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2024.07.29

ミラスト「イノベーションのタネ」② 社員研修のポイントは、『お金』ではなく『愛』?

社会環境が変化する中で、過去の延長線上では未来を語れない今。未来への“意志”をもって先行している企業の事例を紐解いて、そこに学んでみようという大広「ミラスト」チームによるトークセッション、それが「イノベーションのタネ」です。ミラストに日本能率協会総合研究所の菊池健司氏を迎えて、未来がどうなるかではなく、未来をどう描くかのヒントを探ります。
第2回のテーマは「社員研修」です。


kikuchi菊池 健司 
(株)日本能率協会総合研究所 MDB事業本部エグゼクティブフェロー
1990年日本能率協会総合研究所入社、外資系金融機関での勤務を経て、現在に至る。MDBは、20245月現在、約2,000社の会員企業を有する日本最大級のビジネス情報提供機関。現在は、リサーチ力を基盤とした企業の未来戦略・新規事業策定の伴走支援、そして、情報収集・活用手法研修、未来洞察研修等を日々実施している。20216月より、ラジオNIKKEIソウミラ~相対的未来情報発信番組」(毎週木曜昼12:00~)レギュラー出演中。

k_masuda増田 浩一 
(株)大広 第1マーケティングデザイン局  第3PG 部長 ミラスト主宰
早稲田大学理工学術院建築学研究科を修了の後、株式会社大広入社。一貫して、ストラテジックプランナーとして事業会社の広告戦略、商品戦略立案を支援。2020年からは、経済産業大臣登録中小企業診断士として中小企業の経営戦略を中心としたコンサルティング活動を継続。 主な顧客は、食品製造業、機械製造業、飲料メーカー、学校法人ほか、ゴーストレストランといった次代のユニコーン企業までと、幅広い。東京都中小企業診断士協会会長賞ほか表彰歴・セミナー等対外活動実績多数。


考え方を一度リセットして世の流れを新しい視点で捉え直すことや、従業員が幸せになるような働く環境を作っていくことに向き合い始めている経営者の方が増えているってお話でしたけど、企業研修にもなにか変化って起こっているんですかね。

そういえばUSJが企業研修に乗り出すってニュースになってましたね。

研修にアミューズメントを活用するんですよね。
おそらく「気づき」がたくさん生まれるんですよね。
前回お話に出た、個人が持っている原点、原点回帰みたいなことにいろいろ繋がっていったりとか。何か未来に向けていろんな思いを馳せることができるということは言えるんではないかなと。

企業研修って、会社としては一定の知識レベルをあげてすぐ即戦力に育てなきゃいけないっていう要請もあれば、一方でその人の本来的な個性をギュッと伸ばしてあげて、生き生き働いてくれる環境を作らなきゃって思いもあって。その両輪両立思考をいかに高められるかみたいなことってあると思うんですけど。なんかそれでうまくいっている企業とかあったりするんですかね。

「近畿経済産業局」って面白い会社を見つけるのがいつも上手だなと思っていて。「BE LOVED COMPANY」ていうレポートですね。これ先日、パート2が出たんですよ。このレポートに、面白いことやっている企業がけっこう掲載されているんです。

BE LOVED COMPANY

(参考:https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/lc/lovedcompany.html

あ、それ必読だと思っていて(笑)

去年の事例なんかで言うと、関西の木村石鹸っていう、会社があって。研修費用は会社の勘定費目のうちの「未来投資費用」になっている。シンプルなことなんですがこういう費目で展開している企業って、私自身あんまり見たことがなくて。
商品へのこだわりもさすがと感じる昔ながらの石鹸屋さんなんですけどね。
余談ですが、このレポートを読んで以来、我が家では木村石鹸にお世話になっています。少々値は張りますが、いいですね。家族からプレゼンしてと言われました(笑)

へー、研修費用って「未来投資費用」なんだ。

このレポートでは、「地域で良質な雇用機会を生み出しているような地域の核となる中堅・中小企業には、3つの特徴がある」って言っているんですね。

・中長期的な視点で、着実にビジネスを実行しつつ未来への投資に挑戦し続けることで、付加価値を生み出していること
・経営の目的を、企業が関わるすべての人の幸福と捉え、成長の果実をしっかりと還元していること
・中でも、会社の価値をつくり、社会との接点となる「社員」を大切に、継続的な投資をしていること

 

これって前回の「リセット」の話と通じるものがあるなあ。
このレポート、タイトルに「愛」を掲げているところが新しいと思うんですよ。愛とは何かみたい話になっていると思うんですけど。

結局、顧客に愛され社員に愛され、なんですね。だからこのレポートのタイトルもBE LOVED COMPANYなんだと思いますが。
あ、ここも面白いですねー、履物を製造するリゲッタさん。芝居で新中期経営計画を発表するんですって。

中計を芝居で?

社員が燃えるみたいですね。いろんな発見があってすごく面白くて。

このレポートで取り上げられている企業というのは規模感が小さめの企業が多いようですが、社員や顧客に愛される企業のあり方が伝わってくる。さきほどの石鹸屋さんとか芝居で新規中期経営計画を発表する履物屋さんとか、創意工夫がありますよね。そんな取り組みによって会社が醸し出す空気感が、変わるのかも。前回のキャンプ業界の話じゃないですけど。

そういえばこないだ面白い話を聞いたんですけど。京都にある機械工業メーカーが、ちいさな取り組みを始めたらしいんですよ。人材研修という観点で一つの投資なんですけど。

どんなことやっているんですか?

その会社は工業部品を作ってるんですけど、誰もその工業部品の出来に対してコミットしてなかったと。別に不良品が出ようが、ちょっとロスが出ようが歩留まりが悪かろうが知らないと。そんな感じだったそうなんですが、新しい経営者がやったことは自社製品である工業部品の見えないところに、その責任者の名前を刻印するようにしたんですって。

これ、最高の研修効果があったらしくて。めちゃめちゃ真剣につくるようになったらしいんです。クレームが出ないように、ロスが出ないように、止まらないように作るようになって、一人ひとりの名前が入った部品が世の中に出ていくっていう覚悟だけで、研修効果もあったし顧客満足度も上がったと。

面白いですね。「愛」を感じますね。

自分のクレジットが入った部品を作る、世に出すって、ものすごい覚悟がいりますよね!
細やかなことなんだけど、従業員にアクションをとらせることができた経営者の方がめっちゃすごいなと思って。研修っていうと長い時間をかけてお金をかけて、っていうこともあるかもしれないけど、ちょっとした投資で、人の心が動いたりとか使われたりするのかなと思うと、深いなあ!と。

研修に対するお金の使い方、考え方がね。変わってきている感じがしますね。

さきほどの近畿経済産業局のBE LOVED COMPANYレポートにも、「働きやすさと働きがいで未来を築く」とか「個人別5ヶ年ビジョン」とかをミッションに掲げている企業が取り上げられていましたけど、「働きやすさ」と「働きがい」のバランス感覚っていうのが重要なんですかね。

ですね。

会社って、社員の時間を100%使うものじゃなくて、むしろ社員の成功のためにどう使われるかっていう。社員が生きがい働きがいを感じるためのプラットフォーム化してきている流れがありますよね。

社員がビジネスを推進するためのプラットフォームであり続けるっていうことを地でいっている会社がやっぱりいい人を集められるし成長することもできる。そこに何か「愛」の秘密があったりするのかしらと思ったりするんですけど。
みなさんは、どうお感じになりますか?

この記事の著者

COCAMP編集室

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。