1975年4月30日サイゴンが陥落し、南北統一から50年という節目を迎えたベトナム社会主義共和国。終戦後は、ドイモイ政策などを掲げ、「計画経済」から「市場経済」への転換を目指し、アジアでも群を抜く高成長と安定性を示してきた。
今後のベトナム経済は2025年から2029年まで年平均成長率+5.8%のペースで高成長を維持し、GDPは2029年までに6,760億USD(約107兆円)に増加、シンガポールの6,560億USD(約104兆円)を初めて上回ると予想されている。
今回は、そんなベトナムでの「成功ポイント」と「マーケティング事情とこれからのマーケティング」を紹介したい。
ベトナム市場で成功するためのポイント
ベトナム市場で成功するためのいくつかのKey Success Factorを紹介したい。
徹底的な顧客理解
単に商品やサービスをベトナムに持ち込むだけではなく、Marketing Mix視点での徹底的な「顧客理解」が必要だ。かつては日本商品というだけで、市場に受け入れられた。しかし、今のベトナムは、国産商品はもちろん、中国・韓国・米国・欧州・オセアニアなど、様々な国の企業が進出しているため、既に市場はモノで溢れている。世界各国の企業や商品がターゲット国としており、競合となる事を覚悟しなければならない。趣味趣向は、かつてフランスの植民地だったこと、また南部では米国との関係も強かったこともあり、欧米諸国の影響を強く受けている。日本商品の品質は高く評価されているが、価格面においてはマイナスな評価をされているのも事実だ。ベトナム人富裕層は欧州等のハイブランド商品を好み、一方、中間所得者層は比較的安価ながら、ある程度自分たちのニーズを満たしてくれる韓国商品などを好む傾向にある。
単に商品やサービスをベトナムに持ち込むだけではなく、「顧客」と徹底的に向き合い、「ローカライズ」の視点を忘れなければ、必ず勝機を見いだせるはずだ。
ディストリビューターの選定
現地法人を設立せず、ベトナムに進出する場合、ディストリビューター選定が必要だ。
ディストリビューターは「販売チャネル」において重要な役割を果たすため、慎重に選定していく必要がある。日系企業が依頼するディストリビューターは比較的同じところが多いため、自社の商品がone of themにならないようにしなければならない。南北に長いベトナムはエリア毎に強いディストリビューターが存在し、また、MT/TT等、チャネルによっても強いディストリビューターは異なる。1社独占での販売契約をするのではなく、イニシアティブを取り、戦略的に販売チャネル拡大をしていく視点が重要だ。
中長期的な視点
1年~2年での短期的な視点も大事だが、ベトナムで成功するためには、中長期的な視点でビジネスを考えていかなければならない。日本でどんなにブランド認知があっても、ベトナム人が知らないブランドも多く存在する。前述でも記載した通り、ベトナムはモノで溢れており、選択肢は多い。ベトナム人に選ばれる商品に育てるためには、ベトナム人からの信頼を得る必要がある。そのためには、ベトナム国内でのコミュニケーションも大切だが、訪日ベトナム人を有効活用する手段も考えれる。訪日ベトナム人数は、2024年過去最高を記録した。訪日ベトナム人向けに日本国内(店頭等)でのコミュニケーションを行う等、日本・ベトナム、二カ国間でのクロスボーダーコミュニケーション視点も、ベトナム人に選ばれる商品に育てるためには重要ではないか。このような事から、短期的な視点だけではなく、「ベトナム人に愛されるブランドを育てていく」中長期点での視点がベトナムで勝機を見いだせる重要な要素だ。
変わりゆくマーケティング事情
小売りでの地道なリアル顧客接点の創出(Promotion Girlが店頭立ち顧客へダイレクトアプローチをする等)、ShopeeやTikTok ShopといったECモールやFacebookといったSNS等、オフラインとオンラインの戦略的活用が求められている。
Z世代のカスタマージャーニは、商材にもよりけりだが、認知~購入までオンラインで完結することも多い。Tik Tokのライブコマース等で商品を知り、興味がある商品であれば、オンライン上で商品のことを詳しく調べる。特にKOC(Key Opinion Consumer)の口コミには大きな影響を受ける。自分に合った商品だと思えば、TikTok ShopやShopeeで価格を調べ、より安く買えるプラットフォームで購入する。認知~購入まで、オンライン上で完結するシームレスな環境を好む傾向にある。
また2024年12月に開通した地下鉄(メトロ1号線)、2026年開港予定の新国際空港(ロンタイン国際空港)からホーチミン市内への円滑な交通手段も求められており、交通広告を取り巻く環境も大きく変わろうとしている。デジタルOOHの普及も進んでいる。より一層、カスタマージャーニを理解した上での「オフライン」×「オンライン」のコミュニケーション設計が重要になってくる。
これからのマーケティング戦略
従来の‘ブランド認知向上’を目的としただけではなく、KGI/KPIを明確に設定、ROAS向上を目的とした出稿が大幅に増えつつある。ダイレクトマーケティング的な考え方だ。通信販売に代表される「ダイレクトマーケティング」は、今後のベトナムのデジタル広告市場でも重要なビジネスモデルになるはずだ。このビジネスモデルは顧客と直接コミュニケーションを行うことで、顧客のあらゆる反応を把握(≒測定)することができる点が最大の魅力。様々な施策を通じ、PDCAをまわす事でROASを向上させることができる。
「モノを売る」から「顧客満足」へ。ロイヤルカスタマー育成へのコミュニケーションデザインがさらに必要となってきている。
ベトナムは、これからも想像をはるかに超えるスピードで成長を遂げていくだろう。それと同時に、小売りやマーケティングを取り巻く環境も大きく変化していくはずだ。これらの変化はベトナム人のライフスタイルそのものを変える。そんなライフスタイルの変化を肌で感じられる事に胸躍る。
まとめ
ベトナム市場で成功するためには、徹底した顧客理解と戦略的なディストリビューター選定が不可欠です。短期的な利益だけでなく、中長期的なブランド育成を視野に入れたビジネス戦略が求められます。また、オフラインとオンラインの融合を進めることで、Z世代をはじめとした新しい顧客層にアプローチすることが可能です。これらを踏まえ、企業のマーケティング戦略に活かすことで、ベトナムでの成功を収める道を開いていきましょう。
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この記事の著者
酒川 昌寛
DAIKO MEKONG COMMUNICATIONS出向 。
2007年 株式会社 大広入社 主に大手健康食品会社のEC事業(ダイレクトマーケティング事業)に従事。
2014年~ DAIKO VIETNAM出向。 主にFMCG系を中心とした日系企業のマーケティング戦略立案・戦術実施までの支援を行う。(マス4媒体、デジタル、OOH、イベント、SNS、EC等)
2017年~現在 DAIKO MEKONG COMMUNICATIONS出向。ローカル企業とのJVであるDAIKO MEKONG COMMUNICATIONS設立に従事した後、出向。 主に日系企業のベトナム進出の進出戦略・事業立案支援・マーケティング支援に従事。輸出入業務、ライセンス業務も従事。