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2024.04.25

クリエイティブの力で顧客をつくる! D2Cの実績事例 ~浄水炭のサブスク事業「SUMITCH」~

何か新しいビジネスを立ち上げたい。そんなときに、マーケティングの視点は欠かせないものです。誰にどんな商品が求められているかを考え、価格設定や効果的な売り方などの戦略を立てることは、ビジネスの成功を目指すうえでの基本といえるでしょう。

しかし、ときにはマーケティングだけでは成し得ないこともあります。
それが、「顧客をつくる」、つまり、「お客様が買い続けたくなる理由をつくる」ということ。

本記事では、株式会社クジラテラス様の「SUMITCH(スミッチ)」プロジェクトの事例を通して、D2Cの実績につながるクリエイティブの秘訣を探っていきます。

◆「SUMITCH(スミッチ)」とは◆


岩手県久慈市にある株式会社クジラテラス様が202110月にスタートさせた、日本初の「浄水炭のサブスクリプション商品サービス」のこと。

水をおいしくする炭の顧客価値とは?

「水をおいしくするための“炭”のサブスクリプション事業をやろうと思っているんだけど、どう思う?」と相談されたら、あなたはまず何を考えるでしょうか。

水に炭を入れるとおいしくなるというイメージをなんとなく持っている人は意外と多いかもしれませんね。カフェやレストランなどの飲食店でウォーターピッチャーに炭が入れられていたことを思い出したり、ネットショップや量販店で水をおいしくするための炭を探してみたりする人もいるでしょう。

炭は、木を原料とするため、天然のミネラルを摂取できて健康によさそうだなと感じる人も少なくないはずです。

とはいえ、現代では、わざわざ水に炭を入れておかなくても、おいしい水が簡単に手に入ります。ペットボトルの水をはじめ、ウォーターサーバーの水、浄水器カートリッジでろ過した水など、炭の競合はたくさん存在しますよね。

しかも、炭には「水に入れてから8時間待たねばならない」というデメリットも。

下図は、炭とその他の水のメリットをわかりやすく整理したものです。ペットボトル・ウォーターサーバー・浄水カートリッジなどは利便性が高く買いたくなる理由も多いですが、炭はどうでしょうか。
炭とその他の水のメリットを表した図


炭が勝てるポイントは、下記の3点にまとめられます。

  • 自然のミネラルがとれる(おいしい、からだによさそう)
  • 森林循環に貢献できる
  • ペットボトルゴミを出さない

 一般的なマーケティングの視点で考えると、この時点ですでに「利便性や機能性ではその他の水に勝てない」という結論になるのではないでしょうか。

そして、間伐材をムダなく活用しようという方向で共感を得たり、炭を作っている地域を応援するという方向で戦略を立てたりするかもしれません。

また、ターゲットはどう設定すればよいでしょう。おいしい水を求めているターゲットは、値段・おいしさ・手軽さ・品質などの「機能」を重視する人と、ペットボトルゴミ削減や間伐材の有効利用などの「正しさ」を大事にする人が考えられます。

でも、機能を重視する人にアピールするには、水がおいしくなるまでに8時間もかかる炭は少し魅力に欠ける印象があります。また、正しさを重視する人はもっとエコな商品が見つかれば買い続けてくれません。

では、どうするか。

日本初の炭のサブスク事業「SUMITCH(スミッチ)」を軌道にのせた株式会社クジラテラス様が選んだのは、マーケティング視点だけではたどりつけない、「感情」で動く顧客を生み出すクリエイティブでした。

機能・感情・正しさで選ぶ人の各特徴を表した図


クリエイティブで、物・サービスを買う理由を作る!

 水をおいしくする炭のサブスク事業「SUMITCH(スミッチ)」のクリエイティブを考える上での重要なポイントは、サブスクであるということです。

サブスク事業は、1回の購入ではなく続けてもらうことを見据えているので、商品と顧客をつなぎ続けることが大事になってきます。

たとえば、自分が何かのサブスクの顧客になった場合を考えてみてください。もっと便利でもっと安くてもっと価値があるものが登場したら簡単にそちらへ移行するのではないでしょうか。

それと同じように、炭のサブスクを「便利そう」と選んだ人も、すぐにウォーターサーバーのほうが使いやすい、浄水カートリッジのほうがコスパがいいとなる可能性が。また、「環境によさそう」と選んでくれた人も、輸送時や製造時のCO2排出量が気になったり、より環境負荷が少ない商品に乗り換えたりする心配があります。

よりよい競合商品が登場してもつながり続けてもらうためには、利便性や環境面だけで勝負するのではなく、商品に対して「ちょっといいな」「かわいいな」「好みだな」という「感情」をもってもらうことをめざせばいいのではないか。

そんな仮説のもとで、水をおいしくする炭「SUMITCH(スミッチ)」のクリエイティブはスタートしたのです。

商品に「感情」を持たせる広告クリエイティブとは

多くの商品に言えることですが、「便利だ」「環境のために使いたい」といったメリットを感じて商品を購入することはあっても、「感情」を持つことはあまりないのではないでしょうか。

ましてや、本件の場合、商品は炭です。顧客と炭の間にどんな「感情」をつくれるでしょうか。

実際に株式会社クジラテラス様に提案されたクリエイティブ案は3方向ありました。

そのなかから採用されたのが、「炭を8時間水につけなくてはならない」というデメリットを、「炭ががんばってくれている8時間」に変換した案です。炭をモチーフにした愛着が持てるキャラクターSUMITCH(スミッチ)と一緒に、おいしい水がある生活を楽しめることを表現したものでした。
SUMITCHロゴ株式会社クジラテラス様がこの案を選んだ理由は、商品である炭をキャラクター化するアイデアに、サブスクとしてのその後の広がりを感じたからだそうです。

サブスク事業は、商品を売って終わりではなく、顧客とつながり続ける必要があります。とりわけ炭のサブスクは、毎回同じ炭が届けられるので、「あ、いいな」と思えるちょっとしたワクワク感も必要です。

また、株式会社クジラテラス様は、炭のサブスク事業を成功させることで、岩手県久慈の森林環境・地域の伝統産業・雇用創出などへの貢献や、大学や学生との連携、子どもたち向けのSDGsイベントなどさまざまな展開を視野に入れていました。

この炭のキャラクターがいれば、サブスク事業と顧客をよい感情でつなぐことができ、いろいろな展開にも広げやすいのではないか。そんな未来への可能性を感じられたということですね。

顧客価値を起点に世界観を広げ、売上につなげていく

炭を使えば「水を飲むことが好きになる、ちょっと楽しくなる」という顧客価値から生まれたキャラクターSUMITCH。実際にはどのように活用されていったのでしょうか。

SUMITCHの展開においては、ロゴやステートメント、パッケージデザインのすべてが顧客体験であると考えてデザインされています。それはつまり、自宅に届いたとき、封を開けたとき、冷蔵庫を開けたときに、一回一回「かわいいな」「SUMITCH、好きだな」と思ってもらうことが大事ということです。

たとえば、段ボールの開封部分の内側にSUMITCHが眠っているイラストを印刷するなど、細部にもこだわってつくられていますよ。
sumitchパッケージデザイン画像


また、炭の使い方や注意点を説明するリーフレットは、キャラクターのほんわかした雰囲気に合うよう「SUMITCHとの過ごし方」や「SUMITCHと仲良くするコツ」など柔らかい表現に言い換えるなど工夫し、顧客に愛着をもってもらいやすい構成に。

さらにサイトで購入ができる専用水差しも、「ウォーターピッチャーSUMITCHのおうち」とネーミング。沈んだ炭にスミッチが座っているように見えるようデザインするなど、SUMITCHとの日々に愛着を深める顧客体験をつくる装置になっています。

炭の使い方や注意点を説明するリーフレット画像
ローンチ後は、さまざまなメディアの取材を受け、順調に実績を上げているSUMITCH。一度契約したらやめない顧客がとても多いというのも特徴です。離脱率の低さはD2Cビジネスの成功に欠かせないものですが、一つひとつの顧客体験を大切にしながら構成されているSUMITCHのクリエイティブ展開が功を奏したともいえるのではないでしょうか。

商品と顧客の間に「感情」をつくるSUMITCHという商品は、今後、さまざまなキャンペーンやDM・同梱ツールなどが必要になった場合でも、効果的な企画が考えられそうですね。

SUMITCHが「SOCIAL PRODUCTS AWARD」を受賞!
昔からある知恵と資源を上手にリブランディングしており、炭のよさを再認識させてくれている点が評価されました。
SUMICH|2024.03.26ソーシャルプロダクツ賞を受賞しました

まとめ

「クリエイティブ」というと、ただ商品の見た目をよく見せるデザインのことをイメージする人が多いようです。しかし、「顧客価値をつくる」という視点でクリエイティブを構築していけば、小さなプロジェクトであっても、新規参入のビジネスであっても、しっかりと実績に貢献することができます。

また、本記事で事例にあげたSUMITCHのように、クリエイティブの力で商品と顧客の間に「感情」を生み出すことで、マーケティングではあぶりだせない新たな顧客をつくることも可能です。

この「感情」は、とくにD2Cのようなつながり続けるビジネスにおいては、欠かせないもの。D2Cビジネスの成功のために、クリエイティブの視点を活用してみてはいかがでしょうか。

この記事の著者

中牟田 佳苗

2011年 九州大学文学部卒業後、大広入社。福岡生まれ福岡育ち。コピーワーク、PR発想のクリエイティブをベースに、手段を問わず統合コミュニケーションを企画・設計。顧客視点のコンセプト開発や丁寧な顧客体験を積み重ねるブランディングが好き。ヤングライオンズコンペティションジャパンPR部門ファイナリスト・インテグレーテッド部門ファイナリスト、ヤングスパイクスジャパン ブロンズ受賞。