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2023.12.19

ロイヤル顧客を増やす・美容篇①人生100年、ルッキズムを超える美容顧客たち

後藤

ひと昔前なら人生後半と言われた世代が、生き生きと社会で活躍する時代になりました。“美しさ”の定義も大きく変わりつつある美容市場。これからのロイヤル顧客を考えるとき、数年前とはガラッと変わった世代ごとの意識に着目する必要があります。

「マチュア世代」という言葉を雑誌やWEBなどで目にしたことはないでしょうか。

対象となるのは40代終盤から60代初めくらいのシニアより少し若めの層。悩みを抱えつつもポジティブに前を向き、自分らしく人生を楽しみたいと思っている成熟した大人のこと指し、一昔前の“中年”や“熟年”とは区別されています。

そんなマチュア世代がいま、美容ビジネスの顧客として重要な存在となっています。人生100年時代、50歳は単なる人生の折り返し地点となりました。今までなかった長い人生後半戦は、まさに未開の市場。その未開の市場を形成するターゲットとして、マチュア世代が浮かび上がります。マチュア世代に注目することで、新しいビジネスのヒントがあるかもしれません。

では、マチュア世代とはどういう世代なのか。ビューティマーケティング・プロデューサーの後藤三彩子さんを迎えて詳しく解いていきます。

マチュア世代は、“中年”や“熟年”と何が違う?

マチュア世代という言葉は、「成熟した、円熟した」という意味の英語「Mature」に由来しています。ワインが熟成されて味わいや香りが深まるように、さまざまな人生経験を経て若い頃とは異なる魅力を持つようになった世代というニュアンスです。

それまでにも50代を表す“中年”や“熟年”という表現があったのにもかかわらず、どうしてマチュア世代という呼び方が生まれたのでしょうか。その背景には、「年をとっても自分を謳歌したい」、「日々を楽しく過ごしていきたい」と考える50代前後の新しい大人層が増えてきたことがあります。

中年・熟年という言葉がどちらかというと“疲れたオバサン”のようなイメージを与えるのに対し、マチュア世代は、ポジティブで新しい50代からの生き方を感じさせてくれるワード。最近のファッション誌などでは、読者である50代・60代を応援したり、モチベーションを高めたりする目的で多く使われています。

マチュア世代はどんな価値観を持っている?

2023年現在、マチュア世代に該当するのは下記の年代の人たちです。

  • 60代が増えてきた「ハナコ世代」(195964年生まれ)
  • 50代半ばの「ばなな世代」(196570年生まれ)
  • 50代に差し掛かる「団塊ジュニア世代」(197176年生まれ)

最年長の「ハナコ世代」は、華やかなバブル景気の中で20代を過ごした世代。自分のステイタスを高めるために、大学生の頃から美容やファッション、旅行などに積極的に消費し、楽しいモノ・コトをたくさん経験しています。当時は消費行動が活発なハナコ世代に向けた雑誌・商品・ブランドが数多く登場しました。

それに続く「ばなな世代」は、大学生から社会人になる時期にバブル景気の絶頂と崩壊を目の当たりにした世代。流行に踊らされることを嫌い、無理せず自分らしく身の丈に合ったモノ・コトを選ぶ傾向があります。消費行動は堅実ですが、先輩であるハナコ世代の贅沢なライフスタイルに影響を受けている面も多々あります。

その下の「団塊ジュニア世代」はバブル崩壊後の不況に直面し、就職時に苦労した世代。ばなな世代よりさらに現実志向なのが特徴です。上のばなな世代が若い頃からやりくりしてブランド物を身に着けているのを見て、そのスタイルに憧れを持つ人も少なくありません。

上記のことから、いまのマチュア世代の消費行動は、最年長であるハナコ世代に牽引されていると言えるでしょう。

このような40代終盤から60代初め頃までと幅広い年齢層のマチュア世代に、美容商品を買ってもらうにはどうすればいいか?そのためには彼女たちがどんなマインドで日々を暮らしているのかを知ることも重要です。

いまのマチュア世代の価値観を探るために、幼少期から20代にかけての時代を振り返ってみると、勢いのある高度成長期やバブル景気を経て、バブル崩壊、ITバブル、リーマンショックなどさまざまな出来事がありました。

潰れるはずのない大企業が破綻したり、エリートともてはやされていた人がそうではなくなったりするのを間近で見てきたいまのマチュア世代は、短期間でリアルに栄枯盛衰を学んだ世代といえるでしょう。

確かだったものが永遠ではなくなる、そうしたマイナスの変化に対するストレス耐性も鍛えられていると考えられます。

また、いまのマチュア世代は、日本が最も豊かだったバブル期の良い面を若い頃に経験した、バブルを知る最後の世代でもあります。ハナコ世代やばなな世代はもちろん、最年少の団塊ジュニア世代でさえ中高生時代にはバブル景気の恩恵を少なからず受けていました。

こうした浮き沈みの激しい時代の流れの中で「沈むだけではなく浮くことも知っている」のも、いまのマチュア世代の価値観に大きな影響を与えているといえます。

マチュア世代のライフスタイルは?

50代前後の女性は、年齢的にもちょうど女性ホルモンが大きく変わる節目にあたり、心身ともにさまざまな変化が訪れる時期。

自分自身の健康が気になり始めるだけでなく、夫やパートナーの健康に不安が生じたり、親の介護が始まったりするのもマチュア世代の特徴です。

マチュア世代の女性のうち約8割の人が仕事をしていますが、20代に比べると正規雇用の割合がとても少なく、多くの人が非正規雇用で働いているのが現状。いわゆるキャリアウーマンと呼ばれる人はそれほど多くはありません。

子どもを持つマチュア世代の場合、第1子が大学生という人が平均的で、まだまだ教育にもお金がかかります。下に第2子・3子がいればなおさらです。

また、子どもの有無にかかわらず、老後に備えるためのお金を稼ぎ確保しておく必要もあります。

このようにマチュア世代は、自分自身の体の不調に加えて、家族の健康やお金・教育の問題などさまざまな悩みがどんどん重なってくる世代といえます。

一見すると過酷な環境ではありますが、浮き沈みの激しい時代を生き、華やかで勢いのある時代を経験したいまのマチュア世代は、ある種の楽観性を持っているのもポイントです。

たとえばお金を節約する場合。
いまのマチュア世代は若い時期にお金を使っていろいろな経験をしていることから、良いモノ・コトに投資をすればそれなりのリターンが得られることを知っています。

そのため、お金を節約する際も、何もかもを切り詰める生活をするのではなく、良いものを見極め、投資すべきところにはお金をかけるといった選択をしている人が多いようです。

近年、いまのマチュア世代向けの雑誌が次々と発刊されていますが、多くの雑誌で「人生をどうポジティブに楽しむか?」「人生まだまだこれから!」「もっと楽しもう、美しくなろう!」といった前向きな提案が多くなされています。

一昔前の50代・60代向け雑誌は種類も少なく、特集の内容も老いに対する準備や余生の過ごし方を指南するものが主流だったことを考えると、このようなポジティブな提案が多い傾向もいまのマチュア世代を象徴しているのかもしれません。

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まとめ・マチュア世代攻略の視点

マチュア世代はホルモンバランスが大きく変化する更年期の真っただ中で、美容・健康面で大きな変化を実感し、ライフステージにおいてもいろいろな悩みも抱えています。美容ビジネスにおいては、他の世代と異なる顧客価値の追究が必要であり、人生100年時代においては大きなチャンスを秘めているターゲットといえます。

経済面ではなかなか贅沢しづらい年代ですが、バブル期を経験したいまのマチュア世代は価値あるモノには投資を惜しまず、良いものを見極める選択眼も備えています。

つまり、彼女たちの不安や悩みに寄り添い、使う意義や頼り甲斐、その先の希望を感じさせる商品を作ることができれば、強い信頼を得て美容ビジネスの先行きも明るくなるといえるでしょう。

なお、いまのマチュア世代より下の世代はさらに堅実で、財布の紐が固い傾向にあります。
若い世代は先輩世代をお手本にする傾向があるので、まずはいまのマチュア世代のニーズにマッチする美容ビジネスを確立することが得策ではないでしょうか。

IMG_7600-(2-1)後藤 三彩子 

ビューティマーケティング プロデューサー

一般社団法人 幸年期マチュアライフ協会 理事

NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会 エキスパート

大手化粧品メーカー、広告代理店などを経て2019年に独立開業。
長年、美容健康分野での新規事業や新商品開発、広告・宣伝・PR、販促や店頭開発などに携わってきた経験より、「身心ともに健やかに美しく生きたい」現代女性の気持ちに寄り添うビジネスのマーケティングやブランディングをサポート。近年は、一般向けに美容セミナー講師やコラム執筆も行う。

次回、「ロイヤル顧客を増やす・美容篇② 美容市場の悩める顧客。どうアプローチする?」へ続きます。

この記事の著者

COCAMP大人美容部

COCAMP大人美容部は、美容ブランドのマーケティング戦略やコミュニケーションデザインの豊富な経験とネットワークをもつ研究チーム。人生100年時代における美容顧客を研究し、社会に貢献するブランドの活動と体験価値について情報発信を行っています。 (写真左から)
柳 恵理 (株)大広 第一プロデュース局 柳チーム リーダー
原田裕美 (株)大広 ブランドアクティベーション推進局 COCAMP編集長
堀米華子 (株)大広WEDOクリエイティブディレクター/アートディレクター