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2026.03.30

顧客インサイトはあるのに成果が出ない?生成AI×N1(生活者の声)で導く「パブリックインサイト」

2026年1月に開催された宣伝会議セミナーにおいて、大きな反響を呼んだ「パブリックインサイト」。従来の「顧客インサイト」の限界を突破し、社会の"モヤモヤ"を起点にブランドの中長期的な成長を描くこの新概念は、いかにして生まれたのでしょうか。 今回は、本メソッドを共同開発したデジノベーション株式会社 代表の伊藤友博氏と、大広 ストラテジックプランニング局の飯田瞬氏による対談をお届けします。開発の裏側にあった共通の課題意識から、実際のトライアルで見えてきた確信、そして2026年の展望までが語り合われました。

伊藤 友博 氏デジノベーション株式会社 代表取締役社長CEO
(前 株式会社Insight Tech CEO)
伊藤 友博 氏

三菱総合研究所でビッグデータマーケティングやAI活用事業開発を牽引した後、2017~2025年株式会社Insight Tech CEOとして「不満買取センター」を運営。不満を“イノベーションの種”と信じ企業支援や事業共創を推進。2026年デジノベーション株式会社を創業。
Dialogue×Digital×Innovationをコンセプトに“伴走事業家”としての挑戦を開始。

飯田 瞬 氏株式会社大広
ストラテジックプランニング局 兼 ダイレクトマーケティングユニット
飯田 瞬 氏

2014年に株式会社大広に新卒入社。
入社後はストラテジックプランナーとして、食品、飲料、化粧品、アパレルなど多様な分野でブランド戦略の立案に従事。ワークショップやプロジェクトの設計を通じて、商品戦略・事業戦略の立案にも携わる。 

顧客インサイトの限界と中長期ブランド課題

飯田: 伊藤さんは不満買取センターなどの運営を通じて、長年「生活者の生の声(N1)」のビッグデータと向き合ってこられましたよね。その中で、従来の「顧客インサイト」だけでは捉えきれない何かがある、といった漠然とした変化を感じられていたと伺いました。具体的にどのような違和感だったのでしょうか?

伊藤: そうですね。膨大な生活者の生の声のビッグデータを分析・洞察していると、確かに個人の「こういうものが欲しい」というインサイトは見つかります。しかし近年、そうした「個の不満」の根底に、価値観の多様化や社会構造の変化といった「世の中の大きなうねりの影響」が色濃く反映されるようになってきたと感じていました。個人の顕在化した欲求を満たすだけでは、本質的な課題解決にならないのではないかという壁にぶつかっていたんです。 

逆に飯田さんに伺いたいのですが、大広として多くの企業のプロジェクトに伴走される中で、代理店の立場からどのような変化を感じておられましたか?

飯田: 情報が氾濫し、マーケティングが個別最適化されていく中で、多くの企業が「会社としてのブレない統一的なメッセージ」や「中長期で腰を据えて取り組むべき骨太なテーマ」を探しているという課題を強く感じていました。短期的なキャンペーンは打てても、ブランドとしての「大きな物語」が描けなくなっていたんです。

伊藤: まさにそこですよね。私が感じていた「社会の変化に起因するN1のモヤモヤ」と、飯田さんが現場で直面していた「企業の中長期テーマの不在」。一緒にプロジェクトをご一緒する中で、この2つが表裏一体の課題であることに気づき、「これは両社がタッグを組んで、新しいフレームワークを作るべきだ」と意気投合したのが始まりでした。

飯田: ええ。そこから伊藤さんをはじめ、大広社内のマーケターたちと何度も議論を重ねました。「顧客」だけでなく「社会」や「企業」も含めたパブリック全体が共有している違和感を捉えよう、ということで、自然と『パブリックインサイト』という呼称と概念が形作られていきましたね。

インサイトの再定義の必要性

インサイトの再定義の必要性

パブリックインサイトの定義と顧客インサイトの違い

伊藤: 改めて、飯田さんから見て「パブリックインサイト」の最大の特徴、強みはどこにあるとお考えですか?

飯田: 一言で言えば、「ブレない中長期のテーマとして、世の中や顧客に対して『大きな問いかけ』ができること」です。単なる社会課題(SDGsなど)の解決ではなく、日常の不満や生活者の声(N1)の中にある「新しい現実」と「古い当たり前」のズレ(GAP)を見つけ出す。それをリフレーム(解釈を再定義)して社会に投げかけることで、企業が生活者の声を代弁するメガホンとなり、多様なステークホルダーを巻き込んだムーブメントを作れる点ですね。 

従来のインサイトやソーシャルテーマとの違い

従来のインサイトやソーシャルテーマとの違い

例えば、休息・旅の領域でのパブリックインサイトを捉えると、今までは「休み=心身を回復させるためのオフの時間」という前提がありましたが、SNSの普及などにより新しい現実として「休んでいる時間も“意味”や“成果”を求められる」という状態が広まっていると考えます。その「体は休んでも、心は常にアウトプット待ち」というGAPを紐解くことで、「余白が欠如した休まらない社会」というパブリックインサイトが炙り出されます。
そんな「パブリックインサイト」が言語化されれば、例えばですが、「何もしないこと」を全面的に肯定するようなメッセージの発信や、デジタルから離れて心からオフになるリトリートプランを企画するなど、中長期のテーマとその打ち手が見いだせるのです。

パブリックインサイトの例休息・旅

パブリックインサイトの例

逆に伊藤さんに伺いますが、デジノベーションのお立場で「顧客インサイト」と「パブリックインサイト」の違いをどう定義されていますか?

伊藤: 顧客インサイトが「商品・サービスへの期待」であり、これを理解して期待に応える商品・サービスを提供することで瞬間的な効果を生むものだとすれば、パブリックインサイトは「社会全体のモヤモヤを言語化し共感をもたらす」ものです。情報量が爆発する中で多様化が進む今、多くの生活者・顧客は迷いや不透明感と向き合っています。これに対して「パブリックインサイト」を通して、在り様や向き合い方を問いかけることで、「私のことを分かってくれている!」という強い共感を生み、持続的な効果をもたらす。結果として、ブランドを熱狂的に応援してくれる「推し顧客」の創造に繋がるのが大きな違いだと考えています。

顧客インサイトとパブリックインサイトの違い

顧客インサイトとパブリックインサイトの違い

生成AIとビッグデータで導く中長期テーマ設計の事例と手順

飯田: 現在、いくつかの企業様と「家事」や「ウェルネス」といったテーマでパブリックインサイトを探求するトライアルをご一緒しています。実際にプロジェクトを動かしてみて、どのような手応えや確信を得ていますか?

伊藤: しっかりとマーケティングに向き合い、時代の先を読もうとされている企業ほど、このアプローチの必要性を深く実感していただけると確信しました。単に「モノを売る」のではなく、顧客自身もまだ気づいていない漠然とした社会の変化を言語化し、「新しい価値(未来の習慣)」を提供しようとする企業には、非常に高く評価していただいています。つまり、「未来志向で顧客起点の価値を生み出していきたい」という企業の期待にフィットするアプローチだと感じます。

驚いたのはご一緒している企業から「パブリックインサイト」のとらえ方・枠組みについて改善や磨き上げのご提案をいただけることです。考え方や取り組み自体に共感頂けたことが、まさに共創を生み出している実感があります。

飯田: 私も同感です。今はキャンペーンや新商品開発がものすごい高頻度と情報量で展開されています。だからこそ、現場のマーケターの皆様は「このまま短期的な施策を消費し続けるだけでいいのか?」という強い危機感をお持ちです。情報過多な時代だからこそ、それに流されない「未来を見据えた中長期の骨太なテーマ」を定義し、シナリオプランニングで未来への頑健性を検証するパブリックインサイトのアプローチが、実務レベルで強く求められていると実感しています。

伊藤:実践的なトライアルを通じて、生活者の声のビッグデータから「パブリックインサイト」を炙り出すプロセスを標準化できました。そのプロセスを生成AIに学習させることで、タイムリーに時代の変化を捉えながら「パブリックインサイト」を導出できる仕組みができました。今後は多くの企業の皆様とご一緒できるのを楽しみにしています。

飯田: そうですね。例えば企業の中期経営計画見直しのタイミングや新規事業のコンセプト探索の際など、各社が持つ「強み」を生かした中長期戦略の策定の際には有効なアプローチですし、これを「一貫性」を持ったかたちで戦術やコミュニケーションに具現化する際にも活用できると考えています。
是非これからもご一緒させてください。

導入効果と今後の展望で推し顧客を生むブランド戦略へ

伊藤: 最後に、今後の展望についてお話しできればと思います。デジノベーションとしては、「AIをはじめとしたデジタル技術」を単なる効率化ツールとして終わらせず、不満をはじめとする生活者の声のビッグデータからインサイトの種を見つけ出すセンサーとして活用していきたいと考えています。デジタルの圧倒的な力と、そこから「どういう世の中にしたいか」を議論する人間的な洞察・対話を調和させることで、新しいマーケティングの価値、そして「未来の習慣」をデザインしていきたいですね。

飯田: 大広としては、引き続き「事業成長へのコミット」と「顧客こそ最大の資産」というフィロソフィーを胸に、このパブリックインサイトをより多くの企業様へ提供していきたいです。社会のモヤモヤを晴らすブランドのアクションを通じて、新しい顧客と「推し顧客」を創造し続け、クライアント企業の皆様のビジネスを面白く、そして力強く牽引する伴走者であり続けたいと思います。


まとめ

本対談では、大広とデジノベーションが、個別最適に陥りがちな顧客インサイトの壁を越える新メソッド「パブリックインサイト」を紹介しました。生活者の声に潜む「新しい現実」と「古い当たり前」のズレを言語化し、各社の強みと結びつけて中長期の骨太なテーマへ昇華することで、短期施策の消耗から脱し、ステークホルダーを巻き込む物語と実装へつながります。ビッグデータと生成AIを用いた標準プロセスにより、経営・新規事業・商品開発・コミュニケーションまで一気通貫で打ち手を設計できる点も特長です。業界や規模を問わず使える共通言語として、デジタルと人の対話を融合し、「推し顧客」を生み出す未来の習慣づくりを後押しします。


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この記事の著者

COCAMP編集部

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。