一緒につくろう、顧客価値のビジネス。

お役立ち資料 相談する
お役立ち資料 相談する

2024.08.01

未来からの逆算発想で、 新たな市場を、ワクワクするビジネスを。

mirast-2-サムネイル

理想の未来像から現在を見つめる逆算発想で、企業・事業のストーリーを描いていく「ミラスト※」。発足から7年あまり、様々な企業・事業に伴走し、企業とそこで働く人たちに大きな変化をもたらしています。ミラスト導入の実例とその効果について、プロジェクトマネージャーの株式会社大広 増田浩一氏に聞きました。

k_masuda

増田 浩一
株式会社大広 第1マーケティングデザイン局  第3PG 部長 ミラスト主宰
早稲田大学理工学術院建築学研究科を修了の後、株式会社大広入社。一貫して、ストラテジックプランナーとして事業会社の広告戦略、商品戦略立案を支援。2020年からは、経済産業大臣登録中小企業診断士として中小企業の経営戦略を中心としたコンサルティング活動を継続。 主な顧客は、食品製造業、機械製造業、飲料メーカー、学校法人ほか、ゴーストレストランといった次代のユニコーン企業までと、幅広い。東京都中小企業診断士協会会長賞ほか表彰歴・セミナー等対外活動実績多数。


ミラストによって「再発見」される現在の姿。


――ミラストについては2023年1月のコラムでも紹介しました。

https://cocamp.daiko.co.jp/blog/mirasto

その後、事例の蓄積や新しい情報があると思いますが、まずは改めて、概要をご説明いただけますか。

増田
はい。ミラストは、未来のあるべき姿、理想像を描き、そこから逆算することで、現在の課題解決はもちろん、企業の持っている技術やノウハウの新たな可能性を見つけたり、新規事業につながるアイデアを生み出したりするというアプローチです。

ミラストフレーム1
ミラストのアプローチ

増田
たとえばソニーのウォークマンは、当時の名誉会長・井深大氏が国内外の出張先でも自由に音楽を楽しみたいと考えていたことから誕生しました。「いつでもどこでも音楽を楽しめる」という「理想の未来」を描き、それを実現するために当時ソニーが持っていたコンパクトカセットの企画・製造ノウハウ(企業の資産)を生かした。そこに、現在に続く新しい市場が誕生したことはみなさんもご存じのとおりです。

――こうだったらいいな、こうありたい、というところから、現在を考えるわけですね。


増田
はい。そうすることで、現在から発想したのでは生まれないようなアイデアが生まれたり、新しい市場を創造できたりすると考えています。

――考えを深めるために使うのが、未来のデータですね。

増田
はい。国などが発表している様々な未来予測データや、国内外の社会課題などを集積した「ミラストカード」というものをつくっています。1枚のカードに1つのトピックが簡潔にまとめてあり、そうした社会課題に対して、「自社の技術を使って何ができるか」「社会に対して何がしたいか」などを議論するというプロセスです。


ミラストJAAA原稿_図版_増田修正
ミラストカード   約500種類 の未来予測   ※2024年7月時点

 

――たとえば、どのような議論が行われるのでしょうか。

増田
ある食品メーカーの事例では、社長主導の中期経営計画に対して、本部長以下、実際にそれを推進する社員との間でコンセンサスを形成できず、具体的な施策が滞っていました。ミラストカードを見ながらの議論では、「個食の増加」「健康課題を抱える人の増加」「地域の野菜の希少価値が高まっていく」「生物多様性への配慮」など、食にまつわる将来像から自分たちの事業がどうあるべきか、どういう「食」を提供していけばいいか、という具体的な像が共有されるようになりました。「食卓を豊かにする」という未来を描き、言語化し、共有することで、具体的な施策のアイデアがいくつも生まれました。

――具体的な施策に落とし込むことができたわけですね。

増田
はい。また、ある老舗トイレタリーメーカーでは、新工場の建設にあたっての投資計画をジャッジする際にミラストを行いました。収益確保のために、どんな製品をつくり、顧客とどのようなコミュニケーションを構築していけばいいのかを考えたわけですが、その過程で、製品の「洗う」ことの価値ってなんだろう、という議論が深まりました。たとえば、親子の絆を育むとか、自分に癒しの時間を与えるとか――単に「清潔にする」というだけにとどまらない、幸福感や満足感という価値をもたらす商品であるという視点を共有しました。自社製品の価値を再認識すると同時に、製品と若年層顧客との新たな接点を見出すこともでき、今では、ECサイトでの販売や定期的なイベントでの集客が順調に伸びています。

――既存の自社製品の価値を見直すことにもつながったと。
 

増田
はい。また、ある健康機器メーカーの場合は、新しいブランドの立ち上げをミラストがお手伝いしました。多くの競合を抱える分野だったのですが、「本当の美しさってなんだろう」ということが議論の中心になった。健康機器を使ってフィジカルな効果を得るだけではなく、内面から発せられる美しさとか、ケアする時間を持つことの意味とか…そうした議論が、新ブランドの性格づけに大きく寄与しました。

先が見えにくい時代だからこそ、未来を起点に考える。


――ミラストを導入することで、過去の積み上げからは得られなかった新しい発想が出てくるのですね。そこに、共通の社会背景などはあるのでしょうか。

増田
今は外部環境の変化が大きく、先を見通しにくい時代です。企業自身も変わらなくてはいけないという意識はあるが、何が正解なのかがわからない。また、現状に対してどうするか――どうやったらコストが下がるか、利益が上がるか、働きやすい環境をつくるか、というような現時点での課題解決に取り組もうとすると、どうしても既存のデータを集めて考えることになりがちです。

daiko125_017_小

――現状の分析ばかりに終始してしまいがちだと。

増田
はい。それももちろん大事なのですが、企業の将来を考えるなら、本来は、あるべき未来像をはっきりと描き、それを言語化・共有した上で、現状との間にどんなギャップがあるのかを認識し、意志を持ってそのギャップを埋めることが必要になると思います。

――理想の未来を設定することは、働く人にどのような影響があるのでしょうか。

増田
自分たちがどこに向かっていきたいのか、その事業を通してどういう社会をつくっていきたいのか、そういうことが設定されていると、自分の仕事の意義や意味を見出しやすくなる――仕事でもっとワクワクできると思います。

ミラストでは、足元の課題をいったん置いて、部署の垣根も超えて会話ができる。たとえば、社長と現場スタッフとか、営業職と本社スタッフとか――立場の違いからしばしば対立が起きたりしますが、自分の会社が将来どういう風になっていてほしいのか、どんな未来を顧客と共有していきたいのかというような視点で語ると、それぞれの立場を度外視して思いを語れるし、思いがけないアイデアがでてきたりする。ミラストを行う中で、何度もそういう場面に遭遇してきました。また、本部長のような立場にある人たちが、真剣に、楽しみながら議論している様子が伝わることで社内が活性化するといった効果も生まれていますね。

――理想像から、今やるべき施策というアウトプットを引き出すことが重要ですよね。

増田
そうなんです。 結局、具体的な施策が見つからない限り未来に到達しないし、現状も変えられませんから。理想の未来にするために自分の会社はこうありたい、そのためには具体的にこうすべきだ――そういう認識の土台づくりを一緒にできるのがミラストだと考えています。

 広告会社ならではの発想力が議論を活性化する。


―ミラストの未来予測カードというのは、今も増えているのでしょうか。


 
増田
はい、増え続けています。国や様々な機関が出している統計、情報などは随時収集を続けていますし、マーケティング・データ・バンクのエグゼクティブ・フェローでありフューチャリストの菊池健司氏やD4DR株式会社代表取締役でありコンサルタントの藤本健太郎氏にご協力いただき、確度の高いデータを集めています。ミラストの議論をしながらも新しいテーマは生まれますし、2022年からは起業を目指す大学生とも意見交換をして、若い世代の問題意識を取り入れるなど、多角的な視点で作成しています。ミラストカードは私たちの大きな資産です。


daiko125_047_小


――いわゆる経営コンサルティングではない、広告会社がミラストを行う意義をどのように考えていますか。

増田
理想の未来像をつくっていくときに、広告会社ならではの「見立てる力」と「言葉にする力」はとても役立つと感じています。人間は「正解」を求め始めるとどんどん心が動かなくなる。でも、「本当にやりたいこと」「意義があると感じること」「社会に役立つこと」「ワクワクすること」…と考えていくと、新しいアイデアが次々に浮かんでくるんです。従来の経営的視点では見つけられなかった消費者ニーズや企業シーズが見つかると思います。どうすれば心が動くのか、というのは、人間にしか考えられないことだと思いますが、それをどれだけ素直にピックアップして事業に反映できるか、ということはとても大事。自分たちが感動できることをやってみよう、と言えるのが広告会社のいいところだと思っています。

――感動ですか。

増田
はい。「感動」というと、なんだか非生産的に聞こえるかもしれません。でも、働く人自身が手ごたえを感じ、心を動かしながら仕事をする、というのが本来あるべき姿。ミラストを通して私たちが伴走することで、その道筋を見つけていただきたいと思っています。


daiko125_071_小


――心が動く、ということの中には、社会的な視点もありますよね。

増田
もちろんです。企業の活動が社会課題の解決につながる、というのは、大きなモチベーションになると思います。コストを下げる、利益を上げる、ということは企業経営の上でもちろん重要ですが、それと同時に、社会の役に立つとか、理想をつくる、という軸を持っていることが、働く人を、事業を、健全にすると思います。

――ミラストのアプローチは、これからまだまだ広がっていきそうですね。
 

増田
はい、ぜひそうしたいと考えています。ミラストは、組織の壁や事業領域の壁、企業の壁も超えていくことができる手法です。行政の未来戦略づくりのお手伝いもできると思います。公開セミナーなども開催していますので、仕事でワクワクしたいと思っている方々に、ぜひ一度、体験していただきたいと思います。

――ありがとうございました。

 

この記事の著者

COCAMP編集室

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。