に注目し、掘り下げた背景には、企業をとりまく環境の変化があるそうですが

折橋:近年は企業間競争がますます激しくなり、効果的に新規顧客を獲得することが難しくなっています。その結果、広告には行き過ぎた表現やオーバープロミスが目立つようになり、広告の信用度が下がってしまった。それによって新規顧客の獲得効率がますます悪くなるという悪循環が生まれています。

 

中村:一方で、社会的背景の変化もあります。もともと、ECサイトの利用が増え、若年層だけでなく年配の方まで幅広い層が利用する傾向にありましたが、コロナ禍でそれが加速しました。購買行動は大きく変わったと思います。同時に、SNSの利用が浸透して、誰もが自由に商品を評価し、発信するようになった。広告よりも信頼できる情報源として、口コミの重要度が高まりました。

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折橋:アンバサダーは自分自身がロイヤル顧客であるだけでなく、口コミを通じて他の顧客を購買へと動かしてくれる存在です。企業が自身のアンバサダーを育成できれば、新規顧客獲得のコスト増と既存顧客の離脱という、いわば「二重苦」の状況を打開する切り札にもなるはずです。そこで、アンバサダーがどうやって生まれ、育っていくのかを解明するプロジェクトを立ち上げました。

――既存のビジネスモデルでは、その二重苦から脱却するのは難しいと。

折橋:多くの企業は、新規顧客の獲得に注力する傾向にあります。広告をつくって、出稿してレスポンスをとってというこれまでの方法は、ある意味エキサイティングなんですね。広告への反応は直接的だし、すぐに結果が出る。顧客の離脱という問題がその先にあることはわかっていても、なかなか変えられないんです。新規顧客の獲得に予算を割くために、CRM(顧客関係管理)に手が回らないという例も多いです。一般的にも新規顧客の獲得コストは既存顧客を維持するコストの5倍かかるといわれています。

結果的に、既存顧客とのコミュニケーションが希薄になってしまっている。DMを送ろうか、メルマガにしようか、もしくは「〇〇セール」を打とうかと、販促をしてしまう。顧客からしたら、売り込みばっかりで嫌ですよね。好きになれません。これでは、企業アンバサダーは育ちません。

中村:広告もそうですが、コストをかけた分のリターンを求めるので、どうしても短期的な視点になりがちです。でも、CRMには長期的な視点が必要です。ロイヤルティを高めてアンバサダーを育てるには、企業のことを知ってもらい、考えに共感してもらえるようなコミュニケーションを顧客との間で育てなければならない。時間がかかるんです。

折橋:有名な「パレートの法則」がありますよね。全体の2割の顧客が売り上げの8割を占めている、という。実際にはそれほど極端ではありませんが、顧客の上位層が大きな売り上げをもたらしていることは事実です。企業に利益をもたらすのが既存顧客であるのは明白なのに、ロイヤルティの育成はなおざりにされてきた感があります。販促しない=「売らない」コミュニケーションはすごく勇気がいるけれど、これからの時代は絶対に必要なことだと思っています。

顧客の声は意外と届いていない、という現実。――ロイヤリティは数値化しづらい。

――購買行動が変わって、口コミの重要性が増しているということでしたが、企業は顧客の声をよりよく聞き取ろうとしているのではないでしょうか?

折橋:それが、そうでもないんです。新規顧客の獲得率の低下や、既存顧客の離脱という課題に対して、私たちが提案するのは「まず、お客さんに聞きましょう」ということです。中でもいちばん重要なのは、「自分たちがロイヤル顧客だと思っている人たちは、何がいいと思っているのか?」ということですが、きちんと把握し、分析されている例は少ないですね。

中村:コールセンターなどを通じて顧客が企業にコンタクトしてくる場合、特に通販などでは多くがクレームです。電話がつながらない、返品したい、辞めたいといったことですね。そういう声には、もちろん、真摯に対応して解決する必要がありますが、「何がよくて買っているのか?」という話は、待っていても聞けない。だったら、積極的に聞きにいきましょう、と提案します。

――何が悪いのか、ではなく、何がいいのか、を聞くことが重要ということですね。

折橋:顧客が、何をいいと思って買ってくれているのかを理解しない限り、顧客に響くものはつくれないと思います。でも、企業の方に話を聞いても、ロイヤル顧客の人はどんなことを言っているか、ロイヤル一歩手前の人は? 顧客になりたてのライトな人は? それはどう変遷しているのか?といったことは、あまり調査されていないと感じます。

中村:本来は、顧客の声の中にこそ、企業にとってのヒントがあるはずなんです。大広は、「顧客価値」という概念を掲げていますが、これは「顧客にとっての価値」を見極め、高めていくことで、結果的に企業・ブランド活動を支えていくという考え方です。今回のアンバサダー研究のプロジェクトもそうですが、殊に、口コミが信頼される現在の状況では、商品や情報に対して顧客が「どう反応するのか」を深く知り、そこにコミットしていくことがとても重要です。

折橋:購買行動は計測できます。何をどんな頻度で購入したか、どのくらいの金額を支出したか、というようなことは数値で見える。でも、ロイヤリティを持っているか、どの程度持っているかは、気持ちの問題で数値化するのが難しいといえます。でも、そのロイヤリティに基づいた口コミが強力なマーケティング要素になっているわけですから、企業は、アンバサダーを育てるという目標を持って戦略を立てる必要があると思います。

アンバサダーこそが、企業にとって最も価値の高い顧客――口コミ循環の「アンバサダー“ハリケーン”モデル」。

――調査研究のアウトプットとしてまとめられた「アンバサダーハリケーンモデル」ですが、1枚の絵になっていますね。

折橋:私たちは広告会社ですから、見てもらえる、興味を持ってもらえるということを大事にしました。このインフォグラフィックの背景には、大量の調査データや分析があるわけですが、それをテキストで全部読むのは大変です。ですから、直感的にとっつきやすく、全体像が把握できるイラストで表現しています。一般的に誰でも知っているようなモチーフを使って、メタファーで組み立てていくんです。知っていることになぞらえているわけですから、当然、概要が理解しやすい。でも、細部にもこだわっています。よく見ていただけると、キャラクターの姿や持ち物、動きにも情報が読み取れます。そこも楽しんでいただければ嬉しいですね。重要なのは、しっかりとした調査分析のバックボーンがあるので、インフォグラフィックの細部まで裏付けを持って説明できるということです。

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――実際の消費者の声を調査されたのですよね?

折橋:はい。定量調査と定性調査の二段階で調査を行いました。まず、20歳から69歳までの男女1080人を対象にアンケートを行ない、単に商品を買い続けている人と、商品にハマっている人、商品を紹介している人の差がどこにあるのかを調査しました。さらに、その中から商品にハマっている人、商品を喜んで紹介している人を抽出してインタビューを行ない、その心理を分析しました。

――口コミが循環しているのが印象的ですが

中村:最初にお話ししたように、今、消費行動を大きく動かすのが口コミです。アンバサダーが発信する口コミが潜在顧客の目に触れ、購入を後押しするわけですが、その購入者が今度は口コミを発信する側になる=アンバサダーになっていく、という変遷があるわけです。面白いのは、人に薦められて買った人は離脱せず、アンバサダーになりやすいこと。自分は口コミのおかげで苦労することなく情報を得て、信頼できる商品を手に入れられたので、自分もよかったことを口コミしよう、という心理が働くようです。そういう返報性の原理、恩返しのような気持ちがあることも、調査を通じてわかったことです。

――アンバサダーハリケーンモデルの概要をお聞かせください。

折橋:アンバサダーは、企業・ブランドの応援者となり、他の顧客の購買行動に影響を与える「推奨行動」、「紹介行動」をしてくれる最高の存在。企業を応援する顧客の口コミが、潜在顧客を刺激し、5つのステージを経て成長し、アンバサダーとなっていく、いわば、カスタマージャーニーがつながっていく循環が起こっていることを解き明かしました。

ラストをご覧ください。

口コミがネット上に多く存在する状態を海に擬えています(「口コミの海」)。まずは「多くの口コミが存在すること」がとても大切。ある商品・ブランドのたくさんの口コミを見ることで商品を知り、「信頼」という上昇気流に乗って渦(ハリケーン)が誕生します(口コミ等の情報収集する)。

信頼を伴う「興味」が強くなり、購入に至ります(購入する)。

そして、実際に使ってみて確認し(情報に触れて効果実感が増幅する)、

購入後に初めて触れる深い商品情報・企業情報により「新しい発見」をします。これにより、ベネフィット感は増幅され、商品が「好き」になり(ハマる・好きになる)、

商品の良さを人に伝えたくなります。さらに、その商品を生み出している企業を紹介したい、知ってほしいと、企業・ブランドを「応援」する「アンバサダー」となって口コミ紹介するのです(紹介する)。

――そして、今回、新たなアウトプットができたそうですね?

アンバサダーの誕生と成長を解き明かす「アンバサダーハリケーンの深層力学」。

折橋:はい。アンバサダーハリケーンモデルでは、「ハリケーン」になぞらえた「口コミ循環」によって、5つのステージを経て育成されることをモデル化しました。

では、もう一歩踏み込んで、「どのような口コミ・情報に触れて、心がどう動き、アンバサダーに成長していくのか?」 つまり、アンバサダー発生のメカニズムってどんなものなのだろうか?と。それを解明しようと考えました。

――いってみれば「アンバサダーハリケーン」の渦の中を探索したんですね。 

折橋:おっしゃるとおりです。今回も、定量調査を1000人に実施し、定性調査は30人の方にWEB口コミ記録のホームワークを実施し、その中から10人を選んでインタビューを実施し、分析しました。 

そのアウトプットが、「アンバサダーハリケーンの深層力学」です。

わかったことは、アンバサダーハリケーンの渦の中には、情報を広く・拡散しようとする力(水平方向)=「共感」と、情報をより深く・突き詰めて深掘りようとする力(垂直方向)=「探究」の2つの動きが起こっている、ということです。

企業からの情報発信や顧客の口コミには、商品に関する情報と企業に関する情報があります。 

それぞれの情報は伝達される際に、理屈抜きに五感を刺激する「共感タイプ」(象徴として女神と表しました)と、知的好奇心・探究心を刺激する「探究タイプ」(象徴として男神と表しました)に分かれます。

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――アンバサダーは女神で象徴されていたものが、今回はその後ろに男神もいますね?

折橋:そうなんです!その話は後でじっくりしますが、まずお話したいのは、アンバサダーは2種類存在するということです。商品のことにしか興味を持っていない「商品アンバサダー」と、企業を深く理解し、応援マインドを持っている「企業アンバサダー」です。

商品アンバサダーは移り気で、他社に惹かれる商品があればそちらを買う。アンバサダーとしては短期的になってしまう危険性があります。

それに対して企業アンバサダーは、企業を深く知って共感し、長くアンバサダーでいてくれる上に、その企業の他の商品も買ってくれる。さらに他の顧客に紹介し、薦めてくれる。企業アンバサダーは、企業にとって最高の顧客です。

ですから、企業アンバサダーを「真のアンバサダー」と呼びたいと思います。

――商品アンバサダーではいけないと?「真のアンバサダー」を育成しないといけないと。

折橋:そうなんです。世の中の広告・口コミ・オウンドメディアでは、圧倒的に商品情報が多くなっています。  商品を買っていただくためには、商品の情報を伝達するのは当然です。商品を好きになっていただき、口コミしていただけるような「商品アンバサダー」になっていただくことはできます。 

しかし、長くお付き合いいただけるかどうかは怪しいのです。 

だからこそ、真のアンバサダーを育成するためには、企業情報を積極的に発信し続け、もっと企業のこと、ブランドのことまで興味を持って、知っていただく、という努力をすることが必要になります。

――どんな企業でも、事業分野や、通販か店販か、といった業態を問わず、当てはまるんですか? 

折橋:もちろんです。加えて、単に企業情報を発信すればいいというわけではなく、共感タイプと探究タイプの両方をバランスよく発信しなければならないのです。 

――そこが重要なんですね!

では、次回はアンバサダーの心理をさらに掘り下げて、アンバサダー育成の深層に迫りたいと思います。ありがとうございました。

次回、「真の企業アンバサダーはどうやって生まれるのか? 共感と探究のカスタマージャーニー。」へ続きます。

 

顧客の声をしっかり聞けば、必ず有効なコミュニケーションの方法が見えてきます。

大広は、顧客を理解し、顧客価値を見極め、企業活動のあらゆる接点において、企業が進める顧客との共創をサポートします。

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[アンバサダーハリケーンモデル プロジェクトチーム]

※所属等は2023年1月現在

img_06折橋 雄一(おりはし ゆういち)
大広 東京第1ブランドアクティベーションプロデュース本部
顧客価値開発局
顧客育成チーム チームリーダー

中村 友紀子(なかむら ゆきこ)
大広 東京第1ブランドアクティベーションプロデュース本部
顧客価値開発局
顧客発掘チーム ディレクター

この記事の著者

COCAMPダイレクトマーケティング部

(株)大広が培ってきたダイレクト・マーケティングの知見やノウハウを発信するチーム。 通販の初期から今に至るまで、変化する時代と顧客を見続けてきた第一線のプロデューサーやスタッフをメンバーに、ダイレクトビジネスの問題や課題を、顧客価値の視点から解いていきます。