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2026.03.25

【マーケター必見】AIにブランドの「らしさ」を伝える──オントロジーの実践アプローチとAIエージェント活用法【後編】

AIオントロジーという概念を印象付けるための抽象図その2

前編では、生成AIが「ブランドの事実」は処理できても「ブランドらしさ」を理解することが構造的に難しいという課題と、その解決策としての「オントロジー」の考え方を解説しました。
後編では、ブランドオントロジーを具体的にどう構築するのか、そしてそれをマーケティング実務にどう活かすのかを紹介します。

 

ブランドオントロジーの構築──3つの視点で「理想像」を設計する

具体的にどのようにオントロジーを構築するのか。私たちが実際のプロジェクトで取り組んできたアプローチをご紹介します。
鍵となるのは、3つのオントロジーを照らし合わせることです。ブランドに関する情報は、「企業が伝えたいこと」「生活者が感じていること」「AIが認知していること」の3つのレイヤーに分かれます。この3つを個別に構造化し、重ね合わせることで初めて、理想のブランド像とのギャップが具体的に見えてきます。

① 企業が発信してきた情報のオントロジー(企業が伝えたいブランド像)
自社のWebサイト、広告クリエイティブ、プレスリリース、商品説明などから、企業が発信してきた情報を構造化します。これが、企業側が意図してきたブランド像の客観的な整理になります。

② 生活者の声のオントロジー(生活者が感じるブランド像)
SNSやレビュー、口コミなど、生活者が実際に語っているブランドへの言及を収集し、構造化します。企業の意図と生活者の受け取り方の間にどんなギャップがあるか、あるいは企業が想定していなかった強みが見えてくることがあります。

③ AIの発言のオントロジー(AIが現状認知しているブランド像)
実際の生成AIに対して複数の観点からブランドについて質問し、AIの回答を分析・構造化します。現時点でAIがそのブランドをどのように理解しているか──何を知っていて、何を知らないか、何を誤って認知しているか──を可視化します。

企業発信・顧客理解・AI回答の差を把握すること企業・顧客理解・AI回答の差を把握

この3つを重ね合わせることで、「企業の意図」「生活者の認知」「AIの認知」のギャップを明確にし、理想のブランドオントロジーを設計していきます。
実際のプロジェクトでは、ある特定ブランドにおいてこのアプローチを適用したところ、企業が発信してきた価値観の一部はAIにも正しく伝わっている一方で、ブランドが大切にしている価値観がAIの回答にほとんど反映されていないケースも出てきました。
このギャップの認識が、「何を、どのような構造で、AIに伝えるべきか」を考える出発点になります。

ブランド構築プロセスの進化と、AIエージェントのユースケース

従来のブランド構築は、調査・ワークショップ・マーケターの経験値に基づく定義・クリエイターによる展開、という属人的なプロセスで行われてきました。ここにAIが関与し、ブランド情報をAIによって客観的に整理し、オントロジーとして構造化することで、再現性のあるブランド定義が可能になります。

「ブランドを定義する」行為が、ヒトの経験と直感に依存したプロセスから、ヒト × AIの協働による客観的かつ継続的なプロセスへと進化するのです。一度構造化したオントロジーは、市場環境の変化や新商品の投入に合わせてアップデートし続けることで、ブランドの「生きた設計図」として機能します。

構築したブランドオントロジーを組み込んだAIエージェントは、以下のような業務を横断的に支援します。

A.    ブランド認知の現状診断 
まず起点となるのは、AIが自社ブランドをどう理解しているかの可視化です。自社Webサイトの各ページが、ブランドオントロジー上で「らしさ」をどの程度反映しているかをページ単位で把握し、コンテンツ改善の優先順位を客観的に決定します。「どこから手をつけるべきか」を明確にできる点が、従来の定性的な評価との大きな違いです。

B.    クリエイティブのブランドチェック 
制作物がブランドオントロジーの定義した「らしさ」を正しく表現できているかを、AIが判定します。新しい広告ビジュアルの方向性が「ブランドらしさ」から逸脱していないかを、制作プロセスの早い段階でフィードバックする──担当者の感覚だけに頼らないガイドライン運用が可能になります。

C.    商品開発支援 
ブランド価値に沿った新しい商品アイデアをAIが提案します。「このブランドが出すべき次の一手」を、ブランドオントロジーに基づいて構造的に探索できます。ブランドの世界観と市場のニーズの交差点を、AIが客観的に提示するイメージです。

D.    施策効果のAI認知トラッキング 
キャンペーンや施策の実施後に、AIのブランド認知がどう変化したかを追跡します。従来のブランドリフト調査のAI版として、「施策がAIの認知に反映されたか」を定点観測する仕組みです。

FAQ】ブランドオントロジーとAIOに関するよくある質問

Q1. オントロジーとRAGは何が違うのですか?

RAGは文章の意味をベクトル数値に変換し、質問と「意味の近い」情報を引き出して回答させる仕組みです。オントロジーは、知識と知識の「関係性」をグラフ構造で保持します。RAGが「似た情報」を引き出すのに対し、オントロジーは「関連する概念を芋づる式に辿る」ことができるため、複数のステップが必要な複雑な問いへの回答に適しています。ブランドらしさのような多層的な情報を扱うには、オントロジーのアプローチが有効です。


Q2. ブランドガイドラインやブランドブックとはどう違うのですか?

ブランドガイドラインは「人間が参照するため」の文書、オントロジーは「AIが処理するため」の構造化データです。両者は補完関係にあります。例えば、ガイドラインに「上質さと親しみやすさの両立」と書かれている場合、オントロジーではその「上質さ」と「親しみやすさ」がどのような概念と結びついているかを関係性として定義します。


Q3. SEO対策との優先順位はどう考えればいいですか?

SEOが「検索結果での表示順位」の問題であるのに対し、オントロジーを起点とした取り組みは「AIにブランドが正しく理解されているか」の問題です。AIからの流入は急成長中ですが、オーガニック検索全体に占める割合はまだ小さい段階です。SEOを基盤としつつ、AIへのブランド認知最適化を並行して進めるのが現実的です。長期的なブランド価値の観点からは、まず「AIに自社ブランドがどう認知されているか」の現状診断から始めることをお勧めしています。


Q4. 中小規模のブランドでも取り組めますか?

はい、取り組みのスコープを絞ることで対応可能です。まずは主力ブランド1〜2つに絞り、AIの現状認知を診断するところから始めるだけでも、重要な気づきを得られます。大規模なシステム構築が必要になる段階は、診断の結果を踏まえて段階的に進めることができます。

AIに「信頼される」ブランドを、構造から設計する

ブランドは今、AIにどう説明されるかで選ばれる時代に入っています。これは「AIに引用される確率を上げる」というSEO的な問いではなく、AIがブランドの本質を正しく理解し、適切な文脈で推薦できる状態をつくる」という、より根本的なブランド戦略の問いです。

オントロジーという考え方は、ブランドマーケターが長年取り組んできた「ブランドらしさの構造化」という課題に、テクノロジーの側から新たな解を与えてくれます。そしてその構造化されたブランド知識が、AIを媒介して生活者に届く情報の質を左右するようになっていきます。

今後、AIエージェントがさらに普及し、生活者の代わりに商品を比較・推薦する場面が増えるにつれて、「AIにどう理解されているか」の重要性は高まる一方です。その準備は、今から始めることができます。

大広・大広WEDOでは、AIO診断からブランドオントロジーの設計・構築、AIエージェントの実装支援まで、企業のAI時代のブランド戦略を総合的にサポートしています。「AIに自社ブランドはどう見られているのか?」──まずはその問いを立てることから、一緒に始めてみませんか。


まとめ (前編・後編を通じて)

●AIは「らしさ」を理解しにくい:事実処理に長けた生成AIも、ブランド固有の世界観・トーン・らしさを理解することは構造的に苦手。

●オントロジーによる構造可視化:知識の関係性をグラフ構造で表現し、複雑なブランド情報をAIが辿れる形で定義できる。

●3つの視点でギャップを抽出:企業の発信内容・生活者の声・AIの現状認知を照らし合わせ、「ブランドの理想像」を設計する。

●AIエージェントの実装:ブランドオントロジーを組み込んだAIエージェントが、クリエイティブ評価・商品開発支援・施策効果分析を横断的に支援する。

●まず「現状診断」から:SEO対策と並行して、AIが自社ブランドをどう認知しているかを把握するAIO診断が、次の一手を決める起点となる。


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この記事の著者

原田 信宏

(株)大広 デジタルソリューション本部 データドリブンプランニング局 チーフディレクター

新卒で博報堂DYグループのデジタルソリューション会社に入社後、DX業務を中心とし様々なクライアントを支援。大広に中途入社後は顧客データ分析を中心に、 クライアントに蓄積されたデータの利活用を軸としたデータマネジメント推進として活動。2024年4月より、大広WEDOに出向しAI開発・実装・運用を現職にて実施。