リブランディングという言葉は何となくイメージできても、具体的なことについてはよく分からないという方もいるのではないでしょうか?リブランディングは、企業の将来性を高めるための選択肢の1つとして知っておきたい取り組みです。この記事ではリブランディングの意味や事例、進め方などを解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
リブランディングの意味とは
リブランディングとは簡単にいうと、現在のブランドを見直し、新たなイメージを浸透させるための取り組みのことです。企業や商品が持つ本来の意義や思いを再考し、ステークホルダーや社内に対して、その魅力をさまざまな方法で長期的に伝え、周知させていくことを意味します。
ブランディングやリニューアルとの違い
リブランディングと混同されやすい言葉に「ブランディング」と「リニューアル」があります。
ブランディングとは企業やサービス、商品が持つ意義や思いをステークホルダーに浸透させることで、顧客が抱いている企業や商品に対するイメージ・印象を育む取り組みのことです。そのブランディングの方針を再考し、新たなブランドイメージを築き上げていくのがリブランディングです。
リニューアルとは、ブランディングやリブランディングの方法のことで、従来の商品やサービスを新しくすることを指します。たとえば、ビジネスホテルをリニューアルする場合、既存の建物は取り壊さずに設備やホテルデザインなどを変えます。対してリブランディングは、リーズナブルな価格で宿泊できるという意義から宿泊者に癒しの空間を提供するリゾートホテルに変更するという方針のもと、内装やサービス、料金やターゲット層などを変更するイメージです。
(ブランディング、リニューアル、リブランディングの違い)
リブランディングの可能性
リブランディングの実行によって、以下のような成果が得られることがあります。
- これまでのブランド資産を生かし、新たな意義を打ち出せる
-
新しいポジションの獲得により、未解決の課題やこれまでにない領域に挑戦できる
- 顧客の若返りなどによって、新たなユーザーが獲得できる
リブランディングのよい点は、企業で資産化してきた経験や考え方といったナレッジを無駄にすることなく、新たな価値創造の試みに生かせる点です。それまで行ってきた特定のサービスに加え、新たな領域を開拓することで、解決できていなかった課題に着手できる場合もあります。
たとえば、売上に課題を持つ男性向けアパレルブランドを、男女ともに使いやすいブランドにリブランディングすることで、ターゲット層拡大による新規ユーザーの獲得と売上拡大が期待できます。
リブランディングの目的
リブランディングの目的は企業によってさまざまですが、多くの場合は「企業を成長させること」「競争優位性を高めること」が挙げられます。
ブランディングは長期的な取り組みであるため、もともと目指していたブランドの理想像が時代背景に基づく要素を多く含む場合、ニーズの変化に適応できなくなる恐れがあります。また、既に競合他社であふれかえっている市場において、他社と差別化を図れないブランディングを続けていては、顧客獲得が難化してしまう危険性もあるでしょう。そのような状況に陥らないために、現在のサービスや商品、企業のあり方が、社会においてどのような意義があるのかを振り返る行動として、リブランディングへの関心が寄せられているのです。
なぜ、今「リブランディング」なのか?
リブランディングが近年注目されるのには、下記のような理由があります。
- 社会の変化
- 顧客の暮らし(価値観)の変化
- ビジネス環境の変化
- ロングテール商品の活性化
社会の変化
時代の流れに伴う社会変化に応じて、リブランディングを検討する企業は少なくありません。たとえば近年顕著な環境問題に対して、取り組むべき目標として掲げられたSDGsへの世界的な注目度の高さから、環境にやさしい商品・サービスの開発や、環境保護活動などを進めている企業も多く見られます。
このような傾向は、消費者として大きな影響力を持つZ世代の消費行動の特徴として「他世代よりも環境問題への関心が強いこと」にも起因していると考えられます。つまり、消費者からの支持や信頼を獲得するには、企業の利益や課題解決を追い求めるだけでは不十分といえます。
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顧客の暮らし(価値観)の変化
社会の変化に伴い、顧客の消費行動にも変化が見られます。社会全体がサステナビリティを重視する方向に転換するなかで、1つのものを長く大切に使うことを選択する顧客が増えてきているのも、その一例です。このような顧客の暮らしや価値観の変化に合わせることを目的に、リブランディングを行う場合もあります。
なお、近年SNS の発達によってネット上での情報収集が主流となり、消費者の間では一般ユーザーからの口コミやレビューへの信頼が高まっています。そのような価値観の変化に合わせてユーザーの意見を取り入れた商品改善や、パーパスの見直し、企業のイメージアップを目的としたリブランディングを実施する必要も、場合によっては出てくるでしょう。
ビジネス環境の変化
日本経済の成熟化に伴い、コモディティ化が進み、競合優位性が図りにくくなっているのが実情です。機能や価格だけでは差別化が難しい今、このままのブランド戦略では成長が見込めないと感じた企業がリブランディングに着手するというのは自然な流れだといえるでしょう。
ロングテール商品の活性化
収益が安定しやすくなるロングテール商品をビジネスモデルとし、リブランディングを行うケースもあります。消費者のニーズが多様化したことにより、ロングテール商品も活性化しています。ロングテール戦略を基盤とするブランドでは、一過性のヒット商品や数少ない人気商品をビジネスの軸とするのではなく、顧客のさまざまなニーズに合わせ、幅広いサービス・商品を細やかに展開できるのが特長です。
リブランディングのタイミング
リブランディングが適しているタイミングは、以下の通りです。
- 【内的要因】経営者が交代したとき
- 【内的要因】事業内容が大きく変わるとき
-
【外的要因】ユーザーニーズと企業のあり方にギャップが生じたとき
- 【外的要因】ビジネス環境が変化したとき
- 【外的要因】時代によって事業の存在意義が弱まったとき
社内体制が変わったといった内的要因や、社会変化のような外的要因など、企業やユーザー、社会経済に影響を及ぼす変化へのギャップを埋めるのに、リブランディングは有効です。短期で解決できる表面的な課題よりも、企業の将来性を左右するような根本的な部分の解決策として、リブランディングを選択するのが一般的です。
リブランディングの進め方
リブランディングは、大きく分けて以下のプロセスで進めます。
- 現状分析と課題の把握
- 戦略立案・方針策定
- 方針の発信・周知浸透
(リブランディングの進め方)
ユーザーは、共通のニーズを持っていると感じた既存購入者のコメントに親近感を抱きます。UGCがあることで「ほかの人も満足しているなら、私も購入してみよう」という気持ちが生まれやすく、購入への後押しとなるのです。
現状分析と課題の把握
まずは現状を把握し、問題を可視化します。社内外問わず広く声を集め、課題に落とし込んだら、それぞれの課題の解決に必要な要素を分析しましょう。
現状把握は、消費者の動向や社会情勢のリサーチに限らず、社内の状況にも目を向けることが大切です。リブランディングは社内エンゲージメントを高めるのにも有効であり、場合によってはそもそもリブランディングの必要がなく、商品やサービス、社内体制の改善のみで事足りることもあるためです。
戦略立案・方針策定
洗い出した現状の課題を、リブランディングでどのように解決していくかの方針を定めましょう。現状残すべきブランドの価値と変えるべき点を明確にし、課題を解決させるための大きな目標(企業理念やパーパス、ブランドイメージなど)を設定したら、リブランディングで達成するための戦略を具体的に落とし込みます。
広報活動の方法やロゴのリニューアル、社名の変更、取り扱う商品・サービスの拡大など、ブランディングを具現化するのに有効な手段を選定しましょう。
方針の発信・周知浸透
リブランディングの方針が決まったら、アクションに移します。リブランディングは抽象的かつ長期的であり、一般的なマーケティング施策と比較して周知されにくい取り組みです。加えて、顧客のみで成り立つものではなく、従業員一人ひとりが共通認識を持ち、企業が一体となってブランドを作り出す必要があります。そのため、社内に対してもリリース報告をきちんと行い、社外ではイベントの開催やSNSでの拡散を行うなど、広報活動には特に注力しましょう。
リブランディングで見直す内容
リブランディングにおいて、何から始めればよいか分からない場合は、下記の内容を参考にしてみるとよいでしょう。
- パーパス・企業理念・ミッション
-
商品・サービス・ターゲット
- デザイン・ビジュアル
パーパス・企業理念・ミッション
パーパスや理念といった企業で掲げる意義は、リブランディングで見直すべき代表的な内容です。意義を見直し、本当に必要なサービスは何なのか、どのように社会に貢献できるか、埋めるべきギャップや課題は何であるかを考えるとよいでしょう。多くの場合は、現在ある自社の理念をベースに、時代によって生じた企業としての不足部分を補ったり、反対に強みを付加したりするようなイメージで見直されます。
商品・サービス・ターゲット
商品やサービス、ターゲットの変更も、企業のイメージを大きく変える要素です。たとえば、子どものいるファミリー向けの商品を単身者向けに路線変更したとしましょう。その場合、ファミリー層が多く利用する大型ショッピングセンターが主だった販路を、単身者が気軽に手に入れられるようオフィス街や住宅街からアクセスのしやすい店舗へ変更するといった見直しが行われると考えられます。
また、見直す際は既存の商品そのものを改善するだけでなく、商品自体の廃却や新たなサービスの導入など、ニーズに合わせた大規模な変更も検討しましょう。
デザイン・ビジュアル
デザインやビジュアルの見直しは、商品だけではありません。リブランディングで新たに定義したターゲットとのコミュニケーションツールにおいても、デザインやビジュアルの見直しを検討することがあります。具体例は以下の通りです。
- ロゴ
- イメージカラー
- 公式サイト
- 実店舗
- オフィス
- ユニフォーム
- ショッピングバッグ
- 広告
デザインの見直しは顧客も可視化できるため、リブランディングを浸透させるのに有効です。
リブランディングを成功させるためのポイント
リブランディングを成功させるためには、以下の点に留意するとよいでしょう。
- 残しておくべき企業の強みを徹底把握する
- 焦らず長期的に取り組む
残しておくべき企業の強みを徹底把握する
企業が既に持っているポテンシャルを生かしたリブランディングは、成功につながりやすくなります。
【つまずきポイント】
リブランディングは方針を誤ると顧客価値が失われ、既存顧客や雇用者が離脱する恐れもあります。
企業の強みを明瞭化するために、リブランディング前でも解決できそうな課題は極力対処しておくのがよいでしょう。
焦らず長期的に取り組む
リブランディングは長期的な取り組みであり、単なる一過性のキャンペーン施策ではありません。
【つまずきポイント】
焦って成果を出そうとすると、かえって本来の目標が達成できない恐れがあります。
ブランドの浸透には時間がかかるため、短期間では正しい効果測定が難しく、リブランディングは定量目標を設定しにくいものでもあります。売上だけに焦点を置かず、UGCやイベント開催時のユーザーの声も参考に、リブランディングの成果が出ているのかを判断しましょう。
リブランディングの事例
リブランディングを行った企業の事例を、2つご紹介します。
- グラニフ
- PLAZA
グラニフ
グラニフ(graniph)は、プリントTシャツの製造から販売までを手がけるアパレルブランドです。2021年9月、グラニフは顧客ロイヤリティの高さという強みを生かし、企業成長を促進させるために、デザインTシャツストアからグラフィックライフストアへとリブランディングしました。
リブランディングにあたり、グラニフは同じ商品を使う人同士で会話が弾んだり、異なるグラフィックアイテムでさりげなくおそろいを楽しんだりする時間を増やすことを目指し、Tシャツだけでなくバッグやクッション、マグカップなど多くのグラフィックアイテムの販売を始めました。そのほか、リブランディングとして新規店舗のオープンや、公式サイト・ロゴのリニューアルなどを実施しています。
一新されたコンセプト「Hi-GRAPHIC, Hi-LIFE.」からは、グラニフが単なるTシャツショップではなく、グラフィックを通じてよりよい暮らしを提案していくブランドであることを表現していることが分かるでしょう。
PLAZA
PLAZAはこれまで数々の輸入雑貨を取り扱うライフスタイルストアでしたが、2024年2月に「HEARTS UP!」を合言葉とするライフモチベートブランドに生まれ変わることを発表しました。
PLAZAは、商品を通じて消費者に「楽しさ」を見つけてもらうことを目標とするブランドでしたが、心拍数が上がるような毎日を人々に提供するという新たなパーパスを掲げてリブランディングをしています。
この抽象的なリブランディングを顧客に浸透させるため、PLAZAはシンボルやショッピングバッグのリニューアル、期間限定キャンペーンを実施しました。具体的なキャンペーン内容としては、かごを使わずにギフトボックスで買い物を楽しんでもらい、60種類ものなかから選べるステッカーで封をしてオリジナルギフトが完成するというものです。何気ない買い物に特別感を与え、HEARTS UP!を顧客体験に落とし込む施策です。
商品の枠組みに捉われず、今までのナレッジを生かしながら消費者のライフスタイルに一層フォーカスした取り組みの事例といえます。
まとめ
リブランディングは、企業を成長させていくのに有効な手段です。しかし、現状把握やブランド戦略が正しくできていないと、既存顧客の離脱といったマイナスな要素をもたらしてしまう恐れもあります。また、リブランディングは一度行えばよいものではなく、すぐに効果が現れるものでもありません。必要に応じて自社のブランドをアップデートし、チューニングしていくプロセスの1つです。
「事業に行き詰まり、リブランディングを検討しているけど不安がある」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ大広にご相談ください。
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