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2023.06.07

フェムテックの潮流に上手に乗るコツ 〈第2回〉「デリケートな話だからこそ!正しく“知る”」

女性特有の健康課題を解決するテクノロジーや商品・サービスを指す「フェムテック」。
自社でも取り組んでみたい。ニーズに合う商品があるから形にしたい。
そんな思いを抱いている企業が増えたなと、日々実感しています。

その一方で、女性にとってデリケートな領域だからこそ、取り組む難しさがあることも事実。
では、フェムテックに関する困りごとは女性にしかわからないのか?というと、決してそんなことはありません。

せっかく取り組むなら、生活者と社会、そして社内からも賛同を得られるものにしたい!
そんな企業の方に向けて、大広フェムテック・フェムケアラボからの第2回コラムでは、「フェムテックに取り組む企業が、チェックしたいポイントやノウハウ」をご紹介します。

前回の記事はこちら
フェムテックの潮流に上手に乗るコツ 〈第1回〉「フェムテックを正しく捉える」

「男性“なのに”?」と言われ続けて気づいた、大切なこと。

私は、男性でありながら、当フェムテックチームの共同起案者になりました。
この3年間の活動の中で、最もよく聞かれたことが「男性なのに、なぜフェムテック?」でした。

起案に至ったきっかけは、身内の女性が生理不順に悩んでいたこと。 当時の私は、女性は月に1回体調を崩すことがある、という程度の理解しかなく、うまく支えることができず、ただ見守ることしかできませんでした。
その教訓から、性別という立場が違っても「実感を持って“知る”」ことで力になれると考え、当フェムテックチームの活動を通じてそれは確信に変わりました。

顧客や生活者が抱えている「不(不安・不満・不足・不自由など)」を正しく知れば、
寄り添い方や応え方も分かるようになり、企業の活動に活かすことができます。
そして、その先にある、社会の課題も見えてきます。
さらには、企業の意思(なんとか役に立ちたい)を強くすることにもつながります。

「正しく“知る”」ことで、企業の中に眠る「形にする力」に火がつき、顧客価値の連鎖が生まれる。
だから大広フェムテック・フェムケアラボは、“知る”ことを一丁目一番地に据えています。

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一番の落とし穴!「知っているつもり」に要注意!

ここまでお読みになり、「フェムテックはもう定着したし、いまさら自社でやるものね…」という方もいるかもしれません。
しかし、人間は知っていることしか、見えないといいます。
「不(不安・不満・不足・不自由など)」の存在を正しく知ると、新たな機会点が見えてくることも多々あります。

たとえば、先ほど私の実体験として挙げた「月経とつき合う難しさ」について。
男性の多くは「1週間だけのこと」と思っている方もおられることでしょう。

実際は、人によって千差万別。
卵胞期・排卵期・月経前の不快や不調(PMS・PMDD)・そして月経期と分けられますが、
月経前が一番しんどい人もいれば、排卵期から月経期まで3週間も続く人もおられます。
この事実を正しく知ると、体調や心のゆらぎを前提にしたサービスへ改良を試みたり、
寄り添いを盛り込んだCRM活動など、サポートできる領域はもっと増えるはずです。

イラスト2_230405その一方で、実は男性も、常に100%の自分を維持できているわけではありません。
当フェムテックラボの独自調査では、男性の半数以上が、月に1回以上不調を感じていることが明らかになりました。
でも、私たちの普段の感覚だと、不調を吐露している男性は意外と少ないと思います。
実は男性も、小さな無理や我慢を抱えながら生きているのかもしれません。
もちろん、人によって不調の中身は様々。「不はパーソナルなもの」とも言えますね。

イラスト3_230405このように、正しく“知る”ことで、見えてくる世界があります。
ジェンダード・イノベーション(性差に着目したイノベーション創発)は、正しく不を捉えることを積み重ねて、初めて実現されるものかもしれません。

誤って「踏み抜いてしまう」のには、パターンがある!

実際に顧客が体験している不(不安・不満・不足・不自由など)を知らずに、
先入観だけで広告や商品サービスをつくると、倫理的にNGな領域に触れてしまうこともあります。

例えば以下のような表現は(たとえ薬機法に抵触しないとしても)、
倫理的・社会通念的に、不快に思う人がいることを想像できるはずです。

「まだ間に合う!早く子供が欲しいあなたに朗報です」
「生理に負けない!○○を使って毎日元気にいきましょう」
「産後も理想の体型に!○○でカラダを整えよう」

顧客や生活者のために企画者は努力したのに、なぜ踏み抜いてしまうのでしょう?
原因は色々ありますが、一番危険なのは、知識を感情でなく“物事”で捉えた「レッテル」を貼ってしまうから。

  1. 「不安のレッテル」を貼ることで、新たな足かせを生もうとするケース。
    大きな問題を思い込みでつくり、煽ったり焦らせたりするものが該当します。
  2. 「キラキラのレッテル」を貼り、すぐに解決したことにするケース。
    悩みを無理に押し込んで、悩まない姿を正しいものと扱うことが多いです。
  3. 「一般化のレッテル」を貼り、個人差を無視してしまうケース。
    あなたもつらいでしょ?この方がいいでしょ?と押し付けることは要注意です。

大切なのは、カラダやココロの不は、あくまで「パーソナルなもの」であること。
不の自覚の仕方、その原因、いつ不と向き合うか、どの対策を選び、どの程度対処したいか。
その全ては、個人に選択権がある、ということです。
企業目線の思い込みで、不を煽ったり、未対策を悪にしたり、みんな同じと決めつけず、
「一人ひとりの声に耳を傾け、正しく知り、応える」というスタンスがポイントです。

正しく“知る”ために、私たちがお力添えできること

大広フェムテック・フェムケアラボは「フェムテックは、ただのトレンドではない」と考えています。
女性の社会進出と、生き方の多様化に伴う、社会要請であり社会課題と捉えるべきで、
個々人が抱える不(不安・不満・不足・不自由など)を正しく知ることは、
自分自身の生きやすさを考えることにもつながります。
このことを、ここまでお読みいただいた方はご理解いただけると思います。

だから私は、男“だからこそ”フェムテックをもっと知るべきだと考えています。
フェムテックからジェンダード・イノベーションへ。
性差や個人差から生まれる発想を、現業と接着する企業が増えることを願っています。

その一方で、「知る」ために必要なデータや、個々人のインサイトへの理解は、まだまだ不足しているのが実情です。
当フェムテックチームでは、2020年から毎年「独自調査」を実施し、
フェムテックへの意識と、カラダとココロのゆらぎに関するお声を蓄積し続けています。
さらに、よりピンポイントで深掘りをしたい企業の方のために、
マクロミル社と協同して「女性のウェルネスに関する独自調査パネル」を開発しました!

  • 自社の新商品開発で、お悩みを自覚している人に意見を聞きたい。
  • 実際に対策を取っているユーザーに、商品やサービスがどう受容されるか知りたい。
  • そもそも、こんなお悩みがある方って、どのくらいいらっしゃるんだろう?

など、女性のヘルスケア・ウェルネス課題をより深くリサーチをしたい方におすすめです。
ぜひ、お問い合わせください!

上記調査パネルの概要は、コチラからダウンロードしてご覧ください。

本文:大谷 拓、クリエイティブ制作:上野 妃都美(共に大広フェムテック・フェムケアラボ)

この記事の著者

大谷 拓

2013年株式会社大広入社。ヘルスケア・D2C領域を中心に、顧客関係構築や価値創造に軸足を置いたマーケティング戦略構築に従事。新規事業開発・コーポレートブランデイングなど幅広く経験。株式会社Hakuhodo DY Matrixに出向しながら、2021年に大広フェムテック・フェムケアラボを共同起案。性別の垣根を越えて「生きやすい社会」を実現すべく、サステナブルなマーケティング戦略の設計・実行支援を行う。JAAA主催「Innovative Communication Award」第1-2回大賞、第3-4回審査員。