一緒につくろう、顧客価値のビジネス。

お役立ち資料 相談する
お役立ち資料 相談する

2024.01.29

ロイヤル顧客を増やす・美容篇③ エイジングケアに賭ける顧客と、商品の選び方

人生100年時代の美容ビジネスにとって、重要なロイヤル顧客になっていくと期待される、マチュア世代。この世代に選ばれるブランドになるために、彼女たちが美容に対してどんな意識を持ち、どのように美容商品を選んでいるのかを知ることはとても大切です。

事実として、マチュア世代を取り巻く環境は非常に過酷。仕事や子どもの教育、家族の健康、経済面のほか、更年期や加齢による体の衰えなどさまざまな悩みを抱えています。

それなのに、いまのマチュア世代は一昔前の「中年」や「熟年」に比べると、とても若々しい人が多いように感じられる。不思議だと思いませんか。

本記事では、ビューティマーケティング・プロデューサーの後藤三彩子さんを迎え、美容業界の現状を交えながら、いまのマチュア世代の美意識が高い理由について探ってみました。

前回の記事はこちら
ロイヤル顧客を増やす・美容篇①人生100年、ルッキズムを超える美容顧客たち
ロイヤル顧客を増やす・美容篇② 美容市場の悩める顧客。どうアプローチする?

いまのマチュア世代の美容ヒストリーは?

最近の若い女性は中高生の頃からスキンケアやメイクをする人が多いですが、いまのマチュア世代が中高生時代はリップやハンドクリームを塗ったり、せいぜいニキビケアをしたりする程度。 化粧品を本格的に使い始めたのは、高校卒業後、大学生や社会人になるタイミングでした。

当時は今ほどドラッグストアや通販コスメが充実していなかったため、大手メーカーが主催する化粧品セミナーやサンプリングをきっかけに化粧品デビューをした人も多かったようです。

社会人になると百貨店ブランドを経験したり、海外旅行時に免税店で外資系ブランドを購入したりする人も。また、20~30代の独身OL時代に高級ブランドやエステなどを経験した層もある一定数は存在し、美容投資をすることで得られるメリットを知る機会がありました。

とくに、いまのマチュア世代の最年長であるハナコ世代(19591964年生まれ)は20代でバブル景気の絶頂を経験していることから、当時は羽振りが良く美容商品の選び方も高級志向やブランド志向だったといえるでしょう。

それに続くばなな世代(1965~1970年生まれ)と団塊ジュニア世代(1971~1976年生まれ)は社会人になる前にバブルが崩壊していますが、先輩世代の価値観の影響を大きく受けていると考えられます。

そんなマチュア世代ですが、結婚・出産を経て、時間的にも経済的にも思うような美容投資ができなくなってくる。

その頃に登場したのが、コスパの良いドラッグストアコスメや通販ブランド、1品多機能で時短にもなるオールインワンジェルなどです。また、化粧品購入時の選択肢が拡大したことで、大手メーカーのマスブランドと呼ばれた中価格帯以上の化粧品をライン使いする人は減り、用途や予算に合わせてさまざまなブランド・価格帯の化粧品を組み合わせて使う人が増えています。 

現在、子どもの教育費や老後の備えなどにお金が必要なマチュア世代。財布の紐は、そう緩くはありません。しかし、決して節約一辺倒というわけではなく、若い頃に良い物を使った経験があるからこそ、自分にとって価値があると判断すれば出費を惜しまない傾向があるといわれています。

マチュア世代は、美容の選択肢が多い

マチュア世代は女性ホルモンの節目にあたり、肌の衰えが顕著になってくる時期です。若い頃からいろいろな化粧品を使ってきたけど、「私の肌、もう何をしても限界なのかな…」と感じる人が多くなる年代でもあります。

加齢に伴う肌の変化に対して、諦めてしまう人もいれば、絶対にあきらめずに美魔女をめざす!という人、年齢なりの自然な美しさをキープしようという人もいます。

そんなマチュア世代の要望に応えるかのように、近年、美しくなるための選択肢がどんどん広がっています。

下記は、美しさを手に入れる手段を図に表したものです。

美しさを手に入れる方法を表わしたピラミッド図

 

美しさのベースになるのは、食事や睡眠、運動、入浴などのライフスタイル全般までを含む「ホリスティックビューティー」。女性ホルモンに振り回されがちなマチュア世代は、ここを少し整えるだけで大きく変われる可能性があります。

また、「インナービューティー」にかかわる美容サプリや美容系の食品・飲料はコンビニでも手に入り、手軽に実践できる時代になってきました。

「化粧品」と「医薬部外品」に該当するアイテムは非常に多くの商品が存在し、

・超高級ラグジュアリコスメ
・高機能サイエンスコスメ
・ドクターズコスメ
・ナチュラルコスメ
・オーガニックコスメ
・社会派コスメ
・プチプラコスメ

などさまざまな商品開発思想のもと、
それぞれにエイジングケアを謳う商品が数多く販売されています。 

そして、セルフケアでは満足できなくなってきた層は、プロの手を借りる「エステ」や「美容医療」を選ぶことができ、さらに美しくなるための究極の方法として「美容整形」に踏み切る選択も可能です。

GettyImages-917539606

このようにいろいろな美容の選択肢があるなかから、必要なものを賢く見極めて選べるのが、いまのマチュア世代のメリットともいえます。

たとえば、徹底的にシミ・シワ対策をしたい人は高機能サイエンス化粧品を使い、年齢なりの自然な美しさをめざす人はナチュラル・オーガニック系の化粧品を使うというように、めざす美しさに合わせて選べます。

ドラッグストアで買えるプチプラ系のなかには、数年前までは高機能化粧品に入っていた高価な成分を配合しているものも。きちんとした知識があれば、機能面でもコスト面でも賢い選択ができるでしょう。

また、大手メーカーの化粧品を好んで使い続ける人がいる一方で、衰えた肌には効果がないと大手メーカーの化粧品をやめてしまう人も。

一昔前であれば美容を諦めていたかもしれない人たちが、現代では、美容医療で一気に肌悩みを改善したり、製薬会社やフイルム会社などが独自技術で 作った目新しい化粧品に乗り換えたりしています。

ところで、これほど多くの選択肢があるなかで、いまのマチュア世代はどのように美容商品を選択しているのでしょうか。

美容商品を選ぶ際にマチュア世代が最も参考にしているのは、意外にも、身近な人からの口コミです。友人に「何を使ってるの?」「良い美容クリニックはない?」と尋ねることも多く、最近は母娘でコスメをシェアして意見を言い合うという親子も増えています。

マチュア世代ももちろんネットは活用しますが、20~30代がSNSや通販サイトで情報を得て購入まで完結するのに対し、マチュア世代は雑誌を読んだり店頭で実際の商品を手に取ったりしてリアルに確かめることを好む人が多いようです。

実際に、40代終盤から60代初めのマチュア世代を代表する美容系インフルエンサーとしてまず名前が挙がるのは、TVの情報番組に出ているタレントさんや同年代~少し上の女優さん、雑誌モデルさん。こういった事実からも、若い世代のようにSNSの影響が圧倒的というわけではなさそうです。

マチュア世代は昔の人より美意識が高い⁉

いまのマチュア世代が、かつて中年・熟年と呼ばれていた人たちより若々しく感じられるのはなぜなのでしょうか。

いろいろな要因があるとは思いますが、その1つとして、マチュア世代に向けたブランドやサービス、情報が充実していることが挙げられます。

キレイになるための情報といえば、以前は若い女性向けのものがほとんどでしたが、いまはマチュア世代向けの前向きな提案も豊富です。テレビや雑誌でも「40代・50代・60代になっても女性としての自分を楽しみましょう」「こうすれば年齢を重ねた肌でもキレイに見えます」といった特集を目にすることが増えました。

美容を諦めてしまいそうなタイミングに、「まだ私、大丈夫かも」と思わせてくれる情報や商品、環境がある。そのため、昔のマチュア世代よりもいまの人たちは美意識が高く感じられ、若々しい人が増えているのではないでしょうか。

また、昔に比べて仕事や趣味の外出などで積極的に外に出てアクションを起こすマチュア世代が増えているというのもあります。人前に出る機会が多いと、身なりをきちんと整えようとする意識が高まるからです。

IMG_7600-(2-1)後藤 三彩子 

ビューティマーケティング プロデューサー

一般社団法人 幸年期マチュアライフ協会 理事

NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会 エキスパート

大手化粧品メーカー、広告代理店などを経て2019年に独立開業。
長年、美容健康分野での新規事業や新商品開発、広告・宣伝・PR、販促や店頭開発などに携わってきた経験より、「身心ともに健やかに美しく生きたい」現代女性の気持ちに寄り添うビジネスのマーケティングやブランディングをサポート。近年は、一般向けに美容セミナー講師やコラム執筆も行う。

まとめ

従来の中年・熟年世代と比べ、いまのマチュア世代向けの美容ビジネスはチャンスが多いといえます。

昨今、マチュア世代の最年長である60代向け雑誌が続々と創刊されていることからも、このマーケットの活気の良さが実感できますね。

とはいえ、マチュア世代に向けた美容商品は非常に多く、化粧品ひとつとっても同じ有効成分や美容成分を配合したものは山のようにあります。

競合他社に負けないためには、機能面の効果をアピールするだけでは物足りません。マチュア世代のライフスタイルにマッチした使い心地や、マチュア世代の気持ちにフィットする開発思想、ブランドに込めた想いがしっかりした商品作りを心掛け、強いファンを作ることが大切です。

この記事の著者

COCAMP大人美容部

COCAMP大人美容部は、美容ブランドのマーケティング戦略やコミュニケーションデザインの豊富な経験とネットワークをもつ研究チーム。人生100年時代における美容顧客を研究し、社会に貢献するブランドの活動と体験価値について情報発信を行っています。 (写真左から)
柳 恵理 (株)大広 第一プロデュース局 柳チーム リーダー
原田裕美 (株)大広 ブランドアクティベーション推進局 COCAMP編集長
堀米華子 (株)大広WEDOクリエイティブディレクター/アートディレクター