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2024.08.30

老舗アイスブランド「ホームランバー®️」の LINEを活用したキャンペーンDX改革とは

協同乳業様の「ホームランバー」は来年で発売65周年を迎える、ロングラン商品。今般、これまでのはがき応募による“当たり棒”キャンペーンに加えて、LINEを活用したオンラインキャンペーンを実施することでブランド活動のDX化をすすめました。このことによって顧客とつながり、その後の販売促進やデータ活用へとビジネスの拡大につなげています。ロングランブランド商品の「リブランディング」とも呼べるキャンペーンの改革には多くの発見があったといいます。開発にあたった協同乳業様とキャンペーン開発に伴走した大広チームにお話を伺いました。

[インタビュイー] 
協同乳業株式会社
営業本部 営業統括部 企画グループ 担当課長 
坂本 崇

協同乳業株式会社
営業本部 営業統括部 企画グループ 
森田 莉那

株式会社大広
東京ビジネスデザイン本部 第5ビジネスデザイン局 第2部
中野 裕也  

“当たり付き”アイスの本家本元「ホームランバー®️」のこれまでと現在  

――来年発売65周年を迎えると伺いました。ホームランバーがどんなブランドなのか、お話しいただけますか?

坂本
まずホームランバーブランドについてお話ししますと、ちょうど65周年を迎えるにあたって、そのことについて考えていこうと話し合っているところでした。ブランドの価値や意義みたいなところで言えば、根っこの部分は「楽しんでいただく」ということでしょうか。当たり付きのアイスということで言えば、ホームランバーが最初に始めたことですし、当たり付きの楽しみやワクワク感を提供することがブランドの重要な要素の一つということなのかなと思いますね。

ホームランバーのユーザープロフィールですが、お客様の中には子どもの頃に駄菓子屋さんの店先で買った経験がある方もいらっしゃると思います。その頃は銀紙に包まれていた個装の商品の時代ですが、今の主力商品は10本入りの箱になっています。それは流通の流れもあって、ここ数十年はスーパーマーケットが主軸になっていますから、主なターゲットとしてはファミリー層になります。親御さんとお子さま、それにおじいちゃんやおばあちゃんまでいろんな世代の方に楽しんでいただけます。

――来年65周年を迎えるのですね。ロングラン商品として何か課題は感じていますか?

坂本
そうですね、発売してから60年以上経つブランドですので、ホームランバーを認知している人の年齢も50代、60代と上がっていくんですよね。駄菓子屋さんで買った体験がある世代の方は、スーパーマーケットでアイスを選ぶときに小さい頃の体験を思い出してホームランバーを選んでいただきやすいのですが、そんな体験がない世代のお客様は選びにくいと思うんですね。なのでどこかで若返りと言いますか、若い世代の人たちにも自分たちのブランドとして認知していただけるようにならないと。そこがマーケティング上の課題かなと思いますね。

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――アイスクリーム商品、氷菓の市場環境はこれまでどんな変化があるのでしょうか。

坂本
アイスクリーム市場全体で見ますとアイスクリーム販売金額は、2010年度に4,063億円だったのですが2023年度は6,082億円と勢いが加速しています(※)。   アイス市場拡大の要素としては、気温上昇の影響もあるかと思われますが、各社がオリジナル性のある付加価値商品を開発して新たな市場を開拓していることが大きいかと。これまで不需要期であった秋冬期に濃厚・贅沢アイスなどが受け入れられ市場規模が拡大していることや、お手頃価格で「身近な癒しを与える」アイスが消費者に支持されていることなどかと思います。  
(※一般社団法人日本アイスクリーム協会調べ) 

これまでのキャンペーン施策とブランドが抱えていた課題  

――ホームランバーといえば“当たり棒”が出るかどうかワクワクします。これまでのキャンペーン施策についてお話しいただけますか?

森田
“当たり付き” という体験はホームランバーブランドの根幹だという想いは、64年前の発売当初から変わっていないんです。ホームランバーには現在、昔懐かしい銀紙で個装された“銀紙アソート”と“10本入りのアソートパック”がありまして。商品や景品との交換についてですが、“銀紙アソート”は購入した店舗に当たり棒をお持ちいただき、もう一本と交換いただけます。“アソートパック”は当たり棒を郵送して応募いただく仕組みです。商品交換やキャンペーン応募の仕組みは継続してきました。発売当初、1960年代は野球ブームだったこともあって長嶋茂雄さんを起用したキャンペーンや“当たり付き”もホームラン賞と満塁ホームラン賞がある時代もあったんですよ。

――これまでの仕組みで課題として感じていたことはありますでしょうか?

坂本
定期的にお客様満足度調査を行っているのですが、これまで“アソートパック”をお買い上げいただいている お客様から寄せられたお声の中には、ハガキによる応募が面倒であるというご意見が多かったんですね。封書にすると送料もかかるわけですし。あとは、相当数の応募をいただきますので当選倍率も高くなります。なので何度も応募しているのにハズレが続いたお客様もいらっしゃるはずなのに、こちらから何のリアクションもできない一方通行のコミュニケーションだったことについては、大きな課題を感じていました。

――ブランド調査を設計しサポートしていた中野さんは何か気づきはありましたか?

大広 中野
満足度を測りつつ、当たり棒がどんなユーザーに響いているのか、あるいは今坂本さんからご説明があった課題についてもデータによる裏付けをしながら確認していきました。調査を続けるとホームランバーのロイヤルユーザーは“当たり付き”という体験に価値を感じている方が多かったです。またミドル層やライト層のユーザーには“当たり付き”をもっと好きになってもらう体験が必要だと。ですので、この体験をいかに強化するかが課題の解決につながると思いました。LINEによるキャンペーンDX化を提案させていただいたことには、そんな背景があります。

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顧客の思いに寄り添ったキャンペーンDX改革   

――“当たり棒”を駄菓子屋さんで交換していた時代から郵送して応募する時代に変わってきたように、ユーザーとつながる手段も必然的に変化してきた、ということですね。オフラインを活かしつつLINE活用によるキャンペーンオンライン化で目指したことについてお話しいただけますか?

坂本
先ほどもお話させていただいたように、何度も応募しているのにハズレが続いたお客様にもコミュニケーションしたいという想いを実現したかったんですね。そういうお客様こそホームランバーのロイヤルユーザーなのですから。ひとこと、「今回はハズレになってごめんね」と伝えたかった。通信インフラとしてもメジャーなLINEを選択した理由には、これまで一方通行だったコミュニケーションを双方向にしたいという想いがあったんです。

――LINEを活用したデジタルキャンペーンにはそんな想いがあったのですね。ブランドとして変えたくなかったこと、変えたかったことはありますか?

坂本
デジタルキャンペーンをローンチさせるにあたって、キービジュアルを開発したんですね。その時に採用したキャッチフレーズが「『変わらない』おいしさ。『変わる』ワクワク。」というフレーズです。変えたくなかったことは、家族みんなで食べていただける美味しさです。「『変わる』ワクワク。」に込めた意味としては、“当たり付き”は変わらないけれど今の時代に求められる楽しさ、ワクワク感を提供し続けるという姿勢ですね。ここは変えていくべきなのかなと考えています。LINE上ではポイントを集めることでもらえるデジタルギフトもあります。ただ“当たり付き”の焼印が出るかどうかのワクワク感ってどれだけ時代が変わっても変わらないものですよね。なので、オフラインとオンラインを並走させるキャンペーン設計としているんですよ。

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――キャンペーンをデジタル1本化せず“当たり棒”も残した背景があったんですね?

大広 中野
実はLINE導入にあたっては協同乳業さんの社内でもさまざまな意見が出たこともあり、改めてブランド調査を行いました。その結果、ホームランバーにとって焼印による“当たり”体験は大きな顧客価値ということがわかった。それが焼印による“当たり棒”を残す判断材料だったんです。 “当たり付き”のユーザー体験を強化するためのDX化なのに、“当たり棒”がなくなると、温かみだとかレトロ感とか、今まで培ってきたブランドの見え方が変わってしまうと思いました。そこは、協同乳業さんとも長く議論したポイントでした。

――LINEアカウントはいつ開設されたのですか?LINE上でのブランド活動を教えてください。

森田
公式LINEアカウントは2023年8月に開設しました。LINEスタンプを実施したこともあり、おかげさまで現在約168万人の友だちがいます。 (※2024年7月17日取材時)
ブランド活動としてはポイントキャンペーンがあります。これは以前の“ヒット賞”の代替になっているんです。“ヒット賞”の当たり棒を集めて応募いただくスキームだったものをデジタル化した、と言えばわかりますでしょうか。対象商品の“アソートパック”パッケージ中面に印刷されているQRコードからアクセスして公式アカウントを友だち登録 。ポイントを集めて、賞品にご応募いただけます。応募コースは3ポイントコースと6ポイントコースがあり、それぞれのコースで応募ポイントに応じた金額分の『えらべるPay』がその場で当たります。 

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――LINE上のポイントキャンペーンとは別途、「ホームラン」の焼印がでたらホームラン賞、大当たりですね。

坂本
ええ、対象商品のスティックに「ホームラン」の焼印が出たら大当たりです。ブランドサイトから応募用紙をダウンロードいただいて、“ホームラン”の焼印が入った“当たり棒”を郵送いただいています。現在は応募いただいた方全員にもれなく「ホームランバー オリジナル寝袋」をプレゼントさせていただいています。“銀紙アソート”商品の“当たり棒”は、これまでと同じく購入した店舗にお持ちいただければもう一本と交換いただけます。

DX化することで顧客との関係を深めたリブランディングへ  

――繰り返しになりますが、LINEを活用したキャンペーンで実現できたことにはどんなことがありますか?

坂本
まず一番大きいことは、これまで一方通行だったコミュニケーションを双方向化できたことですね。そしてアンケートなどを実施しながら、お客様の属性はもちろん、どんな気持ちでホームランバーを選んでいただいているのかとか、どんなことを望んでいるのかとか、お声を拾い上げることができるようになりました。キャンペーンは期間によって切り替わるのですが、費用対効果の面で言うと、LINEスタンプを実施したことでマスメディアよりも効率よく告知の切り替えができるようになったと感じています。それと従来の“ヒット賞”をLINEのポイントキャンペーンに置き換えたことで、応募しても賞品がなかなか当たらなかった、そんな体験のあるロイヤルユーザーにも“当たり”体験をしてもらいやすくなったかなと感じますね。

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大広 中野
これまでキャンペーンの改善というと次の賞品をどうしようとか、ノベルティを切り替えることくらいしかできなかったのですが、LINEを活用することでキャンペーン設計そのもののPDCAが回せるようになってきたこともありますね。ポイントを貯めることがユーザーにとって億劫になっているようであればポイントのシステムを改修できますし。パッケージのQRコードの位置についてもユーザーボイスを参考にしながら改訂することも可能になってきました。いろんな改善点を洗い出して最適化していくことがスムーズになってきたと思います。

森田
LINEスタンプは社内の反響も結構ありました。私の同期もみんな使っていますし、友人にも評判いいんです(笑)。こういう新しい取り組みは社員のモチベーションアップにもつながっていると思います。

――キャンペーンをDX化したことでユーザーとの関係もリフレッシュされて、リブランディングが実現されたように感じます。これからのブランド活動についてお聞かせください。

坂本
来年の65周年に向けて、改めてホームランバーのブランドをどうしていこうか議論を進めている最中ですが、楽しさを伝えていくということは昔もこれからも変わらないのかな、と考えています。ただその伝え方は変わっていくと思いますね。商品についても家族で楽しんでいただけるアソートパックを中心に新しい広がりを考えていければと思っております。
今回のキャンペーンデジタル化は、老舗ブランドにとっては単純なDX化というよりも、お客様との関係を再構築するリブランディングの活動だったのかな、そんな想いもあります。

この記事の著者

COCAMP編集室

「ビジネスは、顧客価値でおもしろくなる」をコンセプトに、ビジネスにおける旬のキーワードや課題をテーマに情報発信しています。企業の大切な資産である「顧客」にとっての価値を起点に、社会への視点もとり入れた、事業やブランド活動の研究とコンテンツの開発に努めています。