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2025.03.27

愛用者の“生の声”から、真の顧客価値が見えてきた 〜紳士靴「テクシーリュクス」の事例〜

自社の製品やサービスが、顧客にとってどのような価値をもっているかという「顧客価値」は、ビジネスを拡大していく上で大きなヒントとなります。でも、どうやってそれを見つけるの? アンケートを取ってもなかなか本音を引き出せないし…と、お悩みの企業が多いのではないでしょうか。

そんな声にお応えするのが、顧客との深い対話を通して真の顧客価値を抽出し、コミュニケーションの設計や共創などにつなげる「ファンダイアログ」です。今回はその事例として、アシックス商事株式会社様の紳士靴ブランド「テクシーリュクス」での取り組みについてご紹介しましょう。

[インタビュイー]
Hitomi Okajima
岡嶋 瞳
(株)大広 マーケティングデザイン本部 第1マーケティングデザイン局 第2ダイレクトビジネスグループ

営業・マーケティング・プロモーション職にて、各種カテゴリーの店販および通販事業のマーケティングサポートを経験。2016年より、顧客育成領域に特化したコミュニケーションプランナーとして、顧客と直接つながる仕組みや絆を作るコミュニケーションの構築に従事。「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。」がモットー。大広初代SNS中の人・さとなおオープンラボ関西3期卒業。

プロフィール写真_kuroda黒田 歩未
(株)大広 マーケティングデザイン本部 第1マーケティングデザイン局 第2ダイレクトビジネスグループ

2023年株式会社大広入社後、ブランドのファンとの対話を通した顧客理解に基づく、顧客価値発想での事業支援に従事。また、新規事業や通販事業などの顧客育成(CRM)やSNSの運用支援にも取り組んでいる。

 

顧客価値を深めるには、熱狂度の高いファンの声を聞くこと

——クライアントは当初、どのような課題をお持ちだったのですか。

アシックス商事様は2009年から、男性用のビジネスシューズとして「テクシーリュクス」というブランドを展開されています。今回の取り組みは、このブランドが2024年に15周年を迎える、というお話から始まりました。

テクシーリュクスの靴は本革製でありながら、スニーカーのように快適な履き心地で、しかもお手頃な価格です。そういった理由で選ばれてきたのですが、15周年を機に、もっとブランド価値を掘り下げていきたいと。さらに新規顧客の獲得や、新製品の開発などにもつなげていければ…というご相談でした。

——そのご要望に対して、こちらからのご提案のポイントというのは。

お話を伺って、現状テクシーリュクスはリーズナブルで履きやすいという 「機能価値」の評価が目立っていました。そこで「ファンダイアログ」によって「情緒価値」や「未来価値」に共感頂けるコミュニケーションを行うことを目指しました。

機能価値だけでは、他に優れた機能のものがあれば、そちらに浮気してしまうんですよね。でも、「情緒価値や未来価値まで共感して頂ければ 、テクシーリュクスに強い愛情を持つようになる。そして、未来を一緒に創る!ぐらいにまでブランドへの思いが育つ、という考え方です。
そこで、まずテクシーリュクスのファンの方々との対話会を開催し、情緒価値や未来価値につながるポイントがどこにあるかを探っていきましょう、とご提案しました。

——対話会の参加者はどのようにして集めたのでしょうか。


テクシーリュクスは、量販店などで扱っている他にECサイトでの売上も多いので、EC会員にデジタルアンケートを実施しました。その回答から、思いの熱さ、いわゆるロイヤル度を測って個別にお声がけしました。
アシックス商事様としては「ブランドの魅力を若い人たちにも知ってもらうために、若年層の声も含めて幅広く聞きたい」と考えられていましたが、参加者は50代、60代の方に年齢が偏っていました。

新製品の開発では、新たにターゲットにしたい人の声を聞く事をしますが、テクシーリュクスは長く続いているブランドです。私たちは「参加者が50代や60代の方が多めというのは、ロイヤル顧客の構造をそのまま表していると思います。そんな熱狂度が高いファンの声を聞くことで、真の顧客価値が見えて来るはず!」とご説明し、ファンダイアログについて再度検討いただく時間が生まれました。

――再検討頂きどのようにお考えが変わったのでしょうか?

参加者を絞り込んでストップしたのが年末のことでした。ところが、年が明けてしばらくすると、アシックス商事様から 「 50代、60代含めた幅広い年齢の方々とやりましょう! 」とお返事を頂きました。 

もともとアシックス商事様では、「テクシーリュクスを“相棒”と思ってもらいたい」という強い思いをお持ちでした。「ブランドが15周年ということは、最初に30〜40代で履いてくれた方が今は50代になり、40〜50代で履いてくれた方が60代になっているはず。それでこそ、テクシーリュクスを“相棒”と言える愛用者ではないのか」という気づきが社内であったそうです。

年齢は関係なく、本当の商品の良さを知っている、真のファンの声を聞くべきだ。そのことをわかっていただけて、私も心底うれしく思いました。

本当に好きだからこそ、熱く語ってくださる 

――実際に行なわれた対話会の様子をお聞かせください。

当日は、対話会の前にパネルディスカッションも実施しました。
パネルディスカッションは、テクシーリュクスのこれまでの歩みを振り返ったり、担当者が開発秘話などを語ったりすることでブランドへの愛着を高める狙いでした。一方、対話会はファンの声を傾聴する時間。参加者それぞれに愛用の一足を持参してもらい、どういうところが好きか、どんな風に履きこなしているかなどを語っていただきました。

また、対話する場の近くに撮影スタジオも用意。ミーティングの内容やビジュアルをWebサイトなどに活用することを見越し、コンテンツとして映えるように仕立てることを心がけました。

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――皆さん初対面の状態で、 どれくらい喋ってくださるものですか。

一般的には、初対面の男性同士だと会話が弾まないイメージがありますが、私も驚くほどにみなさんたくさんの熱い思いを伝えてくださいました。何より、ブランドメンバーとの対話の場を楽しんでいただけている様子がすごく伝わってきて、開催してよかったなと思いました。
後半はお疲れも出てくると思い、休憩時間をこまめに作っていたんですが、休憩のご案内を出しても対話を止めずにずっとブランドメンバーとアイテムの話を続けられていたことが、今でも印象的で覚えています。

――なるほど…。参加者の発言などで印象的なものはありましたか。

特に印象的だったのは、とある企業で役員付きの運転手をされている方のお話ですね。

「アクセルを踏み込むとき、テクシーリュクスの柔軟性に支えられていることを実感します。この一足があるから、仕事でいいパフォーマンスが出せるんです」

こちらからの誘導や深掘りは一切なく、自然にこういう言葉が出てきたんです。ロイヤル顧客の中では、機能価値がちゃんと情緒価値まで昇華していることを目の当たりにした思いでした。他の方からも、アシックスグループの靴ブランドであるということへの信頼や、常識を打破する挑戦に共鳴 する声など、未来価値につながる発言までちゃんと出てきたので安心しました。

20250208_Asics1219 本番の対話会の様子

見えてきた顧客価値を起点にコミュニケーションをデザイン

――対話会の内容をもとに、どのように顧客価値を洗い出したのでしょうか。

当日の内容は、参加者お一人おひとりのプロフィール、価値観などから細かくレポートとしてまとめました。こだわったのは一切デフォルメせずに、事実ベースで書くことです。
そして参加された方の発言を機能価値、情緒価値、未来価値の3つに分けて分析しました。たとえば長時間履いても痛くない、動きやすいといったことは機能価値ですし、先ほどの運転手さんのような発言は「パフォーマンスを落とさず仕事ができる」という情緒価値に分類できます。

また、「この靴がないと生活できない」といった声もあり、これは「今後のライフスタイルを支えてくれる」という未来価値につながります。
こうした3つの価値を総合して、私たちは最終的にテクシーリュクスというブランドの顧客価値を「常識を超えるハイスペックでビジネスマンの人生を支える靴」と定義づけました。

さらに、テクシーリュクスの顧客ペルソナを3タイプに分けて設定しました。それらをご説明すると、ご担当者様が「想定していたペルソナから大きく外れてはいないけど、より具体的にイメージできるようになった !」と喜んでくださいました。それまでフワッとしていた顧客価値を、マーケティングデータとして言語化でき、社内共有できたと評価いただきました。

 ――今後はファンの声をどのように活かしていきますか

ファンダイアログは、対話で聞いた内容をただまとめて終わりではありません。そこから抽出した顧客価値をベースに、具体的な施策にまでつなげ、ブランドのあり方を長期的にファンと共創できることがポイントです。

すでにアンバサダー制度など、いくつかのプロモーション施策をご提案ずみで、対話会の内容をもとにしたブランドサイトは無事にローンチしました。

今回のファンダイアログの取り組みを通じて、ユーザーの生の声こそ、コミュニケーションの強い武器であると私自身も再認識しました。「ファンの声をそのまま出す」「ファンの声をプロモーションの起点にする」というところも、今の時代に合っているのかなと思います。

大広では、マーケティング&顧客体験の設計思想を「Deep Dialogue デザイン」と総称しているのですが、その中でもファンダイアログは先行して形になったソリューションです。今後さらに知見を蓄積し、さまざまな企業様のお力になれればと考えています。


まとめ

ファンダイアログとは、顧客(ファン)との対話をマーケティングに活用する取り組みです。顧客の思いを深掘りすることで、商品やサービスの本当の価値が見えてきます。顧客価値を起点に、コミュニケーションの施策までプランして企業を支援することがポイントです。



ファンダイアログの取り組みについて気になる方は、実際にTAKEYAで行った施策のアーカイブ動画も「ファンと直接つながる対話型マーケティング ~実践事例「TAKEYAフレッシュロック対話会」」もご覧ください。


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この記事の著者

岡嶋 瞳

営業・マーケティング・プロモーション職にて、各種カテゴリーの店販および通販事業のマーケティングサポートを経験。2016年より、顧客育成領域に特化したコミュニケーションプランナーとして、顧客と直接つながる仕組みや絆を作るコミュニケーションの構築に従事。「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。」がモットー。大広初代SNS中の人・さとなおオープンラボ関西3期卒業。