ワークライフバランス、ワークアズライフ、ワークインライフなど、仕事とプライベートの関係を考えるための言葉が数多く登場している昨今。一人ひとりが、それぞれの考えの中で自分の生活と仕事のどちらも大事にしながら働くことが、モチベーションや生産性を上げ、社員にとっても企業にとっても大切なこととして注目されています。2017年から始まったCOCOプロジェクトは時代に合わせて形を変えながら、「誰もが心おきなく活躍できる職場とは」という課題解決に向けて活動を続けてきました。この記事では、そのCOCOプロジェクトが、子どもと一緒に「ワークインライフ」を考える機会として、実験的に行った「子ども会社参観日」をご紹介します。
職場で子どもと過ごす初体験
社員とその子どもたちが職場で初めて顔を合わせる機会となった「子ども会社参観日」。COCOプロジェクトがめざすのは、職場の人々とその家族が互いに理解し合い、より働きやすい環境を築くことです。「パパやママは自らの職場を子どもたちに紹介することで、普段見せられない自分の一面を知ってもらいます。一方、子どもたちにとっては、親の働く姿を直接見る貴重な経験となり、仕事への理解が深まると同時に、職場への親近感も育まれることでしょう。在宅勤務が普及する中、仕事とプライベートの境界が曖昧になってきてはいますが、職場でのこの体験は、さらなる気づきをもたらしてくれると考えました。」とCOCOプロジェクト・サブマネジャーの岸本さんは語ります。
8月13日、参加者たちは大広大阪中之島オフィスの会議室に集まりました。23名のパパ・ママ社員と29名の子どもたちが参加。参加社員の約半数はパパ社員です。初対面の緊張感を和らげるために、風船遊びから始まり、ランチタイム、続くワークショップ「子どもと一緒に考えるパパ・ママのワークインライフ」では、子どもたちの素直な発言が飛び交いました。お家で働くパパママのために何か気を付けていますか?という質問には約半数の子供たちが「はい」と答え、具体的には「静かにしている」「部屋にはいらない」など、子どもなりにいろいろ感じ取って行動していることがうかがえました。また、おうちでお仕事しているときにしてほしいことは?という質問には「お仕事もっと頑張ってほしい」というほほえましい答えのほかに、「休憩もっとしてほしい」「だっこしてほしい」という子供らしい声も。
2つ目のワークショップ「みんなで作った手作り応援旗を持って会社見学ツアー」では、まず、子供たちが、働くパパとママとその仲間を応援する絵を描いた旗を作ります。パパやママの似顔絵、パパの好きなキャラクターやママの好きな食べ物などが描かれた応援旗には、子どもたちからの温かいメッセージが込められていました。その応援旗を持って執務室を見学。パパやママと一緒に働く仲間たちのそばで、騒がないように気をつけながら、旗をパタパタと振って応援しました。執務室で働いていた社員も、始めはちょっと驚いた表情を見せていましたが、かわいい応援団の様子に自然と笑顔に。執務室にほっこりした空気が流れます。
仕事仲間と子供や家族、これからの関係
「子ども会社参観日」によって、仕事仲間とその家族との新しい関係性が築かれることが大切だと話すプロジェクト・サブマネジャーの岸本さん。今回のイベントのもたらす効果について「たとえば、子どもが“熱を出した”と聞いたとき、職場の人たちがその子どもの顔を思い浮かべることで、単なる報告以上の感情が生まれるはずです。相手の状況が理解しやすくなって、社員同士がより温かいサポートができるのではないかと考えています。逆に、子どもに“ママは飲み会で遅くなるよ”と言った際に、仕事仲間の顔が思い浮かぶと、子どもも少しは安心感を持てると思います。場合によっては、子どもも一緒に参加できるかもしれません。」
「また、急に子どもを預けられないときに会社に連れて行くことが当たり前のようになればパパ・ママは助かります。今回は1日だけでしたが、もっと頻繁に会社参観日を開催して子どもが会社にいる風景に社員みんながなじめば、子どもを会社に連れていきやすい雰囲気づくりにも貢献できるかなと思っています。今回のイベントで「仕事」と「プライベート(子ども)」を仕事の本拠地であるオフィスで共存させることで、パパやママが自分自身の「ワークインライフ」や「働きやすい環境」につて 考えるきっかけにもなったと思います。」と岸本さんは話していました。
「ワーク」と「ライフ」、どう織り成して幸せに向かうのか
人生の幸せを追求する中で、働くことと生活をどのように織り成せるかは、私たちにとって大きなテーマです。仕事と生活の関係性については、多様な言葉で表現されていて、それぞれちょっとずつ違ったニュアンスが込められています。「ワークライフバランス」は、仕事と生活のどちらかを犠牲にするのではなく、両方のバランスをとってよい状態を目指す言葉です。この言葉では「仕事」と「生活」の境界を明確にしています。一方で「ワークライフインテグレーション」は、仕事と生活を切り分けず、仕事と生活は相互に影響を与えながら充実していくという考え方です。例えばリゾート先で仕事を行うワーケーションもその一例。長期的な視点では、若い時のプライベートでの経験が、その後仕事面に生かされる、といったこともワークライフインテグレーションの考え方の一つです。さらに「ワークアズライフ」。これは仕事と生活を一体化したうえで、仕事=自分のやりたいこと、自己実現の場とする考え方。「ワークアズライフ」が実現できれば、より意欲的に仕事に取り組めるでしょうが、誰しもが実現できるとは限らないのでは・・・という意見もあります。そしてCOCOプロジェクトが目指す「ワークインライフ」。人生の中に仕事がある、と考え、人生を第一に置いています。「自分の人生における仕事」のポジションを設定して、それを実現していく考え方です。同じ人の中でもその時々において「仕事」の位置づけは変化する可能性があります。これらのアプローチは、働き方の多様性が求められる現代において、一人ひとりの価値観や考え方に応じた幸せな働き方への選択肢とヒントを提供してくれます。
理想の働き方は、一人ひとり違うから
初めて開催した「子ども会社参観日」。参加者からは「困ったときに子どもを会社に連れていきやすくなる取り組みとしてとてもいいと思う。またの開催を楽しみにしています。」「ご家族の顔が見えると社員の助け合いの一助になると思うので、どんどん推進していってほしい。」という声があった一方で、「子どもたちが新商品の試食会のリサーチを行うなど、実際の仕事に触れる機会があれば、仕事に対する理解を深められたかもしれない」「子供から、パパの会社はわかったけど、どんな仕事をしているのかわからないといわれ、親が自分の仕事をどのように伝えるかも重要だと感じた」など、様々な感想が寄せられました。
COCOプロジェクトがスタートした2017年当時は「女性が心おきなく活躍する職場づくりプロジェクト」という位置づけでした。時代の流れとともに「誰もが心おきなく活躍する職場創りプロジェクト」へと役割も変化して、その実現に向けて活動を続けています。今回の「子ども会社参観日」の試みでは、仕事と育児が交差する場を設け、一人ひとりが自分の「ワークインライフ」を考えるきっかけを作りました。次回の子ども参観日には「子育て中でない働く仲間と子供たちの交流」や「パパ・ママの仕事を疑似体験してみるプログラム」など新しい企画も検討中とか。「これからも、仕事と育児、仕事と介護など、大事な二つのことが重なり合うような場をつくって、ワークインライフを推し進め、働きやすい環境を作りたいと思っています。」とプロジェクト・サブマネジャーの岸本さんは話していました。
COCOプロジェクトメンバー。右から2人目がプロジェクト・サブマネジャーの岸本さん。
※「子ども会社参観日」の様子は動画でご覧いただけます。
まとめ
「子ども会社参観日」は、社員とその家族が共に過ごし、ワークインライフを考える貴重な機会となりました。企業が社員のワークインライフ実現のために、選択肢を増やし、環境を整えることはもちろん大事ですが、一人ひとりが自分の価値観に向き合って「自分にとって仕事とは?」ということを意識すること、同時に、ほかの人にとっての「仕事とは?」を認めることも大切だと感じました。COCOプロジェクトが今後これをどう発展させていくのか、ぜひ期待したいところです。
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