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2026.10.08

AI時代、Z世代に選ばれるブランドの情報設計 ~Z世代のAIとの向き合い方から紐解く~

ChatGPTやGeminiなどの生成AI、またGoogleのAI OverviewsをはじめとしたAI検索サービスの普及により、生活者が商品を選ぶ際の情報収集・比較検討のプロセスにAIが介在するようになっています。大広および大広WEDOでは、そんなAI活用の実態を把握するため、全国5,025人を対象とした生活者調査を実施。その結果については、以前に当コラムでもご紹介しました。この調査結果おいて、年代別の分析を進めることで、多くのマーケットの重要ターゲットである「Z世代」(1990年代後半から2000年代前半に生まれた世代)に特有の傾向が見えてきました。
このコラムでは、大広WEDOの鷲北氏が、社内のZ世代メンバーとの対話も交えながら、この分析結果について解説。Z世代に対して自社ブランドをAIに推奨してもらうために何ができるか、効果的な情報設計のヒントをお届けします。

鷲北 雄介
株式会社 大広WEDO アカウントプランニング局 局長
1996年大広入社。営業職としてブランド戦略、コミュニケーション・クリエイティブ開発に携わる。顧客育成局でCRMプランナーとして活躍の後、現職で生成AIを活用したツール・ソリューション開発やマーケティング支援に従事。著書に『顧客価値を劇的に高める生成AIマーケティング』

中田 空
株式会社 大広WEDO 大阪クリエイティブ局 ブランドクリエイティブ部
2024年大広WEDO入社。プロモーション領域にて、大阪・関西万博の催事推進・運営をはじめ、企業のイベントやキャンペーンの企画・推進に従事。現在はクリエイティブ領域において、キャンペーンやCMなどにおけるクリエイティブディレクションに携わる。

茶川 裕弥
株式会社 大広WEDO アカウントプランニング局  大阪アカウントプランニング部
2025年大広WEDO入社。プロモーションの企画・実施部門で、大阪・関西万博の催事運営をはじめ、企業のイベントやキャンペーンの進行管理を担う。現職では非マス領域のコミュニケーションプランニングに従事し、企業課題から発想する周年施策や体験型プロモーションを、提案から実施まで伴走する。

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↑左から茶川さん、鷲北さん、中田さん

Z世代は他世代の2倍以上、AIの提案を購買時に取り入れる

Z世代は現在、20代前半から30歳くらいまでの人が該当します。彼らが何かを買うとき、情報収集や相談などにAIを使う割合はどれくらいだと思いますか?ちなみに、他世代の平均は39.0%です。
答えは、56.5%。Z世代のAI活用率は、他世代の約1.45倍であることが調査からわかりました。「AIに何かを質問する」というのは幅広い世代がやっていることですが、Z世代は「何かを買う」という場面でも積極的にAIを使っています。この調査は、大広と大広WEDOが2026年5月に実施したものです。全国の20歳〜69歳の男女で、食品・家電・医薬品をはじめ、通信・金融・旅行などまで、20におよぶ商品・カテゴリーの購入経験者を対象としました。

まず、結果をまとめた表をご覧ください。

 類型(購買型)  代表カテゴリ 

Z世代の
AI活用率

他世代の
AI活用率
 特徴・AIの役割 

①
ライトチェック購買型    

加工食品/菓子/飲料/酒類/洗濯/ヘアケア/オーラル(7カテゴリ) 45.0%   33.7% 普段は習慣的に選ぶ日常購買でも、気になる商品や自信がない選択肢に出会ったとき、AIを『軽い確認相手』として使う。【AIは軽い確認相手】
②
ディープリサーチ購買型
デジタル機器/健康食品/投資・証券/生活家電(4カテゴリ) 69.5% 47.7% AI活用率が高水準。スペック、条件、口コミ、選び方などをAIで深く比較・精査しながら、合理的に選ぶ。【AIは比較・精査の参謀】
③
リスクヘッジ購買型
OTC医薬品/ペット用品/保険/ゲーム(4カテゴリ) 60.7% 39.6% 健康・契約・ペットケア・購入失敗など、各カテゴリ固有のリスクや不安を避けるため、注意点、成分、条件、リスクをAIで確認する。【AIは不安解消の専門家】
④
コンテキスト探索購買型
スキンケア/メイク/旅行・交通(3カテゴリ) 53.2% 41.2% 好み、気分、目的、条件が曖昧な段階からAIに相談し、選択肢を整理する。【AIは相談しながら探す相手】
⑤
ロングユース伴走購買型    
通信・インターネット/動画・音楽配信(2カテゴリ)  64.4%   49.5%    継続利用を前提とするサービスで、契約比較、乗り換え判断、継続判断までAIを活用する。【AIは長く付き合う伴走者】

生活者のAIの使い方は商品カテゴリごとに異なるため、そのパターンを①〜⑤の類型として整理しています。調査の結果、5類型すべてにおいて、Z世代のAI活用率が最多となりました。

Z世代と他世代の差が大きかったのは、「リスクヘッジ購買型」

「リスクヘッジ購買型」には、一般的に市販薬と言われるOTC医薬品や、ペット用品、保険などが含まれます。つまり、「副作用はあるか」「自分やペットにとって安全か」「選択を間違えていないか」といった、不安やリスクに関わる質問が生まれやすいカテゴリーです。この類型のAI活用率は、他世代平均が39.6%だったのに対し、Z世代は60.7%と差がつきました。その理由について、この類型の商品・サービスは、若い世代にとって馴染みの薄いものであり、まだ知識や経験が少ないことが一因ではないかと私たちは推測しています。いわば彼らにとって未経験の大人の領域です。
たとえば保険は、働き始めたばかりの人が初めて加入を検討することが多いもの。ペット用品も、初めてペットを飼う人も少なくないでしょうから、健康や安全に関する判断の不安が伴います。知識が充分でない、でも失敗したくない。だから相談先としてAIをフルに活用していると考えられます。

他の類型でもZ世代は、デジタル機器、健康食品、投資・証券などを含む「ディープリサーチ購買型」が69.5%、通信・インターネットやサブスクリプションを含む「ロングユース伴走購買型」が64.4%と高い数字になりました。ただ、これらの類型については他世代もよくAIに相談しているため、世代間の差が最も大きいのは「リスクヘッジ購買型」となっています。

また類型を問わず、「AIに勧められて初めて知ったブランドを購入候補に入れた」という人の割合は、他世代で7.6%だったのに対し、Z世代では16.3%でした。デジタルネイティブであるZ世代は、「AIの提案を信頼して行動に移す」という傾向も相対的に強いといえます。

購入後や店頭においても、積極的にAIを活用するZ世代

さらに調査からは、Z世代は購入前だけでなく、「購入後の感想・不満の伝達」「購入後の活用法・追加オプション提案」「購入後の使用方法・疑問点」「購入後の不具合対処・返品」といった場面でもAIをよく利用していることがわかりました。たとえば「購入後の感想・不満の伝達」では、他世代が2.4%であるのに対して、Z世代は8.5%で、実に3.54倍にもなります。

社内のZ世代メンバーからも、自身のAI活用についてこんな声が上がりました。

「観葉植物を購入した後、育て方をAIに聞いたりしています。部屋の日当たり具合や置き場所を伝えて、『説明通りに育てているのに枯れてしまうのはなぜ?』と尋ねると、AIが複数の原因を提示してくれます‎」(茶川さん)

購入後にうまくいかなかった際、「自分のやり方が間違っていたのか」「同じ悩みを抱える人はいるのか」「この商品への不満を訴えている人はいるのか」などを確認するためにAIを使うことが多いZ世代。AIが個別の状況を受けとめてくれることへの安心感、解決策を提示してくれることへの期待、同じ不満を持っている人が自分以外にもいることによる満足感を得るためにAIに尋ねるというのも彼ら特有の行動のようです。

また、「店頭で、店員から説明を受ける」といった場面でAIを活用するという話もでました。

「掃除機を購入するとき、店員さんのお勧めに不安を感じたんです。いったんその場を離れてこっそり、勧められたブランドの情報や、言われたことの真否についてAIで確かめました。店員さんには特定の商品を売らなければならないっていう事情があるかもしれないので、言っていることをうのみにはできない。AIは知識が多いし、フラットに比較してくれるので、その意味では信用できます」(中田さん)

今後は、生活者が店頭でAIに確認することも前提に、店舗や企業のあり方が変わっていくのではないでしょうか。

「生プロンプト」から見えてきたAI活用の実像

調査では、Z世代のAI活用について深掘りするため、大広若者研究所「D’Z lab.」のメンバーと一緒に神奈川大学の学生19名を対象とした「生プロンプト(AIへの実際の指示文)」のヒアリングも行いましたので、いくつかご紹介します。

【例1】    コスメ・メイク相談(20代女性・④コンテキスト探索購買型)
コスメ選びの際に、自分の写真をAIに送り、「私がいちばん魅力的に見えるメイクを教えて。カラコンから下地、リップまで含めて、似合う色とその色を使った商品を教えて」というプロンプトがありました。

「自分もソファを探したときに『大阪に住んでいる。近場で探したい。大手チェーン以外の店を知りたい』とAIに伝えました。すると複数のインテリアショップを提示して、品ぞろえの傾向や価格帯などの情報も整理して教えてくれました。さらに、部屋が6畳であることを言うと、その広さの部屋に合うソファのサイズも案内してくれたんです。複数の情報源を行き来しないで、自分の条件をまとめて聞けるのがAIのメリットのひとつだと思います」(茶川さん)

若い生活者が求めているのは、単なる商品や店舗のリストではなく、「自分にジャストフィットする選択肢」であるといえます。

【例2】    ジム入会検討(20代・⑤ロングユース伴走購買型)
もうひとつの例として、ジムへの入会を検討した学生が、近隣のジムの費用、距離、条件を比較するだけでなく、「入会した場合、どちらが『通わなくなるリスク』が高いか」までAIに尋ねていました。その学生は自分を三日坊主だと理解しており、そういった「自分の弱さ」もAIには相談できると話していました。Z世代にとって、本音やワガママといった、人には言いにくいことも相談しやすいのがAIの良さです。

「私も、AIにはかなり率直なことまで話しています。親や友人に相談すると心配されたり、相手から自分を見る目が変わったりする可能性がありますからね。それに、AIなら相手の時間を奪う心配もなく、深夜に不安になったときもすぐに相談できます」(中田さん)

Z世代のAI活用率の高さは、新しい技術への抵抗感が少ない世代であることに加え、対人関係への配慮が大きく関係しているようです。
「人に迷惑をかけてはいけない」と幼い頃から教えられてきたことに加えて、SNSなどを通じて人間関係を常に可視化されやすい環境で育ってきたZ世代。そのため「相談によって迷惑をかけたくない」「相手の時間を奪いたくない」「友人に嫌われたくない」といった感覚がより強くあるようです。しかしAIなら、そういった心理的な負担が少ない。人に相談する面倒さや気遣いを回避しつつ、自分に合う情報を得られることが、AIがZ世代に受け入れられている大きな理由といえるでしょう。

Z世代を狙った商品の情報設計、こう考えると効果的

では企業は、AIを通して自社の商品・サービスをZ世代に選んでもらうために、どのような情報設計を行うべきなのでしょうか。最も大切なのは「Z世代が実際に尋ねそうな質問に答えられる情報を、自社サイトに整備しておく」ということです。
AIは企業の公式サイトだけでなく、レビューサイトや外部記事も参照して回答します。企業にできることは、自社サイトの情報を整備することですが、その情報が不足していると、AIは価格や一般的な情報に加えて、レビューなどの評価で回答してきます。レビューにはマイナスの評価も少なくありませんし、そもそもレビューをコントロールすることは難しい。そういう意味でも、Z世代がAIに尋ねそうな質問への答えとなる情報を自社サイトにおいておくことは重要なのです。
また、AIは、企業の意図どおりに商品価値を伝えてくれるとは限りません。ブランド独自の強みや、生活スタイルなど特定のターゲットへの適合、性能以外の使い心地などが、AIが理解できる形の情報として公開されていなければ、AIの回答に反映されません。

「そういえば僕が楽器のベースを始めようとしたとき、必要な道具をAIに尋ねたら、上級者向けのチューナーなんかの機材がずらっと並んだことがあります。初心者です!って言ったら、ちゃんと合ったものが提示されたんですけど」(茶川さん)

スペックを並べるだけでなく、「初心者向け」とか「上級者向け」「こういうことを目指すならこの商品」といった、生活者の具体的な状況や文脈に沿った情報を用意することが重要です。
そのためにもZ世代がAIに相談する際のインサイトを理解する必要があります。商品そのものの情報だけでなく、彼らがAIに打ち明ける「迷いや不安」まで捉える視点での情報設計が求められています。

■顧客起点でコミュニケーションを設計する、大広・大広WEDOでは、ターゲットに合わせた、AI時代のブランドコミュニケーション支援を提供しています。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。
■また「Z世代の購買プロセスにおけるAI活用の実態調査とその結果」はご紹介した以外にもデータがありますのでそちらに興味がある方も、ぜひお問い合わせください。


まとめ

Z世代は他世代よりも、何かを買うときにAIを活用する率が高く、AIの提案を積極的に受け入れ、購入後もその商品についてAIに相談する傾向があります。Z世代は、自分の本音や迷い、不安などもAIに打ち明けます。だからこそ企業には、スペックや機能だけでない情報をきちんと整備しておく必要があります。AI時代には「どんな人に、どんな場面で、なぜ選ばれるのか」まで押さえた情報設計がカギとなるでしょう。


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このコラムの著者

鷲北 雄介

1996年大広入社。営業職としてブランド戦略、コミュニケーション・クリエイティブ開発に携わる。顧客育成局でCRMプランナーとして活躍の後、現職で生成AIを活用したツール・ソリューション開発やマーケティング支援に従事。書籍『顧客価値を劇的に高める生成AIマーケティング』著